2025年最新|178万円の壁はいつから?高市政権での可能性を税理士・社労士が解説
公開日: 2025.10.21
最終更新日: 2025.10.21
2025年10月の連立合意で注目される「178万円の壁」。現在160万円まで非課税ですが、178万円まで実現するのか?実現可能性50%、最短2026年から。財源7〜8兆円の壁、社会保険料6万円引き下げとセットで解説します。
この記事で分かること(重要ポイント)
- 178万円の壁とは:所得税が課税されない年収の上限を178万円に引き上げる政策(現在は103万円→2025年から160万円)
- 実現可能性:2025年10月の自民・維新連立合意書には具体的数値が明記されず、実現は不透明
- いつから:実現する場合、最短で2026年1月から適用の可能性(ただし現時点では未定)
- 財源問題:約7〜8兆円の税収減が見込まれ、財務省が強く反対
- 社会保険料引き下げも:現役世代1人当たり年間6万円(月5,000円)の引き下げ目標が合意書に明記
- 影響:実現すれば企業の人手不足緩和、従業員の手取り増加が期待できる
- 注意点:今後の政治状況や財源確保の状況により、実現しない可能性もある
目次(読みたい項目をクリック)
1. 「178万円の壁」とは?基礎から分かりやすく解説
「178万円の壁」とは、国民民主党の玉木雄一郎代表が提唱してきた税制改正案で、所得税が課税されない年収の上限を現在の103万円から178万円まで大幅に引き上げる政策です。
項目 | 2024年まで | 2025年から | 178万円案 |
---|---|---|---|
基礎控除 | 48万円 | 95万円※ | 123万円(予定) |
給与所得控除(最低) | 55万円 | 65万円 | 55万円 |
合計(所得税の壁) | 103万円 | 160万円 | 178万円 |
※2025年の税制改正では、年収200万円以下の給与所得者に対して基礎控除が95万円まで引き上げられます。これにより、2025年からは年収160万円まで所得税が課税されません。
国民民主党が提唱する178万円の壁は、この基礎控除をさらに123万円まで引き上げることを目指しています。
詳細は国税庁の公式サイトをご確認ください。
税理士からの解説
178万円という数字の根拠は、1995年に103万円の壁が設定された際の最低賃金と比較し、現在の最低賃金の上昇率(約1.73倍)を反映したものです。つまり、物価やインフレに対応した適正な課税最低限を設定しようという考え方に基づいています。
2. 【現状】2025年は103万円→160万円に。178万円は未達成
2025年の税制改正により、所得税の課税最低限は103万円から160万円に引き上げられました。しかし、国民民主党が目標としていた178万円には届いていません。
2025年の実際の変更内容:
- 基礎控除:48万円 → 95万円※(47万円増加)
- 給与所得控除最低額:55万円 → 65万円(10万円増加)
- 合計:103万円 → 160万円(57万円増加)
- ※年収200万円以下の給与所得者に対する特例措置
国民民主党は自民・公明両党と3党合意を結んだものの、178万円という水準までの引き上げは実現しませんでした。この背景には、財務省の強い反対と巨額の財源確保の困難さがあります。
2025年の税制改正の詳細は国税庁で確認できます。
3. 自民・維新連立合意書での扱い|具体的数値なし
2025年10月20日に交わされた自民党と日本維新の会の連立政権合意書では、所得税制について以下のような記載がなされました。
連立合意書の記載内容:
「インフレ対応型の経済政策に移行するために必要な総合的対策を、早急に取りまとめ、実行に移す。とりわけ、所得税の基礎控除などをインフレの進展に応じて見直す制度設計については、25年内をめどに取りまとめる。」
注目すべきは、この合意書には「178万円」という具体的な数値が明記されていないことです。これは、178万円の壁の実現が確約されているわけではないことを意味しています。
ただし、「25年内をめどに取りまとめる」という文言により、2025年中に何らかの具体案が示される可能性はあります。
連立政権合意の詳細は首相官邸公式サイトで公開されています。
4. セットで注目!社会保険料引き下げ(年6万円)の詳細
連立政権合意では、178万円の壁とは別に、現役世代の社会保険料引き下げについても重要な合意がなされました。これは維新が提示した12項目の政策要求の中でも特に重視していた項目です。
社労士からの解説
連立政権合意書には、「社会保障全体の改革を推進することで、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す」と明記されました。維新は当初、現役世代1人当たり年間6万円の社会保険料引き下げを目標として掲げていました。
実現に向けた具体策
- OTC類似薬の保険適用除外:市販薬と同様の効果がある医薬品を公的保険の対象から外す
- 後期高齢者支援金の圧縮:医療費の効率化により現役世代の負担を軽減
- 医療制度改革の推進:自民・公明・維新3党で合意した医療制度改革を2025年度中に実現
- 社会保障改革協議体の定期開催:自民・維新両党で改革を継続的に議論
年間6万円の引き下げが実現すれば、月額5,000円の負担軽減となります。これは「178万円の壁」と並んで、現役世代の手取り増加に直結する重要な政策です。
社会保険制度の詳細は厚生労働省をご参照ください。
5. 【もし実現したら】企業・従業員への具体的影響
手取り額の変化
178万円の壁が実現した場合の具体的な影響を見てみましょう。
年収 | 現在(160万円の壁) | 178万円実現後 | 所得税の差額 |
---|---|---|---|
130万円 | 所得税:0円 | 所得税:0円 | 変化なし |
150万円 | 所得税:0円 | 所得税:0円 | 変化なし |
170万円 | 所得税:5,000円 | 所得税:0円 | 年間5,000円軽減 |
200万円 | 所得税:約17,500円 | 所得税:約11,000円 | 年間6,500円軽減 |
企業のケーススタディ:飲食業A社の場合
【企業概要】従業員50名、うちパート・アルバイト30名
【現状】103万円の壁を意識し、年末に労働時間を調整しているパート従業員が15名
【178万円実現後の変化】
- 既に2025年から160万円まで引き上げられているため、103万円の壁問題は大幅に緩和済み
- 178万円実現後はさらに労働時間の柔軟性が向上し、繁忙期の人手不足がより緩和
- 従業員1人当たり年間約50〜70時間の追加労働が可能に
- 給与計算システムの設定変更が必要(費用:約5〜10万円)
- 扶養控除申告書の記載内容確認が必要
従業員のケーススタディ:パート主婦Bさんの場合
【現状】時給1,200円、月85時間勤務、年収約122万円
【178万円実現後の変化】
- 2025年から既に160万円まで非課税(年収を160万円まで増やしても所得税ゼロ)
- 178万円実現後は、さらに月約1.5万円(年間約18万円)の収入増加が可能に
- 年収を178万円まで増やしても所得税ゼロ
- ただし、年収130万円を超えると社会保険加入が必要(月額約2万円の負担増)
⚠️ 重要な注意点
2025年から既に160万円まで所得税非課税となっているため、130万円〜160万円の年収帯では所得税負担はありません。ただし、社会保険の「130万円の壁」は別の制度であり、130万円を超えれば社会保険加入が必要になる点は変わりません。
6. 実現の最大の壁|財源7〜8兆円と財務省の反対
財務省の強い反対
最大の障壁は財務省の強い反対です。2025年の改正で既に160万円まで引き上げられましたが、国民民主党が提唱する178万円(基礎控除123万円)まで引き上げた場合、さらに追加の税収減が見込まれます。当初の103万円から178万円への引き上げによる税収減は、国と地方を合わせて年間約7〜8兆円と推計されており、財政健全化を重視する財務省は極めて慎重な姿勢を崩していません。
財源確保の問題
大幅な減税を実施するには、代替財源の確保が必要となります。連立合意書では「租税特別措置および高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止する」との方針が示されていますが、7〜8兆円規模の財源確保は極めて困難です。
財政状況については財務省の資料をご覧ください。
国民民主党との協力の必要性
現在の自民・維新連立政権は衆議院で過半数に届いておらず、178万円の壁を実現するには国民民主党の協力が不可欠です。維新の吉村代表も国民民主党の玉木代表に連立参加を呼びかけていますが、実現の見通しは不透明です。
7. 【専門家見解】実現可能性50%、最短2026年から
⚠️ 重要な前提
本記事の内容は2025年10月21日時点の情報に基づいています。178万円の壁の実現は確定事項ではなく、今後の政治状況、国会審議、財源確保の状況により、実現しない可能性、内容が変更される可能性があります。
税理士・社労士としての見解
実現可能性:現時点では50%程度と見ています。財務省の反対が強い一方、物価高対策として国民世論の支持は高く、政治的な判断次第では前進する可能性があります。
実現時期:最短でも2026年度からの適用になると予測します。2025年内の制度設計取りまとめ、2026年通常国会での法案提出・成立というスケジュールが考えられます。
部分的実現の可能性:178万円まで一気に引き上げるのではなく、段階的な引き上げ(例:2026年に150万円、2027年に178万円)という妥協案も考えられます。
今後の重要ポイント
- 2025年内の制度設計取りまとめ状況
- 国民民主党との協力関係の進展
- 財務省との調整結果
- 代替財源の確保策
- 国民世論の動向
8. よくある質問(FAQ)|気になる疑問に回答
最短でも2026年1月からの適用が見込まれます。2025年内に制度設計が取りまとめられ、2026年の通常国会で法案が可決されれば、2026年分の所得税から適用される可能性があります。
178万円の壁は所得税に関する制度であり、社会保険の130万円の壁とは別の制度です。2025年から既に所得税は160万円まで非課税ですが、年収130万円を超えると社会保険への加入が必要になります。この130万円の壁は今回の改正では変更されていません。
2025年の税制改正では、配偶者控除の適用範囲も拡大され、配偶者の年収が123万円以下の場合に適用されるようになりました(従来は103万円以下)。178万円の壁が実現した場合、配偶者控除の適用範囲もさらに拡大される可能性がありますが、詳細は今後の制度設計次第です。
はい、準備が必要です。給与計算システムの設定変更、就業規則の見直し、従業員への説明、扶養控除申告書の確認などが必要になります。
住民税の非課税限度額は現在100万円(自治体により異なる)ですが、所得税の改正に伴い引き上げられる可能性があります。ただし、住民税は地方税のため、各自治体の判断により金額が異なる可能性があります。
現時点では確実ではありません。約7〜8兆円の財源確保、財務省の反対、政治的な合意形成など、多くの課題があります。今後の政治状況や国会審議の動向を注視する必要があります。
9. 今すぐできる準備と対策チェックリスト
企業の方へ
- 現在の給与計算システムが基礎控除額の変更に対応可能か確認する
- 103万円の壁を意識して働いているパート・アルバイト従業員の人数を把握する
- 178万円実現後の人件費シミュレーションを行う
- 従業員向けの説明資料を準備する
- 就業規則や雇用契約書の見直しが必要か検討する
従業員・パートの方へ
- 現在の年収と所得税・住民税の負担額を確認する
- 178万円実現後の手取り額をシミュレーションする
- 社会保険加入の有無と保険料負担を確認する
- 配偶者や親の扶養に入っているか確認する
- 働き方の希望(収入を増やしたいか、現状維持か)を明確にする
専門家へのご相談をおすすめします
178万円の壁や社会保険料引き下げは、企業経営や個人の働き方に大きな影響を与える可能性があります。制度の詳細が決まり次第、最新情報の提供とご相談対応が重要になります。

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