高級車フェラーリは会社経費にできる?裁決で認められたポイント

公開日: 2025.05.17

フェラーリでも経費になる?―税務署が否認したが逆転勝利した“あの裁決”から学ぶこと

1. はじめに:高級車を経費に──裁決が示した意外な判断

「フェラーリでも経費になるのか?」 そう聞くと一瞬驚くかもしれませんが、これは実際に国税不服審判所で争われた実在の裁決(平成7年10月12日)に基づく話です。

2,700万円のイタリア製スポーツカー(フェラーリ)を役員車として法人で購入し、税務署が否認。しかしその後、納税者側の主張が認められ、経費として認定されました。

この裁決から見えてくる判断基準は以下のとおりです。

❝高額で派手な支出でも、事業との関連性を証明する要素が揃っていれば損金算入は可能である❞
ただし、「趣味ではなく事業のため」であることを記録・制度・実態を示す必要がある。

本記事では、この裁決の詳細をもとに、

  • なぜフェラーリは損金で通ったのか?
  • クルーザーはなぜ認められなかったのか?
  • どんな証拠・制度が整っていれば、税務署を説得できるのか?

を、順を追ってわかりやすく解説します。

2. 裁決の背景と当初の処理内容

この事案は、消費者金融業を営むA社(X社)が行った2つの資産取得に関して争われたものです。

  • 1つは、社長の通勤・出張用に購入した2,700万円のフェラーリ
  • もう1つは、従業員の福利厚生や取引先接待名目で取得したプレジャーボート(クルーザー)

A社はこれらを法人の固定資産に計上し、減価償却費などを損金処理していました。

3. 税務署の主張(フェラーリ・クルーザー両方)

  • 両資産とも、実質は代表者の個人的趣味による支出である
  • クルーザーは「福利厚生」「接待」と言いつつも、利用実績や記録が存在しない
  • フェラーリは高額・趣味性が強く、事業に供された証拠が乏しい
  • よって両資産は法人資産ではなく、個人への役員賞与に当たる

4. A社の主張

  • フェラーリは代表者が通勤・出張・支店巡回に使っており、会社の業務目的である
  • 本件フェラーリは排気量が大きく、安全性・再販性が高い車種であり、業務選定として合理性がある
  • 会長(社長と同居)が個人的に外国車を3台所有しているが、それらは法人で計上していない(私的車と区分している)
  • クルーザーについても福利厚生・接待としての利用を主張

5. 審判所の判断

(1)クルーザーについて

  • 運航記録、利用目的の説明、福利厚生規程の整備がなく、実態が確認できない
  • 全従業員が公平に使える状況でもない
  • 従って、会社の業務用ではなく、会長個人の資産であり、取得費用は役員賞与とされた

(2)フェラーリについて

次の要素により、法人の事業用資産であるとし経費として認められました

  • 3年間で7,598km走行していた(車検記録)
  • 旅費精算書で、通行料・宿泊料・日当は支給されていたが、交通費・通勤手当は支給されていなかった
  • 社用車利用時は交通費を支給しないという社内旅費規程が存在
  • フェラーリ以外に、ロールスロイス・ベンツを役員用に保有していた
  • 社長は本件フェラーリを「安全性・再販性が高い」「遠方の支店巡回に便利」として選定
  • 会長は個人的に3台の外国車を保有していたが、いずれも法人資産として計上していない

主として使用する代表者の個人的趣味によって選定されたスポーツカータイプの乗用車であるとしても、現実に会社の事業の用に供されていることが推認できる以上は、会社の資産として計上していることを不相当とする理由は認められない。

6. クルーザーはなぜダメだったのか?

一方でクルーザーは否認されています

主な理由は以下の通りです

  • 利用記録がない(誰が・いつ・何のために使ったかの説明が不十分)
  • 福利厚生目的の社内規程や申請制度が整備されていなかった
  • 従業員全体への公平な利用が保証されていなかった

つまり、「業務として使っていた」と言える根拠が不足していたという点が否認の決定打となりました。

7. この裁決から得られる実務的ポイント

  • 見た目や金額だけで判断されるわけではない
  • 業務利用を裏付ける記録や制度が整っているかが最も重要
  • 社内規程・精算ルール・保有資産の整理が、事前にできていれば税務署にも説明しやすい
  • “別の資産と区分して管理している”事実も重要

8. 最後に:あなたの会社ではどう整備する?

高額な車両、クルーザー、保養所、福利厚生施設……
これらを経費にしたいときは、「どう使っているか」だけでなく、「どう説明できるか」が大事です。

税務署に否認されないよう、以下のような整理を今のうちに行っておくと安心です。

  • 社内の旅費規程や利用ルールを文書化
  • 運用記録・走行記録・利用申請などの制度を設ける
  • 私的資産との切り分けが客観的にわかるようにする

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