税務調査官が必ず見る7つのチェックポイントと事前対策【現役税理士が解説】
公開日: 2026.03.12
最終更新日: 2026.03.08

1. 税務調査官はなぜ「見る場所」を絞ってくるのか
2. チェックポイント①:売上の計上時期のずれ・操作
3. チェックポイント②:交際費の適否と5,000円基準の落とし穴
4. チェックポイント③:在庫の計上漏れ(期末駆け込み仕入)
5. チェックポイント④:売上の計上漏れ・除外(重加算税リスク)
6. チェックポイント⑤:架空人件費
7. チェックポイント⑥:外注費の3つの落とし穴
8. チェックポイント⑦:電子帳簿保存法・インボイス対応の不備(2024年以降の新論点)
9. 7つのポイントを事前にセルフチェックする方法
10. 寺田税理士・社会保険労務士事務所(社労士法人フォーグッド)の税務調査対応
11. よくある質問(FAQ)
12. 関連記事
――「税務調査で何を見られるのかわからない」「どこを整備しておけばいいのか」。税務調査の立会いを23年以上経験してきた中で、調査官が必ずチェックしてくる項目はほぼ決まっています。本記事では、調査官の視点から見た7つのチェックポイントと、指摘されないための事前対策を現役税理士が完全解説します。
税務調査官はなぜ「見る場所」を絞ってくるのか

税務調査は通常1〜2日で終わります。その限られた時間の中で調査官は過去3年分の帳簿・資料を確認しなければなりません。すべてをゼロから読み込む時間はないため、調査官はあらかじめ「指摘できる可能性が高い項目」に的を絞って調査に臨みます。
調査官には調査件数のノルマがあり(年間30件前後)、追徴額は昇進評価にも影響します。したがって「税金が追加発生しやすい項目」を優先して確認してくるのは当然の行動です。
調査官が必ずチェックする7項目を事前に把握し、それぞれの処理を整備しておくことで、指摘される可能性を大幅に下げることができます。以下で1項目ずつ解説します。
チェックポイント①:売上の計上時期のずれ・操作
調査官が最初に確認する項目のひとつが「売上の計上時期」です。意図的に翌期へずらして当期の利益を圧縮するケースだけでなく、単純な処理ミスでずれているケースも含めてチェックされます。
典型的な指摘パターンは、3月決算の会社が3月の売上を4月・5月に計上している場合です。期末月(決算月)と翌期の期首月の請求書・納品書は特に念入りに確認されます。
・決算月の売上請求書が翌月日付になっている
・納品日と請求書の日付が大きくずれている
・売上が前期比で急減しているのに翌期首に急増している
・長期工事・役務提供の進行基準と完成基準の選択が年によって変わっている
事前対策:
決算月の売上について、納品日・検収日・請求日が正しく対応しているか毎期確認する習慣をつけてください。特に請求書の発行が遅れがちな会社は、「売上計上基準(出荷基準・検収基準)」を社内ルールとして文書化し、毎年一貫して適用することが最大の対策です。
チェックポイント②:交際費の適否と5,000円基準の落とし穴
交際費は調査官が必ず重点確認する科目です。まず会社規模・業種に対して交際費総額が過大でないかを確認し、次に社長の個人的な支出が混入していないかをチェックします。
実務でよく指摘されるのが「社長の自宅近くの飲食店の領収書」「ゴルフ場の領収書」です。調査官は事前にインターネットで社長名を検索し、個人のゴルフコンペへの参加実績を確認してから臨場してくることもあります。
5,000円基準(会議費扱い)の落とし穴
1人あたりの飲食代が5,000円以下の場合、所定の書類を保存することを条件に交際費から除外できます(会議費等として処理可)。しかし領収書・レシートに以下の事項が記載されていないと、調査官から「交際費に戻せ」と指摘されます。
① 飲食等のあった年月日
② 参加した得意先・仕入先等の氏名または名称およびその関係
③ 参加した人数
④ 費用の金額・飲食店の名称および所在地
⑤ その他参考となるべき事項
事前対策:
交際費の領収書には必ず「誰と・何名で・何の目的で」をその場でメモしておく習慣を徹底してください。ただし原始資料(領収書本体)に書き込むのはNGです。付箋または別紙に記載して添付する形をとりましょう。
チェックポイント③:在庫の計上漏れ(期末駆け込み仕入)
期末月に多額の仕入が発生しているのに、期末時点の在庫が少ない場合は必ず調査官に指摘されます。利益を圧縮するために期末に駆け込み仕入をして在庫計上を省略しているのではないかと疑われるためです。
・期末月の仕入が通常月の2〜3倍になっている
・仕入増加に対して棚卸表の数量が増えていない
・外注先や取引先への「預け在庫」が棚卸表に計上されていない
・直送品(自社倉庫を経由しない在庫)の計上漏れ
事前対策:
期末の棚卸は実地棚卸を徹底し、外注先・取引先に預けている在庫・直送品も漏れなく計上します。棚卸表は数量・単価・金額を明示した形式で保存し、前期比で大きく変動する場合はその理由を別途メモとして残しておくことで調査官への説明がスムーズになります。
チェックポイント④:売上の計上漏れ・除外(重加算税リスク)

チェックポイント①の「計上時期のずれ」とは異なり、こちらはそもそも売上に計上されていない可能性を調査する項目です。単純ミスの場合と意図的な除外の場合があり、後者は「事実の隠ぺい」として重加算税(35〜40%)の対象となります。
調査官は法人名義の通帳だけでなく、経営者個人名義の通帳まで確認します(銀行調査)。法人の売上が個人口座に振り込まれていれば、それは売上除外とみなされます。
・法人の売上代金を経営者個人の口座に振り込ませる
・現金売上の一部をレジに打たず手元で保管する
・売上請求書を意図的に発行せず売上に計上しない
・二重帳簿を作成する
事前対策:
すべての売上は法人口座に入金し、個人口座との混在を避けてください。現金売上は日次でレジ締め・現金出納帳に記録します。売上の計上漏れがないかを毎月、請求書の発行リストと入金記録を照合する習慣を持つことが最大の対策です。
チェックポイント⑤:架空人件費
架空人件費とは、実際には存在しない人物や働いていない家族・親族に給与を計上することをいいます。これも「仮装」として重加算税の対象になります。
調査官は給与台帳・源泉徴収簿・タイムカードを突き合わせ、実際に在籍・就労しているかを確認します。飲食業・サービス業・建設業などアルバイトや外注スタッフが多い業種は特に重点確認されます。
・タイムカードがない従業員がいる
・履歴書・雇用契約書が保存されていない
・1人だけ現金手渡し支給で振込記録がない
・社会保険・雇用保険に加入していない従業員がいる
・机・椅子の数と従業員数が合わない
・社長と同姓の従業員がいる(家族の可能性)
・有給休暇管理表・社員旅行参加名簿に名前がない
事前対策:
全従業員の履歴書・雇用契約書・タイムカードを整備し、給与は原則として振込で支給します。家族・親族への給与は業務実態(勤務日数・業務内容)を客観的に証明できる記録を残してください。社会保険・雇用保険は適正に加入することが「実在する従業員である」証明にもなります。
チェックポイント⑥:外注費の3つの落とし穴
外注費は税務調査で必ず確認される科目です。調査官が外注費を見るポイントは3つあります。
落とし穴①:架空外注費・外注費の水増し
コンサルタント料・紹介料など金額基準が不明瞭な外注費は水増しされやすく、調査官も熟知しています。調査官は「反面調査」(取引先に直接確認する調査)を行い、取引先側の売上計上額と照合します。水増しや架空外注費はこの時点でほぼ発覚します。
落とし穴②:外注費と給与の区分ミス(消費税リスク)
給与には消費税がかかりませんが、外注費には消費税が含まれます。実質的に給与に該当する支払いを外注費として処理すると、消費税の過少申告にもなります。外注費として認められるためには以下の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 外注費(OK) | 給与に認定(NG) |
|---|---|---|
| 指揮命令 | 会社からの指揮命令なし | 会社が指示・管理している |
| 時間管理 | タイムカードなし・時間拘束なし | タイムカードあり・時給計算 |
| 備品提供 | 自前のPC・道具を使用 | 会社がPC・机を提供 |
| 請求書 | 外注先から請求書が発行される | 請求書がない・時給記載 |
落とし穴③:源泉所得税の預かり漏れ
個人事業主への外注費(デザイン代・原稿代・講演料・士業報酬など)は、支払時に約10%の源泉所得税を天引きする義務があります。法人への外注費は対象外ですが、個人事業主への支払いは見落としが多く、調査官も必ず確認します。
・デザイン料・イラスト代・原稿料・写真撮影料
・税理士・社労士・弁護士・司法書士などへの士業報酬
・外部講師への講演料・セミナー料
・モデル・タレント・俳優・芸人への出演料
※法人への支払いは対象外
事前対策:
外注先が個人事業主か法人かを契約時に確認し、個人事業主への支払いは源泉徴収を徹底します。外注費の支払い先リストを作成し、毎年の源泉徴収漏れがないか顧問税理士と定期確認することをお勧めします。
チェックポイント⑦:電子帳簿保存法・インボイス対応の不備(2024年以降の新論点)

2024年1月の電子帳簿保存法完全施行・2023年10月のインボイス制度開始により、2024年以降の税務調査では「電子データの保存要件」と「インボイスの適正処理」が新たな確認項目として加わりました。
電子帳簿保存法の対応不備
メール・クラウドサービスで受け取った請求書・領収書は、電子データのまま保存することが義務付けられています。印刷して紙保存するだけでは要件を満たさず、税務調査で帳簿書類の不備として指摘されます。
・電子取引データを電子のまま保存しているか(印刷のみはNG)
・保存したデータが検索要件(日付・金額・取引先で絞り込み可能)を満たしているか
・タイムスタンプまたは訂正削除履歴が残る形で保存されているか
・クラウド会計・電子帳簿システムの運用が適切か
インボイス制度の処理ミス
2026年10月以降、インボイス(適格請求書)のない仕入・外注費は原則として消費税の仕入税額控除ができなくなります(経過措置は2029年9月末まで段階的に縮小)。調査官は仕入先・外注先のインボイス登録番号の確認・控除の適正処理をチェックします。
事前対策:
クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)を活用し、電子取引データを適切に保存・管理する体制を整えてください。仕入先・外注先のインボイス登録番号はリスト化して管理し、未登録業者との取引については経過措置の適用期限を把握しておきます。
7つのポイントを事前にセルフチェックする方法
以下のセルフチェックリストで、現時点での整備状況を確認してください。
| チェック項目 | 確認 |
|---|---|
| 売上計上基準(出荷・検収)を文書化し毎年一貫して適用している | ☐ |
| 期末月の請求書・納品書と売上計上月が一致している | ☐ |
| 交際費の領収書に「相手先・人数・目的」を付箋で記録している | ☐ |
| 期末の棚卸表に預け在庫・直送品も含めて計上している | ☐ |
| すべての売上は法人口座に入金し個人口座との混在がない | ☐ |
| 全従業員の履歴書・雇用契約書・タイムカードが整備されている | ☐ |
| 個人事業主への外注費に源泉徴収を適切に行っている | ☐ |
| 外注先との契約が「外注費」要件(指揮命令なし・請求書あり等)を満たしている | ☐ |
| 電子取引データを電子のまま保存し検索要件を満たしている | ☐ |
| 仕入先・外注先のインボイス登録番号をリスト化して管理している | ☐ |
未チェックの項目が多いほど、税務調査で指摘を受けるリスクが高まります。調査通知が来てから慌てて整備しても対応できないことがあります。日頃から顧問税理士と年1〜2回のセルフチェックを習慣化することが最大の調査対策です。
寺田税理士・社会保険労務士事務所(社労士法人フォーグッド)の税務調査対応
「この7つのポイントを普段から整備できているか」——それを毎年確認するのが顧問税理士の役割です。弊所では月次訪問・決算前ミーティングの中でこれらの項目を定期的にチェックし、調査リスクを事前に低減する体制を取っています。
税務調査の通知が来る前に、現状の帳簿・書類の整備状況を確認することが最大のリスク対策です。弊所は大阪・東京の2拠点でオンライン相談も可能。PRONIアイミツ「税理士と社労士が在籍するおすすめ事務所」実績部門にて4年連続全国第1位。
よくある質問(FAQ)
Q1. 交際費の領収書に何も書いていない場合、どうなりますか?
相手先・人数・目的の記載がない交際費は、調査官から「個人的支出」として否認されるリスクがあります。否認されると法人側で交際費が損金不算入となるだけでなく、経済的利益を受けた個人側にも所得税が課される可能性があります。領収書には必ず付箋等で記録を添付してください。
Q2. フリーランスへの外注費に源泉徴収していませんでした。今から修正できますか?
源泉徴収漏れがある場合、納付が遅れた期間に応じて不納付加算税(10%)と延滞税が発生します。ただし自主的に申告・納付すれば加算税が5%に軽減されます。調査を受ける前に顧問税理士に相談し、自主的に対応することをお勧めします。
Q3. 電子帳簿保存法に対応していない場合、税務調査でどうなりますか?
電子取引データを電子保存せず印刷保存のみの場合、帳簿書類の保存要件を満たさないとして指摘されます。悪質と判断された場合は青色申告の取り消しリスクもあります。早急にクラウド会計ソフトへの移行・電子保存体制の整備を進めてください。
Q4. 外注費と給与の区分が曖昧な取引があります。どう判断すればいいですか?
指揮命令の有無・時間管理の有無・備品提供の有無・請求書の有無の4点で判断します。グレーゾーンの取引は顧問税理士に事前に確認し、契約書・請求書の形式を整備しておくことで調査時の説明がスムーズになります。
Q5. 重加算税はどんな場合に課されますか?
重加算税(35〜40%)は「事実の隠ぺいまたは仮装」が認められた場合に課されます。具体的には売上の個人口座への振り込み除外・架空人件費・二重帳簿などが該当します。単純な計算ミスや計上時期のズレは原則として過少申告加算税(10%)にとどまります。
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記事監修
寺田税理士事務所 代表 / 社労士法人フォーグッド 代表社員 / 株式会社フォーグッドコンサルティング 代表
【保有資格】税理士、特定社会保険労務士
【専門分野】税務顧問、確定申告、税務調査対応、社会保険手続き、給与計算、労務相談、助成金申請支援
【組織体制】創業75年の実績を持つ専門家集団。スタッフ20名、税理士2名・社労士6名(うち特定社労士2名)が在籍し、大阪・東京の2拠点で全国450社以上の企業をサポート。
【代表者の実績・メディア掲載】
・テレビ朝日系列「羽鳥慎一モーニングショー」専門家として複数回出演(2024年5月・6月、2025年8月)
・PRONIアイミツ「税理士と社労士が在籍するおすすめ事務所」実績部門 4年連続全国1位
・中央経済社『税務弘報』にて連載執筆中
・著書:『中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい』(幻冬舎、2018年)
・著書:『雇用関係助成金申請・手続マニュアル』(日本法令、2020年)
事務所公式サイト:https://taxlabor.com/
・国税庁「交際費等の範囲と損金不算入額の計算(No.5265)」(nta.go.jp)
・国税庁「報酬・料金等に対する源泉徴収」(nta.go.jp)
・国税庁「電子帳簿保存法関係」(nta.go.jp)
本記事に掲載している内容は、2026年3月時点の情報をもとにしています。法令・制度に関する情報は執筆時点のものであり、その後の改正により変更される場合があります。最新情報は各省庁の公式サイトまたは専門家にご確認ください。


