100人超え企業に潜む!人事担当者が抱える誰にも言えないリスクの正体

公開日: 2025.06.24

最終更新日: 2025.06.24

 従業員数が100人を超えると、企業は新たなステージに入ります。組織が拡大し、事業が成長する一方で、人事労務の複雑性は飛躍的に増大します。これまで見過ごされてきた問題が顕在化し、法改正への対応も喫緊の課題となるでしょう。

ここでは、人事担当者が密かに抱える具体的なリスクとその影響を見ていきます。

100人超え企業における人事労務の主要リスクと課題

1. 労働時間・賃金に関する法的リスク:会社の信用と存続に関わる問題

まさか、うちの会社が…?」そう思っていても、知らないうちに法律違反を犯しているケースは少なくありません。特に、未払い残業代は、企業の存続を脅かすほどの大きなリスクとなり得ます。

未払残業代問題とその波紋

  • 名ばかり管理職の誤認
    管理職と称していても、実態が伴わなければ残業代の支払義務が発生します。過去に遡って請求されれば、その金額は膨大になるでしょう。
  • 営業手当・賞与の残業代誤認
    営業手当や賞与に残業代を含めているつもりでも、適切な計算方法や明示がなければ、別途残業代の支払いが必要になります。
  • 実際の勤怠の手直し付加金(未払い賃金と同額の制裁金)や遅延損害金(退職後年14.6%)の支払い命令を受ける可能性があります。
  • 長時間労働
  • リスクが明るみに出た場合
    一人の従業員からの告発が、他の従業員からの連鎖的な請求に繋がり、数千万円から億単位の支払いが発生するケースも珍しくありません。労働基準監督署による是正勧告、指導だけでなく、悪質な場合は逮捕・書類送検の対象にもなり得ます。

 未払残業代は、企業の存続を脅かすほどの大きなリスクとなり得ます。具体的な法規制については、厚生労働省の労働基準に関する法制度情報をご確認ください。

2. 人材定着と組織文化に関するリスク:若手が育たない 辞めていく負の連鎖

人が増えるほど、組織内のコミュニケーションは複雑になり、人材の定着も難しくなります

  • 新卒・若手社員の大量離職・定着率の低さ
    「せっかく採用したのに、すぐに辞めてしまう…」100人以上の企業では、新卒や若手社員の離職率が高い傾向にあります。コミュニケーション不足、人間関係、不適切な評価、成長実感の欠如などが主な原因です。
  • ハラスメントの蔓延とリスク
    パワハラ、セクハラ、モラハラなど、ハラスメントは従業員の心身を蝕み、生産性を低下させます。企業にはハラスメント対策が義務付けられており、適切な対応を怠れば、企業イメージの失墜だけでなく、多額の損害賠償(うつ病や休職に至った場合で100万~500万円、最悪の場合数千万円から1億円以上)を命じられることもあります。
  • 逆ピラミッド型の人材難と引き抜き
    若手の定着が進まない一方で、ベテラン社員の年齢構成比が高まる「逆ピラミッド型」の組織は、将来的な人材不足を招きます。また、競合他社による「引き抜き」も、企業が培ったノウハウや顧客を失う大きな脅威となります。

3. 法定義務とコンプライアンスのリスク:知らないでは済まされない「義務」

企業規模の拡大に伴い、企業に課せられる法定義務も増えます。これらを怠ると、罰則や企業名の公表といった重いペナルティが課せられる可能性があります社会保険未加入問題や委員会設置などの法定義務については、厚生労働省の公式情報を参照し、正確な対応を進めましょう。

  • 改正後の社会保険未加入問題
    2024年10月からは、従業員数51人以上の企業で短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。対象となる従業員が未加入のまま放置されている場合、企業は追徴金や罰則の対象となる可能性があります。
  • 委員会設置などの法定義務の看過
    常時使用する労働者が50人以上の事業場では、労働安全衛生法に基づき衛生委員会の設置が義務付けられています(特定の業種では安全委員会も)。これらの委員会が機能していない場合、法令違反となります。
  • 障がい者雇用の未達成
    従業員が101人以上の企業は、障がい者雇用納付金制度の対象です。法定雇用率(2.5%)を達成できない場合、不足する人数に応じて月額5万円の納付金が発生し、企業名が公表されるリスクもあります。
  • 健康診断の不実施・報告義務違反 従業員50人以上の事業場では、健康診断結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。健康診断を適切に実施しないことは、従業員の健康管理だけでなく、法令遵守の観点からも重大な問題です。
  • 年次有給休暇の取得不足
    従業員に年5日の有給休暇を取得させることが義務化されていますが、取得率が低い企業は依然として多く、従業員のストレスや不満の蓄積、生産性の低下につながります。

4. 人事制度と社員満足度への課題:形骸化する制度、見えない社員の不満

制度は作ったものの、それが機能しているのか、従業員は満足しているのか…?人事担当者ならではの悩みがここにあります。

  • 人事評価制度の形骸化
    「作ったはいいが、誰も活用していない」「評価者によってバラつきがある」など、人事評価制度が形骸化している企業は少なくありません。従業員の成長機会を奪い、モチベーションの低下、ひいては離職に繋がります。
  • 上司のフィードバック能力の欠如・時間不足
    部下への適切なフィードバックは、成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させる上で不可欠です。しかし、管理職層の多忙さやフィードバック能力の不足により、これが十分に機能していないケースが散見されます。
  • 社員満足度の低下
    上記の様々な要因が積み重なり、社員満足度が低下すると、離職率の増加、生産性の低下、顧客満足度の低下、企業イメージの悪化、モラル低下といった負のスパイラルに陥ります。

5. 人事部門の運用上の課題:忙しすぎる日常と、将来への不安

これまでのリスクが全て人事担当者の肩にのしかかります。その結果、目の前の業務に追われ、本来の役割が果たせなくなっている現状があるかもしれません。

  • 給与計算の複雑さとアナログな管理
    多様な雇用形態、度重なる法改正、手当の多さ、締め支払いの速さ…。給与計算は常に正確性が求められる一方で、アナログな集計や「やってはいけない手直し」が横行しているケースも。ヒューマンエラーのリスクと、膨大な作業量は人事担当者の大きな負担です。
  • 人事担当者の高齢化と引継ぎ問題
    長年人事部門を支えてきたベテラン担当者が退職を迎える際、知識やノウハウが属人化しており、後任へのスムーズな引継ぎができない問題も深刻です。
  • 業務の増加と慢性的な多忙
    企業規模が大きくなるにつれて、人事関連業務はどんどん増え、常に締め切りに追われる日々。給与支払時期は特に忙しく、休暇もままならない…。「自分が居なくなったら、この会社の人事はどうなってしまうのだろう…」そんな不安を抱えている方もいるかもしれません。

深刻なリスクから会社と自分を守るため!人事担当者が取るべき行動

これらのリスクは、決して人事担当者一人の力で解決できるものではありません。しかし、あなたが一歩踏み出すことで、会社を、そしてあなた自身を守ることができます。

1. リスクの「見える化」と情報共有:現状把握から始める第一歩

まずは、自社にどのようなリスクが、どの程度存在しているのかを正確に把握することが重要です。

現状の棚卸しと課題の明確化

  • 勤怠管理、給与計算のプロセス、就業規則、各種規定などを改めて確認し、どこにリスクが潜んでいるのかを洗い出しましょう。
  • 従業員アンケートやヒアリングを通じて、社員満足度やハラスメントの実態を把握することも有効です。

経営層への情報共有と提言

  • 具体的なリスクをデータや事例を交えて経営層に報告し、現状の危険性を理解してもらいましょう。未払残業代やハラスメントによる具体的な賠償額の事例(例:ハラスメントによる慰謝料は数十万~数百万円、過労自殺で数千万円~1億円超の事例も。情報漏洩では1人あたり数千円~数万円、大規模漏洩で数億円の可能性も)などを提示することで、危機感を共有できます。
  • 人事部門の業務負荷の現状も伝え、効率化への理解を求めましょう。

2. 業務プロセスの見直しとITツールの活用:負担軽減とリスク回避の両立

アナログな業務プロセスは、ヒューマンエラーのリスクを高め、非効率を招きます。積極的にデジタル化を進めましょう

  • 勤怠管理・給与計算システムの導入・刷新
    • クラウド型の勤怠管理システムや給与計算システムを導入することで、手作業によるミスを減らし、業務効率を大幅に向上できます。法改正にも自動で対応できるシステムを選ぶと安心です。
    • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入も、定型業務の自動化に有効です。
  • 人事情報のデータベース化
    • 従業員情報、評価データ、教育履歴などを一元的に管理できるシステムを導入することで、情報の検索性向上や分析が容易になります。

3. 人事制度の再構築と運用強化:形骸化させない仕組みづくり

「制度を作って終わり」ではなく、「制度を活かす」仕組みを構築することが重要です。

  • 人事評価制度の目的再定義と運用改善
    • 評価者研修を定期的に実施し、評価基準の統一とフィードバック能力の向上を図りましょう。
    • 評価制度の運用状況を定期的に見直し、従業員の意見も取り入れながら改善を続けます。
  • ハラスメント防止策の強化
    • 社内研修の定期的な実施、相談窓口の設置と周知徹底、毅然とした対応方針の明示など、全社を挙げた対策が必要です。
  • 年次有給休暇取得促進策の導入
    • 計画的付与制度の導入、取得状況の可視化、管理職への意識付けなど、従業員が休みやすい環境を整備しましょう。

4. 外部専門家との連携:一人で抱え込まず、プロの力を借りる

「誰にも言えない」悩みを抱え込まず、専門家の力を借りることが、問題解決への最も効果的な近道です。

  • 社会保険労務士(社労士)の活用
    • 労働法規の遵守支援
      未払残業代問題の解決、就業規則の作成・見直し、労働契約の適正化など、労働法規に関する専門知識で会社をサポートします。
    • 社会保険・労働保険の手続き代行
      複雑な社会保険の手続きや法改正への対応を任せることで、人事担当者の負担を大幅に軽減できます。
    • ハラスメント対策・労務トラブル対応
      ハラスメント相談窓口の外部設置、トラブル発生時の適切な対応アドバイスなど、客観的な立場で支援します。
    • 助成金申請のサポート
      活用できる助成金のアドバイスから申請までをサポートし、企業のコスト削減に貢献します。
  • 税理士との連携(給与計算・税務処理)
    • 給与計算だけでなく、年末調整などの税務処理まで一元的に依頼することで、業務効率化と労務・税務リスクの同時管理が可能です。
  • 人事コンサルタントの活用
    • 人事制度設計、人材育成、組織開発など、より戦略的な人事課題に対して、客観的な視点と専門的な知見から最適なソリューションを提供します。

まとめ:あなたの行動が、会社とあなたの未来を拓く

100人以上の企業に潜む人事リスクは多岐にわたり、人事担当者一人で抱え込むにはあまりにも大きな問題です。しかし、これらのリスクを「誰にも言えない」と放置すれば、企業の成長を阻害し、最悪の場合、倒産に追い込む可能性さえあります
 あなたは、会社の未来を左右する重要な役割を担っています。だからこそ、現状を正確に把握し、経営層を巻き込み、そして必要であれば外部の専門家を積極的に活用してください。

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