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【事前確定届出給与の届出延長が認められる場合とは?】事前確定届出給与のQ&A

事前確定届出給与の届出延長役員に支給する賞与は税務上の経費(損金)にならないため、役員に賞与を支給すると会社の法人税等の負担が大きくなります。役員賞与を税務上の経費にするためには、税務署に「事前確定届出給与」の提出が必要になります。

 

役員報酬ではなく、役員賞与として支給することで社会保険料を減らすことができるなどのメリットがありますが、役員賞与が認められるには「期限までに届け出を行わなければいけない」や「届け出とおりに支給しなければいけない」などの制限があります。

 

ここでは、「事前確定届出給与の届出延長が認められる場合」や「事前確定届出給与のQ&A」について解説します。

 

事前確定届出給与の基本

事前確定届出給与とは、取締役や監査役などの役員に対し、特定の時期に特定の金額を支給する旨を事前に税務署へ届け出ることで、役員賞与を税務上の経費(損金)にできる制度です。

 

詳しい制度の内容については「【役員賞与を支給して経費(損金)にするには?「事前確定届出給与」の7つのポイント】」で詳しく解説していますので、ご覧ください。

『【役員賞与を支給して経費(損金)にするには?「事前確定届出給与」の7つのポイント】』
事前確定届出給与

 

株主総会を開催し議事録の作成が必要

事前確定届出給与を行うためには、株主総会を開催し「事前確定届出給与の額」と「事前確定届出給与の時期」を決め、下記のような議事録を作成する必要があります。

株主総会議事録(事前確定届出給与)

 

※この議事録のひな形(雛型)はこちらからダウンロードが可能です(WORD形式)
株主総会議事録(事前確定届出給与)WORD形式

 

事前確定届出給与に関する届出書を作成し提出が必要

株主総会で決議した旨をもとに税務署に提出する「事前確定届出給与に関する届出書」と付随する「付表(事前確定届出給与等の状況)」の作成が必要です。

※こちらから事前確定届出給与の記載例(PDFファイル)を見ることができます。画像をクリックしてください。

事前確定届出給与に関する届出書

事前確定届出給与に関する届出書は「株主総会の決議の日から1か月以内」または「決算から4か月以内」のどちらか早い日までに税務署に提出しなければ事前確定届出給与は認められません。

 

事前確定届出給与の届出延長が認められる場合とは?

事前確定給与の届出延長

事前確定届出給与に関する届出書の提出期限は、原則的に延長することはできません。しかし、災害などにより決算業務が遅れ、定時株主総会をスケジュール通りに行うことができなかった場合については「国税通則法第11条(災害等による期限の延長)」により届出書の提出期限の延長が認められます。

 

「災害等による期限の延長」とは、災害などに起因した「やむを得ない理由」がある場合、国税に関する法律に基づく申告、申請、届出などの期限を「その理由がやんだ日から2か月以内に限り延長」することができる制度です。

 

提出期限が延長される3つの理由

「災害等による期限の延長」が可能になる理由には「地域指定による延長」「対象者指定による延長」「個別指定による延長」の3つがあります。

 

地域指定による延長

自然災害などが発生し、国税庁が申告や納付ができないと判断した場合には、その地域を指定して期限の延長が行われます。地域指定による延長の場合は、納税者側で特別な手続きを行う必要はありません。指定される地域と延長される期日は官報に記載されます。

適用があった主な事例
・東日本大震災の被災地域5県
・熊本県を中心とした令和2年7月豪雨により熊本県の一部地域

 

 

対象者指定による延長

申告などに使用される国税庁のシステムがダウンして使用できないなど、納税者に責任がない事情により多くの人が申告や納税をできない場合には、対象者を指定して期限の延長が認められます。対象者指定による延長の場合は、納税者側で特別な手続きを行う必要はありません。指定される対象者と延長される期日は官報に記載されます。

適用があった主な事例
・新型コロナウイルス感染症の拡大防止により、所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の延長

 

 

個別指定による延長

災害やその他のやむを得ない事情により申告や納税が行えない場合、税務署にそのやむを得ない理由を記載した「災害による申告、納付等の期限延長申請」を提出することで個別に期限の延長が認められます。

適用があった主な事例
・新型コロナウイルス感染症による個別延長
(新型コロナウイルス感染症の影響により、決算業務が遅れ、株主総会が予定通り開催することができず、事前確定届出給与の届出が遅れてしまった場合など)

 

事前確定届出給与のQ&A

事前確定届出給与は、届出とおりの時期と金額を役員に支給すれば問題ありませんが、会社の状況により支給が難しい場合もあります。事前確定届出給与の支給について注意すべきポイントを紹介します。

 

無支給の場合

Q.事前確定届出給与の届出をしていましたが、会社の利益がでなかったため、全く支給しませんでした。税務上はどのようになりますか?

 

A.会社が事前確定届出給与を全く支給しなかった場合には、何ら問題がないように思えますが、
税務上、次のようなリスクがあります。

 

①源泉徴収の発生

事前確定届出給与を全く支給しない場合には、支給しないのに関わらず、その事前確定届出給与の源泉徴収が必要になります。

所得税法では「株主総会などの決議により支給日が決められている給与は、その支給日が収入の日」と規定されています。(所得税法基本通達36-9)そのため、事前確定届出給与を全く支給しなかったとしても源泉徴収が必要になってしまうのです。

 

②債務免除益の発生

「事前確定届出給与を全く支給しないということ=役員が役員賞与を辞退している」と考えられ、会社側に発生した債務(役員賞与の支払い)が消滅することになります。そのため、会社側では債務免除益を認識することになります。この債務免除益は税務上の収益(益金)となり、法人税等が課税されます。

 

リスクを回避するには

源泉徴収の発生と債務免除益の発生を回避するためには「事前確定届出給与の支給日が到来する前に役員からの辞退届を受け取り、株主総会等で支給しない旨の決議」を行う必要があります。そうすることで「役員の報酬請求権」が発生しないため、上記のリスクを回避することができます。

 

複数支給があり一部届け出と異なる場合

Q.3月決算法人で事前確定届出給与を年に2回支給(12月と翌年5月)する場合で、1回目(12月)は届け出とおりに支給し、2回目(翌年5月)は届け出と異なった額を支給した場合には2回とも損金として認められませんか?

 

A.1回目の届け出とおりに支給した事前確定届出給与は損金として認められ、2回目は届け出とおりではないため損金として認められません。

 

3月決算法人の場合で事前確定届出給与を12月と翌年5月に支給する場合、この2つの事前確定届出給与は事業年度をまたぐことになります。例えば、令和5年12月と令和6年5月に事前確定届出給与を支給する場合で令和6年3月期の影響について考えてみましょう。

 

令和6年3月期時点では令和6年5月に支給する事前確定届出給与が届け出額と異なっていたとしても、その事業年度(令和6年3月期)に影響を与えるものではないと考えることができるため、届け出とおりに支給している1回目(令和5年12月)については損金にすることができます。

 

ただし、複数回の事前確定届出給与が同じ事業年度内である場合(3月決算法人で9月と3月に支給する場合など)は1回目と2回目のどちらかが届け出額と異なっている場合、1回目と2回目の両方が損金として認められませんので注意が必要です。

 

3-3.一部の役員の支給が届け出と異なる場合

Q.役員Aと役員Bに事前確定届出給与を支給する予定でしたが、役員Aには届け出とおり支払い、役員Bには届け出と異なり無支給の場合、役員Aに支払った事前確定届出給与は損金になりますか?

 

A.損金になります。法人税法では、個々の役員に係る給与について規定しているため、役員Bに事前確定届出給与を支給していなくても役員Aになんら影響を与えることはありません。ただし、無支給の場合は「支給日が到来する前に役員からの辞退届」と「株主総会等の決議」をしておかなければリスク回避できませんので注意が必要です。

 

まとめ

事前確定届出給与は、役員賞与を損金にすることができる便利な制度です。しかし、届出書が遅れてしまったり、異なった金額を支給してしまったりした場合には、大きなリスクになってしまいます。事前確定届出給与の支給を検討する際は、しっかりと制度の内容を理解し、正しい手順で行うようにしましょう。

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