【2025年医療・介護賃上げ】医療3%・介護月1万円の6か分支援|実施時期・対象職種を完全解説
公開日: 2025.12.13

📋 重要なポイント
- 閣議決定:2025年11月21日(総合経済対策)、11月28日(補正予算案)
- 補正予算:2025年12月12日衆議院可決、参議院審議中
- 実施期間:2025年12月〜2026年5月(6か月分)
- 医療従事者:プラス3%の賃上げ支援
- 介護従事者:月1万円(介護職員は最大1.9万円)
- 予算規模:医療5,341億円・介護2,721億円
- 特徴:報酬改定を待たない前倒し実施
1. 医療・介護賃上げ支援の概要
政府は2025年11月21日、「2025年総合経済対策」の一環として、医療・介護従事者への賃上げ支援を含む「医療・介護等支援パッケージ」を閣議決定しました。11月28日には補正予算案を閣議決定し、12月12日に衆議院で可決され、現在参議院で審議中です。
この支援策は、物価高騰により厳しい状況にある医療・介護現場の人材確保と処遇改善を目的として、報酬改定の時期を待たず緊急的に実施される前例のない取り組みです。
1.1 支援の背景と必要性
- 医療・介護分野の深刻な人材不足
- 物価上昇による事業運営の圧迫
- 他産業との賃金格差の拡大
- 人材流出の防止が急務
2. 医療従事者への賃上げ支援
2.1 支援内容
| 支援内容 | 金額・割合 | 実施期間 |
|---|---|---|
| 賃上げ支援 | プラス3% | 6か月分(2025年12月〜2026年5月) |
| 病院支援(基礎的支援) | 1床当たり19.5万円 (賃金分8.4万円+物価分11.1万円) |
一括支給 |
| 救急病院加算 | 救急車受入件数に応じて500万円〜2億円 | 一括支給 |
| 有床診療所支援 | 1床当たり8.5万円 (賃金分7.2万円+物価分1.3万円) |
一括支給 |
| 無床診療所支援 | 32万円 (賃金分15万円+物価分17万円) |
一括支給 |
2.2 対象となる医療機関・職種
- 対象機関:賃上げに取り組む医療機関
- 対象職種:医療機関で働く全ての従事者
- 医師・看護師・薬剤師
- 医療技術者(放射線技師、臨床検査技師等)
- リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士等)
- 事務職員・その他スタッフ
- 正職員・パート・派遣職員問わず
2.3 予算規模と財源
医療分野全体で5,341億円の予算を確保し、内訳は以下の通りです。
- 賃上げ支援:1,536億円
- 物価上昇対応:3,805億円
2.4 病院への直接支給方式
⚡ 新しい支給方式
今回の補助金は、通常の都道府県経由ではなく、病院に対しては国が直接支給する方針が決定されました。これにより、より迅速な支援実施が可能となります。
3. 介護従事者への賃上げ支援
3.1 支援内容(3階建て構造)
| 支援レベル | 対象職種 | 月額支援額 | 要件 |
|---|---|---|---|
| 1階:基本支援 | 介護従事者全般 (ケアマネ・看護職員含む) |
月1万円 | 処遇改善加算取得事業者等 |
| 2階:上乗せ支援 | 介護職員のみ ❌ケアマネ・看護職員は対象外 |
月0.5万円 | 生産性向上・協働化の取組み (ケアプランデータ連携システム加入等) |
| 3階:職場環境改善 | 介護職員のみ ❌ケアマネ・看護職員は対象外 |
月0.4万円相当 | 職場環境改善計画の実施 |
| 最大合計 | 介護職員(全要件満たす場合) | 月1.9万円 | 全ての要件を満たす介護職員 |
3.2 対象となる職種の詳細
📍 今回の画期的な変更点
従来の処遇改善加算では対象外だったケアマネジャーや看護職員も基本支援(月1万円)の対象に含まれます。ただし、上乗せ支援(0.5万円)と職場環境改善支援(0.4万円)は介護職員のみが対象です。
【基本支援(月1万円)の対象職種】
- ✅ 介護職員(介護福祉士・ホームヘルパー等)
- ✅ ケアマネジャー(居宅介護支援専門員)
- ✅ 看護職員(看護師・准看護師)
- ✅ 生活相談員・支援相談員
- ✅ 機能訓練指導員
- ✅ 栄養士・管理栄養士
- ✅ その他介護従事者
【上乗せ支援(月0.5万円+0.4万円)の対象】
- ✅ 介護職員のみ
- ❌ ケアマネジャー:対象外
- ❌ 看護職員:対象外
- ❌ その他職種:対象外
3.3 職種別の最大支給額
| 職種 | 基本支援 | 上乗せ① | 上乗せ② | 最大合計 |
|---|---|---|---|---|
| 介護職員 | 月1万円 | 月0.5万円 | 月0.4万円 | 月1.9万円 |
| ケアマネジャー | 月1万円 | - | - | 月1万円 |
| 看護職員 | 月1万円 | - | - | 月1万円 |
3.4 実施期間と支給方法
- 実施期間:2025年12月〜2026年5月(6か月間)
- 支給方法:各都道府県から事業所へ補助金交付
- 補助率:国10/10(全額国費)
- 交付方法:サービスごとの交付率×総報酬
4. 申請方法と手続きの流れ
4.1 申請から支給までの流れ
- 補正予算の成立
- 2025年12月12日:衆議院可決
- 現在:参議院審議中
- 見込み:12月中旬〜下旬成立予定
- 申請書類の準備
- 計画書の作成
- 賃上げ計画の策定
- 要件確認資料の整備
- 都道府県への申請
- 申請書類一式を提出
- 要件審査の実施
- 交付決定
- 審査通過後、補助金交付決定
- 補助率10/10で交付
- 事業実施・実績報告
- 賃上げ実施
- 実績報告書の提出
⚠️ 申請開始時期について
2025年12月8日時点では、まだ申請受付は始まっていません。補正予算成立後、各都道府県で予算化され、その後公募が開始される見込みです。各自治体により開始時期が異なる可能性がありますので、お住まいの都道府県の情報をご確認ください。
4.2 必要な要件
【医療分野】
- 賃上げに取り組む医療機関であること
- 従事者への適切な賃上げ実施計画の策定
【介護分野】
| 支援区分 | 対象職種 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 基本支援(月1万円) | 介護従事者全般 | 処遇改善加算取得事業者、または処遇改善加算に準ずる要件を満たす事業者 |
| 上乗せ支援(月0.5万円) | 介護職員のみ | ・処遇改善加算取得 ・ケアプランデータ連携システム加入(訪問・通所系) ・生産性向上加算Ⅰ又はⅡ取得(施設・居住系) |
| 職場環境改善支援(月0.4万円) | 介護職員のみ | ・処遇改善加算取得 ・職場環境等要件の更なる充足 ・職場環境改善計画の策定・実施 |
5. 事業所規模別の支給シミュレーション
5.1 介護事業所での支給例
【例1】小規模デイサービス(利用者20名・職員8名)
職員構成:介護職員5名、ケアマネ1名、看護職員1名、事務職員1名
- 基本支援(全職員):8万円/月 × 6か月 = 48万円
- 上乗せ支援(介護職員5名のみ、要件満たす場合):2.5万円/月 × 6か月 = 15万円
- 職場環境改善(介護職員5名のみ、要件満たす場合):2万円/月 × 6か月 = 12万円
- 合計支給額:最大75万円
【例2】特別養護老人ホーム(定員50名・職員30名)
職員構成:介護職員20名、看護職員4名、ケアマネ2名、その他4名
- 基本支援(全職員30名):30万円/月 × 6か月 = 180万円
- 上乗せ支援(介護職員20名のみ):10万円/月 × 6か月 = 60万円
- 職場環境改善(介護職員20名のみ):8万円/月 × 6か月 = 48万円
- 合計支給額:最大288万円
【例3】居宅介護支援事業所(ケアマネ5名)
- 基本支援(ケアマネ5名):5万円/月 × 6か月 = 30万円
- 上乗せ支援:対象外(ケアマネは不可)
- 合計支給額:30万円
5.2 医療機関での支給例
【例1】100床の病院(救急車受入2,500件/年)
- 基礎的支援:100床 × 19.5万円 = 1,950万円
- 救急加算:2,000件以上3,000件未満 = 3,000万円
- 支援総額:4,950万円
【例2】無床診療所(職員15名)
- 診療所支援:32万円
- 支援総額:32万円
【例3】有床診療所(19床)
- 病床支援:19床 × 8.5万円 = 161.5万円
- 支援総額:161.5万円
6. 実施時期とスケジュール
| 時期 | 実施内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年11月21日 | 総合経済対策閣議決定 | 支援パッケージ正式決定 |
| 2025年11月28日 | 補正予算案閣議決定 | 予算の裏付け確保 |
| 2025年12月12日 | 衆議院可決 | 参議院に送付 |
| 2025年12月中旬〜下旬 | 補正予算成立見込み | 参議院審議中 |
| 補正予算成立後 | 申請受付開始 | 各都道府県で順次開始 |
| 2025年12月〜2026年5月 | 6か月間の賃上げ実施 | 継続的な支援期間 |
| 2026年度 | 介護報酬臨時改定検討 | 恒久的な処遇改善へ |
7. 税務・社会保険上の取扱い
7.1 所得税・住民税
- 賃上げ支援による増額分は給与所得として課税対象
- 源泉徴収税額の増加に注意
- 年末調整での適切な処理が必要
7.2 社会保険料
- 標準報酬月額の改定対象となる可能性
- 健康保険・厚生年金保険料の増額
- 雇用保険・労災保険料への影響
7.3 事業所側の留意点
- 補助金の適切な会計処理(収益として計上)
- 消費税の取扱い(不課税取引)
- 法人税・法人住民税への影響
- 補助金交付と実際の賃上げ時期のズレへの対応
8. 2026年度以降の展望
8.1 介護報酬の臨時改定(検討中)
政府は2026年度に異例の介護報酬臨時改定(期中改定)を検討しており、今回の緊急支援を恒久的な処遇改善につなげる方針です。通常3年ごとの改定サイクルを破る前例のない対応となります。
💡 臨時改定のポイント
- 2026年度中の実施を検討
- 今回の月1万円支援を介護報酬に組み込む可能性
- 介護職員と一般産業の賃金格差是正が目的
- 処遇改善加算の見直しも含めた総合的な検討
8.2 医療報酬改定への影響
医療分野でも次期診療報酬改定(2026年度)において、今回の支援効果を踏まえた処遇改善の継続が期待されます。
8.3 人材確保への効果
- 短期的な人材流出の抑制
- 新規人材の確保促進
- サービス提供体制の安定化
- 業界全体の処遇水準向上
9. よくある質問(FAQ)
Q1. ケアマネジャーは上乗せ支援を受けられますか?
A1. いいえ、ケアマネジャーは基本支援(月1万円)のみが対象です。上乗せ支援(月0.5万円)と職場環境改善支援(月0.4万円)は介護職員のみが対象となります。
Q2. 支援を受けるために新たな加算取得は必要ですか?
A2. 基本支援(月1万円)については、現在処遇改善加算を取得している事業所であれば追加の加算取得は不要です。ただし、上乗せ支援を受けるには生産性向上加算等の取得が必要です。
Q3. パート職員も支援の対象になりますか?
A3. はい、正職員・パート職員・派遣職員問わず、対象事業所で働く全ての介護従事者・医療従事者が支援対象となります。
Q4. 支援金の使途に制限はありますか?
A4. 賃上げ支援は人件費への充当が原則です。ただし、職場環境改善支援については、職場環境整備にも使用可能です。
Q5. 申請手続きはいつから開始されますか?
A5. 補正予算成立後、各都道府県で申請受付が開始される予定です。2025年12月中旬〜下旬の成立を見込んでおり、その後速やかに各都道府県で公募が開始される見込みです。
Q6. 2026年6月以降も支援は継続されますか?
A6. 今回の支援は6か月間(2025年12月〜2026年5月)の緊急措置です。その後は2026年度の介護報酬臨時改定等による恒久的な処遇改善が検討されています。
Q7. 医療機関への支給はいつ頃になりますか?
A7. 病院については国からの直接支給が予定されており、補正予算成立後、速やかに実施される見込みです。診療所・薬局は都道府県経由での支給となります。
Q8. 救急病院の加算はどのように判定されますか?
A8. 救急車受入件数に応じて加算額が決定されます。三次救急病院については、受入件数5,000件未満の場合は一律1億円、5,000件以上の場合は件数に応じた加算となります。
Q9. 訪問看護ステーションの看護師も対象ですか?
A9. はい、訪問看護ステーションの看護師も介護保険適用サービスの従事者として、基本支援(月1万円)の対象となります。ただし、1施設あたり22.8万円の支給となります。
Q10. 障害福祉サービス従事者への支援はありますか?
A10. はい、障害福祉分野の従事者にも月1万円の6か月分賃上げ支援(360億円)が計上されています。ただし、介護職員のような上乗せ支援(5,000円)はありません。
10. まとめ
2025年の医療・介護従事者への賃上げ支援は、物価高騰と人材不足に対応する緊急措置として、過去最大規模の支援となります。
🎯 支援のポイント(まとめ)
【医療分野】
- 賃上げ支援:3%(6か月分)
- 病院:1床当たり19.5万円+救急加算
- 無床診療所:32万円
- 予算:5,341億円
【介護分野】
- 基本支援(全職種):月1万円
- 介護職員のみ:最大月1.9万円
- ケアマネ・看護職員:月1万円のみ
- 予算:2,721億円
【共通事項】
- 実施期間:2025年12月〜2026年5月(6か月分)
- 補正予算:12月中旬〜下旬成立見込み
- 申請:成立後、各都道府県で順次開始
- 前倒し実施:報酬改定を待たない緊急対応
- 将来展望:2026年度臨時改定で恒久化検討
事業所の皆様におかれましては、補正予算成立後の申請開始に備えて、早期の準備と適切な実施により、従事者の処遇改善と人材確保につなげていただければと思います。
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