【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(4)

2023.06.11

事業再構築補助金の申請において注目すべきポイントを5つに分類し、前回の記事では3つ目のポイントを詳しく解説しました。今回はその続きとして、4つ目のポイントに焦点を当て、詳細に解説していきます。

前回の【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(3)では、事業再構築補助金の補助対象事業の8つの類型に関してそれぞれの「要件」を解説しました。
今回は補助対象事業の8つの類型でそれぞれ求められる「各要件の詳細」を解説していきます。

【参考】前回までの記事はこちら
【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(1)
【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(2)
【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(3)

1.補助対象事業で求められる各要件の解説

補助対象事業で求められる各要件の詳細は以下のとおりです

(1)【事業再構築要件】について

事業再構築要件では以下の事業再構築が支援の対象となります。
① 新市場進出(新しい分野への展開や業態の変更)
② 事業転換
③ 業種転換
④ 事業再編
⑤ 国内への事業回帰
 各類型ごとに定められる要件(製品等の新規性要件、市場の新規性要件、新事業売上高10%等要件(新たな製品等(又は製造方法等)の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となること)等)を満たす計画であることが必要

事業再構築の類型

類型 要件
① 新市場進出(新分野展開、業態転換) i.新たな製品・商品・サービスを提供すること、又は提供方法を相当程度変更する
こと
ii.新たな市場に進出すること
iii.新規事業の売上高が総売上高の10%以上になること(付加価値額の場合は、
15%以上)
i.からiii.を満たすこと。
② 事業転換 i.新たな製品・商品・サービスを提供すること
ii.新たな市場に進出すること
iii.主要な業種が細から中分類レベルで変わること
i.からiii.を満たすこと。
③ 業種転換 i.新たな製品・商品・サービスを提供すること
ii.新たな市場に進出すること
iii.主要な業種が大分類レベルで変わること
i.からiii.を満たすこと。
④ 事業再編 会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等
を補助事業開始後に行い、新たな事業形態のもとに、新市場進出(新分野展開、
業態転換)、事業転換、業種転換のいずれかを行うことをいう。
⑤ 国内回帰 海外で製造等する製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を
整備することをいう。

(2)【認定支援機関要件】について

応募申請時には、以下の点に留意してください。
ア. 事業計画は、認定経営革新等支援機関と相談し、確認を受けてください。その際には「認定経営革新等支援機関による確認書」を提出してください。
イ. 補助金額が3,000万円を超える場合は、金融機関または認定経営革新等支援機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)による確認を受ける必要があります。補助金額が3,000万円を超える事業計画には、「金融機関による確認書」を提出してください。
※内容に変更がある可能性がありますので詳しくは最新の公募要領を確認ください。

(3)【付加価値額要件】について

応募申請時には、以下の点に留意してください。
ア. 付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を合算した金額を指します。
イ. 成果目標との比較基準となる付加価値額は、申請者の決算年度における補助事業終了月の付加価値額を用います。
※内容に変更がある可能性がありますので詳しくは最新の公募要領を確認ください。

(4)【市場拡大要件】について

応募申請時には、以下の点に留意してください。
ア. 取り組む事業は、過去から将来の10年間の中で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属している必要があります。事務局が指定した業種・業態以外でも、要件を満たす業種・業態であることを証明するデータを提出すれば対象となります。
イ. 市場規模の比較基準は、応募時の事業終了月の属する決算年度の付加価値額とします。
ウ. 過去10年間で市場規模が10%以上縮小し、将来10年間で市場規模が10%以上拡大する場合、成長枠と産業構造転換枠の両方を満たしますが、将来のトレンドを優先します。
エ. より細かい基準で妥当なデータが示された場合、指定される業種・業態は次回公募以降で見直されます。
※内容に変更がある可能性がありますので詳しくは最新の公募要領を確認ください。

(5)【給与総額増加要件】について

補助事業の実施期間終了時点を含む事業年度の給与支給総額を基準にして、補助事業終了後の3〜5年間において、年率平均で2%以上の給与支給総額の増加計画を作成し、実行する必要があります。賃上げを行う事業者は3〜5%以上の増加を目指します。賃上げ計画の誓約書を提出し、要件を達成しない場合は事業者名が公表されます。給与支給総額を引き下げて要件を達成することや、引上げ後に一時的に引き下げることは許可されません。法人の場合は法人事業概況説明書、個人の場合は所得税青色申告決算書(白色申告の場合は収支内訳書)に記載された金額で判断されます。
※内容に変更がある可能性がありますので詳しくは最新の公募要領を確認ください。

(6)【補助率引上要件】について

成長枠やグリーン成長枠に申請する事業者が補助率を引上げるためには、補助事業期間中に給与支給総額を年平均6%以上引き上げ、事業場内最低賃金を年額45円以上引き上げる必要があります。達成後は補助金の支給を受けることができますが、事業計画期間中の給与支給総額増加が年率平均2%以上でない場合は、支給した補助金を返還する必要があります。
※内容に変更がある可能性がありますので詳しくは最新の公募要領を確認ください。

(7)【市場縮小要件】について

ア.現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属している場合、当該業種・業態とは異なる新規事業を実施する必要があります。ただし、事務局が指定した業種・業態以外でも、要件を満たす業種・業態であることを証するデータを提出し、認められれば対象となります。

イ.地域における基幹大企業の撤退により、市町村内総生産の10%以上が失われる見込みの地域で事業を行っている場合、直接取引額が売上高の10%以上を占める事業者も対象となります。指定された地域で事業を行っている場合、基幹大企業の撤退に関する説明書を提出し、確認を受ける必要があります。

ウ.市場縮小要件を満たす場合、現在の業種・業態が事務局によって指定されている業種・業態であることを説明書に記載する必要があります。指定されていない場合は、過去~今後のいずれか10年間で市場規模が10%以上縮小する業種・業態であることを示す信頼性の高いデータ・統計を提出し、その出典を明確に記載する必要があります。市場縮小要件を満たさない場合は、補助金の採択から除外されます。

エ.過去10年間で市場規模が10%以上縮小し、今後10年間で市場規模が10%以上拡大する場合、または過去10年間で市場規模が10%以上拡大し、今後10年間で市場規模が10%以上縮小する場合、両方の要件を満たしますが、その場合は「今後」のトレンドを優先します。成長枠または産業構造転換枠のいずれかに申請することができます。ただし、産業構造転換枠の対象とならない業種・業態の指定は、次回公募時以降に見直されることとなります。

オ.小分類ベースで市場規模が10%以上縮小するが、当該小分類に含まれる細分類ベースでは市場規模が10%以上拡大するというような場合、より詳細な基準で妥当なデータが提供された場合、指定される業種・業態は次回公募時以降に見直されます。

(8)【売上高等減少要件】について

ア.売上高の減少要件では、「2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019〜2021年の同じ3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している」ことが求められます。
イ.上記の要件を満たさない場合でも、次の要件を満たせば申請が可能です。「2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、2019〜2021年の同じ3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少している」ことです。
ウ.「任意の3か月」とは、連続する6か月間の中で選ぶことができる3か月のことであり、連続している必要はありません。
エ.付加価値額の算出方法は、付加価値額要件で定められた方法に従います。また、期間中に購入した設備などの減価償却費については、購入日から決算日までの月数に基づいて算出する必要があります。

(9)【最低賃金要件】について

ア.全従業員数について、申請時点の基準となる3か月間の常勤従業員数を2021年10月から2022年8月までの間で集計します。常勤従業員は、中小企業基本法における「常時使用する従業員」であり、労働基準法第20条の「予め解雇の予告を必要とする者」と解釈されます。ただし、日雇い労働者、2か月以内の短期間雇用者、4か月以内の季節的業務雇用者、および試用期間中の従業員は含まれません。

イ.要件を満たす従業員数は、小数点以下を切り上げて算出してください。例えば、全従業員数が25人の場合、25人 × 10% = 2.5人となりますが、要件を満たすためには最低でも3人以上の従業員が必要です。

ウ.事業場内の最低賃金が最低賃金+30円以内であるかどうかを確認するために、「賃金台帳」の提出を求められます。

エ.最低賃金額については、地域別の最低賃金額を参照してください。

(10)【グリーン成長要件】について

ア.「グリーン成長戦略」には、14分野ごとに「現状と課題」があります。応募する場合、その中からどの分野のどの課題に取り組むかを確認してください。

イ.エントリーの場合、取り組む分野に関連する1年以上の研究開発・技術開発または一定割合以上の従業員への人材育成(※)を計画書として提出する必要があります。審査項目の「グリーン成長点」に基づいて詳細な記載が求められます。
スタンダードの場合、取り組む分野に関連する2年以上の研究開発・技術開発または一定割合以上の従業員への人材育成(※)を計画書として提出する必要があります。同様に、「グリーン成長点」に基づいて詳細な記載が必要です。

ウ.過去に補助金交付候補者または交付決定を受けた事業者がグリーン成長枠に申請する場合は、特定の要件と能力評価の減点を確認して判断されます。申請時には「別事業要件及び能力評価要件の説明書」を提出してください。ただし、支援を受けることができる回数は2回までです。

(11)【再生要件】について

応募申請時には、以下の要件に留意してください。

ア.中小企業活性化協議会等から支援を受けている必要があります。
・再生計画等を「策定中」の場合、または
・再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から3年以内(令和2年7月1日以降)に再生計画等が成立した場合

※1 支援を受けているのは以下の計画に関する場合です(事業譲渡を受けた者も含まれます):
1. 中小企業活性化協議会が支援した再生計画
2. 独立行政法人中小企業基盤整備機構が支援した再生計画
3. 産業復興相談センターが支援した再生計画
4. 株式会社整理回収機構が支援した再生計画
5. 「私的整理に関するガイドライン」に基づいて策定した再建計画
6. 中小企業の事業再生等のための私的整理手続(中小企業版私的整理手続)に基づいて策定した再生計画(令和4年4月15日から適用開始)
7. 産業競争力強化法に基づき経済産業大臣の認定を受けた認証紛争解決事業者が支援した事業再生計画
8. 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資した中小企業再生ファンドが支援した再生計画
9. 株式会社東日本大震災事業者再生支援機構が支援決定を行った事業再生計画
10. 株式会社地域経済活性化支援機構が再生支援決定を行った事業再生計画
11. 特定調停法に基づく調停で特定された再生計画

※2 ※1のうち、1から7の支援対象となります。また、1から7における「策定中」の定義は以下の通りです:
1から3:「再生計画策定支援(第二次対応)決定」以降
4:企業再生検討

(12)【卒業要件】について

【卒業要件】について簡単に説明します:

応募申請時に以下の点に留意してください。

ア.応募申請時点の法人規模に応じて以下の規模に成長する必要があります。
・中小企業(みなし中堅企業を含む)からは特定事業者、中堅企業、または大企業に成長する必要があります。
・特定事業者からは中堅企業または大企業に成長する必要があります。
・中堅企業からは大企業に成長する必要があります。

イ.補助事業者がアで規定する法人規模に成長していても、応募申請時点よりも資本金または従業員数が減少している場合は、要件を満たさないものとします。

ウ.各規模への成長には、資本金と従業員数の両方が基準以上である必要があります。みなし中堅企業やみなし大企業になった場合でも、本要件を満たすことはできません。

エ.卒業計画書には応募申請時点での従業員数・資本金、および補助事業実施期間終了後の3〜5年間における従業員数・資本金の拡大計画を記載してください。記載内容の妥当性を審査し、補助金交付候補者の選定が行われます。

オ.卒業促進枠の補助金交付候補者として選ばれた場合でも、事業計画期間終了までに法人規模の成長が達成されなかった場合、本枠に関連する補助金は支給されません(成長枠またはグリーン成長枠の要件を満たす場合には、それらの補助金は支給されます)。

※ 特定事業者は中小企業等経営強化法第2条第5項に定められる特定事業者を指し、中小企業者は同法第1項に定められる中小企業者を除外します。

(13)【賃金引上要件】について

応募申請時に以下の点に留意してください。

ア.補助事業の実施期間が終了する事業年度の終了月における事業場内の最低賃金を基準とします。ただし、申請時点での事業場内最低賃金が基準を下回る場合は、申請時点の事業場内最低賃金を基準とします。

イ.申請時点で、従業員などに対して申請要件を満たす賃金引上げ計画を明示する必要があります。また、大規模な賃上げや従業員の増加計画書の提出も必要です。これらの記載内容の妥当性を審査し、補助金交付候補者の選定が行われます。

ウ.補助金交付候補者として選ばれた場合でも、事業計画期間終了時点で年間45円以上の水準で事業場内最低賃金を引き上げることができなかった場合、大規模賃金引上促進枠の要件を満たさないため、本枠に関連する補助金は支給されません(成長枠やグリーン成長枠の要件を満たす場合には、それらの補助金は支給されます)。

(14)【従業員増員要件】について

【従業員増員要件】について簡単に説明します:

ア.補助事業の実施期間終了時点を含む事業年度の終了時点での常勤従業員数を基準とし、補助事業計画期間までに増員する必要があります。ただし、申請時点の常勤従業員数よりも少ない場合は、申請時点の常勤従業員数を基準とします。常勤従業員とは、中小企業基本法で定義される「常時使用する従業員」であり、労働基準法第20条に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」を指します。ただし、日々雇われる労働者、2か月以内の期間雇用される者、季節的な業務に4か月以内の期間雇用される者、試用期間中の者は含まれません。

イ.増員する必要がある従業員数については、小数点以下を切り上げて算出してください。最低でも事業計画期間×1人以上の増員が必要です。

ウ.大規模賃上げや従業員増加計画書には、従業員を増やす計画を記載し提出する必要があります。提出された記載内容の妥当性を審査し、補助金交付候補者の選定が行われます。

エ.事業計画期間終了時点で年率平均1.5%以上の従業員増加ができなかった場合、大規模賃金引上促進枠の要件を満たさないため、本枠に関連する補助金は支給されません(成長枠やグリーン成長枠の要件を満たす場合には、それらの補助金は支給されます)。

続きの解説は【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(5)で行います。お楽しみに!

事業再構築補助金に関する記事一覧はこちら

【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(1)

【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(2)

【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(3)

【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(4)

【ビジネスの救世主:事業再構築補助金】ここがポイント(5)

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