キャリアアップ助成金の厳しい審査をクリアする5つのポイント

2023.11.16

はじめに:キャリアアップ助成金の変更点と注意点

キャリアアップ助成金は、申請要件さえ満たせていれば誰でも受給できるので、事業主の方に広くおすすめできる助成金の1つです。しかし要件を満たしているかどうかを判断するためには、厳しい審査があります。
2023年4月1日にキャリアアップ助成金の各コースについて、変更点があります。当記事ではこの変更点の内容についても詳しく説明していきます。

キャリアアップ助成金とは?

非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するために、正社員化や処遇改善への取り組みを実施した事業主に対して、厚生労働省が助成金を支給する制度です。
キャリアアップ助成金は、大きく分けて2種類あります。1つは、非正規雇用社員を正社員にした時に受け取ることができる助成金。もう1つは、職場の処遇改善をしたときに受け取ることができる助成金です。

今年度(令和5年)のキャリアアップ助成金の各コースの変更点は、下記のとおりです。

キャリアアップ助成金の変更点(2023年4月1日~)

【1.正社員化コース】

正社員化コースは2023年11月にさらに増額・拡充されているためこちらをぜひ確認してください

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⑴令和5年4月1日以降の取組み(正社員化や規定改定、労働時間の延長等の取組み)(注1)より、生産性要件を満たした場合の加算措置を廃止
⑵キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の訓練を活用して正社員化する場合の、加算の対象となる訓練を統合・拡充
⑶人材開発支援助成金の特定の訓練の対象労働者の正社員化に限り、人材開発支援助成金の計画届とキャリアアップ計画書を一本化(注2)
⑷有期実習型訓練修了者について「賃金の額又は計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受けている必要があるとして要件を変更
 ※(注1)雇入れから転換日まで6カ月を超える場合は6カ月間、6カ月に満たない場合は雇入れから転換日までの間。令和5年10月1日以降の転換から適用されます。
 ※(注2)紙面で人材開発支援助成金における「訓練実施計画届」を作成・提出する場合に、作成・提出をもってキャリアアップ助成金(正社員化コース)における「キャリアアップ計画」とみなされます(訓練対象者が正社員化された場合のみの取扱い)。この場合、「訓練実施計画届」の裏面にある追加項目の記載が必要です。

【2.賃金規定等改定コース】

⑴令和5年4月1日以降の取組みに係る制度の変更はないが、令和4年12月2日に助成基準の見直しおよび助成額の拡充、生産性要件の廃止を実施

【3.賃金規定等共通化コース】

⑴令和5年4月1日以降の取組みより、生産性要件を満たした場合の加算措置を廃止(注3)
⑵正規雇用労働者の賃金規定等において、等級の下に号俸が存在する場合の共通化について、原則として正規雇用労働者の号俸等と有期雇用労働者等の時給が1対1対応とすることを必要としつつ、たとえ号俸が完全に一致していなくとも、有期雇用労働者等の号俸が共通化した正規雇用労働者の号俸以上であれば、共通化およびその適用がなされているとみなすことができるよう、支給要件を次のように緩和
・令和4年度まで:非正規雇用労働者に正規雇用労働者と「同一の区分」を適用
・令和5年度以降:非正規雇用労働者に正規雇用労働者と「同一の区分以上」を適用
 ※(注3)生産性要件の廃止に伴い、助成額の見直しが行われています。

【4.賞与・退職金制度導入コース】

⑴令和5年4月1日以降の取組みより、生産性要件を満たした場合の加算措置を廃止(注4)
 ※(注4)生産性要件の廃止に伴い、助成額の見直しが行われています。

【5.選択的適用拡大導入時処遇改善コース】

⑴令和4年9月30日の制度廃止日までの取組み(社会保険加入)については、取組日時点で適用を受けるキャリアアップ助成金支給要領(R4.4.1改定版)に基づき、規定の支給申請期間中に支給申請を行うことが可能

【6.短時間労働者労働時間延長コース】

⑴令和5年4月1日以降の取組みより、生産性要件を満たした場合の加算措置を廃止(注5)
 ※(注5)生産性要件の廃止に伴い、助成額の見直しが行われています。
以上が変更点となります。

キャリアアップ助成金の厳しい審査に受かるための注意点

キャリアアップ助成金の審査は厳しいの?

コロナ禍での補助金・助成金の不正受給が相次ぎ、補助金や助成金の審査は全体的に厳しくなってきています。キャリアアップ助成金の場合は、特段コロナ禍によって厳格化されたということはありません。これまで通り、要件さえ満たしていれば、基本的に誰でも受給できます。

ただ、キャリアアップ助成金の難しい点は、受給要件を満たしていることを証明することです。実地調査や会計検査がされることもありますし、就業規則を一字一句聞いて確認してくる審査員もいます。

助成金自体のルールも複雑で難しいので、専門家である社労士に相談するのがおすすめです。弊社では無料で助成金のご相談をお受けしております。

今回の変更点について、専門家である社労士が考察

就業規則で正社員と非正規雇用労働者の違いを明記すること

ご紹介した変更点のうち、重要なのが2023年4月1日以降は、少なくとも就業規則上では、正社員と非正規雇用労働者のあいだで「明確な違い」を設けていない会社は、受給が難しくなるでしょう。

同一労働・同一賃金の原則に違反しない内容にすること

また、明確な違いを設けるうえで、「同一労働・同一賃金の原則」に違反しないように注意する必要があります。
この原則は、正社員と非正規雇用労働者とのあいだで、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることを禁止するものです。2020年4月に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」で定められてから、2020年4月には大企業、2021年4月には中小企業に適用されています。

せっかく正社員と非正規労働者の間で賃金の額・手当等による違いを設けても、それが同法で禁止されている不合理な待遇差であると判断されれば、労働関係法令に違反している=助成金が不支給となる、といった厳しい審査が下される可能性もあると考えています。

正社員と非正規雇用労働者について待遇差が合理的かどうかの判断基準とは?

正社員と非正規雇用労働者について待遇差が合理的かどうかの判断基準
厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」によると、待遇差が合理的であるか否かは、3つの観点で判断するとされています。
①職務内容(業務の内容+責任の程度)
②職務内容・配置の変更の範囲
③その他の事情

キャリアアップ助成金(正社員化コース)を適切に受給するためには、①~③のうち少なくとも1つ以上の観点で、正社員及び非正規労働者の「明確な違い」を設け、それを就業規則にも明記するとともに、その違いを反映した賃金制度(賃金の額または支給方法)を設計・運用していくことが必要になるでしょう。

①職務内容(業務内容+責任の程度)

業務の内容は、「業務の種類」「中核的業務」の2つで判断されます。

・業務の種類:販売職、事務職、製造工、印刷工などの職種
・中核的業務:その職務に不可欠な業務、成果が業績や評価に大きな影響を与える業務、職務全体に占める時間的割合・頻度が多い業務など
業務の種類、中核的業務を比較して実質的に同じであれば、「業務の内容は同じ」とみなされます。
業務の程度については、たとえば以下の点で、著しく異なっているかどうかで判断されます。

・単独で契約締結可能な金額の範囲
・管理する部下の人数、決裁権限の範囲
・業務の成果について求められる役割
・トラブル発生時や臨時、緊急時に求められる対応の程度
・ノルマ等の成果への期待度 など

②職務内容・配置の変更の範囲

転勤、人事異動、昇進などの有無や範囲で判断されます。これは制度としてではなく、実態として相違があるかどうかです。
たとえば、就業規則では「正社員は全国異動あり」「非正規雇用労働者は異動なし」と規定していても、 実態として異動した者がいなければ、「配置の変更範囲」は同じだとみなされます。

③その他の事情

その他の事情として考慮され得るものは、たとえば「職務の成果」「能力」「経験」 「合理的な労使慣行」「労使交渉の経緯」などが挙げられています。

キャリアアップ助成金の申請する時のの5つの注意点

キャリアアップ助成金を申請するさいに、あらかじめ知っておきたい5つの注意点について解説します。

1.正社員化・処遇改善措置前の手続き

正社員への転換や賃金アップなどの措置をとる「前」に、キャリアアップ計画を策定する必要があります。

2.就業規則への明記

どのような労働者が該当の制度の対象になるのか、就業規則にルールとしてはっきりと明記しましょう。

3.支給申請期間中の手続き

キャリアアップ助成金を申請できるのは、該当の措置をおこなったあと、6ヶ月分の賃金が支払われた日の翌日から2か月以内です。この申請期間中に手続きをしなければなりません。

4.申請後の訂正は不可

キャリアアップ助成金の申請をするのは、処遇を変更し、6ヶ月分の賃金を支払ったあとです。もし申請後に賃金アップの割合を間違えたことに気づいても、修正することはできません。不備がないように慎重に手続きを進めましょう。

5.実際に助成金が支給されるまでには時間がかかる

状況によって異なりますが、該当の措置をおこなってから助成金を受け取るまでに、1年程度はかかると考えておきましょう。

キャリアアップ助成金が支給されない5パターン

申請時は要件を満たしていても、キャリアアップ助成金が不支給になってしまう5つのパターンについて説明します。

1.労働基準法などの法令違反がある場合

支給申請日の前日から過去1年以内に労働関連の法律に違反したことがある事業主は、キャリアアップ助成金の対象になりません。残業代の算出方法、労働時間、有給休暇付与・取得など、最新の労働基準法を遵守した経営ができているか確認しましょう。

2.実地調査の協力を拒否した場合

キャリアアップ助成金の申請後、審査のために事業所の実地調査をされることがあります。実地調査は予告なくおこなわれることもあり、拒否すると助成金の支給を受けられません

3.書類の疑義に対して、適切な対応をしない場合

申請書や添付書類などに不明点があった場合は、都道府県労働局長から書類の補正や追加書類の提出を求められます。期日までに必要な対応をとらないと、不支給の対象となります。

4.不正給付から5年以内の申請の場合

不正受給とは、虚偽の申告をし、本来なら受け取れないはずの助成金を受け取ることです。過去に不正受給をしたことがある事業主は、5年間はキャリアアップ助成金の受給ができません

5.受給後の会計検査院検査への協力不同意の場合

キャリアアップ助成金の支給後、会計検査院が会計検査をおこなうことがあります。会計検査への協力に応じなかった場合は、助成金を受け取ることはできません。会計検査の対象となる可能性を踏まえて、支給申請書や添付書類の写しなどは、支給決定から5年間は保存しておきましょう。

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キャリアアップ助成金のしくみは複雑で、審査も厳しいでしょう。確実に審査に合格し助成金を受け取るには、専門家に相談することをおすすめします。弊社には助成金の専門家である社労士が4名在籍しており、ノウハウも豊富にありますのでご相談もお受けしております。どうぞお気軽にお問い合わせください。また税理士も在籍しておりますので助成金受給後の効果的な節税対策も提案いたします。