税理士・社労士が教える!「えるぼし」「くるみん」で企業イメージも節税(税額控除)もバッチリ!

2024.07.06

「えるぼし」や「くるみん」で企業ブランディングと節税や助成金を同時に実現する方法

女性の活躍推進や子育て支援を強化する企業にとって、厚生労働省が提供する認定制度「えるぼし」「プラチナえるぼし」「くるみん」「プラチナくるみん」は大きなメリットをもたらします。これらの認定は企業の社会的信頼を高め、採用活動や企業イメージの向上にも寄与します。さらに、賃上げ促進税制を活用することで、税額控除を受けられる可能性もあり、企業の財務状況を健全に保つことができます。本記事では、それぞれの認定制度の概要、認定基準、申請方法、取得することの価値、そして賃上げ促進税制を活用した節税方法について詳しく解説します。

「えるぼし」とは

「えるぼし」の概要

「えるぼし」は、女性の活躍推進に積極的な企業を評価する厚生労働省の認定制度です。2016年に施行された「女性活躍推進法」に基づき、女性の活躍促進に優れた企業を認定します。認定マークは「L」が描かれた円の上に星が輝いているデザインで、女性の力強い働き方を象徴しています。また「えるぼし」には3つのグレードがあります。

「えるぼし」認定を取得するための基準

 「えるぼし」の認定は、女性が能力を発揮しやすい職場環境であるかという観点から、以下5つの評価項目の実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表することが必要です。

  1. 採用男女別の競争倍率(応募者数÷採用者数)が同程度であること
  2. 継続就業女性の平均継続勤務年数が男性の70%以上であること、または女性の継続雇用割合が男性の80%以上であること
  3. 労働時間:月ごとの平均法定時間外労働が直近の事業年度の各月で45時間未満であること。
  4. 女性の管理職比率管理職に占める女性の割合が産業ごとに定められた平均値以上であること。
  5. 多様なキャリアコース:直近の3事業年度に非正社員から正社員への転換や30歳以上の女性の正社員採用などの実績があること。

「えるぼし」の3つのグレード(3段階)について

冒頭でお伝えしたとおり「えるぼし認定」は3つのグレード(3段階)あり、上記の5つの評価項目のうち、基準を満たしている項目の数に応じて取得できるグレード(段階)が決まります。

「えるぼし」のグレード1(1段階目)について

・前述した5つの基準のうち1つまたは2つを満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること
・満たしていない基準については、指針に定められた関連取組を実施し、その状況をデータベースに公表、さらに2年以上連続して実績が改善していること

「えるぼし」のグレード2(2段階目)について

・前述した5つの基準のうち3つまたは4つを満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること
・満たしていない基準については、指針に定められた関連取組を実施し、その状況をデータベースに公表、さらに2年以上連続して実績が改善していること

「えるぼし」のグレード3(3段階)について

・前述した5つの基準のうちすべてを満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること

「えるぼし」認定の申請方法

  1. 自社の女性の活躍に関する状況の把握と課題分析
  2. 一般事業主行動計画の策定・周知・公表
  3. 一般事業主行動計画を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ届出
  4. 一般事業主行動計画に基づいて取り組み、効果測定、情報の公表
  5. 「えるぼし」認定の申請

一般事業主行動計画とは?

 次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」)に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、⑴計画期間、⑵目標、⑶目標達成のための対策及びその実施時期を定めるものです。従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。

「えるぼし」認定を取得するメリット

 「えるぼし」認定を取得することには、多くの価値があります。まず、企業ブランディングの向上に繋がり、ホワイト企業としてのイメージを強化できます。これにより、働きやすい環境をアピールできるため、優秀な人材の確保など採用力の向上に寄与します。さらに、社内意識の改革が促進され、社員の満足度や定着率が向上します。これがリファラル採用(社員紹介採用)へと発展する可能性も高まり、優秀な人材の確保がより一層容易になります。このほかにも各府省等による公共調達で加点評価を受けられること、日本政策金融公庫による低利融資を受けられるメリットもあります。

助成金(両立支援助成金)の申請や節税(税額控除)も利用

 「えるぼし」の認定は、助成金(両立支援助成金)の申請や確定申告時には節税(賃上げ促進税制による税額控除)も適用できるためメリットが大きいです。

「プラチナえるぼし」とは

「プラチナえるぼし」の概要

「プラチナえるぼし」は、「えるぼし」認定企業の中でも、特に優れた取り組みを行っている企業に与えられる最高ランクの認定です。基本的にえるぼし認定と同様ですが、「継続就業」と「管理職比率」の項目で違いがあること、また「雇用管理区分ごとのその雇用する労働者の男女の賃金の差異の状況について把握すること」も求められます。

「プラチナえるぼし」認定を取得するための基準

 「プラチナえるぼし」は、「えるぼし」認定の基準を満たし、さらに高い水準の取り組みを行っている企業が対象です。基本的にえるぼし認定と同様ですが、「継続就業」「管理職比率」の項目で違いがあること、また「雇用管理区分ごとのその雇用する労働者の男女の賃金の差異の状況について把握すること」も求められます。

  1. 採用男女別の競争倍率(応募者数÷採用者数)が同程度であること
  2. 継続就業女性の平均継続勤務年数が男性の80%以上であること、または女性の継続雇用割合が男性の90%以上であること
  3. 労働時間:月ごとの平均法定時間外労働が直近の事業年度の各月で45時間未満であること。
  4. 女性の管理職比率管理職に占める女性の割合が産業ごとに定められた平均値の1.5倍以上であること。
  5. 多様なキャリアコース:直近の3事業年度に非正社員から正社員への転換や30歳以上の女性の正社員採用などの実績があること。

 参考:(厚生労働省)女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)

「プラチナえるぼし」認定を取得するメリット

 「プラチナえるぼし」認定を取得することで、企業は最高レベルの社会的信頼を得ることができます。これにより、企業のブランド価値が一層向上し、採用力や社員の定着率をさらに高めることができます。

節税(賃上げ促進税制による税額控除)においては税額控除率がさらに5%上乗せ

「プラチナえるぼし」の認定は、賃上げ促進税制による税額控除)における税額控除率が5%上乗せ適用できるためさらにメリットが大きいです。

「くるみん」とは

「くるみん」の概要

「くるみん」は、少子化対策を目的とした次世代育成支援対策推進法に基づき、子育て支援に積極的な企業を評価する制度です。2007年にスタートし、従業員が仕事と子育てを両立できる環境を提供する企業を認定します。くるみんマーク認定企業は年間200社から300社のペースで増加しています。

「くるみん」認定を取得するための基準

 「くるみん」認定は以下の10の要件に基づいて評価されます。

  1. 一般事業主行動計画を策定し、雇用環境を整備すること。
  2. 一般事業主行動計画の期間は2年以上5年以下であること。
  3. 一般事業主行動計画を実施し、目標を達成すること。
  4. 一般事業主行動計画公表し、労働者に周知すること。
  5. 男性労働者の育児休業取得率が10%以上、または企業独自の育児休暇制度利用率と合わせて20%以上であること。
  6. 女性労働者の育児休業取得率が75%以上であること。
  7. 3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者に対する育児支援制度を設けること。
  8. 法定時間外労働時間が平均で月45時間未満、かつ60時間以上の労働者がいないこと。
  9. 所定外労働削減、有給休暇促進、または多様な働き方の整備のための措置を実施すること。
  10. 法令に違反する重大な事実がないこと。

「くるみん」認定の申請方法

  1. 子育て支援の一般事業主行動計画の策定
  2. 一般事業主行動計画を公表し、労働者に周知
  3. 一般事業主行動計画を策定した旨を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ届出
  4. 一般事業主行動計画の実施と目標の達成
  5. くるみん」認定の申請
  6. (さらに高い基準の取り組みにより)「プラチナくるみん」認定の申請

「くるみん」認定を取得するメリット

 「くるみん」認定を取得することで、企業は社会的信用を高め、採用力を強化できます。企業の働きやすさをアピールすることで、優秀な人材の確保が容易になります。また、社員の満足度や定着率が向上し、リファラル採用にも繋がる可能性があります。

助成金(両立支援助成金)の申請や節税(税額控除)も利用

「くるみん」の認定は、助成金(両立支援助成金)の申請や確定申告時には節税(賃上げ促進税制による税額控除)も適用できるためメリットが大きいです。

「プラチナくるみん」とは

「プラチナくるみん」の概要

「プラチナくるみん」は、くるみん認定企業の中でも、さらに高い水準の子育て支援体制を整えている企業に与えられる認定です。

「プラチナくるみん」認定を取得するための基準

 「プラチナくるみん」は、「くるみん」認定の基準を満たし、さらに高い水準の取り組みを行っている企業が対象です。基本的にくるみん認定と同様ですが、「継続就業」「管理職比率」の項目で違いがあること、また「雇用管理区分ごとのその雇用する労働者の男女の賃金の差異の状況について把握すること」も求められます。
「くるみん」認定は以下の12の要件に基づいて評価されます。
※太字部分が「プラチナくるみん」だけの基準です

  1. 一般事業主行動計画を策定し、雇用環境を整備すること。
  2. 一般事業主行動計画の期間は2年以上5年以下であること。
  3. 一般事業主行動計画を実施し、目標を達成すること。
  4. 一般事業主行動計画を公表し、労働者に周知すること。
  5. 男性労働者の育児休業取得率が30%以上、または企業独自の育児休暇制度利用率と合わせて50%以上であること。
  6. 女性労働者の育児休業取得率が75%以上であること。
  7. 3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者に対する育児支援制度を設けること。
  8. 法定時間外労働時間が平均で月45時間未満、かつ60時間以上の労働者がいないこと。
  9. 所定外労働削減、有給休暇促進、または多様な働き方の整備のための措置を実施すること。
  10. 出産後1歳まで継続して在職する女性労働者の割合が90%以上、または出産後1歳まで在職する女性労働者と出産予定だったが退職した女性労働者を含めた割合が70%以上であること。
  11. 育児休業中や育児中の女性労働者が継続して働けるよう、能力向上やキャリア形成の支援計画を策定し、実施していること。
  12. 法令に違反する重大な事実がないこと。

「プラチナくるみん」認定の申請方法

 「プラチナくるみん」認定の申請方法は「くるみん」認定で述べたとおりであり「くるみん」認定を受けたあとさらに高い基準をクリアした場合に申請できます。

「プラチナくるみん」認定を取得するメリット

 「プラチナくるみん」認定を取得することで、企業は一層の社会的信頼を得ることができます。ホワイト企業としての地位を強固にし、働きやすさを強調することで、採用力を大幅にアップさせることが可能です。また、社員の満足度や定着率が向上し、リファラル採用の促進にも繋がります。

節税(賃上げ促進税制による税額控除)においては税額控除率がさらに5%上乗せ

「プラチナくるみん」の認定についても、賃上げ促進税制による税額控除)における税額控除率が5%上乗せ適用できるためさらにメリットが大きいです。

「賃上げ促進税制」を活用した節税(税額控除)

ここから「賃上げ促進税制」を活用した節税(税額控除)を紹介

 さて、これまでは「えるぼし」と「くるみん」について解説しましたが、ここからはこれらの認定を活用した節税策、「賃上げ促進税制」を利用した税額控除制度について説明します。「えるぼし」と「くるみん」を取得することで、この税額控除における新設の上乗せ要件(子育てとの両立・女性活躍支援)による税額控除率を5%上乗せすることができます。この制度を利用することで、企業イメージの向上や助成金の活用に加えて、財務改善にも役立てることができます。ぜひ、これらの認定と税額控除制度を併用し、企業の成長と発展にお役立てください。

「賃上げ促進税制」とは

 賃上げ促進税制は、従業員の給与を増加させることで、企業の法人税負担を軽減する制度です。適用期間は令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象です。

「賃上げ促進税制」の対象者

  1. 全ての企業向け:青色申告書を提出する全企業又は個人事業主
  2. 中堅企業向け:青色申告書を提出する従業員数2,000人以下の企業又は個人事業主
  3. 中小企業向け:青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業協同組合等)又は従業員数1,000人以下の個人事業主

「賃上げ促進税制」の適用要件

  • 直前の事業年度に比べ、給与総額が一定以上増加していること。
  • 一定の条件を満たす従業員に対して、給与を増加させていること。

「えるぼし」や「くるみん」取得による減税の内容

 「えるぼし」や「くるみん」を取得した企業は、賃上げ促進税制による税額控除率がそれぞれ5%上乗せされます。

参考:(経済産業省)賃上げ促進税制を強化!

参考:(中小企業庁)中小企業向け「賃上げ促進税制」

参考:(国税庁)給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)

「賃上げ促進税制」の利用方法

 法人税または個人所得税申告書において給与増加を集計し税務署へ申告することで適用を受けることができます

「賃上げ促進税制」の利用価値

 賃上げ促進税制は税額控除であり最終的な税額から一定額を差し引くことができます。したがって特別償却や経費計上などの所得控除より一般的には大きな節税価値があります。
法人税や所得税の軽減が図られることで、企業の財務健全性を保つことができます。

おわりに

認定制度と税制活用で企業イメージ向上と節税効果を実現

 「えるぼし」「プラチナえるぼし」「くるみん」「プラチナくるみん」といった認定制度の取得は、企業のイメージ向上や採用活動の促進に大きく寄与します。また、賃上げ促進税制を活用することで、節税効果も期待できます。これらの認定制度や税制の活用により、企業はより良い労働環境を提供し、社会的責任を果たすことができます。他にもさまざまな節税の方法がありますので、ぜひ他の記事もご覧ください。企業の発展に役立つ情報を提供しています。

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