税理士が解説!個人事業主が定額減税を受けるための減額申請ガイド
2024.06.08
はじめに
個人事業主のための定額減税の仕組みを解説
個人事業主の皆さん、令和6年6月からはじまった定額減税のことをちゃんと理解していまか?サラリーマンや年金受給者の定額減税はニュースでよく報道されていますが「私は個人事業主だけど定額減税はどうなるの?」と悩んでいる方が多いです。所得税や住民税の減税は、事業をするうえで資金繰りの点でも重要なポイントです。
この解説記事では、個人事業主の定額減税について、予定納税や確定申告でどう行われるのかわかりやすくお伝えします。税の負担を軽減し、正確な申告と納税を行うために、ぜひ最後までお読みください。
1. 定額減税とは?
定額減税の一覧
定額減税とは、令和6年度の税制改正により導入される所得税の特別控除です。この控除により、所得税額が一定額減額されることで、個人事業主の税負担が軽減されます。具体的には、以下の表のとおり所得税から30,000円(※個人住民税も10,000円)が控除され、ご家族(同一生計配偶者や扶養親族)がいる場合には、その人数に応じてさらに控除が適用されます。
定額減税のフローチャート
こちらの定額減税のフローチャートも参考にご自身とご家族がどれだけ定額減税を受けれるかご確認ください
個人事業主の定額減税の概要
1. 個人事業主は確定申告時に減税、ただし予定納税がある場合は先に本人分のみ減税
ご家族分の定額減税は減額申請の手続きが必要
個人事業主の定額減税は来年(令和7年)3月の確定申告において適用されます。ただし先に予定納税がある方は本人分のみ自動的に定額減税が適用されます。そしてご注意いただきたいのは、予定納税がある方でも自動的に定額減税が適用されるのは「本人分」のみということです。
したがってご家族分の定額減税を受けたい場合は別途「減額申請」が必要です。※減額申請についてもこの記事で解説します。
2. 個人事業主の予定納税について
個人事業主で予定納税がある方とは?
まず個人事業主の予定納税とは、前年の所得税額を基に計算される納税額を前もって納付する制度です。令和5年の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上の場合、今年(令和6年)の予定納税の対象となります。
定額減税も考慮した予定納税額の計算
令和6年分の予定納税額は、令和5年の所得税額(予定納税基準額)を基に計算されます。具体的には、前年分の申告納税額(所得税及び復興特別所得税)と同額が基本となります。その上で、令和6年6月以降に通知される予定納税額から定額減税額30,000円が控除されます。
- 第1期分の予定納税額は、予定納税基準額の3分の1に相当する金額から30,000円を控除した残額となります。
- 第2期分の予定納税額は、予定納税基準額の3分の1に相当する金額となります。
また、ご家族(同一生計配偶者や扶養親族)がいる場合、減額申請をすれば上記に加えそれぞれ家族1人につき30,000円が追加で控除されます。
※特別農業所得者の場合は、第2期分のみの納付となり、その額から30,000円が控除されます。
同一生計配偶者や扶養親族に対する定額減税は減額申請の手続きが必要
ご家族(同一生計配偶者や扶養親族)に対する定額減税額は、予定納税額の減額申請をすることで控除を受けられます。
この手続きにより減額されるべき特別控除額(本人と同一生計配偶者等の定額減税額)は、第1期の予定納税額から控除しきれなかった場合、第2期の予定納税額から控除されます。
個人事業主の定額減税と予定納税の減額申請の仕組み
個人事業主の定額減税と予定納税の減額申請の仕組みは以下の通りです。
(参考)予定納税の減額申請書とは?
予定納税における定額減税の取扱いに関しては、国税庁ホームページ「定額減税特設サイト」に順次、情報が掲載される予定です
▶定額減税特設サイト:https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/index.htm
参考:前年(令和5年)の予定納税の減額申請書
なお参考までに前年(令和5年)の予定納税の減額申請書はこちらになります。
→令和5年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/gengaku.pdf
3. 予定納税額の減額申請
減額申請の条件
予定納税額の減額申請が可能な場合は次の通りです。
- 令和6年6月30日の現況による申告納税見積額が予定納税基準額を下回る場合。
- 令和6年6月30日の現況において予定納税特別控除額が30,000円を超えると見込まれる場合。
- 災害減免法による軽減免除が適用される場合。
予定納税における家族分の定額減税の減額申請
前述のとおり、予定納税のときにあわせてご家族分の定額減税を受けたい場合は「予定納税の減額申請」が必要です。今回の定額減税により、令和6年分の所得税に係る予定納税額の納期および減額申請の期限も次のように変更されています。
項目 | 変更前 | 変更後 |
---|---|---|
第1期分の納期 | 令和6年7月1日(月)から 7月31日(水)まで |
令和6年7月1日(月)から 9月30日(月)まで |
第1期分及び第2期分の 予定納税額の減額申請の期限 |
令和6年7月16日(火)まで | 令和6年7月31日(水)まで |
第2期分の納期 | 令和6年11月1日(金)から 12月2日(月)まで |
変更なし |
第2期分のみの予定納税額の 減額申請の期限 |
令和6年11月15日(金)まで | 変更なし |
4. 確定申告について
定額減税の適用
予定納税がない方やご家族に増減があった方は確定申告時に定額減税が適用される
令和6年分の所得税確定申告では、定額減税が適用されます。定額減税の対象となるのは、本人とご家族(同一生計配偶者や扶養親族)のそれぞれ1人につき30,000円です。
ただし合計所得金額が1,805万円を超える場合や非居住者の場合は適用されません。
また、予定納税がない方や途中でご家族が増えた方(減った方)に関する定額減税は、最終的に令和7年3月の確定申告で減税が適用されます。
申告書の記載事項
定額減税を受けるためには、確定申告書に以下の事項を記載する必要があります。
- 同一生計配偶者等の氏名
- 生年月日
- マイナンバー
これは、年末調整で定額減税の適用を受けた場合も同様です。
その他の注意点
- 給与や公的年金等の源泉徴収税額から定額減税の適用を受けた場合、それだけでは確定申告の義務は発生しません
- 令和6年6月1日以後に準確定申告書を提出する場合、定額減税が適用されます。この際の申告書の記載方法も詳しく説明されています
- 令和6年5月31日以前に準確定申告書を提出した場合、定額減税は適用されませんが、6月1日以降に更正の請求を行うことで適用が受けられます
おわりに
定額減税を活用し、税負担を軽減しよう
令和6年度の税制改正で導入される定額減税は、個人事業主にとって大きなメリットとなる制度です。予定納税や確定申告の際に適切に利用することで、税負担の軽減が期待できます。本記事で解説したポイントを参考に、正確な申告と納税を心がけてください。質問や不明点があれば、ぜひ専門家に相談することをお勧めします。
なお詳細は国税庁の令和6年分所得税の定額減税Q&A(予定納税・確定申告関係) でも確認できますのでぜひ参考にしてください。
参考:令和6年分所得税の定額減税Q&A(予定納税・確定申告関係)
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