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新型コロナで業績悪化した場合の役員報酬の減額について

新型コロナによる役員報酬の減額

 新型コロナウイルスの影響で業績が悪化し、役員報酬を減額しなければならないと考えている経営者の方々へ。

 法人税法上「役員報酬の減額」は利益操作に繋がる恐れもあるため、厳しく規制されています。
 しかし、国税庁より「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQ」が公表され、新型コロナウイルスの影響で①「業績が悪化した」または②「悪化が見込まれる」場合、役員報酬の減額を認める趣旨の回答が出されています。

したがって今回はこの2つ

① 新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した場合に行う役員給与の減額
②     〃       で業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額

それぞれについて解説したいと思います。

1.業績が悪化した場合に行う役員給与の減額

新型コロナ役員報酬変更

業績が悪化した場合に行う役員給与の減額
 当社は、各種イベントの開催を請け負う事業を行っていますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことで、今後、数か月間先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなりました。
 その結果、予定していた収入が無くなり、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも困難な状況であることから、当社では、役員給与の減額を行うこととしました。
 法人税の取扱いでは、年度の中途で役員給与を減額した場合、定期同額給与に該当せず、損金算入が認められないケースもあると聞いています。
 そこで、当社のような事情によって役員給与を減額した場合、その役員給与は定期同額給与に該当するでしょうか。

〇 貴社が行う役員給与の減額改定については、業績悪化改定事由による改定に該当するものと考えられます。
 したがって、改定前に定額で支給していた役員給与と改定後に定額で支給する役員給与は、それぞれ定期同額給与に該当し、損金算入することになります。
〇 法人税の取扱いにおける「業績悪化改定事由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、貴社のように、業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は、この業績悪化改定事由に該当することになります。

新型コロナ役員報酬の減額事由

〔参考〕
法人税基本通達9-2-13(経営の状況の著しい悪化に類する理由)
役員給与に関するQ&A(平成 24 年4月改訂版)[Q1](業績等の悪化により役員給与の額を減額する場合の取扱い

2.業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額

新型コロナ役員報酬の減額

業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額
 当社は、新型コロナウイルス感染症の影響により、外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで、主要な売上先である観光客等が減少しています。そのため、当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じています。
 また、いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、更なる経費削減等の経営改善を図る必要が生じています。一方で、当社の従業員の雇用や給与を維持するため、急激なコストカットも困難であることから、当社の経営判断として、まずは役員給与の減額を行うことを検討しています。
 しかしながら、法人税の取扱上、年度の中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるのは、経営が著しく悪化したことなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情(業績悪化改定事由)がある場合に限られると聞いています。
 そこで、当社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当するのでしょうか。

〇 貴社が行う役員給与の減額改定について、現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、人や物の動きが停滞し、貴社が営業を行う地域では観光需要の著しい減少も見受けられるところです。
〇 また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たないことから、現時点において、貴社の経営環境は著しく悪化しているものと考えられます。
〇 そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられます。
〇 したがって、貴社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当します。

新型コロナ役員報酬の減額

〔参考〕
法人税基本通達9-2-13(経営の状況の著しい悪化に類する理由)
役員給与に関するQ&A(平成 24 年4月改訂版)[Q1-2](業績等の著しい悪化が不可避と認められる場合の役員給与の減額)

「議事録」の作成と保管を忘れないこと

 たとえ業績が悪化し、今回の国税庁FAQの要件に当てはまっていたとしても、それを決定した証拠となる「議事録」を作成・保管していなければ税務調査で否認されてしまいます
 役員報酬(定期同額給与)を減額するとき、「議事録」の作成は必ずしなければならない手続きです。この手続きを正しく行っていない場合、結局は税務調査で指摘され、せっかく変更した役員報酬も経費として認められないことになります。

具体的には以下の3つがポイントとなります

①国税庁で定めている要件をクリアし、役員報酬(定期同額給与)の変更を行うこと
株主総会などを開催し、正しい手順で変更額を設定すること
③株主総会などにおける役員報酬(定期同額給与)変更の議事内容を「議事録」として作成し保管すること

 上記①は、今回の新型コロナウイルスによる業績の悪化です。国税庁FAQで要件を満たすと回答されました。しかし②と③は手続き上の要件です。この3つを満たさないと役員報酬(定期同額給与)の減額は認められません。

 作成と保管が必要な「議事録」についてはこちらで紹介しています。「議事録」ひな形もダウンロードできますので参考にしてください。

『役員報酬(定期同額給与)の変更で必要な議事録の雛形(ひな形・雛型とは?(無料ダウンロードあり)』はコチラ↓↓↓
役員報酬(定期同額給与)の変更で必要な議事録

まとめ

減額後の役員報酬は定額、社会保険手続も必要

 新型コロナウイルス感染症による影響は日本の経済に大きなダメージを与えています。政府からも「営業自粛の要請」が出され、営業自粛によって業績が悪化している企業はたくさんあります。もう一つのポイントは役員報酬を減額したあとの金額は定額にすることです。それにより減額前の役員報酬と減額後の役員報酬ともに損金経理が可能となります。
また減額した金額が大きい場合社会保険料の変更手続(月額変更届)も必要ですので忘れないようにしましょう。
 ※ 月額変更届の提出|日本年金機構
 この影響は長期化する可能性もありますので、早いタイミングで役員報酬の見直しをしましょう。

役員報酬に関連する記事の一覧はこちら

今回の記事のほか、役員報酬の増額役員賞与の活用役員報酬の適性額などについても解説していますので参考にしてください。

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