社会保険の扶養から外れたらどうする?【14日以内厳守】の「国民年金・国民健康保険」切り替え手続き完全ガイド

公開日: 2025.11.17





扶養外れたら?国民年金・保険の手続きガイド【必要書類・期限】



扶養から外れたらどうする?「国民年金・国民健康保険」切り替え手続き完全ガイド【14日以内厳守】

この記事で分かること(結論から)

パート収入が増えて年収130万円の壁を超え、配偶者の扶養から外れることになった——。そんな時、どんな手続きが必要なのか、不安に感じていらっしゃいませんか?

扶養から外れた場合、住所地の市区町村役場で「国民年金」と「国民健康保険」への切り替え手続きが必要です。期限は事実発生から14日以内です。

手続きには、配偶者の会社から発行される「健康保険資格喪失証明書」が必ず必要となります。この証明書がないと、窓口で手続きができませんので、まずは配偶者の勤務先に発行を依頼しましょう。

この記事を読むことで、以下のことが分かります:

  • 扶養を外れた後、具体的にどの窓口で、どんな手続きをすればよいのか
  • 手続きに必要な書類(資格喪失証明書、マイナンバーカードなど)
  • 14日以内に手続きしないとどんなリスクがあるのか
  • 国民年金の「種別変更」(第3号→第1号)の意味と重要性
  • 保険料の目安と、遡及して支払いが発生する場合の注意点

社会保険労務士・税理士として、多くのご相談をいただいてきた経験をもとに、迷わずスムーズに手続きを完了できるよう、ステップバイステップで解説いたします。

目次

なぜ扶養から外れると手続きが必要なのか?

日本では、働く人は必ず「公的医療保険」と「公的年金」に加入することが義務付けられています。これを「国民皆保険・国民皆年金」と呼びます。

配偶者の扶養に入っている間は、

  • 健康保険:配偶者の健康保険(被扶養者)としてカバーされている
  • 年金:国民年金の「第3号被保険者」として、保険料負担なしで年金に加入している

という状態でした。

しかし、年収が130万円以上になる見込みとなった場合、配偶者の扶養(被扶養者)から外れます。そのため、

  • 健康保険 → 自分で「国民健康保険」に加入する
  • 年金 → 国民年金の「第1号被保険者」に種別変更する

という手続きが必要になるのです。

この手続きを行わないと、医療費が全額自己負担になったり、将来の年金受給額に影響が出たりする可能性があります。必ず期限内に手続きを完了させましょう。

STEP1:配偶者の会社から「健康保険資格喪失証明書」を取得する

まず最初にやるべきことは、配偶者の勤務先(会社の人事・総務部門)に連絡し、「健康保険資格喪失証明書」を発行してもらうことです。

資格喪失証明書とは?

「健康保険資格喪失証明書」とは、あなたが配偶者の健康保険の被扶養者でなくなったことを証明する公的書類です。正式には「健康保険被扶養者(異動)届」に基づき、健康保険組合や協会けんぽが発行します。

この証明書がないと、市区町村の窓口で国民健康保険・国民年金の手続きができません。最も重要な書類ですので、必ず最初に取得してください。

証明書の取得方法

  1. 配偶者に依頼する:配偶者から会社の人事・総務部門に「妻(または夫)が扶養を外れるので、資格喪失証明書を発行してほしい」と依頼してもらいます。
  2. 発行までの期間:通常、5〜7営業日程度で発行されます。14日の期限がありますので、扶養を外れることが決まったら、できるだけ早く依頼しましょう。
  3. 発行元:会社が加入している健康保険組合、または協会けんぽから発行されます。

証明書に記載される情報

  • あなたの氏名、生年月日
  • 被保険者(配偶者)の氏名、記号・番号
  • 資格喪失年月日(扶養から外れた日)
  • 保険者(健康保険組合または協会けんぽ)の名称・印

この「資格喪失年月日」が、国民健康保険と国民年金の加入日(切り替え日)の基準となります。

STEP2:市区町村役場で「国民健康保険」に加入する

資格喪失証明書を取得したら、次はお住まいの市区町村役場の「国民健康保険(国保)」窓口へ行きましょう。

どこへ行けばいい?

  • 窓口:市区町村役場の「国保年金課」「保険年金課」など(自治体により名称が異なります)
  • 持ち物
    • 健康保険資格喪失証明書(必須)
    • マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
    • 印鑑(認印でOK、自治体により不要の場合もあり)
    • 口座情報が分かるもの(保険料の口座振替を希望する場合)

手続きの流れ

  1. 窓口で申請書を記入:「国民健康保険被保険者資格取得届」に必要事項を記入します。窓口の職員が丁寧に教えてくれますので、安心してください。
  2. 資格喪失証明書を提出:配偶者の会社から取得した証明書を提出します。
  3. 保険証の交付:手続きが完了すると、その場で「国民健康保険被保険者証(保険証)」が交付されます(自治体によっては後日郵送の場合もあります)。

保険料の決定と支払い

国民健康保険料は、世帯の所得や加入人数に応じて計算されます。手続き後、1〜2か月以内に「納入通知書」が郵送されてきますので、指定された方法で納付してください。

資格喪失日まで遡って保険料が計算されます。手続きが遅れた場合、数か月分の保険料をまとめて請求されることがありますので、ご注意ください。

STEP3:市区町村役場で「国民年金(第1号被保険者)」に種別変更する

国民健康保険の手続きと同時に、国民年金の「種別変更」手続きも行います。多くの自治体では、同じ窓口(国保年金課)で両方の手続きができます。

「第3号被保険者」から「第1号被保険者」へ

これまであなたは、配偶者の扶養に入っている「第3号被保険者」でした。第3号被保険者は、保険料の負担なしで国民年金に加入している状態です。

しかし、扶養から外れると、「第1号被保険者」に種別変更され、ご自身で国民年金保険料を支払う義務が発生します。

手続きの流れ

  1. 窓口で申請書を記入:「国民年金被保険者種別変更届」に必要事項を記入します。
  2. 資格喪失証明書を提出:国民健康保険と同じ証明書を使用します(コピーでも可)。
  3. 年金手帳またはマイナンバーカードを提示:本人確認と基礎年金番号の確認のため。
  4. 手続き完了:後日、日本年金機構から「国民年金保険料納付書」が郵送されてきます。

保険料の支払い

国民年金保険料は全国一律で、令和7年度(2025年4月~2026年3月)は月額17,510円です(年度により変動します)。

納付書が届いたら、コンビニエンスストア、銀行、郵便局、クレジットカード、口座振替などで納付できます。口座振替やクレジットカード払いにすると、割引が適用される場合がありますので、日本年金機構のホームページで確認してみてください。

第3号被保険者の資格を失った日(資格喪失日)まで遡って保険料が請求されます。手続きが遅れると、数か月分をまとめて支払うことになりますので、速やかに手続きを行いましょう。

手続きのタイミングと「14日以内」の期限

国民健康保険法および国民年金法では、「資格を失った日から14日以内」に手続きを行うことが義務付けられています。

「資格を失った日」とは?

具体的には、配偶者の健康保険の被扶養者資格を喪失した日のことです。この日付は、「健康保険資格喪失証明書」に記載されています。

例えば、

  • 令和6年11月10日に扶養を外れた → 11月24日までに手続き
  • 令和6年12月1日に扶養を外れた → 12月15日までに手続き

14日を過ぎてしまったら?

14日を過ぎても手続き自体は可能ですが、以下のリスクがあります

  • 医療費が全額自己負担になる可能性:新しい保険証が手元にない期間に医療機関を受診すると、いったん10割(全額)を支払い、後日精算する手間が発生します。
  • 保険料の遡及請求:資格喪失日まで遡って保険料が請求されるため、数か月分をまとめて支払うことになり、家計への負担が大きくなります。

できる限り速やかに、14日以内に手続きを完了させましょう。

手続きが遅れた場合のリスク

手続きを先延ばしにしてしまうと、以下のようなリスクが発生します。社会保険労務士として、多くのトラブル事例を見てきましたので、ぜひご注意ください。

1. 医療費の全額自己負担

新しい国民健康保険証が届くまでの「空白期間」に医療機関を受診した場合、保険証を提示できないため、医療費が10割(全額)自己負担となります。

後日、国民健康保険証が交付されてから「療養費支給申請」を行えば、7割分は返金されますが、

  • いったん全額を立て替える必要がある
  • 申請手続きに時間と手間がかかる
  • 返金までに1〜2か月程度かかる

といった不便が生じます。

2. 保険料の遡及請求

国民健康保険料と国民年金保険料は、「資格喪失日」まで遡って請求されます。手続きが3か月遅れた場合、3か月分の保険料をまとめて支払うことになります。

例:

  • 国民健康保険料:月額10,000円 × 3か月 = 30,000円
  • 国民年金保険料:月額17,510円 × 3か月 = 52,530円
  • 合計:82,530円の支払い

このように、まとめて請求されると家計への負担が大きくなります。

3. 将来の年金受給額への影響

国民年金の種別変更を行わないと、第3号被保険者のままになってしまい、「未納期間」が発生する可能性があります。未納期間があると、将来受け取る老齢基礎年金の額が減少してしまいます。

速やかに手続きを行い、未納期間を作らないようにしましょう。

保険料はいくらかかる?(概算)

扶養から外れると、毎月の保険料負担が発生します。「いったいいくらかかるの?」と不安に思われる方も多いと思いますので、概算をご紹介します。

国民年金保険料

全国一律:月額17,510円(令和7年度・2025年4月~2026年3月)

国民年金保険料は、所得に関係なく全国一律です。毎年4月に見直されます。

年度 月額保険料
令和6年度(2024年4月~2025年3月) 16,980円
令和7年度(2025年4月~2026年3月) 17,510円

※最新の保険料は、日本年金機構の公式サイトでご確認ください。

国民健康保険料

国民健康保険料は、自治体ごとに計算方法が異なります。一般的には、以下の要素で計算されます:

  • 所得割:前年の所得に応じて計算
  • 均等割:加入者1人あたりの定額
  • 平等割:1世帯あたりの定額(自治体により有無が異なる)
  • 資産割:固定資産税に応じて計算(自治体により有無が異なる)

保険料の目安(年収150万円の場合)

年収150万円程度のパート収入の方の場合、国民健康保険料は月額8,000円〜15,000円程度が目安となります(自治体や世帯構成により大きく変動します)。

項目 月額概算
国民年金保険料 17,510円(令和7年度)
国民健康保険料 8,000円〜15,000円
合計 25,510円〜32,510円

正確な保険料を知りたい場合は、お住まいの市区町村の国保年金課窓口で「保険料試算」をしてもらうことをおすすめします。多くの自治体では、電話やホームページでも概算を確認できます。

よくある質問(Q&A)

Q1. 配偶者の会社がなかなか資格喪失証明書を発行してくれない時はどうすればいいですか?

A. 健康保険組合や協会けんぽに直接連絡することも可能です。通常、会社の人事・総務部門に依頼してから5〜7営業日程度で発行されますが、14日の期限が迫っている場合は、その旨を伝えて急ぎの対応をお願いしましょう。

また、退職証明書や社会保険資格喪失届のコピーで代用できる場合もありますので、市区町村の窓口に事前に確認することをおすすめします。

Q2. 一時的に労働時間を減らせば扶養に戻れますか?

A. 令和8年4月からは、労働契約書に記載された年間見込み収入で判定されるルールが本格化します。そのため、「今月だけシフトを減らす」といった一時的な調整では扶養に戻ることが難しくなります。

扶養に戻るには、労働契約自体を変更し、年間見込み収入が130万円未満となる契約書を新たに締結する必要があります。詳細は配偶者の会社の人事部門や社会保険労務士にご相談ください。

Q3. 手続きが14日を過ぎてしまった場合はどうなりますか?

A. 14日を過ぎても手続き自体は可能ですが、いくつかのリスクがあります:

  • ①医療費が全額自己負担になる可能性:新しい保険証が届くまでの間に医療機関を受診した場合、いったん10割負担となり、後日精算手続きが必要になります。
  • ②保険料の遡及請求:国民健康保険料と国民年金保険料は、扶養から外れた日(資格喪失日)まで遡って請求されます。手続きが遅れると、数か月分の保険料をまとめて支払うことになり、家計への負担が大きくなります。

できる限り速やかに手続きを行いましょう。

Q4. 国民健康保険料と国民年金保険料は月額いくらぐらいかかりますか?

A. 国民年金保険料は全国一律で、令和7年度(2025年4月~2026年3月)は月額17,510円です。

国民健康保険料は自治体によって計算方法が異なりますが、年収150万円程度の方で月額8,000円〜15,000円程度が目安となります(世帯の所得や加入人数により変動)。

合計すると月額25,500円〜32,500円程度の負担増となる可能性があります。正確な金額は、お住まいの市区町村の国保年金課窓口でシミュレーションしてもらうことをおすすめします。

Q5. 夫の扶養を外れるタイミングはいつですか?

A. 健康保険の被扶養者資格を外れるタイミングは、「年間収入が130万円を超えることが確実になった時点」です。

具体的には、

  • ①昇給や労働時間の増加により、今後12か月間の見込み収入が130万円を超えることが明らかになった日
  • ②実際に月収が約108,334円(130万円÷12か月)を連続して超えた時点

などが該当します。

令和8年4月以降は労働契約書の年間見込み収入で判定されるため、契約変更の日が資格喪失日となるケースが増えます。

まとめ:扶養を外れたら速やかに手続きを

パート収入が増え、年収130万円の壁を超えて配偶者の扶養から外れることになった場合、14日以内に市区町村役場で「国民健康保険」と「国民年金(第1号被保険者)」への切り替え手続きが必要です。

手続きのポイント(おさらい)

項目 内容
最重要書類 健康保険資格喪失証明書(配偶者の会社から取得)
手続き期限 資格喪失日から14日以内
手続き窓口 お住まいの市区町村役場「国保年金課」
必要な手続き ①国民健康保険への加入
②国民年金の種別変更(第3号→第1号)
保険料の目安 合計で月額25,500円〜32,500円程度(年収150万円の場合)
遅れた場合のリスク ①医療費の全額自己負担
②保険料の遡及請求
③将来の年金額への影響

次のアクション

この記事を読んで「そろそろ手続きしなきゃ」と思われた方は、今すぐ以下のアクションを起こしましょう:

  1. 配偶者に連絡:会社の人事部門に「資格喪失証明書」の発行を依頼してもらう
  2. 必要書類を準備:マイナンバーカード、印鑑、口座情報など
  3. 役所へ行く日を決める:14日以内に必ず行けるよう、スケジュールを確保
  4. 窓口で相談:不明点があれば、窓口の職員に遠慮なく質問しましょう

手続きは一度完了すれば、あとは毎月の保険料を納付するだけです。最初の一歩を踏み出せば、思ったよりも簡単に終わりますので、ぜひ前向きに取り組んでください。

もし、手続きについて不安なことがあれば、日本年金機構の公式サイト厚生労働省の公式サイトでも詳しい情報が確認できます。また、お住まいの市区町村のホームページにも、手続きの流れや必要書類が掲載されていますので、ぜひご活用ください。

この記事が、扶養を外れた後の手続きに不安を感じていらっしゃる皆さまの助けになれば幸いです。

※本記事は作成日時点の法令に基づき作成しております。国民健康保険料の計算方法等は自治体により異なります。具体的なご相談は専門家や市区町村窓口までお問い合わせください。

関連記事『「年収130万円の壁」に新ルール!被扶養者認定の改正ポイント』

そもそも、なぜ今回扶養から外れることになったのか? 令和8年4月から本格化する「労働契約書の年間見込み収入」による判定ルールなど、最新の改正情報を確認しておきたい方はこちらをご覧ください。

詳しくはコチラ↓↓↓
『「年収130万円の壁」に新ルール!被扶養者認定、令和8年4月から労働契約書の年間収見込みで判定へ』

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