知らないと数十万損! 2026年改正「10年ルール」とは? iDeCo・退職金で一番得する「受け取り方」を税理士が徹底解説

公開日: 2025.11.03

最終更新日: 2025.11.03

結論:iDeCoと退職金を両方受け取る場合、2026年以降は「10年間空ける」か「年金受取」を選ばないと、退職所得控除が大幅に減り、数十万円〜数百万円の損失が発生します。

📌 この記事の要約(3分で分かる重要ポイント)

🔴 2026年改正の核心

2026年1月1日から、iDeCoと退職金の受取間隔ルールが「5年」→「10年」に延長(法令上は「前年以前4年以内」→「前年以前9年以内」)。10年以内に両方を一時金で受け取ると、退職所得控除が大幅減額され、税負担が数十万円〜数百万円増加する可能性があります。

💡 最も重要な3つの対策

  1. 10年以上空けて受け取る(ただし受取順序に注意:iDeCo→退職金なら10年、退職金→iDeCoなら20年必要)
  2. どちらか(または両方)を年金受取にする(公的年金等控除が使え、10年・19年ルールの影響を受けない)
  3. 専門家にシミュレーション依頼(税務と労務の両方に精通した専門家への相談が必須)

⚠️ 特に注意すべきポイント

  • 受取順序でルールが異なる:「iDeCo先→退職金後」は10年空ける、「退職金先→iDeCo後」は20年空ける(19年ルール)
  • 年金受取のデメリット:公的年金と合算されるため、控除額を超えると課税される。社会保険料も増加
  • 2025年駆け込み:2025年中の受取は旧ルール適用だが、本当に得かは個別判断が必要

🎯 今すぐやるべき3つのアクション

  1. 勤務先の退職金規程、iDeCo残高、公的年金見込額を確認
  2. 複数パターン(一時金×一時金、一時金×年金、年金×年金)で税額シミュレーション
  3. 税理士・社労士に相談(特に税務と労務のワンストップ対応ができる専門家)

詳細な計算例、年齢別の受取タイミング、Q&Aは以下の本文をご覧ください。

この記事を読むことで、以下のベネフィットを得ることができます

  • 2026年の「10年ルール」改正の具体的な内容と影響が理解できる
  • iDeCoと退職金の最適な受け取り順序・タイミングが判断できる
  • 退職所得控除の計算方法と節税対策が分かる
  • 自分のケースでいくら税金が変わるか、シミュレーション方法が学べる
  • 専門家(税理士・社労士)に相談すべきポイントが明確になる

目次

2026年改正「10年ルール」とは?基本を解説

2026年1月1日から、確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)と退職金を両方受け取る際の「退職所得控除」の計算ルールが大きく変わります。

これが「10年ルール」と呼ばれる改正です。

※正確には、法令上「前年以前9年以内」という表現ですが、実務上「受取間隔を10年空ける」必要があるため、「10年ルール」と通称されています。

現行制度(2025年まで)の問題点

現在は、iDeCoと退職金を5年以内に受け取ると、退職所得控除が「重複部分は使えない」というルールがあります。

例えば:

  • 勤続30年で退職金を受け取り、退職所得控除1,500万円を使用
  • その3年後にiDeCoを一時金で受け取る場合、iDeCo分の退職所得控除は「30年-3年=27年分」しか使えない

2026年以降の新ルール

この「5年」が「10年」に延長されます(法令上は「前年以前4年以内」から「前年以前9年以内」へ)。

つまり、退職金とiDeCoを10年以内に受け取ると、退職所得控除が大幅に減額されるということです。

項目 2025年まで(現行) 2026年以降(新ルール)
重複期間 5年以内(前年以前4年以内) 10年以内(前年以前9年以内)
影響を受ける人 5年以内に両方受け取る人 10年以内に両方受け取る人
控除額の減少リスク 中程度 高い(より多くの人が影響を受ける)

詳しくは、厚生労働省の確定拠出年金制度に関するページをご確認ください。

なぜ今回の改正が行われるのか?背景を理解する

今回の改正の背景には、「働き方の多様化」と「老後資金準備の長期化」があります。

背景①:定年延長・再雇用の普及

従来は「60歳定年→すぐ退職金受取→数年後にiDeCo受取」というパターンが主流でした。

しかし現在は:

  • 65歳まで再雇用・継続雇用が一般的
  • 退職金の受け取りが「65歳時」や「再雇用終了時」にずれ込むケースが増加
  • 結果として、「退職金とiDeCoの受取間隔が5年を超えるが10年以内」というケースが急増

背景②:税制の公平性の確保

政府は、「同じ退職所得控除を、複数回使える期間を短くすることで、税制の公平性を高めたい」という意図を持っています。

特に、高所得者や長期間iDeCoに加入していた人ほど、退職所得控除を最大限活用できていたため、この改正によって「控除の重複利用」を制限する狙いがあります。

背景③:企業年金制度の多様化

企業型DC、DB(確定給付企業年金)、中小企業退職金共済など、複数の退職給付制度を持つ企業が増えています。

これらを「どの順番で、いつ受け取るか」によって、税負担が大きく変わるため、事前の計画とシミュレーションが極めて重要になっています。

退職所得控除の計算方法と2026年改正による変化

まず、退職所得控除の基本的な計算式を確認しましょう。

退職所得控除の計算式

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円 × 勤続年数
(最低80万円)
20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年)

例:勤続30年の場合

800万円 + 70万円 ×(30年 – 20年)= 1,500万円

2026年改正による「重複期間」の影響

先ほどの例(勤続30年、退職金受取後3年でiDeCo受取)の場合:

【2025年まで(現行ルール)】

  • 退職金:1,500万円の控除を使用
  • iDeCo(3年後受取):5年以内なので重複期間→控除は「30年-3年=27年分」=1,390万円

【2026年以降(新ルール)】

  • 退職金:1,500万円の控除を使用
  • iDeCo(3年後受取):10年以内(前年以前9年以内)なので重複期間控除は「30年-3年=27年分」=1,390万円

つまり:

従来は「5年空ければOK」だったのが、「10年空けないとダメ」になるため、より多くの人が控除額減少の影響を受けます。

課税対象となる退職所得の計算

退職所得は以下の式で計算されます:

課税退職所得 =(退職金額 – 退職所得控除額)× 1/2

この「1/2」が、退職所得の大きな優遇ポイントです。

ただし、退職所得控除が減れば、課税対象額が増え、結果として所得税・住民税の負担が増加します。

詳細は、国税庁の退職所得に関するページをご参照ください。

【具体例】同じ年に受け取った場合の税負担シミュレーション

ここでは、具体的な数字を使って、「10年ルール」の影響をシミュレーションしてみましょう。

【ケース設定】

  • 年齢:60歳
  • 勤続年数:30年
  • 退職金:2,000万円
  • iDeCo残高:1,000万円
  • 受取方法:すべて一時金

パターン①:同じ年に両方受け取る(最悪のケース)

合計受取額:3,000万円

退職所得控除(30年分):
800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円

課税退職所得:
(3,000万円 – 1,500万円)× 1/2 = 750万円

所得税・住民税(概算):
150万円〜180万円

パターン②:10年空けて受け取る(新ルール対応)

退職金(60歳時):2,000万円

  • 退職所得控除:1,500万円
  • 課税退職所得:(2,000万円 – 1,500万円)× 1/2 = 250万円
  • 税額:約25万円

iDeCo(70歳時):1,000万円

  • 退職所得控除(iDeCo加入30年として):1,500万円
  • 課税退職所得:(1,000万円 – 1,500万円)× 1/2 = 0円(控除内)
  • 税額:0円

合計税額:約25万円

【比較結果】

受取方法 税額 差額
同じ年に受取 150万円〜180万円
10年空けて受取 25万円 ▲125万円〜155万円の節税!

このように、受け取り方を工夫するだけで、100万円以上の節税が可能です。

一番得する受け取り方:3つの対策を比較

では、実際にどのような受け取り方が「一番得」なのでしょうか?

主な対策は以下の3つです。

対策①:10年以上空けて受け取る(一時金×一時金)

メリット:

  • 退職所得控除を2回フルに使える
  • 一時金受取なので、手続きがシンプル
  • 受取後の資金運用の自由度が高い

デメリット:

  • 60歳で退職金を受け取った場合、iDeCoは70歳まで待つ必要がある
  • その間、iDeCoの運用リスクを負い続ける
  • 70歳まで受け取らないと、75歳で強制的に受取開始となる(2022年改正)

注意:受け取る順番でルールが異なります

  • iDeCoを先→退職金を後:10年以上空ける(2026年改正の「10年ルール」)
  • 退職金を先→iDeCoを後:20年以上空ける(従来からの「19年ルール」※法令上は「前年以前19年以内」)

例:60歳で退職金を受け取った場合、iDeCoは80歳まで待つ必要があります。しかし、iDeCoの受給開始は75歳が上限のため、実質的には「年金受取」を選択するしかありません。

こんな人におすすめ:

  • 60代前半は他の収入(再雇用給与、不動産収入など)があり、iDeCoを受け取らなくても生活できる人
  • iDeCoの運用を継続し、さらに増やしたい人
  • 「iDeCoを先、退職金を後」の順番で受け取れる人

対策②:どちらか(または両方)を年金受取にする

メリット:

  • 年金受取の場合、「公的年金等控除」が使える
  • 65歳未満:年間60万円まで非課税
  • 65歳以上:年間110万円まで非課税(公的年金と合算)
  • 10年ルール・19年ルールの影響を受けない

デメリット:

  • 他の公的年金(老齢基礎年金・厚生年金)と合算されるため、トータルで控除額を超えると課税される
  • 国民健康保険料・介護保険料の算定基礎に含まれる
  • 毎年の確定申告が必要になる場合がある
  • 受取期間中の運用リスクがある(元本割れの可能性)

こんな人におすすめ:

  • 公的年金の受給額が少なく、公的年金等控除の枠が余っている人
  • 「毎年少しずつ受け取りたい」という安心感を重視する人
  • 「退職金を先、iDeCoを後」の順番で、19年ルールを回避したい人

対策③:退職金を分割受取(退職金規程による)

一部の企業では、退職金を「一括受取」と「分割受取」から選択できる制度があります。

メリット:

  • 退職金の一部を後年に繰り延べることで、iDeCoとの受取時期を調整できる
  • 所得の平準化により、税率を抑えられる可能性がある

デメリット:

  • すべての企業で選択できるわけではない
  • 分割受取の条件(期間、金額、手数料など)は企業ごとに異なる
  • 分割受取部分が「給与所得」扱いになる場合、かえって不利になることも

こんな人におすすめ:

  • 勤務先の退職金規程に「分割受取」の選択肢がある人
  • 税理士・社労士に相談し、シミュレーション済みの人

【3つの対策まとめ比較表】

対策 節税効果 実行の難易度 おすすめ度
①10年空ける ◎ 最大 △(70歳まで待つ必要/順番に注意) ★★★★☆
②年金受取 ○ 中程度 ○(選択するだけ) ★★★★★
③分割受取 △ 企業による ×(制度による) ★★☆☆☆

受け取るタイミングはいつがベスト?年齢別の考え方

「10年空ける」といっても、具体的にいつ、何歳で受け取るのがベストか?は、個々の状況によって異なります。

【年齢別】受取タイミングの考え方

60歳〜64歳:再雇用・継続雇用期間

基本方針:

  • この期間はまだ給与所得があるため、iDeCoや退職金を一時金で受け取ると、所得税率が高くなる可能性があります。
  • 推奨:退職金もiDeCoも、まだ受け取らない(または年金受取の開始を検討)

注意点:

  • 60歳で定年退職し、再雇用されない場合は、この限りではありません。
  • ただし、60歳で退職金を受け取ると、iDeCoは80歳まで待つ必要がある(19年ルール)ため、実質的には年金受取を選択せざるを得ません。

65歳:公的年金受給開始

基本方針:

  • 65歳で公的年金(老齢基礎年金・厚生年金)の受給が始まります。
  • この時点で「公的年金等控除(110万円)」の枠が使えるようになります。
  • 推奨:iDeCoを年金受取で開始(公的年金等控除の枠内で受け取る)

注意点:

  • 公的年金の受給額が多い人(年間200万円以上)は、iDeCoを年金で受け取ると、控除額を超えて課税される可能性があります。
  • この場合、むしろ「一時金で受け取る」方が有利なケースもあります。

70歳以降:iDeCo受取開始のデッドライン

基本方針:

  • 2022年の改正により、iDeCoの受取開始は75歳まで繰り下げ可能になりました。
  • ただし、60歳でiDeCoを受け取った場合、70歳で退職金を受け取れば「10年空ける」条件をクリアできます。

注意点:

  • 75歳まで繰り下げると、その後の運用期間がなくなり、受取方法の選択肢が狭まる可能性があります。
  • また、高齢になるほど、医療費控除や介護費用との兼ね合いも考慮する必要があります。

【ケース別】最適な受取タイミング例

ケース 退職金受取 iDeCo受取 ポイント
60歳で完全退職 60歳(一時金) 70歳(一時金) 10年空けて控除フル活用
65歳まで再雇用 65歳(一時金) 65歳〜(年金) 公的年金等控除を活用
公的年金が多い 60歳(一時金) 60歳(一時金または年金) 同年受取は税負担増/要シミュレーション
退職金が少ない 60歳(一時金) 65歳(一時金) 控除額内なら同時期でも影響少

年金受取を選ぶメリット・デメリット

「年金受取」は、10年ルール・19年ルールの影響を受けない有力な選択肢ですが、万能ではありません。

ここでは、年金受取の詳細なメリット・デメリットを解説します。

メリット①:公的年金等控除が使える

年金受取の最大のメリットは、「公的年金等控除」が適用されることです。

年齢 公的年金等控除額
65歳未満 年間60万円まで非課税
65歳以上 年間110万円まで非課税

例:

  • iDeCo残高:1,000万円
  • 年金受取期間:10年
  • 年間受取額:100万円

65歳以降に受け取る場合、年間100万円は公的年金等控除(110万円)の枠内なので、非課税で受け取れます。

メリット②:10年ルール・19年ルールの影響を受けない

年金受取は、「退職所得」ではなく「雑所得(公的年金等)」として扱われるため、10年ルール・19年ルールの影響を一切受けません。

これは、退職金とiDeCoを「近い時期に受け取りたい」人にとって、大きなメリットです。

メリット③:毎年少しずつ受け取れる安心感

一時金だと、「一度に大金を受け取る」ことになり、使い過ぎや運用失敗のリスクがあります。

年金受取なら、毎年決まった額が振り込まれるため、計画的な生活設計がしやすくなります。

デメリット①:他の公的年金と合算される

年金受取の場合、老齢基礎年金・厚生年金と合算されるため、トータルで控除額を超えると、課税されます。

例:

  • 公的年金:年間180万円
  • iDeCo年金:年間100万円
  • 合計:280万円

この場合、公的年金等控除(110万円)を超える170万円が課税対象となります。

デメリット②:社会保険料(国保・介護保険)が増える

年金受取は、国民健康保険料・介護保険料の算定基礎に含まれます。

結果として、保険料が年間数万円〜十数万円増加する可能性があります。

一時金であれば、翌年1年間だけ保険料が増えますが、年金受取だと受取期間中ずっと増え続けます。

デメリット③:受取期間中の運用リスク

年金受取の場合、受取期間中もiDeCo口座内で運用が継続されます。

つまり、市場の暴落があれば、元本が減少するリスクがあります。

一時金であれば、受取時点で運用リスクから解放されますが、年金受取ではそのリスクを負い続けることになります。

【年金受取の向き・不向き】

向いている人 向いていない人
公的年金が少ない(年間150万円以下) 公的年金が多い(年間200万円以上)
毎年少しずつ受け取りたい 一度にまとめて受け取りたい
運用を継続したい 運用リスクを取りたくない
10年ルール・19年ルールを避けたい 退職所得控除を最大限使いたい

自分の退職金規程・iDeCo残高を今すぐ確認すべき理由

ここまで読んで、「自分の場合はどうなんだろう?」と思われた方も多いはずです。

実は、最適な受取方法は、一人ひとり異なります。

そのため、今すぐ確認すべき3つのポイントをお伝えします。

確認ポイント①:自分の退職金規程

まず、勤務先の退職金規程を確認してください。

特に重要なのは:

  • 退職金の支給額(概算でもOK)
  • 支給時期(退職時 or 再雇用終了時?)
  • 分割受取の選択肢があるか?
  • 企業型DCがある場合、その残高と受取方法

多くの会社員は、自分の退職金額を正確に把握していません。

人事部や総務部に問い合わせれば、「退職金見込額」を教えてもらえるはずです。

確認ポイント②:iDeCoの加入年数と残高

次に、iDeCoの加入年数と現在の残高を確認してください。

特に:

  • iDeCo加入年数(退職所得控除の計算に必要)
  • 現在の残高(受取時の見込額)
  • 運用商品(リスク資産の割合)

iDeCoの残高は、各金融機関のWebサイトやアプリで簡単に確認できます。

確認ポイント③:公的年金の見込額

最後に、公的年金(老齢基礎年金・厚生年金)の見込額を確認してください。

これは、「ねんきん定期便」「ねんきんネット」で確認できます。

公的年金の額によって、「年金受取が有利か、一時金が有利か」が変わるためです。

詳しくは、日本年金機構のウェブサイトをご確認ください。

【確認後、次にやるべきこと】

上記3つを確認したら、次のステップに進みましょう。

  1. 簡易シミュレーションを行う
    ネット上の「退職金 税金 シミュレーター」を使って、概算の税額を計算してみてください。
  2. 複数のパターンを比較する
    「一時金×一時金(10年空ける)」「一時金×年金」「年金×年金」など、複数パターンをシミュレーションしてください。
  3. 専門家(税理士・社労士)に相談する
    シミュレーションだけでは分からない、細かい制度の違いや、自分に最適なプランは、専門家に相談するのが確実です。

特に、「税務(退職所得控除)」と「労務(退職金規程)」の両方に精通した専門家に相談することが重要です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 2025年中に退職金を受け取れば、旧ルール(5年)が適用されますか?

A. はい、適用されます。

新ルール(10年)は、2026年1月1日以降に受け取る退職金・iDeCoに適用されます。

したがって、2025年中に退職金を受け取り、2030年以前にiDeCoを受け取る場合は、旧ルール(5年)が適用されます。

ただし、「駆け込み受取」が本当に得かどうかは、個々の状況によります。税理士に相談することをおすすめします。

Q2. iDeCoを75歳まで繰り下げると、どうなりますか?

A. 75歳まで繰り下げ可能ですが、その後は強制的に受取開始となります。

2022年の改正により、iDeCoの受取開始は75歳まで繰り下げ可能になりました。

ただし、75歳に達すると、自動的に「老齢給付金」として受取が開始されます。

また、75歳まで繰り下げると、その後の運用期間がなくなるため、受取方法の選択肢が狭まる可能性があります。

Q3. 退職金を「分割受取」にすると、どうなりますか?

A. 企業の退職金規程によりますが、一部は「給与所得」扱いになる場合があります。

退職金を分割受取にする場合、「退職所得」として扱われるか、「給与所得」として扱われるか」は、企業の規程によって異なります。

「給与所得」扱いになると、退職所得控除が使えず、かえって税負担が増える可能性があります。

必ず、人事部や税理士に確認してから選択してください。

Q4. 企業型DCとiDeCoを両方持っている場合、どうすればいいですか?

A. 企業型DCとiDeCoは、「合算」して退職所得控除を計算します。

企業型DCとiDeCoを両方持っている場合、加入期間は「合算」ではなく「重複部分は長い方を採用」という複雑なルールがあります。

例:

  • 企業型DC加入期間:20年
  • iDeCo加入期間:10年(うち5年は企業型DCと重複)

この場合、退職所得控除の計算上の加入年数は「20年」となります(25年ではありません)。

この計算は非常に複雑なため、必ず専門家に相談してください。

Q5. 配偶者の退職金やiDeCoも影響しますか?

A. いいえ、配偶者の退職金・iDeCoは、あなたの退職所得控除に影響しません。

退職所得控除は、「個人単位」で計算されます。

したがって、配偶者が退職金やiDeCoを受け取っても、あなたの控除額には一切影響しません。

ただし、世帯全体の所得が増えることで、国民健康保険料や介護保険料が増加する可能性はあります。

Q6. 退職金を先に受け取る場合、iDeCoはいつ受け取ればいいですか?

A. 退職金を先に受け取る場合、iDeCoは「19年ルール」が適用されます。

退職金を先に受け取り、その後iDeCoを一時金で受け取る場合、「前年以前19年以内」に退職金を受け取っていると、重複期間分の退職所得控除が調整されます。

つまり、退職金とiDeCoの受取間隔を20年以上空ける必要があります。

例:

  • 60歳で退職金を受け取った場合、iDeCoは80歳まで待つ必要がある
  • ただし、iDeCoの受給開始は75歳が上限のため、実質的には「年金受取」を選択するしかない

このため、「iDeCoを先、退職金を後」の順番の方が、税制面で有利になるケースが多いです。

まとめ:今からできる3つのアクション

2026年の「10年ルール」改正は、iDeCoと退職金を両方受け取るすべての人に影響します。

特に、受け取る順番とタイミングを間違えると、数十万円〜数百万円の損失が発生する可能性があります。

この記事の内容を踏まえ、今からできる3つのアクションを実践してください。

アクション①:自分の退職金・iDeCo・公的年金を確認する

まず、今すぐ以下を確認してください:

  • 勤務先の退職金規程(支給額・支給時期・分割受取の可否)
  • iDeCoの加入年数と現在残高
  • 公的年金の見込額(ねんきん定期便・ねんきんネット)

アクション②:複数パターンをシミュレーションする

次に、以下のパターンで税額シミュレーションを行ってください:

  • 一時金×一時金(10年空ける)
  • 一時金×年金
  • 年金×年金
  • 受け取る順番(iDeCo→退職金 vs 退職金→iDeCo)

ネット上の「退職金 税金 シミュレーター」を活用しましょう。

アクション③:専門家(税理士・社労士)に相談する

最後に、必ず専門家に相談してください。

特に、「税務(退職所得控除)」と「労務(退職金規程)」の両方に精通した専門家に相談することが重要です。

「税理士は税金、社労士は手続き、と対応が縦割り」では、最適なプランは見つかりません。

税務と労務をワンストップで最適化できる専門家に相談し、あなたにとって「一番得する受け取り方」を見つけてください。

あなたの老後の手取り額を最大化するため、今すぐ行動を始めましょう!

※本記事は作成日時点の法令に基づき作成しております。記事の内容に関するお問い合わせや、内容の正確性・完全性についての責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。具体的なご相談は専門家までお問い合わせください。

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その顧問、今回の改正で「退職金」と「iDeCo」を連携できていますか?
今回の「10年ルール」改正は、「税務(退職所得控除)」と「労務(退職金規程)」の両方に精通していなければ、従業員(ご自身)の老後手取り額を最大化できません。
もし「税理士は税金、社労士は手続き、と対応が縦割り」と感じているなら、税務と労務をワンストップで最適化できる専門家(寺田税理士・社会保険労務士事務所(社労士法人フォーグッド))へご相談ください。

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