宗教法人への課税が現実に?税理士×社労士が解説する「2026年の税務・労務の備え方」
公開日: 2026.02.22
最終更新日: 2026.02.22

1. 宗教法人課税の最新動向|2026年2月の政治情勢
2. 宗教法人の税制はいまどうなっている?現行ルールの全体像
3. もし課税が実現したら?宗教法人への具体的な影響
4. 宗教法人が今から準備すべき税務・会計対応
5. 宗教法人の労務管理と社会保険|見落としがちなポイント
6. 今後のスケジュール|国民会議と税制改正の見通し
7. よくある質問(FAQ)
8. 関連記事
――「うちの寺も課税されるのか?」「お布施に税金がかかるようになったらどうしよう」。2026年2月、消費税減税の財源として浮上した「宗教法人への課税」論に、全国の宗教関係者から不安の声が上がっています。現行制度はどうなっているのか、もし課税が強化されたら何が変わるのか、そして今から何を準備すべきなのか――約450社の中小企業をサポートしてきた税理士・特定社会保険労務士が、最新情報をもとにわかりやすく解説します。
1. 宗教法人課税の最新動向|2026年2月の政治情勢
2026年2月、高市早苗首相が消費税減税の財源として「宗教法人への課税見直し」を検討する可能性が浮上し、宗教界に大きな波紋が広がっています。
2026年2月9日、高市早苗首相(自民党総裁)は衆院選大勝を受けた翌日に自民党本部で記者会見を行いました。自民党と日本維新の会で合計352議席を獲得した衆院選の大勝を背景に、「責任ある積極財政」と安全保障政策の抜本強化を進める方針を示しています。
なかでも注目を集めているのが、食料品の消費税率を2年間ゼロにするという公約の財源問題です。この施策には年間約5兆円の税収減が見込まれており、その代替財源として「宗教法人への課税」が永田町で急浮上しました。
なぜ今、宗教法人が注目されるのか
自民党の小野寺五典税調会長は、2月16日に首相官邸を訪問した際、宗教法人課税について「国民会議の中で議論していく」と述べました。また、日本仏教協会の中根善弘代表理事は、自民党国会議員から「お布施やおさい銭に課税すべきではないかという話が党内で持ち上がっている」と伝えられたことを明かしています。
一方、財務省幹部は「宗教法人課税は検討していない。課税しても何兆円もの財源にはならない。ただ、財源の検討はまだこれからだから、あらゆる可能性はある」と含みを持たせる発言をしています。
2026年2月21日時点で、宗教法人への課税強化は正式な政府方針ではありません。あくまで消費税減税の財源案の一つとして浮上した段階です。ただし、国税庁は2025年1月に「令和7年版 宗教法人の税務」を公表するなど、宗教法人の税務への監視を強化する姿勢を示しています。
2. 宗教法人の税制はいまどうなっている?現行ルールの全体像
宗教法人は「すべて非課税」と思われがちですが、実際には収益事業には法人税が課され、消費税の納税義務もあるなど、税制は複雑です。
宗教法人は法人税法上「公益法人等」に分類され、宗教活動で得た収入(お布施、寄付金、お賽銭など)は非課税です。しかし、法人税法施行令で定められた34種類の「収益事業」を行う場合には、法人税等の納税義務が生じます。
現行制度で非課税となるもの
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人税 | 宗教活動による収入(お布施・初穂料・戒名料・お賽銭・寄付金等)は非課税 |
| 固定資産税 | 境内地・境内建物等、宗教活動に直接使用される土地・建物は非課税 |
| 不動産取得税 | 境内地・境内建物等の取得は非課税 |
| 登録免許税 | 境内地・境内建物等の登記は非課税 |
課税される「収益事業」とは
法人税法施行令第5条に定められた34種類の事業のうち、継続して事業場を設けて行われるものが対象です。代表的なものは以下のとおりです。
| 事業の例 | 収益事業に該当? |
|---|---|
| 駐車場経営(有料) | ✅ 該当(不動産貸付業) |
| ビル・不動産の賃貸 | ✅ 該当(不動産貸付業) |
| 絵はがき・写真帳等の販売 | ✅ 該当(物品販売業) |
| 茶道・生け花教室 | ✅ 該当(技芸教授業) |
| お守り・お札の頒布 | ❌ 原則非該当(喜捨金と認められる場合) |
| お布施・初穂料の受領 | ❌ 非該当(宗教活動) |
| 墳墓地の貸付 | ❌ 非該当(例外規定あり) |
宗教法人の法人税率
収益事業を行う宗教法人は「その他の公益法人等」に分類され、一般企業(原則23.2%)より軽減された税率が適用されます。
| 所得区分 | 税率 |
|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 15% |
| 年800万円超の部分 | 19% |
| (参考)一般法人 | 23.2% |
※上記は本則税率です。軽減税率の特例により800万円以下の部分が15%となっていますが、所得金額が年10億円を超える事業年度は17%に引き上げられます(令和7年度税制改正)。
※2026年4月以降に開始する事業年度からは、法人税額に対して4%の「防衛特別法人税」が付加されます(法人税額500万円超の部分が対象)。
宗教法人には「みなし寄附金制度」も適用されます。収益事業から得た利益の一部を宗教活動に充てた場合、一定額まで損金算入が認められます。この制度を活用することで実質的な税負担を軽減できますが、正確な区分経理が前提となります。
3. もし課税が実現したら?宗教法人への具体的な影響
仮にすべての宗教法人の課税免除が解除された場合、年間4〜5兆円の税収が見込めるとの試算があり、法人税・固定資産税・消費税など複数の税目に影響が及ぶ可能性があります。
影響①|法人税の課税範囲拡大
現在非課税とされているお布施・寄付金・初穂料などの宗教活動収入に対しても法人税が課されると、すべての収入から経費を差し引いた「所得」に対して、原則23.2%(現行の優遇税率19%ではなく一般税率が適用される可能性)の法人税が課される可能性があります。
影響②|固定資産税の課税
境内地・境内建物が固定資産税の課税対象となれば、広大な敷地を持つ寺社には大きな負担増となります。とりわけ都市部の宗教法人は地価が高く、影響が顕著です。
影響③|消費税への影響
宗教活動の対価性が認められると消費税の課税売上高に算入され、これまで免税事業者だった宗教法人にも消費税の納税義務が生じる可能性があります。
檀家80世帯、年間のお布施収入約600万円、境内地500坪の地方のお寺を想定した場合、仮に全面課税となると、法人税に加え固定資産税の負担が年間数十万円〜数百万円増加する可能性があります。現在の会計体制が整っていない場合、帳簿整備や税務申告への対応コストも発生します。
課税強化に対する懸念点
宗教法人課税には以下のような懸念点も指摘されています。
| 懸念点 | 内容 |
|---|---|
| 政教分離の形骸化 | 課税により税金の使途への発言権が生じ、宗教団体の政治的影響力がかえって強まる可能性 |
| 小規模法人の存続危機 | 地方の小さなお寺や神社が税負担に耐えられず廃業するおそれ |
| 信教の自由との関係 | 憲法20条で保障される信教の自由に対する制約となりうるとの見方 |
4. 宗教法人が今から準備すべき税務・会計対応
課税強化の動きが正式決定になる前の今こそ、宗教法人は会計・税務体制を見直し、万全の準備を整えるべきタイミングです。
準備①|「区分経理」の徹底
宗教活動による収入と収益事業による収入を明確に区分して帳簿管理することが最も重要です。現行の制度でもこの区分は必須ですが、課税範囲が広がった場合には、より精緻な記帳が求められます。具体的には、別口座・別帳簿の管理が理想的です。
準備②|収益事業の正確な把握
自法人が行っている事業のうち、34種類の収益事業に該当するものがないか改めてチェックしましょう。特に駐車場の有料貸出、物品販売、不動産賃貸、カルチャー教室の運営などは見落としがちです。
準備③|税務申告体制の構築
収益事業を行っている宗教法人は、事業年度終了後2か月以内に法人税の確定申告が必要です。これまで税務申告を行っていなかった法人は、税理士と顧問契約を結び、申告体制を早期に構築することをおすすめします。
準備④|源泉徴収義務の確認
宗教法人も源泉徴収義務者です。住職・宮司・神主・職員への給与支払い、税理士等への報酬・料金の支払い時には、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が必要です。毎月の納付が原則ですが、給与の支給人員が常時10人未満であれば「納期の特例」の申請も可能です。
「うちは収益事業はやっていないから大丈夫」と思っていても、実際には気づかないうちに課税対象となる事業を行っているケースは少なくありません。お守り・お札の販売形態、駐車場の利用状況、併設施設の貸出など、専門家による現状診断を受けることで、リスクを早期に発見できます。
5. 宗教法人の労務管理と社会保険|見落としがちなポイント
税務だけでなく、職員を雇用する宗教法人には労務管理・社会保険の適切な対応も不可欠です。近年は労務問題への行政の監視も強まっています。
社会保険の加入義務
宗教法人であっても、常時5人以上の従業員を使用する事業所は、健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。また、法人であれば従業員数に関わらず社会保険の強制適用を受けます。住職や宮司であっても、法人から給与を受けている場合は被保険者に該当する場合があります。
労働保険(労災保険・雇用保険)
職員を一人でも雇用する宗教法人は、原則として労災保険の加入が必要です。また、週20時間以上勤務し31日以上の雇用見込みがある職員については、雇用保険の被保険者資格も取得しなければなりません。
就業規則と労務管理
常時10人以上の職員を使用する宗教法人は、就業規則の作成と届出が義務付けられています。労働時間管理、残業代の計算、有給休暇の付与など、一般企業と同様の労働法規が適用される点にも注意が必要です。
これまで「宗教法人だから」と社会保険の未加入や届出の遅れを放置していた場合、課税強化に伴う行政の監視強化により、遡及加入を求められるリスクが高まります。社会保険料の遡及は最大2年分となり、数百万円の負担となるケースもあります。今のうちに労務体制を見直すことが重要です。
6. 今後のスケジュール|国民会議と税制改正の見通し
高市首相は「少なくとも夏前には国民会議の中間取りまとめを行いたい」と述べており、2026年夏がひとつの重要な節目となります。
| 時期(予想) | 動き |
|---|---|
| 2026年2月 | 特別国会召集、予算審議開始。「国民会議」設置に向けた野党との調整開始 |
| 2026年春 | 国民会議での本格的な財源議論開始。宗教法人課税が俎上に上がる可能性 |
| 2026年夏前 | 国民会議の中間取りまとめ。財源の方向性が示される見込み |
| 2026年秋 | 税制改正大綱の議論。宗教法人課税が盛り込まれるか注目 |
| 2027年以降 | 法改正が行われた場合、施行までに準備期間が設けられる見込み |
仮に宗教法人への課税が強化される場合でも、一度にすべてが変わるのではなく、収益事業の範囲拡大や税率優遇の見直しなど段階的な改正になる可能性が高いと考えられます。いずれにしても、今から情報収集と体制整備を始めておくことが最善の備えです。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 宗教法人はすべての税金が免除されているのですか?
いいえ。宗教活動による収入は法人税が非課税ですが、34種類の収益事業を行う場合には法人税が課されます。また、源泉所得税や消費税の納税義務もあります。固定資産税も、境内地等以外の収益事業用資産には課税されます。
Q2. お布施やお賽銭に税金がかかるようになるのですか?
2026年2月時点で、お布施やお賽銭への課税は正式な政策として決定されていません。消費税減税の財源案のひとつとして議論の俎上に上がっている段階です。ただし今後の政策動向には注意が必要です。
Q3. 現在、収益事業を行っていない場合でも対応は必要ですか?
はい。収益事業を行っていない場合でも、一定の収入がある宗教法人は損益計算書等の提出義務があります。また、給与を支払っている場合は源泉徴収義務も生じます。課税強化に備えた帳簿の整備は、すべての宗教法人に推奨されます。
Q4. 宗教法人の社会保険加入は義務ですか?
法人格を持つ宗教法人は、従業員を雇用している場合、社会保険(健康保険・厚生年金)の強制適用事業所となります。パートやアルバイトであっても、一定の要件を満たせば被保険者となります。
Q5. 宗教法人の税務申告は、一般の税理士に依頼できますか?
はい、一般の税理士に依頼できます。ただし、宗教法人の税務は「収益事業」と「宗教活動」の区分判断が複雑なため、宗教法人の税務に理解のある税理士に依頼することが望ましいです。また、労務・社会保険の問題も並行して発生するため、税理士と社会保険労務士の両方に対応できる事務所への相談がおすすめです。
Q6. 宗教法人の課税に備えて、最初にやるべきことは何ですか?
まずは現状の収支を正確に把握し、収益事業と宗教活動の区分経理を始めることです。その上で、専門家に相談して現行制度での申告義務の有無を確認し、必要な届出や申告を行いましょう。社会保険・労働保険の加入状況の確認も同時に行うことをおすすめします。
8. 関連記事
宗教法人の税務・労務に関連する以下の記事もぜひご覧ください。

「宗教法人の税務・労務を、まるごと任せたい」
税務申告・源泉徴収・社会保険加入・就業規則…対応すべきことが多すぎて何から始めればいいかわからない
税理士2名・社労士6名が在籍するダブルライセンス専門家集団なら、税務も労務もワンストップで解決できます
寺田税理士事務所 代表 / 社労士法人フォーグッド 代表社員 / 株式会社フォーグッドコンサルティング 代表
【専門分野】
税務顧問、確定申告、税務調査対応、社会保険手続き、給与計算、労務相談、飲食業労務支援、助成金申請支援
【保有資格】
税理士、特定社会保険労務士
【組織体制】
創業75年の実績を持つ専門家集団。スタッフ20名、税理士2名・社労士6名(うち特定社労士2名)が在籍し、大阪・東京の2拠点で全国450社以上の企業をサポート。
【代表者の実績・メディア掲載】
・テレビ朝日系列「羽鳥慎一モーニングショー」専門家として複数回出演(2024年5月・6月、2025年8月)
・アイミツ「税理士と社労士が在籍するおすすめ事務所」実績部門 4年連続全国1位
・中央経済社『税務弘報』にて連載執筆中「新・労務知識アップデート講座」
・著書:『中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい』(幻冬舎、2018年)
・著書:『雇用関係助成金申請・手続マニュアル』(日本法令、2020年)
事務所公式サイト:https://taxlabor.com/
「うちの宗教法人は大丈夫?」「収益事業の判定がわからない」「社会保険の加入状況を確認したい」――こうしたお悩みを、税理士2名・社労士6名が在籍するダブルライセンス専門家集団がワンストップで解決します。税務申告から社会保険手続き、給与計算、助成金申請まで一括対応。PRONIアイミツ4年連続全国第1位の実績でお客様を支えます。
参考リンク
国税庁「令和8年版 宗教法人の税務」|宗教法人の源泉所得税・法人税・消費税等の概要(PDF)
厚生労働省|社会保険・労働保険の適用基準や届出様式の最新情報
e-Gov法令検索|法人税法・法人税法施行令・宗教法人法等の条文確認
※本記事は2026年2月21日時点の情報に基づいています。
法令や制度の最新情報は関係省庁の発表をご確認ください。


