【完全解説】2026年労働基準法40年ぶり大改正|7つの主要改正ポイントと企業への影響

公開日: 2025.12.11

最終更新日: 2025.12.11




【完全解説】2026年労働基準法40年ぶり大改正|7つの主要改正ポイントと企業への影響



2026年、日本の労働環境が大きく変わります。約40年ぶりとなる労働基準法の抜本的改正が予定されており、すべての企業が対応を求められることになります。

この改正は単なる「法律の見直し」にとどまらず、働き方そのものの変革を促す画期的な内容となっています。特に中小企業にとっては、人件費の増加や労務管理の複雑化など、経営に直結する影響が予想されます。

押さえておくべき重要ポイント:

  • 連続勤務日数の上限規制:14日以上の連続勤務を禁止し、最大13日間に制限
  • 勤務間インターバル:11時間の休息確保を義務化
  • 週44時間特例の廃止:すべての事業場で週40時間が原則に
  • 施行予定:2026年または2027年度以降(2025年中に準備開始推奨)

本記事では、税理士・社労士サポート業務の現場経験を活かし、改正の全体像から具体的な対応策まで、企業経営者と人事担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

⚠️ 重要な注意事項

本記事で解説している改正内容は、2024年12月時点での労働基準関係法制研究会報告書に基づく検討中の内容です。最終的な法案内容や施行時期は、今後の国会審議により変更される可能性があります。

目次

2026年の労働基準法改正で何が変わるの?

今回の改正は、約40年ぶりの大幅な見直しとなり、働き方の多様化と労働者保護の強化を目的としています。

現在、厚生労働省の労働基準関係法制研究会で議論が進められており、2025年または2026年の通常国会への改正法案提出が予定されています。施行は2026年または2027年度以降の段階的実施が見込まれていますが、正式な施行時期は未定です。

改正項目 現行制度 改正後(予定)
連続勤務日数 理論上24日間可能 最大13日間(14日以上禁止)
勤務間インターバル 努力義務 11時間の義務化
法定休日の特定 特定義務なし 就業規則で明示必須
週44時間特例 10名未満の特定業種で適用 廃止予定
有給休暇賃金算定 3つの方式から選択 通常賃金方式に統一

なぜ40年ぶりの大改正が必要になったの?

労働基準法が制定された1947年当時と現在では、働き方が根本的に変化しています。

社会情勢の変化

  • 働き方の多様化:テレワーク、副業・兼業、ギグワーカーの増加
  • 労働者の価値観変化:ワークライフバランスの重視
  • デジタル化の進展:時間と場所を選ばない働き方の実現
  • 人材不足:少子高齢化による労働力減少

現行法の限界

現在の労働基準法は「企業に雇用される正社員」を前提とした制度設計となっており、以下の問題が指摘されています:

  • フリーランスや業務委託労働者の保護が不十分
  • 副業・兼業時の労働時間管理が複雑
  • 長時間労働の是正が不徹底
  • 休日・休暇に関するルールの曖昧さ

厚生労働省の研究会報告書によると、「現行の労働法制は多様な働き方に対応できておらず、抜本的な見直しが必要」との結論に達しています。

7つの主要改正ポイント詳細解説

ポイント1: 労働時間と休息の厳格化

連続勤務日数の上限設定(13日まで)
現行制度では「4週間に4日の休日」があれば適法でしたが、理論上は24日間の連続勤務が可能でした。改正後は14日以上の連続勤務を禁止し、最大13日間に制限されます。

⚠️ 影響を受ける主な業種:

  • 宿泊業・飲食業
  • 小売業
  • 医療・介護業
  • 運輸業

勤務間インターバル制度の義務化(11時間)
現在は努力義務にとどまる勤務間インターバルが、11時間の休息確保を義務化されます。これにより、深夜まで勤務した翌日は出勤時間が制限されることになります。

📝 具体例:

  • 23時終業 → 翌日10時以降出勤可
  • 24時終業 → 翌日11時以降出勤可

ポイント2: 休日・休暇ルールの明確化

法定休日の事前特定義務
休日出勤時の割増賃金計算でトラブルになりがちな「法定休日の特定」が義務化されます。就業規則で「法定休日は日曜日」などと明記する必要があります。

休日の種類 割増賃金率 改正後の扱い
法定休日 35%以上 就業規則で事前特定必須
法定外休日 25%以上(週40時間超) 法定休日以外の休日

年次有給休暇賃金算定の統一
現在、企業は3つの方式から選択できますが、「通常賃金方式」に統一される予定です。

ポイント3: 多様な働き方への対応

副業・兼業の労働時間通算ルール見直し
現行の「通算管理方式」から「分離管理方式」への変更が検討されています。これにより、各企業が独立して労働時間を管理できるようになり、副業促進が期待されます。

労働者定義の拡大
フリーランスやプラットフォームワーカーを保護するため、労働者の定義拡大や新たな法的カテゴリーの創設が議論されています。

ポイント4: つながらない権利の確立

勤務時間外の業務連絡に応じなくても不利益を受けない「つながらない権利」に関するガイドラインが策定される予定です。

🚫 対象となる行為:

  • 休日・深夜の業務メール・チャット
  • 緊急性のない業務連絡
  • 会議・打ち合わせへの参加強要

ポイント5: 特例措置・適用除外の見直し

週44時間特例の廃止
商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で従業員10名未満の事業場に認められていた週44時間特例が廃止され、すべての事業場で週40時間が原則となります。

💰 影響試算(従業員5名の小売業の例)

現在:週44時間まで通常賃金
改正後:週40時間超は25%以上の割増賃金
年間追加コスト:約60万円~120万円

管理監督者の労働時間把握義務化
「名ばかり管理職」の長時間労働を防ぐため、管理監督者を含むすべての労働者の労働時間を客観的方法で記録・把握することが義務化される予定です。

ポイント6: 育児・介護と仕事の両立支援

2025年4月から段階的に施行される改正育児・介護休業法と連動し、両立支援が強化されます。

  • 3歳以上小学校就学前の子育て支援措置の義務化(2025年10月~)
  • 出産後休業支援給付金の創設(2025年4月~)
  • 育児時短就業給付の創設(2025年4月~)

ポイント7: 時間外労働の情報開示促進

企業の労働環境に関する情報開示が促進されます:

  • 時間外労働の実績
  • 年次有給休暇取得率
  • 育児休業取得率
  • 勤務間インターバル制度の導入状況

企業への3つの影響

1. 人件費へのインパクト

多くの企業で人件費の増加が避けられません:

企業規模 主な影響要因 年間追加コスト目安
従業員10名未満 週44時間特例廃止 50万円~150万円
従業員50名未満 勤務間インターバル、人員増 200万円~500万円
従業員100名以上 システム導入、管理コスト増 500万円~1,500万円

2. 労務管理の実務への影響

人事担当者の業務が大幅に変わります:

  • 勤怠管理の複雑化:勤務間インターバル、連続勤務日数の日々チェック
  • シフト作成の困難化:制約条件の増加による調整業務の増大
  • 給与計算の見直し:新ルールに対応したシステム改修
  • 就業規則の全面改訂:専門家との連携強化

3. 組織運営・業務プロセスへの影響

これが最も重要な影響です。労働時間の制約が厳しくなることで、企業は「限られた時間でどう成果を出すか」という根本的な問題に直面します。

  • 業務プロセスの抜本的見直し
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
  • 多能工化の推進
  • アウトソーシングの活用拡大

いつから施行されるの?準備期間は?

📅 想定スケジュール:

時期 予定される動き 企業がすべきこと
2025年1月~3月 国会審議・法案可決 情報収集・影響分析開始
2025年4月~9月 政省令・指針の策定 就業規則見直し・システム検討
2025年10月~12月 施行準備期間 社内研修・システム導入
2026年4月 段階的施行開始 新制度での運用開始

📌 重要なポイント

  • 法案の内容は今後の国会審議で変更される可能性があります
  • 施行日は項目ごとに段階的に設定される見込みです
  • 準備期間を考慮すると、2025年春頃からの本格的な対応開始が推奨されます

最新の情報は厚生労働省の労働基準関係法制研究会のページで確認できます。

まとめ:今すぐ始めるべき準備

2026年の労働基準法改正は、確実に企業経営に大きな影響を与えます。しかし、適切な準備を行えば、この変化を競争優位につなげることも可能です。

🚀 今すぐ開始すべき3つのアクション:

  1. 現状分析と影響度の把握
    自社の労働時間・休日の実態調査、改正による人件費増加の概算、必要な投資額の試算
  2. 専門家との連携体制構築
    社会保険労務士との相談開始、労働法に詳しい税理士との情報共有、勤怠管理システム業者との打ち合わせ
  3. 社内体制の整備準備
    労務管理体制の見直し計画策定、管理職への情報共有開始、業務効率化・DX化の検討開始

💡 Professional Advice

法改正は「コスト増の要因」ではなく、「組織を強くするチャンス」として捉えることが重要です。働きやすい環境を整備し、生産性を向上させることで、優秀な人材の獲得と定着につながり、長期的な企業価値の向上が期待できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 2026年労働基準法改正で何が変わりますか?

A.
主要な変更点は7つです:①連続勤務13日上限規制(14日以上禁止)、②法定休日の特定義務、③勤務間インターバル制度義務化、④有給休暇賃金算定統一、⑤つながらない権利確立、⑥週44時間特例廃止、⑦管理監督者労働時間把握義務化です。

Q2. いつから施行される予定ですか?

A.
2025年または2026年の通常国会で改正法案が提出され、2026年または2027年度以降の段階的な施行が見込まれていますが、正式な施行時期は未定です。企業は2025年中の準備開始が推奨されます。

Q3. 中小企業への影響はどの程度ですか?

A.
特に週44時間特例を利用していた10名未満の事業場では、週40時間制への移行により割増賃金の増加が見込まれます。年間人件費の5-15%増加の可能性があります。

Q4. 副業・兼業の扱いはどう変わりますか?

A.
現在の労働時間通算管理から分離管理方式への変更が検討されており、各企業が独立して労働時間を管理できるようになる可能性があります。

Q5. つながらない権利とは具体的に何ですか?

A.
勤務時間外の業務連絡(メール、チャット、電話等)に応じなくても、人事評価や待遇で不利益を受けない権利です。ガイドライン策定が予定されています。

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【免責事項】
本記事の内容は2024年12月時点の情報に基づいており、労働基準関係法制研究会の報告書等を参考にしていますが、最終的な法案内容や施行時期は今後の国会審議等により変更される可能性があります。実際の対応については、必ず社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

【参考資料】



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