100人超え企業に潜む!人事担当者が抱える誰にも言えないリスクの正体|税理士・社労士が解説
公開日: 2025.06.24
最終更新日: 2026.01.11

組織が拡大し、事業が成長する一方で、人事労務の複雑性は飛躍的に増大します。これまで見過ごされてきた問題が顕在化し、法改正への対応も喫緊の課題となるでしょう。
「このままで本当に大丈夫なのか…?」
人事担当者として、こんな不安を感じたことはありませんか?
- 「未払い残業代のリスクがあるのでは…でも、誰にも相談できない」
- 「せっかく採用した若手が、次々と辞めていく。自分の責任なのか…」
- 「法改正への対応が追いつかない。法令違反で会社が罰せられたら…」
- 「人事制度は作ったが、誰も活用していない。このままでいいのか…」
- 「業務が多すぎて、毎日終電。このままでは自分が倒れてしまう…」
これらの悩みは、決してあなただけのものではありません。100名超企業の人事担当者なら、誰もが抱える「誰にも言えないリスク」なのです。
目次
- 100人超え企業における人事労務の主要リスクと課題
- 100名超企業で実際に起きたリスク事例
- あなたの会社は大丈夫?リスク診断チェックリスト
- 深刻なリスクから会社と自分を守るため!人事担当者が取るべき行動
- 段階別リスク対策ロードマップ
- よくある質問(Q&A)
- 関連記事
100人超え企業における人事労務の主要リスクと課題
リスク1. 労働時間・賃金に関する法的リスク:会社の信用と存続に関わる問題
「まさか、うちの会社が…?」そう思っていても、知らないうちに法律違反を犯しているケースは少なくありません。特に、未払い残業代は、企業の存続を脅かすほどの大きなリスクとなり得ます。
① 未払残業代問題とその波紋
100名超企業で最も深刻なリスクの一つが、未払い残業代問題です。以下のようなケースが該当します:
名ばかり管理職の誤認
管理職と称していても、実態が伴わなければ残業代の支払義務が発生します。過去に遡って請求されれば、その金額は膨大になるでしょう。労働基準法上の「管理監督者」に該当するには、(1)経営者と一体的な立場、(2)出退勤の自由、(3)地位に見合う待遇、の3要件を満たす必要があります。
営業手当・賞与の残業代誤認
営業手当や賞与に残業代を含めているつもりでも、適切な計算方法や明示がなければ、別途残業代の支払いが必要になります。固定残業代制度を採用する場合は、(1)基本給と固定残業代の明確な区分、(2)固定残業代の対象時間数の明示、(3)超過分の追加支払い、が必須です。
実際の勤怠の手直し
タイムカードなどの勤怠記録を実態と異なるように修正することは、勤怠記録の改ざんにあたり、明確な違法行為です。これが発覚した場合、企業の信用は地に落ち、多額の未払い賃金に加えて付加金(未払い賃金と同額の制裁金)や遅延損害金(退職後年14.6%)の支払い命令を受ける可能性があります。
長時間労働の常態化
従業員の健康を害するだけでなく、過労死や精神疾患による休職・離職につながります。企業イメージの低下、生産性の悪化、そして損害賠償請求のリスクも高まります。時間外労働の上限規制(月45時間、年360時間)を超過すれば、労働基準法違反となります。
リスクが明るみに出た場合の影響
一人の従業員からの告発が、他の従業員からの連鎖的な請求に繋がり、数千万円から億単位の支払いが発生するケースも珍しくありません。労働基準監督署による是正勧告、指導だけでなく、悪質な場合は逮捕・書類送検の対象にもなり得ます。
未払残業代は、企業の存続を脅かすほどの大きなリスクとなり得ます。具体的な法規制については、厚生労働省の労働基準に関する法制度情報をご確認ください。
リスク2. 人材定着と組織文化に関するリスク:若手が育たない 辞めていく負の連鎖
人が増えるほど、組織内のコミュニケーションは複雑になり、人材の定着も難しくなります。
① 新卒・若手社員の大量離職
「せっかく採用したのに、すぐに辞めてしまう…」100人以上の企業では、新卒や若手社員の離職率が高い傾向にあります。コミュニケーション不足、人間関係、不適切な評価、成長実感の欠如などが主な原因です。厚生労働省の調査によれば、大卒新入社員の3年以内離職率は約30%に達します。
② ハラスメントの蔓延とリスク
パワハラ、セクハラ、モラハラなど、ハラスメントは従業員の心身を蝕み、生産性を低下させます。企業にはハラスメント対策が義務付けられており、適切な対応を怠れば、企業イメージの失墜だけでなく、多額の損害賠償(うつ病や休職に至った場合で100万~500万円、最悪の場合数千万円から1億円以上)を命じられることもあります。
2022年4月施行のパワハラ防止法により、全企業にハラスメント防止措置が義務化されました。具体的には、(1)方針の明確化と周知、(2)相談窓口の設置、(3)迅速かつ適切な対応、(4)再発防止策の実施、が求められます。
③ 逆ピラミッド型の人材難と引き抜き
若手の定着が進まない一方で、ベテラン社員の年齢構成比が高まる「逆ピラミッド型」の組織は、将来的な人材不足を招きます。また、競合他社による「引き抜き」も、企業が培ったノウハウや顧客を失う大きな脅威となります。特に、営業職や技術職の引き抜きは、売上減少に直結します。
④ エンゲージメント低下による生産性悪化
従業員満足度が低下すると、モチベーション低下、欠勤率上昇、業務効率悪化といった負のスパイラルに陥ります。米国Gallup社の調査では、エンゲージメントの低い従業員は、高い従業員と比べて生産性が37%低いという結果が出ています。
リスク3. 法定義務とコンプライアンスのリスク:知らないでは済まされない「義務」
企業規模の拡大に伴い、企業に課せられる法定義務も増えます。これらを怠ると、罰則や企業名の公表といった重いペナルティが課せられる可能性があります。社会保険未加入問題や委員会設置などの法定義務については、厚生労働省の公式情報を参照し、正確な対応を進めましょう。
① 改正後の社会保険未加入問題
2024年10月からは、従業員数51人以上の企業で短時間労働者の社会保険加入が義務化されました。対象となる従業員が未加入のまま放置されている場合、企業は追徴金や罰則の対象となる可能性があります。対象者は、(1)週の所定労働時間が20時間以上、(2)月額賃金8.8万円以上、(3)2ヶ月を超える雇用見込み、(4)学生でない、の4要件を満たす者です。
② 委員会設置などの法定義務の看過
常時使用する労働者が50人以上の事業場では、労働安全衛生法に基づき衛生委員会の設置が義務付けられています(特定の業種では安全委員会も)。これらの委員会が機能していない場合、法令違反となります。違反した場合は50万円以下の罰金が科せられます。
③ 障がい者雇用の未達成
従業員が101人以上の企業は、障がい者雇用納付金制度の対象です。法定雇用率(2.5%)を達成できない場合、不足する人数に応じて月額5万円の納付金が発生し、企業名が公表されるリスクもあります。例えば、従業員200名の企業で法定雇用率を達成していない場合、年間で数十万円〜数百万円の納付金負担が発生します。
④ 健康診断の不実施・報告義務違反
従業員50人以上の事業場では、健康診断結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。健康診断を適切に実施しないことは、従業員の健康管理だけでなく、法令遵守の観点からも重大な問題です。違反した場合は50万円以下の罰金が科せられます。
⑤ 年次有給休暇の取得不足
従業員に年5日の有給休暇を取得させることが義務化されていますが、取得率が低い企業は依然として多く、従業員のストレスや不満の蓄積、生産性の低下につながります。違反した場合、従業員一人につき30万円以下の罰金が科せられます。
⑥ ストレスチェックの未実施
従業員50人以上の事業場では、年1回のストレスチェック実施が義務化されています。未実施の場合、労働基準監督署への報告義務違反となります。
リスク4. 人事制度と社員満足度への課題:形骸化する制度、見えない社員の不満
制度は作ったものの、それが機能しているのか、従業員は満足しているのか…?人事担当者ならではの悩みがここにあります。
① 人事評価制度の形骸化
「作ったはいいが、誰も活用していない」「評価者によってバラつきがある」など、人事評価制度が形骸化している企業は少なくありません。従業員の成長機会を奪い、モチベーションの低下、ひいては離職に繋がります。
形骸化の主な原因は、(1)評価基準の曖昧さ、(2)評価者研修の不足、(3)フィードバック面談の形式化、(4)評価結果と処遇の不一致、です。
② 上司のフィードバック能力の欠如・時間不足
部下への適切なフィードバックは、成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させる上で不可欠です。しかし、管理職層の多忙さやフィードバック能力の不足により、これが十分に機能していないケースが散見されます。特に、プレイングマネージャーが多い企業では、マネジメント時間の確保が困難です。
③ 社員満足度の低下
上記の様々な要因が積み重なり、社員満足度が低下すると、離職率の増加、生産性の低下、顧客満足度の低下、企業イメージの悪化、モラル低下といった負のスパイラルに陥ります。
社員満足度が10%低下すると、顧客満足度が2〜3%低下し、最終的に売上が1%減少するという研究結果もあります。
④ キャリアパスの不透明さ
「この会社で自分がどう成長できるのか見えない」という不安は、特に若手社員の離職要因となります。ジョブローテーション、昇進基準、スキル開発機会などが明確でないと、優秀な人材ほど早期に離職します。
リスク5. 人事部門の運用上の課題:忙しすぎる日常と、将来への不安
これまでのリスクが全て人事担当者の肩にのしかかります。その結果、目の前の業務に追われ、本来の役割が果たせなくなっている現状があるかもしれません。
① 給与計算の複雑さとアナログな管理
多様な雇用形態、度重なる法改正、手当の多さ、締め支払いの速さ…。給与計算は常に正確性が求められる一方で、アナログな集計や「やってはいけない手直し」が横行しているケースも。ヒューマンエラーのリスクと、膨大な作業量は人事担当者の大きな負担です。
100名規模の企業では、給与計算だけで月間40〜80時間を費やすケースも珍しくありません。
② 人事担当者の高齢化と引継ぎ問題
長年人事部門を支えてきたベテラン担当者が退職を迎える際、知識やノウハウが属人化しており、後任へのスムーズな引継ぎができない問題も深刻です。特に、給与計算の細かい設定や、過去の労使慣行などは文書化されていないことが多く、引継ぎに数ヶ月〜1年以上かかるケースもあります。
③ 業務の増加と慢性的な多忙
企業規模が大きくなるにつれて、人事関連業務はどんどん増え、常に締め切りに追われる日々。給与支払時期は特に忙しく、休暇もままならない…。「自分が居なくなったら、この会社の人事はどうなってしまうのだろう…」そんな不安を抱えている方もいるかもしれません。
④ 戦略人事への転換困難
本来、人事部門は「採用・育成・配置・評価・報酬」を通じて経営戦略を実現する役割があります。しかし、目の前の事務処理に追われ、戦略的な人事施策を立案・実行する時間がない…これが現実です。
100名超企業で実際に起きたリスク事例
ここでは、実際に100名超企業で発生したリスク事例を3つ紹介します。
【事例1】製造業D社(従業員150名):未払い残業代で5,000万円支払い
状況
工場の班長職20名を「管理職」として扱い、残業代を支払っていなかった。しかし、実態は現場作業も行い、出退勤も一般社員と同じだった。
発覚
退職した元班長が労働基準監督署に申告。監督署の調査が入り、「名ばかり管理職」と判定された。
結果
- 過去2年分の未払い残業代:2,400万円
- 付加金(制裁金):2,400万円
- 遅延損害金:約200万円
- 合計約5,000万円の支払い命令
- 労働基準監督署からの是正勧告
- 企業イメージの低下で新卒採用が困難に
教訓
「管理職」の実態を正しく把握し、労働基準法上の「管理監督者」の要件を満たしているか確認することが重要。
【事例2】IT企業E社(従業員120名):ハラスメントで損害賠償1,200万円
状況
開発部門の上司が、部下に対して連日深夜まで「なぜこんなこともできないんだ」「お前は無能だ」と罵倒。部下はうつ病を発症し、3ヶ月休職した。
発覚
休職した部下が労働組合に相談し、会社に団体交渉を申し入れ。同時に損害賠償請求訴訟を提起。
結果
- 慰謝料:300万円
- 休職期間中の給与補償:120万円
- 治療費・通院費:80万円
- 弁護士費用:200万円
- 和解金:500万円
- 合計約1,200万円の支払い
- 加害上司は懲戒処分(降格)
- 社内でハラスメント研修を全社員対象に実施
教訓
ハラスメント防止措置の義務化により、企業は相談窓口の設置、研修実施、迅速な対応が求められる。放置すれば、高額な損害賠償リスクがある。
【事例3】小売業F社(従業員200名):法定義務違反で企業名公表
状況
障がい者雇用率2.5%を達成できず、5年間放置。また、衛生委員会を設置せず、健康診断結果の報告も怠っていた。
発覚
労働局の調査で法定義務違反が判明。
結果
- 障がい者雇用納付金:月額25万円×12ヶ月×5年=1,500万円
- 企業名の公表(厚生労働省のウェブサイトに掲載)
- 衛生委員会未設置・健康診断報告義務違反で労働基準監督署から是正勧告
- 企業イメージの低下で取引先からの信用失墜
- 新規採用が困難に
教訓
100名超企業には様々な法定義務がある。違反すれば、罰金だけでなく、企業名公表によるレピュテーションリスクも発生する。
あなたの会社は大丈夫?リスク診断チェックリスト
以下のチェックリストで、あなたの会社のリスク度を診断してみましょう。
【労働時間・賃金リスク】
- □ 管理職に残業代を支払っていないが、実態は名ばかり管理職ではないか?
- □ 固定残業代制度を導入しているが、基本給との区分が曖昧ではないか?
- □ タイムカードの打刻時間と実際の退勤時間に乖離があるのではないか?
- □ 月80時間超の時間外労働をしている社員がいるのではないか?
- □ 休日出勤の代休取得ルールが曖昧ではないか?
【人材定着リスク】
- □ 新卒社員の3年以内離職率が30%を超えているのではないか?
- □ ハラスメント相談窓口が設置されていない、または形骸化していないか?
- □ 従業員満足度調査を実施していない、または結果を放置していないか?
- □ 優秀な若手社員が次々と転職しているのではないか?
- □ 管理職層の年齢が高く、若手のキャリアパスが見えないのではないか?
【法定義務リスク】
- □ 短時間労働者の社会保険加入対象者を正確に把握していないのではないか?
- □ 衛生委員会を設置していない、または形骸化していないか?
- □ 障がい者雇用率2.5%を達成していないのではないか?
- □ 健康診断を全従業員に実施していない、または結果を労働基準監督署に報告していないのではないか?
- □ 年5日の有給休暇取得を全従業員に義務付けていないのではないか?
【人事制度リスク】
- □ 人事評価制度があるが、評価者によってバラつきがあるのではないか?
- □ 評価面談が形式的で、フィードバックが機能していないのではないか?
- □ 昇進・昇格基準が曖昧で、従業員に周知されていないのではないか?
- □ 賃金テーブルが古く、市場相場とかけ離れているのではないか?
- □ 教育研修制度が体系化されていないのではないか?
【人事部門運用リスク】
- □ 給与計算をExcelで手作業している、またはミスが頻発していないか?
- □ 人事担当者が一人しかおらず、属人化しているのではないか?
- □ 人事担当者が慢性的に残業しており、月80時間超えているのではないか?
- □ 法改正情報のキャッチアップができていないのではないか?
- □ 戦略的な人事施策を立案する時間がないのではないか?
診断結果
- チェック0〜5個: リスクは低いですが、定期的な見直しを推奨
- チェック6〜10個: 中程度のリスクあり。早めの対策が必要
- チェック11〜15個: 高リスク。専門家への相談を強く推奨
- チェック16個以上: 危機的状況。即座に専門家に相談を

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深刻なリスクから会社と自分を守るため!人事担当者が取るべき行動

これらのリスクは、決して人事担当者一人の力で解決できるものではありません。しかし、あなたが一歩踏み出すことで、会社を、そしてあなた自身を守ることができます。
対策1. リスクの「見える化」と情報共有:現状把握から始める第一歩
まずは、自社にどのようなリスクが、どの程度存在しているのかを正確に把握することが重要です。
① 現状の棚卸しと課題の明確化
- 勤怠管理、給与計算のプロセス、就業規則、各種規定などを改めて確認し、どこにリスクが潜んでいるのかを洗い出しましょう。
- 従業員アンケートやヒアリングを通じて、社員満足度やハラスメントの実態を把握することも有効です。
- 上記のチェックリストを活用し、リスク箇所を定量的に評価しましょう。
② 経営層への情報共有と提言
- 具体的なリスクをデータや事例を交えて経営層に報告し、現状の危険性を理解してもらいましょう。未払残業代やハラスメントによる具体的な賠償額の事例(例:ハラスメントによる慰謝料は数十万~数百万円、過労自殺で数千万円~1億円超の事例も。情報漏洩では1人あたり数千円~数万円、大規模漏洩で数億円の可能性も)などを提示することで、危機感を共有できます。
- 人事部門の業務負荷の現状も伝え、効率化への理解を求めましょう。
- リスク対策のための予算確保(システム導入、外部専門家活用等)を提案しましょう。
対策2. 業務プロセスの見直しとITツールの活用:負担軽減とリスク回避の両立
アナログな業務プロセスは、ヒューマンエラーのリスクを高め、非効率を招きます。積極的にデジタル化を進めましょう。
① 勤怠管理・給与計算システムの導入・刷新
- クラウド型の勤怠管理システムや給与計算システムを導入することで、手作業によるミスを減らし、業務効率を大幅に向上できます。法改正にも自動で対応できるシステムを選ぶと安心です。
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入も、定型業務の自動化に有効です。
- 主なシステム:ジョブカン、マネーフォワード、freee、SmartHR、KING OF TIME など
② 人事情報のデータベース化
- 従業員情報、評価データ、教育履歴などを一元的に管理できるシステムを導入することで、情報の検索性向上や分析が容易になります。
- タレントマネジメントシステムの活用で、戦略的な人材配置が可能になります。
③ ペーパーレス化の推進
- 電子申請、電子契約、電子保管を活用し、紙ベースの業務を削減します。
- 労働基準監督署への届出も、2020年4月から電子申請が原則化されています。
対策3. 人事制度の再構築と運用強化:形骸化させない仕組みづくり
「制度を作って終わり」ではなく、「制度を活かす」仕組みを構築することが重要です。
① 人事評価制度の目的再定義と運用改善
- 評価者研修を定期的に実施し、評価基準の統一とフィードバック能力の向上を図りましょう。
- 評価制度の運用状況を定期的に見直し、従業員の意見も取り入れながら改善を続けます。
- 360度評価やOKR(目標と主要な結果)など、新しい評価手法の導入も検討しましょう。
② ハラスメント防止策の強化
- 社内研修の定期的な実施、相談窓口の設置と周知徹底、毅然とした対応方針の明示など、全社を挙げた対策が必要です。
- 外部の専門機関による相談窓口設置も効果的です。
- ハラスメント事案発生時の対応フローを明確化し、迅速な対応体制を整えましょう。
③ 年次有給休暇取得促進策の導入
- 計画的付与制度の導入、取得状況の可視化、管理職への意識付けなど、従業員が休みやすい環境を整備しましょう。
- 有給休暇取得率を人事評価に反映させる企業も増えています。
④ キャリアパスの明確化
- 職種別・階層別のキャリアパスを明示し、従業員が将来像を描けるようにします。
- 社内公募制度、ジョブローテーション、自己啓発支援など、キャリア開発機会を提供しましょう。
対策4. 外部専門家との連携:一人で抱え込まず、プロの力を借りる
「誰にも言えない」悩みを抱え込まず、専門家の力を借りることが、問題解決への最も効果的な近道です。
① 社会保険労務士(社労士)の活用
労働法規の遵守支援
未払残業代問題の解決、就業規則の作成・見直し、労働契約の適正化など、労働法規に関する専門知識で会社をサポートします。
社会保険・労働保険の手続き代行
複雑な社会保険の手続きや法改正への対応を任せることで、人事担当者の負担を大幅に軽減できます。
ハラスメント対策・労務トラブル対応
ハラスメント相談窓口の外部設置、トラブル発生時の適切な対応アドバイスなど、客観的な立場で支援します。
助成金申請のサポート
活用できる助成金のアドバイスから申請までをサポートし、企業のコスト削減に貢献します。
② 税理士との連携(給与計算・税務処理)
- 給与計算だけでなく、年末調整などの税務処理まで一元的に依頼することで、業務効率化と労務・税務リスクの同時管理が可能です。
- 税理士・社労士のダブルライセンスを持つ事務所なら、税務と労務が絡む複雑な課題にワンストップで対応できます。
③ 人事コンサルタントの活用
- 人事制度設計、人材育成、組織開発など、より戦略的な人事課題に対して、客観的な視点と専門的な知見から最適なソリューションを提供します。
④ 産業医・保健師の活用
- 従業員50人以上の事業場では産業医の選任が義務です。メンタルヘルス対策、健康診断のフォロー、過重労働者の面談など、従業員の健康管理をサポートします。
段階別リスク対策ロードマップ
リスク対策は、一度に全てを解決しようとするのではなく、段階的に進めることが重要です。
【フェーズ1】緊急対応(1〜3ヶ月)
目標: 法令違反リスクの即座の排除
- 未払い残業代の有無を確認(管理職、固定残業代の実態確認)
- 法定義務の履行状況確認(衛生委員会、健康診断、障がい者雇用等)
- ハラスメント相談窓口の設置または外部委託
- 勤怠記録の改ざん状況確認と是正
- 社労士への緊急相談
【フェーズ2】基盤整備(3〜6ヶ月)
目標: 労務管理体制の基盤構築
- 就業規則の見直しと改定
- 勤怠管理・給与計算システムの導入検討
- 人事評価制度の見直し着手
- ハラスメント研修の全社実施
- 年次有給休暇取得促進施策の導入
- 従業員満足度調査の実施
【フェーズ3】制度運用(6〜12ヶ月)
目標: 人事制度の定着と運用強化
- 人事評価制度の本格運用と評価者研修
- キャリアパスの明確化と周知
- 人事情報のデータベース化
- 法改正対応の仕組み構築
- 人事部門の業務効率化(RPA導入等)
【フェーズ4】戦略人事への転換(12ヶ月以降)
目標: 経営戦略を支える戦略人事の実現
- タレントマネジメントシステムの導入
- エンゲージメント向上施策の実施
- 人事データ分析による意思決定支援
- 人材育成プログラムの体系化
- ダイバーシティ&インクルージョン推進
よくある質問(Q&A)
Q1. 100名超企業で最も優先すべき人事リスク対策は何ですか?
A1. 最優先は未払い残業代リスクの排除です。これは、企業の存続を脅かすほどの金銭的リスクがあり、かつ従業員からの訴訟リスクも高いためです。名ばかり管理職、固定残業代の不適切運用、勤怠記録の改ざんなどがないか、早急に確認しましょう。次に優先すべきは、法定義務の履行状況確認(衛生委員会、健康診断、障がい者雇用等)です。
Q2. 人事担当者が一人しかいない場合、どこから手をつけるべきですか?
A2. まず、外部専門家(社労士)への相談を強くおすすめします。一人で全てを抱え込むのは現実的に不可能です。社労士に社会保険手続きや給与計算を委託することで、あなたの業務負担を大幅に軽減できます。その上で、経営層にリスクを報告し、人事部門の増員またはシステム導入の予算確保を提案しましょう。
Q3. ハラスメント相談窓口は社内と社外、どちらが良いですか?
A3. 社外の専門機関に委託することをおすすめします。社内窓口では、相談者が「人事に相談したことが加害者に知られるのではないか」と不安を感じ、相談を躊躇するケースが多いためです。外部の専門機関なら、匿名性が保たれ、客観的かつ専門的な対応が期待できます。社労士事務所や弁護士事務所が窓口サービスを提供していることが多いです。
Q4. 人事評価制度が形骸化しています。どう改善すべきですか?
A4. まず、評価制度の目的を再定義しましょう。「何のために評価するのか」を経営層と人事で合意することが重要です。その上で、(1)評価基準の明確化、(2)評価者研修の定期実施、(3)フィードバック面談の充実、(4)評価結果と処遇の連動、の4つを実行します。また、従業員アンケートで評価制度への不満点を収集し、改善に活かしましょう。
Q5. 給与計算のミスが多く、毎月修正に追われています。どうすれば良いですか?
A5. クラウド型給与計算システムの導入を検討しましょう。手作業のExcel管理では、ヒューマンエラーが避けられません。システム導入により、計算ミスが大幅に減少し、法改正にも自動対応できます。また、社労士に給与計算を委託することも有効です。初期費用はかかりますが、ミス対応の時間コストや精神的負担を考えれば、十分に投資対効果があります。
Q6. 社労士に依頼すると、どれくらいコストがかかりますか?
A6. 従業員100名〜200名規模の企業の場合、月額顧問料は5万円〜15万円程度が相場です。業務範囲(給与計算含む/含まない、訪問頻度、対応範囲等)によって変動します。ただし、社労士に委託することで、(1)人事担当者の残業時間削減、(2)法令違反リスクの回避、(3)助成金活用による資金獲得、などのメリットがあり、トータルではコスト削減になるケースが多いです。
Q7. 若手社員の離職率が高く、困っています。どう対策すべきですか?
A7. まず、離職理由を正確に把握することが重要です。退職面談やアンケートで、本音を聞き出しましょう。主な離職理由は、(1)人間関係・ハラスメント、(2)成長実感の欠如、(3)評価・処遇への不満、(4)キャリアパスの不透明さ、です。これらに応じて、(1)ハラスメント対策強化、(2)教育研修・OJT充実、(3)評価制度の透明化、(4)キャリアパスの明示、といった施策を実施しましょう。また、1on1ミーティングの導入も効果的です。
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まとめ:あなたの行動が、会社とあなたの未来を拓く
100人以上の企業に潜む人事リスクは多岐にわたり、人事担当者一人で抱え込むにはあまりにも大きな問題です。しかし、これらのリスクを「誰にも言えない」と放置すれば、企業の成長を阻害し、最悪の場合、倒産に追い込む可能性さえあります。
あなたは、会社の未来を左右する重要な役割を担っています。だからこそ、現状を正確に把握し、経営層を巻き込み、そして必要であれば外部の専門家を積極的に活用してください。
寺田税理士・社会保険労務士事務所(社労士法人フォーグッド)では、従業員100人以上の企業が抱える人事労務の課題に対し、豊富な経験と専門知識に基づいた最適なソリューションを提供しています。未払い残業代問題、法改正への対応、人事制度の再構築、人材定着支援など、どのようなお悩みでもご相談ください。
もし、この記事を読んで、「まさに自分のことだ…」と感じたなら、ぜひ一度ご相談ください。
寺田税理士・社会保険労務士事務所(社労士法人フォーグッド)が、あなたの会社の人事労務に関するお悩みを解決し、安心して事業に専念できる環境づくりをサポートします。

「このまま今の体制で、本当に大丈夫ですか?」
社員数が増えるほど、労務リスクも跳ね上がります。
「うちはちゃんとやっているつもり」でも、
労基署の是正やトラブルに発展してしまうケースは後を絶ちません。
100名以上の企業で”本当に役立つ社労士の選び方”を、専門家が解説しています。
人事担当者必見!100名超企業のおすすめ社労士変更術と選び方▶

「100名を超えたら、労務体制の”見直しどき”かもしれません」
ここ数年で従業員が増えた、拠点が増えた、制度が複雑化してきた。
それでも、以前と同じ社労士体制のまま──
そんな企業に、“人事トラブルの連鎖”や“労基署是正”が起きている現実があります。
企業規模に合った労務体制を整えることが、次の成長の土台に。
貴社は、本当に”今のままで大丈夫”ですか?

「残業はしてるのに、払えてない…」
それ、実は”固定残業代制度”が原因かもしれません
固定残業代で支給してるつもりでも、訴訟・是正勧告・離職のリスクが潜んでいます。
「みなし残業だから」「制度として導入しているから」では通用しないケースも増えています。
若手が辞めない、訴えられない会社にするために、今こそ”見直し”のタイミングです。

「給与計算、なんで毎月こんなにしんどいんだろう?」
勤怠の集計に追われ、締切に怯え、月末は休む暇もない。
それ、もしかすると「締め日と支払い日」が原因かもしれません。
100人以上の企業の人事担当者が実践した、
「締め支払日の見直し」成功事例と落とし穴を徹底解説しました。
▶ 給与計算のストレス、構造から見直しませんか? ▶

「社労士に相談」って、何を頼めるかご存じですか?
「就業規則って本当に必要?」「助成金ってどれが使えるの?」「給与計算が合ってるか不安…」
“気になるけど、誰に聞いたらいいか分からない”そんなお悩み、社労士が解決できます。
まずは、経営者の「よくある相談」とその解決方法をまとめたページを覗いてみませんか?
▶ 【最新版】社労士とは?相談できること・費用・選び方解説!税理士とのダブルライセンスも ▶

「このままでは、取り返しがつかないかも…」
「手探りのまま、また一人、社員が辞めていった」
そんな状況に、心当たりはありませんか?
未払い残業代、ハラスメント、制度形骸化、そして担当者一人にのしかかる膨大な業務──
“何か起きてから”では、遅すぎます。
今こそ、課題の整理と体制の見直しを。
寺田税理士・社会保険労務士事務所(社労士法人フォーグッド)は、
100人超え企業の「誰にも言えない人事の悩み」に特化して支援しています。
「給与計算も就業規則もやってくれる。でも──
“それ以外”の相談は、いつも自分ひとりで考えている気がする」
今の社労士に大きな不満はないけれど、
物足りなさを感じ始めている。そんな経営者の声が、実際に増えています。
労務トラブルや助成金の提案、人事評価制度の相談──
本来、社労士は「人と組織の専門家」として、
経営者の”これから”を支えるパートナーであるはずです。
「このままで本当にいいのか?」
そんな一瞬の迷いが、企業の成長スピードにブレーキをかける前に──
一度、サポート体制を見直してみませんか?

「給与計算も手続きもやってくれている」──でも、それだけで十分ですか?
実は今、こんなご相談が増えています。
「採用や定着のことは、結局自分ひとりで悩んでいる」
「評価制度は作ったけど、うまく運用できていない」
社労士は、手続きだけでなく、人事制度・教育・組織づくりまで、
経営に関わる領域を支援できる存在です。
今の社労士が”悪い”わけではなく、会社のステージに合っているかどうかが大事なのです。
「人材のことを一緒に考えてくれるパートナーが欲しい」
そう思ったら、次は”経営に活かす社労士”という選択を。
▶ 社労士をもっと経営に活かす活用法まとめ ▶
※本記事は作成日時点の法令に基づき作成しております。記事の内容に関するお問い合わせや、内容の正確性・完全性についての責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。具体的なご相談はお住まいの行政機関や専門家までお問い合わせください。
記事監修
【記事監修】
寺田慎也(てらだ しんや)
税理士・特定社会保険労務士
寺田税理士事務所 / 社労士法人フォーグッド / 株式会社フォーグッドコンサルティング 代表
【専門分野】
税務顧問、確定申告、税務調査対応、社会保険手続き、給与計算、労務相談、補助金・助成金申請支援
【保有資格】
税理士、特定社会保険労務士
【組織体制】
創業75年(1950年創業)の実績を持つ専門家集団。スタッフ20名、税理士4名・社労士6名(うち特定社労士2名)が在籍し、大阪・東京の2拠点で全国450社以上の企業をサポート。関連企業3社(株式会社フォーグッドコンサルティング、労働保険事務組合NIPRE大阪、有限会社西尾経営センター)と連携し、税務・労務・経営コンサルティングをワンストップで提供する体制を整えています。
【代表者の実績・メディア掲載】
- テレビ朝日系列「羽鳥慎一モーニングショー」専門家として複数回出演(2024年5月・6月、2025年8月)
- アイミツ「税理士と社労士が在籍するおすすめ事務所」実績部門 3年連続全国1位(日本最大級のビジネスマッチングサイト)
- 中央経済社『税務弘報』にて連載執筆中「新・労務知識アップデート講座」(2026年1月号より12回連載)
- ぎょうせい『税理』巻頭記事執筆「雇用形態の多様化で知っておきたい労務と税務」特集
- 日経BP社『日経Woman』掲載(女性活躍推進・次世代働き女子に選ばれる理由)
- マガジンハウス社『anan』掲載(女性社労士の働きがいとSDGs貢献)
- 産経新聞「なっトクマネー」コラム掲載(2024年5月)
- 税理士比較サイト『Taxus』大阪の税理士事務所おすすめ第1位
- 社労士比較サイト『Labors』大阪の社労士事務所おすすめ第1位
- 著書:『中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい』(幻冬舎、2018年)
- 著書:『雇用関係助成金申請・手続マニュアル』(日本法令、2020年)
- 補助金・助成金申請支援:累計採択額10億円超


