2025年・2026年 労働法改正・税制改正 最新情報まとめ

公開日: 2025.10.19

 2025年・2026年の労働法税制改正の要点を、経営者・人事担当者向けに解説します。
 育児・介護休業法改正(施行済)から2025年度税制改正まで、厚生労働省・財務省の公式資料に基づく確定情報のみを時系列で分かりやすくまとめました。実務対応の確認にご活用ください。

目次


はじめに

2025年および2026年にかけて、労働法制・雇用関連法および税制において重要な改正が段階的に施行されています。本資料では、厚生労働省・財務省等の公式資料で確認済みの改正ポイントのみを整理し、企業が取るべき対応策について解説します。労働法については2025年4月および10月施行分が既に施行済み、税制については2025年度分所得税から適用が開始されています。

施行スケジュール
2025年1月 施行済 厚生年金保険法施行規則改正
2025年4月 施行済 育児・介護休業法等主要改正施行
2025年度分~ 適用中 税制改正(所得税・法人税等)
2025年10月 施行済 柔軟な働き方実現措置・教育訓練休暇給付金創設
2026年1月~ 税制改正(源泉徴収・生命保険料控除等)
2026年4月 高齢者労災防止措置等施行
2028年頃 ストレスチェック全事業場義務化


2025年4月1日施行:育児・介護休業法改正

施行日: 2025年4月1日 施行済

1. 子の看護等休暇の見直し

  • 名称変更: 「子の看護休暇」→「子の看護等休暇」
  • 対象年齢拡大: 小学校就学の始期 → 小学校3年生修了まで
  • 取得事由拡大: ①病気・けが ②予防接種・健康診断 ③感染症に伴う学級閉鎖等 ④入園(入学)式、卒園式
  • 除外規定廃止: 継続雇用期間6か月未満の労使協定除外を廃止
  • 取得可能日数: 変更なし(1年間に5日、子が2人以上の場合は10日)

2. 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

  • 対象拡大: 3歳未満の子を養育する労働者 → 小学校就学前の子を養育する労働者

3. 短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加

  • 代替措置追加: ①育児休業に関する制度に準ずる措置 ②始業時刻の変更等 ③テレワーク(新設)
  • 適用条件: 短時間勤務制度を講ずることが困難な業務で労使協定を締結した場合のみ

4. 育児のためのテレワーク導入(努力義務)

  • 対象: 3歳未満の子を養育する労働者
  • 内容: テレワークを選択できるよう措置を講ずる努力義務

5. 育児休業取得状況の公表義務適用拡大

  • 対象企業拡大: 従業員数1,000人超 → 従業員数300人超
  • 公表内容: 男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」
  • 公表時期: 年1回、公表前事業年度終了後おおむね3か月以内

6. 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和

  • 除外規定廃止: 継続雇用期間6か月未満の労使協定除外を廃止
  • 継続除外: 週の所定労働日数が2日以下の労働者は引き続き除外可能

7. 介護離職防止のための雇用環境整備

  • 措置義務: 以下①~④のいずれかの措置を講ずる義務
  • ① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  • ② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  • ③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
  • ④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

8. 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等

  • 個別周知・意向確認: 介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別対応
  • 情報提供: 労働者が40歳に達する日の属する年度または翌日から1年間
  • 方法: 面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれか

9. 介護のためのテレワーク導入(努力義務)

  • 対象: 要介護状態の対象家族を介護する労働者
  • 内容: テレワークを選択できるよう措置を講ずる努力義務

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2025年10月1日施行:柔軟な働き方実現措置

施行日: 2025年10月1日 施行済

根拠法令: 育児・介護休業法改正(厚生労働省公式資料確認済)

1. 柔軟な働き方実現措置(5つから2つ以上選択)

対象労働者

  • 対象: 3歳未満の子を養育する労働者
  • 適用: 労働者1人以上の全企業
  • 義務内容: 以下の5つの措置から2つ以上を選択して講ずる義務

選択可能な5つの措置

  • 始業時刻等の変更: フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
  • テレワーク等: 在宅勤務、サテライトオフィス勤務等
  • 保育施設の設置運営等: 企業主導型保育事業、保育費用の助成等
  • 新たな休暇の付与: 育児目的休暇の新設・拡充
  • 短時間勤務制度: 1日原則6時間、法定を上回る制度

実施手続き

  • 意見聴取義務: 労働者の過半数組合または過半数代表者からの意見聴取
  • 就業規則変更: 選択した措置を就業規則に明記し労働基準監督署に届出
  • 周知義務: 労働者への措置内容周知

2. 妊娠・出産等を申し出た労働者に対する個別周知・意向確認

  • 対象: 妊娠・出産等を申し出た労働者、3歳に満たない子を養育する労働者
  • 時期: ①妊娠・出産等の申出があった時 ②子が3歳に達する前
  • 方法: 面談、書面交付、FAX、電子メール等
  • 内容: 育児休業制度等の周知、休業等の取得意向確認

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2025年10月1日施行:教育訓練休暇給付金

施行日: 2025年10月1日 施行済

根拠法令: 雇用保険法改正

教育訓練休暇給付金の創設

  • 制度概要:
    企業が設ける教育訓練休暇制度を利用して、連続30日以上の無給休暇を取得し教育訓練を受ける雇用保険被保険者への給付金
  • 給付率: 休業開始時賃金日額の60%
  • 給付期間: 最大2年間(730日)
  • 対象訓練: 厚生労働大臣が指定する教育訓練講座
  • 要件:

    • 雇用保険の被保険者期間が3年以上(初回は2年以上)
    • 企業が教育訓練休暇制度を就業規則等で定めている
    • 連続30日以上の無給の教育訓練休暇を取得
    • 適切な職業訓練を受講

注意:
この制度は法律で休暇付与を義務付けるものではありません。企業が任意で教育訓練休暇制度を設ける場合に、労働者が給付金を受給できる支援制度です。

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2025年度税制改正(令和7年度)

根拠法令: 令和7年度税制改正大綱(2024年12月27日閣議決定)

財務省公式資料確認済

所得税改正

1. 基礎控除の引上げ

  • 改正内容: 合計所得金額2,350万円以下の方の基礎控除額を10万円引上げ
  • 改正後の控除額:

    • 合計所得2,350万円以下:58万円(現行48万円)
    • 合計所得2,350万円超~2,400万円以下:48万円
    • 合計所得2,400万円超~2,450万円以下:32万円
    • 合計所得2,450万円超~2,500万円以下:16万円
  • 適用開始: 令和7年分(2025年分)所得税から

2. 給与所得控除の最低保障額引上げ

  • 改正内容: 最低保障額を55万円から65万円に引上げ
  • 影響: 給与収入が少ない方の税負担が軽減されます
  • 適用開始: 令和7年分(2025年分)所得税から
  • 源泉徴収: 令和8年1月1日以後支払分から

3. 特定親族特別控除(新設)

  • 新設背景: 19歳~22歳の子(大学生等)の扶養控除を受けられないケースへの支援
  • 対象: 年齢19歳以上23歳未満の親族(合計所得金額123万円以下など条件あり)で、扶養控除対象外の方
  • 控除額: 納税者の所得に応じて段階的に設定(最大63万円~3万円)
  • 適用開始: 令和7年分(2025年分)所得税から

4. 扶養控除等の所得要件緩和

  • 同一生計配偶者・扶養親族: 所得要件48万円以下 → 58万円以下
  • ひとり親の子: 所得要件48万円以下 → 58万円以下
  • 勤労学生: 所得要件75万円以下 → 85万円以下
  • 適用開始: 令和7年分(2025年分)所得税から

5. 生命保険料控除の拡充

  • 対象: 23歳未満の扶養親族がいる方
  • 改正内容: 一般生命保険料控除の上限を4万円から6万円に引上げ
  • 適用年: 令和8年分(2026年分)のみの特例措置
  • 控除額計算:

    • 年間保険料3万円以下:全額控除
    • 年間保険料3万円超~6万円以下:保険料×1/2+15,000円
    • 年間保険料6万円超~12万円以下:保険料×1/4+30,000円
    • 年間保険料12万円超:一律6万円

法人税改正

中小企業者等の軽減税率特例の見直し

  • 適用期限延長: 軽減税率特例を2年間延長
  • 見直し内容: 所得金額が年10億円を超える事業年度について、所得800万円以下部分の税率を15% → 17%に引上げ
  • 除外対象: 通算法人を適用対象から除外
  • 適用開始: 令和7年度改正施行後、最初に開始する事業年度から

確定拠出年金制度の拠出限度額引上げ

  • 企業型DC: 月額5.5万円 → 月額6.2万円
  • 個人型DC(iDeCo):

    • 第1号被保険者:月額6.8万円 → 月額7.5万円
    • 企業年金非加入者:月額6.2万円へ引上げ
  • 適用開始: 2025年度施行

中小企業経営強化税制の拡充

  • 目的: 成長意欲の高い中小企業の設備投資促進
  • 新要件: 投資計画で年平均投資利益率7%以上などの要件を導入
  • 優遇措置: 給与増加率等を加味した新しい償却・控除枠の設定
  • 適用開始: 2025年度施行

企業への影響:

  • 給与計算システムの源泉徴収税額設定変更(2026年1月から)
  • 年末調整業務での新控除対応(特定親族特別控除等)
  • 確定拠出年金制度導入企業は掛金上限変更対応
  • 中小企業は法人税計算時の軽減税率適用要件確認

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2026年以降の施行予定事項

2026年4月施行

施行日: 2026年4月1日

  • 高年齢労働者の労働災害防止: 必要な措置を事業者の努力義務とする
  • 機械等による労働災害防止: ボイラー、クレーン等の製造許可・検査における民間登録機関の範囲拡大

2028年頃施行予定(公布後3年以内)

予定施行日: 2028年4月頃

  • ストレスチェック義務化拡大: 労働者50人未満の事業場にも義務化
  • 現行: 50人以上は義務、50人未満は努力義務
  • 改正後: 全ての事業場で義務化
  • 支援策: 地域産業保健センター(地さんぽ)の体制拡充、小規模事業場向け実施マニュアル提供

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企業の対応事項

2025年4月施行分(労働法)への対応【施行済】

状況: 2025年4月1日施行済み
未対応の場合は早急に対応が必要です
  • 就業規則改定: 子の看護等休暇、所定外労働制限、介護休暇等の規定見直し
  • 育児休業取得状況公表準備: 300人超企業は公表体制整備
  • 介護離職防止体制構築: 研修・相談窓口等の雇用環境整備
  • 個別周知・意向確認体制: 介護申出時・40歳到達時の対応フロー確立

2025年10月施行分(労働法)への対応【施行済】

状況: 2025年10月1日施行済み
未対応の場合は早急に対応が必要です
  • 柔軟な働き方措置選定: 5つの措置から2つ以上を選択、過半数組合等との意見聴取実施
  • 就業規則への反映: 選択した措置を明記、労働基準監督署に届出
  • 個別周知・意向確認体制: 妊娠・出産申出時と3歳前の意向聴取体制構築
  • 教育訓練休暇制度検討: 給付金制度に対応した休暇制度導入検討(任意)

税制改正への対応【2025年度分適用中・2026年1月源泉徴収開始】

状況: 2025年分所得税適用中 /
2026年1月~源泉徴収変更
  • 給与計算システム更新:
    2026年1月支給分から源泉徴収税額の変更対応(基礎控除・給与所得控除引上げ反映)
  • 年末調整準備: 特定親族特別控除の新設に対応した申告書様式・システム更新
  • 確定拠出年金制度: 掛金上限額変更への対応(規約変更・システム改修)
  • 法人税計算: 中小企業軽減税率の適用要件確認(所得10億円超の場合の税率変更)
  • 従業員への周知: 生命保険料控除拡充(2026年分)の案内準備

50人未満事業場の2028年準備

準備期間: 2025年~2027年
  • ストレスチェック体制構築: 実施者選定、産業医・保健師等との連携体制整備
  • 地域産業保健センター連携: 地さんぽとの面接指導体制構築
  • プライバシー保護措置: 小規模事業場における適切な実施方法確立

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まとめ

2025年・2026年の労働法改正および税制改正は、働き方の多様化と労働者の権利保護、そして税負担の適正化を軸とした包括的な制度見直しとなります。企業は労働法と税制の両面から対応を進める必要があります。

対応のポイント

  • 段階的施行への対応:
    労働法は2025年4月・10月施行済み、税制は2025年度分適用中・2026年1月源泉徴収変更
  • 選択制度への準備: 柔軟な働き方実現措置の5つから2つ選択について早期検討開始(施行済み)
  • 個別対応体制強化: 育児・介護に関する個別周知・意向確認体制の整備(施行済み)
  • 給与計算システム更新: 2026年1月支給分からの源泉徴収税額変更への対応準備
  • 年末調整業務の変更: 特定親族特別控除等の新設控除への対応(2025年分から)
  • 小規模事業場の準備: ストレスチェック義務化(2028年)に向けた計画的準備
重要:
本資料の内容は厚生労働省・財務省等の公式資料で確認済みの事項のみを記載しています。詳細な運用方法や疑問点については、厚生労働省・都道府県労働局・税務署・税理士等の専門家にご相談ください。
現在の状況(2025年10月19日時点)

労働法については2025年4月・10月施行分が既に施行済み、税制については2025年度分所得税から適用開始されています。企業は対応状況を確認してください。

次回更新:2026年1月予定(施行状況の確認と追加情報の反映)

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厚生労働省(労働法改正関連)

財務省(税制改正関連)

ご注意:

上記リンクは2025年10月19日時点のものです。最新情報は各省庁の公式ウェブサイトでご確認ください。

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