税理士・社労士が解説!最新の子育て支援(児童手当や給付金)などを徹底解説
2024.11.13
異次元の少子化対策で変わる子育て支援
子育て支援(児童手当、給付金など)の最前線へようこそ
はじめに
少子化が進む日本において、子育て支援はますます重要な課題となっています。政府が掲げる「異次元の少子化対策」は、これまでにない規模と内容の支援策を提供することで、子育て世帯の負担を軽減し、子育てをしやすい社会を目指しています。本記事では、具体的にどのような支援策が導入されるのかを詳しく解説します。
こども未来戦略方針
加速化プランの主な支援策
(参考)「こども未来戦略方針」厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001112705.pdf
児童手当の変更点
児童手当は、子育て家庭への経済的な支援を目的とした制度です。今回の対策では、以下のような変更が予定されています。
- 支給対象の拡大: 現在の中学卒業までから高校卒業までに延長されます。これにより、18歳に達する日以降の最初の3月31日まで手当が支給されます。
- 所得制限の撤廃: これまで所得制限があったため一部の家庭には支給されていませんでしたが、今後は全員に支給されるようになります。
- 第3子加算の延長: 子どもとして数える期間が高校生までから「22歳の年度末」までに延長され、第1子が高校を卒業しても第3子の加算が受けられるようになります。
- 支給額:
- 3歳未満: 月額1万5000円
- 3歳~18歳: 月額1万円
- 第3子以降: 月額3万円
- 支給回数: 現在は年3回の支給ですが、隔月(偶数月)の年6回に増やされます。
- 開始時期: 2024年12月の支給分から開始予定。当初は2025年2月からの予定でしたが、前倒しされました。
児童扶養手当の拡充
児童扶養手当は、ひとり親世帯などの低所得世帯への支援を目的としています。今回の対策では、以下のように拡充されます。
- 第3子以降の支給額を月額最大10,420円に引き上げます。
- 支給の要件となる所得制限も緩和予定です。
- 対象者: ひとり親世帯などの低所得世帯で、18歳以下の子どもがいる方が対象です。
- 支給額(最大):
- 1人目: 44,140円
- 2人目: 10,420円
- 3人目: 6,250円から10,420円に引き上げを検討中。
- 開始時期: 2025年1月支給分から実施予定です。
出産費用の助成案
出産にかかる費用は大きな負担となるため、政府は出産費用の助成を強化する方針です。具体的には以下のような内容です。
- 保険適用: 出産費用に公的保険制度の適用が検討されています。通常、医療費の1~3割は自己負担となりますが、出産費用は「自己負担なし」とする上で「給付」を行うことが検討されています。
- 対象者: 正常分娩で出産される方が対象です。
- 開始時期: 2026年度を目途に検討中です。
- 全国の病院などの出産費用やサービス内容を一覧化した専用サイトが厚生労働省のホームページに開設されました。出産費用や個室の有無、立ち合い出産・無痛分娩ができるか、分娩件数などを、全国約2,000カ所の医療機関ごとにまとめ、妊産婦が医療機関を選ぶ際に比較できます。
その他の助成・給付金
妊娠・出産期から2歳までの支援を強化する方針です。2023年4月から以下の支援策が開始されています。
- 出産・子育て応援給付金: 10万円(2023年4月以降に出産された方が対象)
- 出産育児一時金: 50万円へ増額
- 低所得妊婦の初回産科受診料助成: 1万円
- 出産・子育て応援給付金は、今後「妊婦のための支援給付(仮称)」として2025年度に制度化される予定です。
大学などの高等教育費、奨学金
高等教育の費用負担を軽減するため、以下の支援策が検討されています。
- 大学などの授業料無償化: 3人以上の子どもがいる多子世帯への支援策として、子どもの大学授業料などを無償化する方針です。例えば、3人子どもがいる家庭で第1子と第2子が大学に在籍している場合、2人とも無償化の対象となります。
- 対象者: 3人以上の子どもがいる多子世帯(所得制限は設けない方針)。
- 開始時期: 2025年度から実施予定です。
- 授業料無償化の対象: 大学や短期大学、高等専門学校などの授業料や入学金などが対象となります。
- 上限額(予定):
- 大学の授業料免除の上限: 国公立が約54万円、私立は約70万円。
- 大学の入学金の上限: 国公立が約28万円、私立が約26万円。
- 直近3年度全ての収容定員が8割未満の場合には対象外となる可能性があります。文部科学省は、ホームページで対象校のリストを公表する予定です。
医療費助成
子どもの医療費負担を軽減するための支援策です。
- 現在、不必要な受診や医療費を抑制するため、小学生以上の児童の医療費助成をしている自治体に対し補助金を減額していますが、この措置を撤廃し、自治体による子どもの医療費助成を後押しする方針です。
- 未就学児(小学校入学前): 公的保険と自治体補助により自己負担なし。
- 小学生以上: 市区町村が独自に補助しており負担割合が異なります。
住宅支援策
子育て世帯の住環境を改善するための支援策です。
- 住宅ローン控除(住宅ローン減税): 住宅ローンを利用してマイホームを購入・増改築した場合に、一定の条件を満たすと税金の控除が受けられる制度です。2025年末の入居まで適用され、2024年の入居からローン残高の上限額が引き下げられますが、どちらかが39歳以下の夫婦や子育て世帯に限って2023年の上限額を1年間維持する方針です。
- 対象者: どちらかが39歳以下の夫婦、子育て世帯。
- 対象となる住宅: 新築等の認定住宅など環境性能の高い住宅。
- 借入限度額: 2023年の上限額を1年間維持することを検討(新築の長期優良住宅で5,000万円、ZEH水準省エネ住宅で4,500万円、省エネ基準適合住宅で4,000万円)。
- 入居時期: 2024年入居分(1年限りの実施予定。延長の可否は今後検討)。
- フラット35の金利優遇: 長期固定金利の住宅ローン(フラット35)について、子育て世帯などに配慮し、子どもの数に応じて金利を引き下げる方針です。
- 対象者: 18歳未満の子どもがいる世帯や、子どもがいなくても夫婦どちらかが39歳以下の若年層世帯などで検討中。
- 開始時期: 2023年度中に開始予定です。
その他の支援策
住宅支援以外にも様々な支援策が検討されています。
- 生命保険料控除: 子育て世帯への支援策として、扶養する子どもがいる場合、生命保険料控除の控除額の上限引き上げが検討されています。
- 対象者: 扶養する子どもがいる方。
- 控除額の上限: 所得税16万円まで引き上げを検討中。
- 実施時期: 具体的な時期は未定です。
保育の拡充
保育の充実を図るための支援策です。
- こども誰でも通園制度: 就労にかかわらず、時間単位で柔軟に利用できる通園制度です。月一定時間の利用可能枠の中で利用できます。
- 対象者: 生後6カ月~2歳の未就園児。
- 開始時期: 2023年度から実施予定。2026年度に全国展開。
- 利用枠: 月10時間で検討されていましたが、利用枠を拡大する方針です。
- 幼児教育・保育の無償化: 2019年10月から幼児教育・保育の無償化が開始されました。3歳~5歳の場合、幼稚園・保育所・認定こども園などの利用料が無償です。
- 認可外保育施設の利用料無償化: 認可外保育施設の場合、2024年9月末までは保育の必要性の認定を受けると、3歳~5歳で月額3.7万円まで、0歳~2歳で住民税非課税世帯の場合、月額4.2万円まで利用料が無償です。2024年10月以降は、要件を満たす施設のみが無償化の対象です。
- 対象施設: 認可外保育施設の届出がされていて、外国人児童が多い施設や夜間保育所など。
- 実施期間: 2024年10月から2030年3月末まで(当初2024年9月末の予定でしたが対象施設のみ5年半延長する方針)。
- 保育士の配置基準改善: 幼児教育・保育の質向上のため、保育士の配置基準を見直す方針です。また、保育士等の処遇改善もあわせて検討されます。
- 改善内容:
- 1歳児: 「6対1」から「5対1」へ改善。
- 4・5歳児: 「30対1」から「25対1」へ改善。
- 開始時期: 4・5歳児の配置基準の見直しは、2024年度から実施予定です。
学童保育
「小1の壁」となっている学童保育(放課後児童クラブ)の待機児童解消などに向けて、環境の整備が進められています。
- 受け入れを122万人から152万人に拡大(今後3年間の早期に達成できるよう取り組む)。
- 常勤職員の配置改善(2024年度から開始予定)。
産後ケア
現在の産後ケアは、育児への不安や心身に不調がある方を対象としていますが、今後は「産後ケアを必要とする者」に改定され、希望者全員が補助を受けられるようになります。
- 対象者: 産後、子どもが1歳になるまで誰でも。
- 料金補助: 1回あたり2,500円を5回まで。
- 開始時期: 具体的な時期は未定です。
- 住民税非課税世帯については、既に1回あたり5,000円で回数制限なしの補助が受けられます。この制度は継続する方針です。
- また、今後、産後ケア事業の拡充に向けて、各市区町村への補助額の上限を撤廃する予定です。2024年度中に全ての市区町村での事業実施を目指しています。
共働き支援
育児休業給付金や時短勤務など、共働き家庭を支援するための拡充策が予定されています。
- 育児休業給付金: 給付率が手取り10割に引き上げられます。14日以上の育休取得を条件に、最大28日間の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から8割程度(手取り10割相当)に引き上げます。
- 対象者: 育休を取得している男女ともに。
- 開始時期: 2025年度から実施予定です。
- 時短勤務の給付金制度: 育休明けに時短勤務をする場合、労働時間や日数などに制限なく、賃金の10%を給付します。雇用保険に「育児時短就業給付(仮称)」を設け、時短勤務で収入が下がる子育て世帯を経済的に支援します。
- 対象者: 子どもが2歳未満。
- 開始時期: 2025年度から実施予定です。
育児期の働き方支援
育児期に柔軟な働き方ができるよう支援の拡充が検討されています。また、制度を導入した中小企業に対して助成を強化する方針です。
- 親と子の選べる働き方制度: 子どもが3歳以降小学校就業前まで、時短勤務、テレワーク、フレックスなど柔軟な働き方が選択できる制度です。中小企業への制度導入支援として、3種類以上の働き方を用意した場合は1人あたり25万円、2種類の場合は20万円を補助する予定です。
- 開始時期: 2024年度から開始予定。
- テレワークの努力義務: 子どもが3歳になるまで、短時間勤務措置の義務付けに加えてテレワークの努力義務が追加されます。
- 開始時期: 2024年度中に法改正予定です。
- 育休取得者や時短勤務者の周囲社員への応援手当: 育休取得者や時短勤務者の業務を代替する周辺社員に手当を支給した中小企業に対し、助成を強化予定です。助成期間は1年間で、育休者1人につき最大125万円、時短勤務者の場合は子どもが3歳になるまで最大110万円を助成します。代替期間の長さに応じて支給額を増額する方針です。
- 開始時期: 2024年度から開始予定です。
育児期の休暇・残業
育児期の男女が安心して働けるよう、休暇制度や残業時間の見直しが行われます。
- 子の看護休暇: 年5日の看護休暇の対象年齢を小学校3年生修了時まで引き上げ、行事参加や学級閉鎖時などでも活用できるよう事由範囲を拡充予定です。
- 実施時期: 2025年4月に実施予定。
- 選択的週休3日制度: 仕事と育児の両立にあたり心身の健康を守る目的で、制度普及に取り組みます。
- 残業免除: 残業免除が申請できる期間を小学校入学前まで延長します。
- 実施時期: 2025年4月に実施予定。
- 育児期の時間外労働上限規制: 育児期の男女が職場から帰宅後に育児や家事を行うことができるよう、長時間労働の是正に取り組む方針です。
- 実施時期: 2024年度に全面施行予定です。
産後パパ育休、男性育休
男性の育児休業取得を推進するための支援策です。
- 産後パパ育休: 14日以上の育休取得を条件に、最大28日間、給付率を手取り10割相当に引き上げる方針です。
- 開始時期: 2025年度から実施予定。
- 男性の育休取得率を引き上げ:
- 2025年: 公務員85%(1週間以上の取得率)、民間50%。
- 2030年: 公務員85%(2週間以上の取得率)、民間85%を目指します。
- くるみん認定企業など育休取得状況に応じたインセンティブ強化。
パート・アルバイトの方への支援策
育児と仕事の両立を支援するための策です。
- 106万円の壁(年収の壁)対策: 手取り収入を減らさない取り組みをした企業に対し支援を行います。
- 対象: 従業員が101人以上で、従業員の手取り額の減少対策に取り組んだ企業。
- 助成額: 従業員1人あたり最大50万円。
- 開始時期: 2023年10月20日から申請開始(2025年度の年金制度改正まで)。
- 130万円の壁(年収の壁)対策: 収入が一時的にあがったことを事業主が証明することで、連続2回まで一時的に130万円を超えても扶養にとどまれるようにします。
- 対象者: 従業員100人以下の企業で働くパート・アルバイト。
- 開始時期: 2023年10月20日以降の被扶養者認定・収入確認時に適用されます。
- 雇用保険の適用: 加入要件である週の労働時間を、現行の「週20時間以上」から「週10時間以上」に緩和する方針です。適用拡大により、パートや時短勤務の方の加入が見込まれ、失業給付や育児休業給付等が受給可能になります。
- 開始時期: 2028年10月から開始予定。
企業に対する支援強化パッケージ
労働時間の延長や賃金引上げに取り組む企業に対する費用補助が実施予定です。
- 開始時期: 2023年中に内容決定予定です。
自営業・フリーランスへの支援策
育児期間の国民年金保険料の免除措置を延長する方針です。
- 現行制度では、対象は女性だけで、期間は出産予定日の前月から4カ月間ですが、対象に男性も加え、子どもが1歳になるまで延長します。
- 対象者: 育児期の国民年金の第1号被保険者(男女ともに)。
- 免除期間: 子どもが1歳になるまで。
- 開始時期: 2026年度に実施予定です。
おわりに
これから始まる子育て支援を活用しましょう
いかがでしたか?政府の「異次元の少子化対策」による子育て支援策について、少しでもご理解いただけたでしょうか。これらの支援策は、子育て家庭の負担を軽減し、子どもたちが健やかに成長できる環境を整えることを目指しています。新しい情報や具体的な施策の実施が進む中で、皆様に役立つ情報を引き続き提供していきます。これからも、子育て支援の最新情報にご注目ください。子育て家庭の皆様が安心して日々を過ごせるよう、私たちもサポートしていきます。
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政府は少子高齢化対策として、2024年10月から児童手当の制度が拡充します。
これまでの所得制限も撤廃され、第3子以降の子供は2倍となる月3万円の手当が支給されます。
子育て世代にとってより手厚いサポートが実施されることとなりました。
今回の記事ではこの児童手当2024年拡充の概要をまとめました。
2024年12月からの支給開始に向け、詳細については市区町村窓口や厚生労働省のホームページで随時ご確認ください。
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