2025年10月扶養要件が拡大!19歳~23歳の年収150万円の壁
公開日: 2025.08.28
目次
はじめに:何が変わるのか?
2025年、日本の税と社会保険のルールが大きく変わります。特に、働く学生やパートタイマーの方々、そしてそのご家族にとって重要な「年収の壁」に新しい基準が設けられます。このガイドは、複雑な制度変更をわかりやすく解説し、あなたの立場に合わせた最適な働き方を見つけるためのツールです。まずは下の図と表で、2025年からの「年収の壁」の全体像を掴みましょう。
現行制度と改正後の比較(19歳以上23歳未満の被扶養者の場合)
項目 | 現行 (~2025年9月) | 改正後 (2025年10月~) |
---|---|---|
社会保険の扶養上限 | 年間収入130万円未満 | 年間収入150万円未満 |
税制上の扶養控除 | 年収103万円超で控除がゼロになる | 年収150万円まで満額控除、188万円まで段階的に減少 |
図で見る「年収の壁」ステップ
-
~110万円:住民税の壁
本人に住民税が課税され始めます。
-
106万円:社会保険の壁 ①
企業規模など条件を満たすと社会保険加入義務が発生。
-
130万円:社会保険の壁 ②
扶養から外れ、自身で国民健康保険等に加入。
-
150万円:【新】社会保険&税金の壁
19-23歳未満限定。社会保険の扶養から外れ、親の税負担も増え始めます。
2025年版「年収の壁」早見表
年間収入の目安 | 壁の名称・種類 | 超えるとどうなるか? | 主な対象者 |
---|---|---|---|
約110万円 | 住民税の壁 | 本人に住民税が課税され始める。 | すべての労働者 |
106万円 | 社会保険の壁 (企業規模等) | 勤務先の社会保険への加入義務が発生。 ※週20時間以上、月収8.8万円以上、従業員51人以上などの要件あり。 詳しくは厚労省HPへ |
パートタイマー等 |
123万円 | 扶養控除の壁 | 扶養者(親など)が税制上の扶養控除を受けられなくなる。 | 被扶養者と扶養者 |
130万円 | 社会保険の壁 (一般) | 社会保険の扶養から外れ、自身で国民健康保険等に加入。 | パートタイマー等 |
150万円 | 【新】社会保険の壁 | 【19歳~23歳未満限定】親などの社会保険の扶養から外れる。 詳しくは日本年金機構HPへ |
学生・若年層 |
150万円 | 【新】特定親族特別控除の壁 | 【19歳~23歳未満限定】親が受けられる税金控除額が減少し始める。 詳しくは国税庁HPへ |
学生・若年層 |
約160万円 | 配偶者特別控除の壁 | 【配偶者限定】扶養者の税金控除額が減少し始める。 | 配偶者と扶養者 |
188万円 | 特定親族特別控除の上限 | 【19歳~23歳未満限定】親の税金控除がゼロになる。 | 学生・若年層 |
「扶養」の2つの意味:税金と社会保険
「扶養」には税金と社会保険の2種類があり、ルールが異なります。特に、給与以外に支給される「通勤手当」の扱いが違う点は重要です。この違いを理解することが、「年収の壁」を正しく把握するための第一歩となります。
① 税法上の扶養
扶養者(親など)の所得税や住民税を軽くするための制度です。
- 目的:扶養者の税負担軽減
- 根拠法:所得税法など
- 通勤手当:非課税限度額内は年収に「含まない」
② 社会保険上の扶養
被扶養者が自分で保険料を払わずに健康保険に入れる制度です。
- 目的:被扶養者の医療保険確保
- 根拠法:健康保険法など
- 通勤手当:年収に「含む」
学生・保護者の皆様へ:「働き損」に注意
新ルール:150万円が新しい目安
扶養認定日が令和7年10月1日以降で、扶養認定を受ける方が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)、社会保険の扶養に入れる年間収入の上限が、現行の「130万円未満」から「150万円未満」に引き上げられます。同時に、税金の扶養控除も150万円までは満額受けられ、そこから段階的に減少する新しい仕組みに変わります。これにより、年収150万円が「働き損」を避けるための新しい目安となります。
変更されない要件について
今回の変更は年間収入の上限のみです。以下の要件に変更はありません。
- 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)
- かつ、同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
- かつ、別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
年齢の判定と注意点
年齢要件(19歳以上23歳未満)は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。例えば、令和7年11月に19歳の誕生日を迎える場合、令和7年における年間収入要件は150万円未満となります。
【重要】 令和7年10月1日以降の届出であっても、扶養認定日が令和7年10月1日より前の期間にさかのぼる場合、年間収入の要件は旧来の130万円未満で判定されますのでご注意ください。
年収150万円を超えるとどうなる?
年収が150万円を超えた瞬間に、①本人の社会保険料負担 と ②親の税負担増 が同時に発生し、世帯全体の手取りが一時的に減ってしまう「働き損」が起こる可能性があります。例えば、年収160万円の場合、収入は20万円増えても、新たな負担が約25万円発生し、結果的に世帯の手取りが約5万円減ってしまう、といったケースが考えられます。
配偶者(パートタイマー)の皆様へ
重要:今回の変更は対象外です
まず重要な点として、今回新設された「150万円の社会保険の壁」は配偶者には適用されません。あなたにとって重要な壁は、これまで通り「106万円」と「130万円」です。
まず重要な点として、今回新設された「150万円の社会保険の壁」は配偶者には適用されません。あなたにとって重要な壁は、これまで通り「106万円」と「130万円」です。
年収106万円~123万円の「要注意ゾーン」
このゾーンでは、所得税が非課税でも社会保険の加入義務が発生する可能性があります。
「自分は税金を払っていないから扶養の範囲内」と考えていても、勤務先の規模などによっては、106万円を超えた時点で社会保険の加入義務が発生し、手取りが減ってしまう可能性があります。ご自身の勤務先の条件を改めて確認しましょう。
経営者・人事担当者の皆様へ
企業としてのアクションプラン
1. 社内手続きの更新
19歳~23歳未満の被扶養者について「年末時点の年齢」を確認するプロセスを追加。扶養申請時の収入証明書類の提出を徹底し、認定基準を明確化する必要があります。
2. 従業員への情報提供
特に学生の子供を持つ従業員やパートタイマー向けに、社内説明会やFAQ資料で新制度を丁寧に解説し、混乱を防ぎます。
3. 社内規程の監査
家族手当等の支給要件が「税法上の扶養親族」等に連動している場合、実態と乖離する可能性があります。就業規則や賃金規程を見直し、トラブルを未然に防ぎます。
4. 政府の支援策の活用
「キャリアアップ助成金」などを活用し、パートタイマーの社会保険加入を促進。手取り減を緩和し、労働意欲向上と人手不足解消に繋げるチャンスです。
よくあるご質問 (Q&A)
Q. 今回(令和7年10月)の変更の対象に配偶者は含まれないのですか。
A. はい、含まれません。今回の見直しは、19歳以上23歳未満の方に限定され、被保険者の配偶者(事実婚を含む)は対象外となります。
Q. 今回(令和7年10月)の変更は、学生であることは要件ですか。
A. いいえ、学生であることは要件ではありません。あくまでも年齢(19歳以上23歳未満)によって判断されます。
Q. 年齢要件(19歳以上23歳未満)は、いつの時点で判定するのですか。
A. 扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。例えば、ある年の10月に19歳の誕生日を迎える場合、その年1年間の収入要件は150万円未満となります。
Q. 年間収入が150万円未満かどうかの判定方法は変わりますか。
A. いいえ、判定方法は従来と同じです。過去・現在・未来の収入状況から、今後1年間の収入を見込んで判断します。過去1年間の実績だけで判断するわけではありません。
Q. 23歳になる年の収入要件はどうなりますか。
A. その年の12月31日時点で23歳になる年(暦年)からは、年間収入130万円未満の基準で判定されます。
Q. 令和7年10月1日より前にさかのぼって扶養認定する場合の収入要件は?
A. たとえ届出が令和7年10月1日以降であっても、扶養認定日がそれより前の期間である場合、旧来の130万円未満で判定します。新ルールはさかのぼって適用されません。
まとめ
2025年の制度改正では、19歳から23歳未満を対象に社会保険の扶養上限が150万円に引き上げられます。この変更は配偶者には適用されません。税金と社会保険、2種類の「壁」の違いを正しく理解し、ご自身の状況に合わせた働き方を選択することが重要です。本記事がその一助となれば幸いです。