すぐにできる!法人税の節税方法ベスト13選

2023.08.06

 企業活動において法人税の納付は避けて通れない要素ですが、適切な手法で経費を計上することで節税のチャンスが広がります。効果的な節税方法を選択することで、企業の収益を最大化することが可能です。
 ここでは、「すぐにできる!法人税の節税方法ベスト13選」と題し、今後すぐに活用できる法人税節税のための13の方法をわかりやすく紹介いたします。

1.30万円未満の消耗品の損金計上と償却資産税の削減

 中小企業が青色申告を行う場合、30万円未満の消耗品購入費用を一括で損金計上できます。この制度を「少額減価償却資産の損金算入特例」と呼び、一定の要件を満たす必要があります。なお20万円未満の一括償却資産による償却は3年均等償却ですが市区町村の「償却資産税」は対象外となるため、10万以上20万円未満の消耗品については、一括償却資産による償却のほうが長期的にはメリット大きいです。
これらの詳細は国税庁Webサイトを参照してください。

【No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm

【少額の減価償却資産及び一括償却資産(令第138条及び第139条関係)】
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/08/12.htm

2.本社家賃を年払いにする

 本社の家賃を毎年の支払いから年払いに変更すると、短期前払費用として経費計上できます。これにより、法人税を軽減できます。このとき注意すべきポイントは、家賃は通常前払いになっているため、たとえば3月決算の会社の場合、3月に年払いで支払った年払い家賃はそのすべてが翌期の家賃であり当期の経費からは除かれてしまいますのでご注意ください。したがってこの場合では2月に年払いとして支払う必要があることがポイントです。
なお家賃以外にも保険料、リース料、サービス使用料なども短期前払いで経費化が可能ですので活用しましょう。

【No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm

3.中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)に加入する

 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)への加入は節税に有効です。掛金を損金計上でき、税金軽減に寄与します。この制度は中小企業の倒産リスクを軽減するためのもの。取引先倒産による連鎖倒産や経営難を防ぎます。共済には最高10倍(上限8,000万円)の無担保・無保証人借り入れも可能。取引先の倒産で売掛金回収が難しくなっても、迅速に資金調達できます。

【経営セーフティ共済(中小機構)】
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/features/index.html

4.役員への賞与を損金計上する

 役員への賞与は、法人税の節税に活用できる方法です。役員賞与を支給し、業績向上を奨励する一方で、その金額を経費として計上し、法人税負担を軽減します。ただし、役員賞与の支給は税務署への事前の届出(事前確定給与の届出)と適切な運用が必要です。賞与の支給計画を事前に税務署に届け出ることで、計画的な節税を実現できます。こちらは税の専門家である税理士のアドバイスを得て、間違いのないように進めてください。

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5.経営者へ旅費日当を支給する

 旅費日当とは、出張中に発生した交通費や宿泊費以外の費用のことです。法人の場合、経営者の旅費日当を経費として計上することで、法人税の節税が可能です。

支給時には以下のポイントに注意が必要です。

    1.適正な金額: 社内に旅費規程を作成しその内容に基づいて、出張の内容や距離に応じて妥当な金額を支給すること
    2.記録の保存: 適切な書類や明細を保管し、経費計上の要件を満たすこと
    3.所得税の取扱い: 受取った個人は所得税について非課税扱いにすること
    なお、経営者への旅費日当は社会保険料や消費税の面でもメリットがあります

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6.所有する自家用車を社用車にする

 自家用車を社用車に転用することで節税が可能です。購入から年数が経つ車は、減価償却費相当額を取得金額から引いた分を経費計上します。また燃料費や保険料、車検費用も経費にできます。ただし、社用車をプライベートでも使用する場合は、利用規程を定め、一定の利用料を個人から会社に支払うルールを設ける必要があります。
なお4年経過の中古車の場合、購入代金全額を一括で経費に計上することも可能です。定率法では1年で償却、定額法では2年で償却できます。

7.経営者や従業員の家を社宅にする

 会社名義で賃貸物件を借りて、経営者や従業員に社宅として提供することで節税が可能です。会社支払いの家賃と社宅を利用する者からの受け取る賃料の差額を経費として計上し、税負担を軽減できます。

 社宅の条件は以下の通りです。

    1. 会社名義で賃貸契約する:賃貸物件を会社名義で契約し、その物件を経営者や従業員に提供します。
    2. 利用者から家賃の50%の賃料を受取る:入居者から会社が支払う賃料の50%相当額を受け取る必要があります。仮に賃料が6万で社員が1万円しか支払っていなければ、本来の賃料負担額3万円との差額である2万円が、現物給与として個人の所得税が課税されるので注意が必要です。

 ただしく運用すれば、社宅は節税だけでなく、従業員の福利厚生向上にも寄与します。税の専門家である税理士のアドバイスを受けながら戦略的に活用し、経費削減とメリットの両立を目指しましょう。

【No.2600 役員に社宅などを貸したとき】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm

【No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm

8.取引先との飲食費や交際費を経費にする

 取引先との接待で発生した飲食費や交際費を経費として計上することで節税が可能です。ただし、内容によっては経費と認められない場合もあるため注意が必要です。大企業と中小企業では損金計上できる交際費の金額に限度があり、詳細は国税庁のウェブサイトで確認できます(「No.5265 交際費等の範囲」)。
 また香典や打ち合わせ時に購入した缶ジュース代など「領収証のない経費」を経費として計上することも可能です。以下のポイントを押さえましょう。

    1.支出の記録をとる:領収証がない場合でも、支出の明確な記録を残すことが大切です。支払いの目的や日付、金額などを詳細にメモするか、支払ったレシートを保管しましょう。
    2.取引先との交際の関連性:経費として計上する際には、支出が取引先との交際に関連していることを示す材料が重要です。例えば、取引先との会食や打ち合わせの際に支払ったものであることを明示すると良いでしょう。
    3.適正な金額:節税目的であっても、支出金額が適正であることが重要です。業界標準や一般的な範囲内の金額であることを確保し、不自然な高額な支出は避けましょう。
    4.事業の関連性:支出が事業の一環であることを明確に示すことが重要です。取引先との円滑な関係構築や業務の円滑化に寄与するものであることを説明できると良いでしょう。
    5.税務調査への備え:節税を行う際には、将来の税務調査を考慮して、必要な書類や記録をきちんと保管しておくことが重要です。税務署の対応に備えて、証拠を整えておきましょう。

以上のポイントを踏まえ、領収証のない交際費を経費として計上する際には慎重に対応し、法令遵守を守りながら節税効果を得ることを目指しましょう。

【No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
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9.社員旅行、健康診断、食事補助、慶弔見舞金など福利厚生制度を導入する

 会社の節税対策と社員の福祉向上を同時に実現する方法として、社員旅行、健康診断、食事補助、慶弔見舞金などの福利厚生制度として導入することがあります。以下にその要点を解説します。

    1. 社員旅行: 従業員全員または一定の条件を満たす従業員を対象にした旅行を導入し、参加費用を経費計上します。この際、所定の条件を満たすことが必要です。例えば、会社負担金額がひとり10万円以内であること、旅行日数が4泊5日以内であること、従業員の50%以上が旅行に参加することなどが挙げられます。これにより、社員のモチベーション向上と節税の効果を得ることができます。
    2. 健康診断: 社員全員の健康診断を支援し、会社が直接医療機関に支払うことで経費として計上します。全従業員を対象にすることが要件とされます。健康診断の推進は社員の健康管理に寄与するとともに、節税効果をもたらします。
    3. 食事補助: 食事補助を福利厚生費として計上し節税を図ることも可能です。このためには
    ・全従業員が対象であること
    ・社会通念上の常識の範囲内の金額であること
    といった前提条件のほか、以下の2つの要件が定められています。
    (1)食事価額の50%以上を従業員が負担していること
    (2)1ヶ月あたりの会社負担が3,500円(税別)以下であること

     上記の両方を満たしておれば福利厚生費として経費計上することが可能です。同時に社員側も所得税は課税されないためメリットは大きいといえます。
    4. 慶弔見舞金: 社員やその家族の慶弔事案(結婚、出産やお葬儀など)に対して見舞金を支給し、金額と支給対象を明確にして経費計上します。これにより、社員の生活支援と節税を同時に実現できます。

 福利厚生制度を活用する際には、条件や範囲の設定が重要です。法令を遵守しながら、企業と社員双方にとってWin-Winな制度の導入をしましょう。

【No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm

【No.2594 食事を支給したとき】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm

10.不良・不要な在庫を処分する

 不良・不要な在庫の処分も節税には効果的です。販売価値がない在庫を処分することで、帳簿から削除し、処分費用を損金として計上できます。在庫を原価より低く売却すれば売却損、廃棄すれば除却損(廃棄損)を計上できます。ただし、損金計上には廃棄証明書などの証明書が必要です。無駄な在庫を整理し、会社の効率化と節税を実現しましょう。

【国税庁|法令解釈通達 第2款 棚卸資産の評価損】
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_01_02.htm

11.役員報酬を損金計上する

 法人税の節税対策として、役員報酬を損金計上することは有効な手段です。通常、法人の経営者は給与ではなく役員報酬を受け取ります。しかし、役員報酬は定期同額給与などの特定要件を満たす場合、経費として計上し、法人の利益から差し引くことができます。これにより、法人税を削減することが可能となります。
 一方で、注意が必要な点も存在します。法人税を減らすために役員報酬を増やすと、役員個人の所得税が上昇し、結果的に総納税額が増える可能性があります。このため、適切な節税額を見極めるためには、税理士などの専門家と協力し、適正な金額を決定することが重要です。

 役員報酬の金額は原則として1年間固定であり、変更する際には株主総会の決議が必要です。また、役員報酬を損金計上するためには、その根拠を示すために株主総会での議事録を作成し、保管しておく必要があります。議事録は将来の税務調査などで役立つ資料となるため、適切な作成と保管が求められます。

 法人税の節税方法は多岐にわたりますが、役員報酬の損金計上はその一つです。節税効果を最大限に引き出すためには、税の専門家である税理士のアドバイスを得ながら、適切な戦略を構築することが重要です。役員報酬の損金計上についての詳細情報は以下のリンクをご参照ください。

【役員報酬を活用した節税方法3つのポイント(定期同額給与・事前確定給与・社会保険料)】https://taxlabor.com/news/2020/05/23/%e5%bd%b9%e5%93%a1%e5%a0%b1%e9%85%ac%e3%82%92%e6%b4%bb%e7%94%a8%e3%81%97%e3%81%9f%e7%af%80%e7%a8%8e%e6%96%b9%e6%b3%95%ef%bc%93%e3%81%a4%e3%81%ae%e3%83%9d%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%88%ef%bc%88%e5%ae%9a/

【役員報酬(定期同額給与)の変更で必要な議事録の雛形(ひな形・雛型)とは?(無料ダウンロード)】https://taxlabor.com/news/2020/06/27/%E5%BD%B9%E5%93%A1%E5%A0%B1%E9%85%AC%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E5%90%8C%E9%A1%8D%E7%B5%A6%E4%B8%8E%E3%81%AE%E5%A4%89%E6%9B%B4%E3%81%A7%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E8%AD%B0%E4%BA%8B%E9%8C%B2%E3%81%AE%E9%9B%9B/

12.未払費用を漏れのないように計上する

 未払費用を見逃さず計上することで節税が可能です。未払費用とは、今期に発生したが支払いが来期の費用を指します。通信費や社会保険料、従業員給与などが該当します。決算時に未払費用を今期費用として計上することで、利益を減少させ節税効果を発揮できます。未払費用の計上を通じて、効果的な節税対策を実施しましょう。

13.赤字を繰り越す

 法人税の節税対策として、赤字を繰り越す方法があります。法人は最大10年間の赤字を繰り越せます(※ただし平成30年4月1日前に始まった事業年度の場合は9年です)。過去の赤字を繰り越して黒字に相殺すれば、法人税が軽減されます。

 さらに、欠損金の繰り戻しによる還付制度も利用できます。黒字の翌年が赤字の場合、前年の黒字と相殺して法人税を還付してもらえる仕組みです。ただし、法人住民税は課税される点に留意しましょう。

 なお法人でも「白色申告」の場合には、災害損失欠損金のみ繰り越すことができます。赤字を活用して、税金の軽減と資金の最適活用を実現しましょう。

【No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm

まとめ

 いかがだったでしょうか。
この記事では、「すぐにできる!法人税の節税方法ベスト13選」と題し、今後すぐに活用できる法人税節税のための方法を紹介しています。

 法人税の節税方法は、企業活動において重要な要素です。適切な手法を駆使することで、節税のチャンスが広がり、企業の収益を最大化することが可能です。ただし、税制は複雑であり、専門家のアドバイスを受けることも大切です。

 法人税の節税方法は、自社の売上や利益の規模なども考慮し専門家のアドバイスを得ながら適切な対策を実施することが重要です。節税を通じて企業の収益最大化と持続可能な経営を目指してください。