労基署の臨検調査とは?来る会社の特徴・4種類の違い・当日の対応マニュアル
公開日: 2026.03.23
最終更新日: 2026.03.15

1. 労基署の臨検調査とはどんな調査か
2. 臨検の4種類——定期・申告・災害時・再監督の違い
3. 来る会社の特徴——対象になりやすい事業所とは
4. 臨検で指摘されやすい8項目
5. 調査当日の流れと対応マニュアル
6. 是正勧告・指導票を受けた後の対応
7. 臨検に備えるための日常対策
8. 弊所の対応体制
9. よくあるご質問
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――「労働基準監督署から調査に行くと連絡があった」「突然、監督官が会社に来た」「是正勧告書を渡されたが何をすればいい?」。労基署の臨検調査は、適切に対応しなければ是正勧告・送検・書類送検という深刻な事態に発展します。しかし事前に確認ポイントを把握していれば、落ち着いて対応できます。約450社の中小企業をサポートしてきた税理士・特定社労士が、臨検調査の全体像と対応ポイントを解説します。
労基署の臨検調査とはどんな調査か
労働基準監督署(監督署)が事業所に立ち入って行う調査を「臨検監督」(臨検)といいます。労働基準法第101条に基づく立入検査権が根拠であり、事業主は正当な理由なく拒否することができません。拒否した場合は30万円以下の罰金の対象となります。
臨検の目的は、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法などの労働関係法令が遵守されているかどうかを確認することです。違反が確認された場合は「是正勧告」または「指導票」が交付されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施機関 | 労働基準監督署(都道府県労働局管轄) |
| 根拠法 | 労働基準法第101条・労働安全衛生法第91条 他 |
| 確認内容 | 労働時間・賃金・就業規則・安全衛生・有給休暇 他 |
| 種類 | 定期監督・申告監督・災害時監督・再監督 |
| 違反発見率 | 定期監督:約70%前後、申告監督:さらに高い傾向 |
臨検の4種類——定期・申告・災害時・再監督の違い
臨検には4つの種類があり、それぞれ目的・対象・来訪の経緯が異なります。どの種類かを把握することが、適切な対応の第一歩です。
① 定期監督
監督署が計画的に実施する調査です。業種・地域・従業員規模・過去の違反履歴などをもとに対象事業所を選定し、年間の監督計画に基づいて実施されます。事前に「臨検監督通知書」が届くことが多いですが、通知なしで来訪(抜き打ち)するケースもあります。近年は長時間労働・残業代未払いへの対応が強化されており、建設・運送・飲食・介護といった業種への重点実施が続いています。
② 申告監督
従業員や元従業員からの申告(タレコミ・通報)を受けて行われる調査です。申告者の匿名性は保護されており、事業所側は誰が申告したかを原則として知ることができません。申告監督の違反発見率は定期監督より高く、7割を大きく超える水準にあります。申告監督の場合でも監督署は「定期監督」として来訪することが一般的であり、申告があったことを明示しないのが実務上の慣行です。
③ 災害時監督
労働災害が発生した際に、原因究明と再発防止のために行われます。労災申請と連動して調査が開始されることが多く、災害発生直後に来訪するケースもあります。安全管理体制・機械設備の状況・作業手順書の整備状況など、安全衛生全般が確認されます。重篤な災害(死亡・重傷)の場合は、刑事事件として書類送検に至るケースもあります。
④ 再監督
過去の臨検で是正勧告を受けた事業所に対して、改善状況を確認するために行われます。是正勧告書で指定された期限内に是正報告書を提出しなかった場合や、指摘事項が改善されていない場合は再監督の対象となります。是正勧告を放置し続けた場合、最終的に書類送検・送検に至るリスクがあります。
来る会社の特徴——対象になりやすい事業所とは
臨検の対象になりやすい事業所には、いくつかの共通した特徴があります。以下の項目に該当する事業所は、日常的な整備を優先して進めることをお勧めします。
・長時間労働が多い業種(建設・運送・飲食・小売・介護)
・過去に是正勧告・指導票を受けたことがある
・従業員や元従業員から申告・通報があった
・労働災害が発生した(または労災申請があった)
・外国人労働者・技能実習生を雇用している
・インターネット上に残業代未払い・長時間労働の口コミが多い
・ハローワークへの求人票の内容と実態に乖離がある
2024年問題(物流・建設業の時間外労働規制強化)以降、運送・建設業への重点監督は全国的に継続されています。また、SNS・転職サイトの口コミ情報を端緒として申告監督に至るケースも増加傾向にあります。
臨検で指摘されやすい8項目
厚生労働省の「労働基準監督年報」によると、臨検で発見される違反の上位を占めるのは労働時間・賃金・就業規則に関するものです。以下の8項目は特に確認される頻度が高い事項です。
① 労働時間管理の不整合
タイムカード・勤怠システムの記録と賃金台帳の労働時間が一致していないケースは最頻出の指摘事項です。「システム上は定時」なのに実態は残業しているといった乖離は、監督官が最も重視する確認ポイントです。勤怠記録と賃金計算の一致が対策の基本です。
② 割増賃金の未払い・計算誤り
時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金(時間外25%以上・月60時間超50%以上・休日35%以上・深夜25%以上)が正しく支払われているかを確認されます。固定残業代(みなし残業)の設計ミス・算定基礎から除外すべきでない手当の除外・深夜割増の計算漏れが頻出の誤りです。
固定残業代を導入している場合、「何時間分の残業代を含むか」を就業規則・雇用契約書に明示しなければなりません。実際の残業時間が固定残業代に含まれる時間数を超えた場合は差額支払いが必要です。この処理が行われていない事業所は是正勧告の対象となります。
③ 36協定の未締結・特別条項超過
時間外・休日労働をさせるためには36協定(時間外労働・休日労働に関する労使協定)の締結と届出が必要です。36協定なしで残業させていた場合は労働基準法違反です。また特別条項付き36協定を締結している場合でも、年720時間・月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内という上限を超えることはできません。36協定は毎年更新が必要であり、更新漏れも指摘対象となります。
④ 就業規則の未作成・未届・未周知
常時10人以上の従業員を使用する事業所は就業規則の作成・届出が義務です。作成しているだけでなく、従業員が自由に閲覧できる場所への備え付けや電子データでのアクセス確保など「周知」措置を講じていなければなりません。また就業規則の内容が最新の法改正(育児介護休業法・同一労働同一賃金など)に対応していない場合も指摘されます。
⑤ 労働条件通知書の不交付・記載不備
採用時に労働条件を書面(または電子的方法)で通知することは法律上の義務です(労働基準法第15条)。雇用契約書との兼用でも問題ありませんが、記載必須事項(労働時間・賃金・休日・就業場所・業務内容など)が不足しているケースが多く見られます。パート・アルバイト・有期雇用についても同様の義務があります。
⑥ 年次有給休暇の未付与・取得5日義務違反
2019年4月以降、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、使用者は年5日の有給休暇を取得させる義務があります(労働基準法第39条7項)。この義務を果たしていない場合は30万円以下の罰金の対象となります。有給休暇の付与日数・取得日数・時季指定の記録を管理簿で保存することも求められます。
⑦ 健康診断の未実施
常時使用する従業員に対しては年1回の定期健康診断の実施が義務です(労働安全衛生法第66条)。深夜業・有害業務従事者については6か月ごとの実施が求められます。健康診断の結果を記録・保存(5年間)していない場合も指摘されます。
⑧ 外国人・技能実習生の管理不備
外国人労働者・技能実習生を雇用している事業所は、在留資格の確認・労働条件の適正確保・技能実習計画の遵守など追加の義務があります。技能実習法に基づく実習計画と実態の乖離、日本語での労働条件通知書のみの交付(母国語での通知が推奨)なども確認されます。
調査当日の流れと対応マニュアル
臨検当日は落ち着いて、求められた書類を順番に提示することが基本です。必要以上の情報を自発的に開示する必要はありません。
当日の流れ
監督官が来訪後、まず事業所の概要確認(従業員数・業務内容・労働時間体系など)から始まります。その後、賃金台帳・出勤簿・36協定・就業規則・労働条件通知書などの書類確認が行われます。必要に応じて従業員への個別ヒアリングが実施されることもあります。調査の所要時間は1〜3時間程度が一般的です。
対応のポイント
質問には事実を正確に答えます。わからないことは「確認して回答します」と伝えても問題ありません。求められていない書類を自発的に見せる必要はなく、質問の意図が不明な場合は確認してから回答します。社労士が同席している場合は、専門的な判断が必要な事項については社労士が対応します。
事前通知なしで監督官が来訪した場合でも、「現在担当者が不在のため日程を調整させてほしい」と申し出ることはできます。ただし調査自体を拒否することはできないため、速やかに社労士に連絡し、可能な限り早い日程で対応することが重要です。
是正勧告・指導票を受けた後の対応
臨検の結果、違反が確認されると「是正勧告書」または「指導票」が交付されます。これは行政指導であり、指定された期限内に是正報告書を提出することが求められます。
| 書類 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| 是正勧告書 | 法令違反が認められた事項 | 指定期日までに是正し、是正報告書を提出 |
| 指導票 | 法令違反ではないが改善が望ましい事項 | 是正勧告と同様に期日までに報告が求められる場合あり |
是正勧告書を受けた場合、指定期日(通常1か月程度)までに是正措置を講じ、是正報告書を提出します。是正報告書には具体的な改善内容・改善日を記載します。期日内に対応できない場合は、監督署に事情を説明した上で期限の延長を相談することが重要です。放置した場合は再監督・送検のリスクが高まります。
未払い残業代が指摘された場合、過去2年分(消滅時効)の未払い分を支払うことが求められます。2020年4月以降の未払い分については時効が3年に延長されています(令和2年民法改正・労働基準法改正)。複数の従業員に及ぶ場合は総額が数百万円に達することもあるため、早期の算定と対応計画の策定が必要です。
臨検に備えるための日常対策
臨検通知が届いてから慌てて準備するのではなく、日常的に整備しておくことが唯一の対策です。以下の5点を優先的に整備します。
① 勤怠記録と賃金台帳を常に一致させる
毎月の給与計算時に、勤怠システムの労働時間と賃金台帳の支払い時間を突合する習慣をつけます。管理職・みなし労働時間制適用者も含めて記録を保存します。
② 36協定を毎年更新し、上限時間の管理を徹底する
36協定の有効期限を確認し、失効前に更新手続きを行います。特別条項の上限時間(月100時間未満・年720時間)を超えないよう、月次で残業時間を集計・監視する仕組みを整えます。
③ 就業規則を最新状態に保つ
育児介護休業法・パートタイム・有期雇用労働法・同一労働同一賃金など、近年の法改正への対応が済んでいるかを確認します。10人未満の事業所でも就業規則に準じたルールを文書化しておくことをお勧めします。
④ 有給休暇の付与・取得状況を管理簿で管理する
年10日以上付与される従業員について、5日取得義務の達成状況を管理簿で記録します。取得が進んでいない従業員には時季指定を行い、年度末に義務未達になることを防ぎます。
⑤ 採用時の書類を整備する
雇用契約書・労働条件通知書の記載必須事項を点検し、全従業員分が整備されているかを確認します。特にパート・アルバイト・有期雇用の書類が抜けているケースが多いため注意が必要です。
弊所の対応体制
労基署の臨検調査は、通知を受けてから当日まで時間的な余裕がないケースがほとんどです。書類の整備・当日の立会い・是正勧告への対応まで、一貫してサポートします。
寺田税理士・社会保険労務士事務所(社労士法人フォーグッド)は、特定社労士を含む社労士6名体制で、臨検対応から労務管理体制の整備まで対応しています。
- 臨検前の自主点検(労働時間・賃金・就業規則・36協定の確認)
- 調査当日の立会い対応(社労士が同席)
- 是正勧告・指導票への対応(是正報告書の作成)
- 未払い残業代の算定と支払い計画の策定
- 就業規則・36協定・労働条件通知書の整備
- 再発防止のための労務管理体制の構築
大阪・東京の2拠点対応。450社以上の顧問実績。まずはお気軽にご相談ください。
寺田慎也(税理士・特定社会保険労務士)
税理士歴23年。テレビ朝日モーニングショー出演(2024年5月・6月、2025年8月)。PRONIアイミツ4年連続全国1位。税務弘報連載中。著書2冊(幻冬舎2018・日本法令2020)。創業75年・スタッフ20名・大阪東京2拠点・450社以上。
監修チーム:税理士2名・社労士6名(うち特定社労士2名)、株式会社フォーグッドコンサルティング含む。
よくあるご質問
Q1. 労基署の調査は事前に通知されますか?
定期監督の場合は「臨検監督通知書」が事前に届くことが多いですが、申告監督や抜き打ちの定期監督は通知なしで来訪することがあります。事前通知がある場合でも、通知から来訪まで1〜2週間程度しかないケースが多いため、日常的な書類整備が重要です。
Q2. 是正勧告書を受け取ったら必ず罰則がありますか?
是正勧告書は行政指導であり、受け取った時点では罰則は発生しません。指定期日までに是正措置を講じて是正報告書を提出すれば、通常はそれで完了します。ただし是正報告書を提出しない、または改善が認められない場合は再監督・送検に至るリスクがあります。
Q3. 未払い残業代の時効はいつまでですか?
2020年4月1日以降に支払い期日が到来した賃金については時効が3年です(改正労働基準法第115条)。それ以前の分は2年です。臨検で未払いが指摘された場合、2020年4月以降の未払い分は3年分を遡及して請求される可能性があります。
Q4. 従業員10人未満でも就業規則は必要ですか?
常時10人未満の事業所は就業規則の作成・届出義務はありません。ただし労働条件をめぐるトラブル予防や臨検での信頼性確保のため、就業規則に準じたルールを文書化しておくことを強くお勧めします。特に有給休暇・時間外労働・休日などのルールを明文化しておくことが重要です。
Q5. 管理職(管理監督者)には36協定・残業代は不要ですか?
「名ばかり管理職」問題として知られる通り、役職名が管理職であっても労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合は、時間外・休日労働の割増賃金支払い義務があります。管理監督者として認められるには、経営方針への参画・労働時間の自律的管理・相応の待遇という要件を実質的に満たす必要があります。臨検では管理職の実態が厳しく確認されます。
Q6. 社労士を同席させることはできますか?また費用はどのくらいですか?
社会保険労務士は臨検への立会いを業務として行うことができます。書類の整合性確認・監督官への説明対応・その場での指摘事項への対処など、専門家の同席は調査を有利に進めるために有効です。費用は事務所・対応内容によって異なりますが、事前の書類整備から当日立会いまでのパッケージ対応を行っている事務所もあります。まずはご相談ください。
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※本記事は2026年3月時点の法令・制度に基づいています。法改正等により内容が変更になる場合があります。個別の事案については税理士・社会保険労務士にご相談ください。


