「130万円の壁」に新ルール!被扶養者認定、令和8年4月から労働契約書の年間収見込みで判定へ

公開日: 2025.11.16

最終更新日: 2025.11.16






【令和8年4月】130万円の壁新ルール!労働契約で扶養判定が変わる




令和8年(2026年)4月から、健康保険の被扶養者認定における「130万円の壁」の判定方法が大きく変わります。従来の「過去・現在の収入実績」ではなく、「労働契約(労働条件通知書)に記載された年収見込み」を基準に判定されるようになります。

この記事でわかること:

  • 新ルールの具体的な内容と適用開始時期
  • 労働契約ベースの年収見込み判定とは何か
  • 労働条件通知書に何を記載すべきか(所定外賃金・通勤手当の扱い)
  • 「給与収入のみ」が適用条件であること
  • 扶養内で安心して働き続けるための対策
  • 労働条件通知書の自動作成ツールの活用方法

目次

令和8年4月施行「130万円の壁」新ルールとは?

令和7年10月1日、厚生労働省から被扶養者認定における年間収入の判定方法を明確化する通知が発表されました。この新ルールは令和8年(2026年)4月1日から適用されます。

これまで被扶養者認定の際の「年間収入130万円未満」の判定は、過去の収入実績、現時点の収入、将来の収入見込みなどを総合的に判断する方法で行われてきました。しかし、この方法では「実際に働いてみないと扶養に入れるかわからない」という予見可能性の低さが問題となっていました。

新ルールでは、労働契約(労働条件通知書)に記載された時給・労働時間・日数等から算出した年間収入見込みを基準に判定することで、就業調整対策として予見可能性を高めることを目的としています。

参考資料:

「労働契約ベース」の年収見込み判定:具体的に何が変わる?

従来の判定方法との違い

項目 従来の方法 新ルール(令和8年4月~)
判定基準 過去の収入実績、現時点の収入、将来の見込みを総合判断 労働契約(労働条件通知書)に記載された収入見込み
所定外賃金(残業代等) 実績や見込みを含めて判定 労働契約に明記がない場合は含めない
予見可能性 低い(働いてみないとわからない) 高い(契約段階で判定可能)
必要書類 収入証明書、課税証明書等 労働条件通知書+「給与収入のみ」の申立書

新ルールのポイント

1. 労働契約に記載された賃金が基準
時給、所定労働時間、労働日数、諸手当、賞与など、労働基準法第11条に規定される賃金(労働条件通知書に明記されたもの)から年間収入を算出します。

2. 所定外賃金(残業代等)の扱い
労働契約に明確な規定がなく、契約段階で見込み難い時間外労働に対する賃金等は、年間収入に含まないこととなります。これにより、残業が発生しても当年度は「一時的な収入変動」とみなされます。

3. 認定後の確認
認定年度においては確認不要ですが、翌年度以降は少なくとも年1回、被扶養者の認定の適否を確認します。その際、臨時収入により結果的に130万円を超えた場合でも、社会通念上妥当な範囲であれば扶養認定を取り消す必要はありません

労働条件通知書の記載が命運を分ける:何を明記すべきか

労働条件通知書が被扶養者認定の判断基準となる説明図

新ルールでは、労働条件通知書の記載内容が被扶養者認定の可否を直接左右します。不備や記載漏れがあると、従来通りの判定方法(予見可能性が低い方法)が適用されてしまいます。

労働条件通知書のサンプル

【図】令和8年4月から、この労働条件通知書の内容が被扶養者認定の判断基準となります

労働条件通知書に必ず記載すべき項目

  • 時給(または月給・日給)
  • 所定労働時間(例:週20時間、1日4時間など)
  • 所定労働日数(例:週3日、月12日など)
  • 諸手当(通勤手当、家族手当など、支給が確定しているもの)
  • 賞与(支給が確定している場合)
  • 所定外賃金の見込み(残業代等を見込む場合は明記)

記載がない場合のリスク

労働契約内容が確認できる書類がない場合、または記載が不十分な場合は、従来通り「収入証明書や課税証明書等による判定」となります。これでは予見可能性が高まらず、新ルールのメリットを享受できません。

実務上の注意点

税理士・社労士として実務を行う中で特に注意すべき点は、所定外賃金(残業代等)の記載です。多くの労働条件通知書では「時間外労働が発生した場合は別途支給」といった曖昧な記載になっていますが、これでは新ルールの適用対象となりません。

もし残業代を含めて年間収入を見込む場合は、「月〇時間程度の時間外労働を見込み、年間〇〇万円程度の時間外手当を支給予定」といった具体的な記載が必要です。

📄 労働条件通知書(雇用契約書)のダウンロード

新ルールに対応した労働条件通知書を作成するために、以下のテンプレートをご活用ください。

1. 労働条件通知書(雇用契約書)のひな形
編集可能なWORD形式/新ルール対応版
WORD版をダウンロード
2. 労働条件通知書(雇用契約書)の記載例
具体的な記載方法がわかるPDF形式
記載例PDF をダウンロード

ポイント:ひな形を使用する際は、特に通勤手当所定外賃金(残業代)の記載を忘れずに行ってください。記載が不十分だと、新ルールのメリットを受けられません。

重要:社会保険上の収入には「通勤手当」も含まれる

被扶養者認定における年間収入の計算で、多くの方が見落としがちなのが「通勤手当」の扱いです。

税法と社会保険法の違い

通勤手当は、税法上と社会保険法上で扱いが異なります:

制度 通勤手当の扱い
税法(所得税) 一定額まで非課税(例:公共交通機関は月15万円まで)
社会保険法(被扶養者認定) 全額が収入に含まれる

実務上の影響

例えば、以下のようなケースを考えてみましょう:

【例】
・時給1,100円
・月80時間勤務
・月給:88,000円
・通勤手当:月10,000円
・年間収入見込み:(88,000円 + 10,000円)× 12ヶ月 = 1,176,000円

通勤手当を含めると130万円未満ですが、通勤手当を忘れて計算すると1,056,000円となり、実際より少なく見積もってしまいます。逆に、通勤手当が高額な場合は、通勤手当を含めると130万円を超えてしまう可能性もあります。

労働条件通知書への記載

労働条件通知書には、通勤手当の金額を必ず明記してください。以下のような記載が必要です:

  • 「通勤手当:実費支給(月額上限10,000円)」
  • 「通勤手当:月額5,000円」
  • 「通勤手当:1日あたり500円」

重要ポイント:
社会保険上の年間収入 = 基本給 + 諸手当(通勤手当を含む)+ 賞与 + 所定外賃金(契約に明記されている場合)

通勤手当を含め忘れると、扶養認定後の確認時に「実際の年間収入が契約と乖離している」と判断され、扶養認定が取り消されるリスクがあります。

新ルールの適用範囲:「給与収入のみ」が前提条件

新ルールには重要な適用条件があります。それは、「給与収入のみ」である場合に限るという点です。

新ルールが適用される場合

  • パート・アルバイトとして働き、給与収入のみがある
  • 労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満)
  • 労働条件通知書等の提出が可能
  • 認定対象者本人が「給与収入のみである」旨を申立て

新ルールが適用されない場合(従来通りの判定)

以下のケースでは、新ルールは適用されず、従来通りの判定方法(収入証明書や課税証明書等による総合判定)となります:

  • 年金収入がある場合(老齢年金、遺族年金、障害年金など)
  • 事業収入がある場合(自営業、フリーランス、農業など)
  • 副業収入がある場合(複数の給与、雑所得など)
  • 不動産収入がある場合
  • 労働契約内容が確認できる書類がない場合

この点は非常に重要です。例えば、パートで働きながら年金を受給している方や、メインの仕事以外に副業をしている方は、新ルールの対象外となります。

ケース別シミュレーション:新ルールでどう判定されるか

ケース1:パート勤務(給与収入のみ)

【条件】
・時給1,200円
・週20時間(月80時間)
・通勤手当:月5,000円
・年間勤務:12ヶ月
・残業なし(労働契約に記載なし)

【年間収入見込み】
(1,200円 × 80時間 + 5,000円)× 12ヶ月 = 1,212,000円

【判定】新ルール適用 → 130万円未満のため被扶養者認定OK

実際に残業が発生して年間収入が130万円を超えても、労働契約に残業代の記載がなければ、当年度は「一時的な収入変動」とみなされます。

ケース2:パート勤務+通勤手当が高額

【条件】
・時給1,100円
・週20時間(月80時間)
・通勤手当:月15,000円(遠方からの通勤)
・年間勤務:12ヶ月

【年間収入見込み】
(1,100円 × 80時間 + 15,000円)× 12ヶ月 = 1,236,000円

【判定】新ルール適用 → 130万円以上のため被扶養者認定NG

通勤手当を含めると130万円を超えてしまうケースです。通勤手当を忘れて計算すると誤った判定になります。

ケース3:パート勤務+年金受給

【条件】
・パート収入:年間100万円
・老齢年金:年間50万円
・合計:150万円

【判定】新ルール適用外(給与収入のみではない)→ 従来通りの判定で130万円超のため被扶養者認定NG

ケース4:労働条件通知書なし

【条件】
・口頭での雇用契約のみ
・実際の収入:月10万円程度

【判定】新ルール適用外(書類確認不可)→ 従来通りの判定(収入証明書等が必要)

ケース5:複数のパート先で勤務

【条件】
・A社:年間60万円(通勤手当含む)
・B社:年間60万円(通勤手当含む)
・合計:120万円

【判定】
給与収入のみであれば新ルール適用可能です。ただし、各社の労働条件通知書を提出し、合算して130万円未満であることを証明する必要があります。

扶養内で働き続けるための具体的対策

1. 労働条件通知書を必ず確認・保管する

雇用契約を結ぶ際、または契約更新の際には、労働条件通知書を必ず受け取り、内容を確認してください。特に以下の項目が明記されているか確認しましょう:

  • 時給(または月給・日給)
  • 所定労働時間・日数
  • 通勤手当(金額または算定方法)
  • 諸手当・賞与
  • 所定外賃金の扱い

2. 年間収入見込みを自分で計算する(通勤手当を忘れずに)

労働条件通知書の内容から、年間収入見込みを事前に計算しておきましょう。これにより、扶養に入れるかどうかを契約段階で判断できます。

計算式の例:
(時給 × 1ヶ月の所定労働時間 + 通勤手当)× 12ヶ月 + 諸手当(年額)+ 賞与(年額)= 年間収入見込み

3. 契約更新時には必ず再確認

契約更新や労働条件変更の際には、変更後の内容に基づく年間収入見込みを再計算し、130万円未満であることを確認してください。令和8年4月以降は、変更の都度、新しい労働条件通知書の提出が求められます。

4. 「給与収入のみ」であることを確認

年金受給や副業・事業収入がある場合は、新ルールの対象外です。自分が新ルールの適用対象かどうかを確認しましょう。

5. 労働条件通知書の自動作成ツールを活用

事業主の方や人事労務担当者の方は、正確な労働条件通知書を作成・管理することが重要です。当事務所では、最新の法令に対応した労働条件通知書を簡単・正確に作成できる自動作成ツールを提供しています。

よくある質問(Q&A)

Q1: 労働契約に明確な記載がない場合はどうなるの?

A: 労働契約に年間収入の見込みが明記されていない場合は、従来通り「過去の収入、現時点の収入、将来の収入見込み」から総合的に判定されます。予見可能性を高めるためにも、労働条件通知書への明記が推奨されます。

Q2: 残業代(所定外賃金)はどう扱われるの?

A: 労働契約で所定外賃金(残業代等)の見込みが明記されている場合は、その金額も年間収入見込みに含まれます。明記されていない場合は、実際の支給実績から判定されるため、契約書への記載有無が重要です。

Q3: 既に扶養内で働いている人も影響を受ける?

A: はい。令和8年4月以降に新規で被扶養者認定を受ける場合はもちろん、既に扶養内で働いている方も、契約更新時や収入見込みの変更時には新ルールが適用される可能性があります。早めの確認が必要です。

Q4: 労働条件通知書はいつまでに整備すればいい?

A: 令和8年4月の施行に備え、令和8年3月末までに整備しておくことが推奨されます。特に年度更新や契約更新のタイミングで、正確な年間収入見込みを明記した労働条件通知書を交付しましょう。

Q5: 今まで通り働いていても、新ルールで扶養を外れる可能性はある?

A: 労働契約に年間収入見込みが正確に記載されていれば、予見可能性が高まり、扶養を外れるリスクは低減します。しかし、契約内容と実態が乖離している場合や、所定外賃金の記載がない場合は注意が必要です。

Q6: 年金をもらいながらパートで働いている場合は?

A: 給与収入以外に年金収入がある場合は、新ルールの対象外となり、従来通りの判定方法(収入証明書や課税証明書等による総合判定)が適用されます。新ルールは「給与収入のみ」の方が対象です。

Q7: 副業や事業収入がある場合は新ルールの対象になる?

A: いいえ。副業収入や事業収入など、給与以外の収入がある場合は新ルールの対象外です。従来通り、すべての収入を合算して判定する方法が適用されます。

Q8: 通勤手当は年間収入に含まれるの?

A: はい。社会保険上の収入には通勤手当も含まれます。税法上は一定額まで非課税ですが、被扶養者認定における年間収入の計算では、通勤手当を含めて130万円未満かどうかを判定します。通勤手当を忘れて計算すると、誤った判定になる可能性があります。

Q9: 臨時収入で130万円を超えてしまった場合は?

A: 被扶養者認定後、翌年度以降の確認において、臨時収入により結果的に130万円を超えた場合でも、社会通念上妥当な範囲に留まる場合は扶養認定を取り消す必要はありません。ただし、労働契約内容の賃金を不当に低く記載していた場合は、扶養認定が取り消される可能性があります。

まとめ:令和8年4月に向けて今すぐ確認すべきこと

令和8年4月から施行される「130万円の壁」新ルールは、労働契約ベースでの年収見込み判定により、扶養認定の予見可能性を高めることを目的としています。

重要ポイントのまとめ:

  • 労働条件通知書の記載内容が扶養認定の可否を直接左右する
  • 所定外賃金(残業代等)は労働契約に明記がなければ年間収入に含まれない
  • 通勤手当は社会保険上の収入に含まれる(税法とは異なる)
  • 「給与収入のみ」が新ルール適用の前提条件
  • 年金受給者、副業・事業収入がある方は対象外(従来通りの判定)
  • 臨時収入による130万円超過は、社会通念上妥当な範囲なら扶養認定は継続
  • 契約更新時には新しい労働条件通知書の提出が必要

今すぐ行うべきこと:

  1. 現在の労働条件通知書を確認し、通勤手当を含めて年間収入見込みを計算する
  2. 労働条件通知書に不備がある場合は、雇用主に再交付を依頼する
  3. 自分が「給与収入のみ」であるか確認する
  4. 契約更新が近い場合は、新ルールを踏まえた内容で契約する
  5. 不明点がある場合は、専門家(税理士・社労士)に相談する

新ルールにより、扶養内で働きたい方の就業調整の不安が軽減され、より安心して働ける環境が整います。ただし、そのためには正確な労働条件通知書の整備が不可欠です。

令和8年4月の施行に向けて、早めの準備と確認を行いましょう。

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