税理士が教える!役員報酬の決め方と相場、手続きに関する総合ガイド

2024.07.14

はじめに

役員報酬の基本をマスターしよう!

 役員報酬の設定は、会社経営にとってとても大切なポイントです。適切な報酬を設定することで、会社の健全な成長と経営の安定が確保されます。このガイドでは、役員報酬の決め方や相場、手続きについてわかりやすく解説します。初めて役員報酬を設定する経営者や、報酬額を見直したい方に役立つ情報をお届けします。

役員報酬とは?

 役員報酬は、会社の役員(代表取締役、取締役、監査役など)が会社から受け取る報酬のことを指します。役員報酬は従業員の給与とは異なり、税務上の取り扱いや決定手順に特有のルールがあります。

役員報酬と従業員給与の違い

役員報酬 従業員給与
自由に設定可能 勤務実績に基づく
残業代 適用なし 残業代 適用あり
健康保険・厚生年金保険 適用 健康保険・厚生年金保険 適用
雇用保険・労災保険 適用なし 雇用保険・労災保険 適用あり
最低賃金 適用なし 最低賃金 適用あり
日割り計算 不可 日割り計算 可能

 役員報酬は、基本的に株主総会の決議によって決定され、年度を通じて一定額で支払われます。役員報酬は事業年度ごとに決めることができますが、報酬額を変更できるのは事業年度開始(期首)から3か月以内の時期だけです。一度決めた役員報酬の金額は、基本的には1年間(少なくとも期末まで)は固定となります。
 なお起業1年目の場合も、会社設立日から3か月以内です。

役員報酬の決め方

1. 株主総会で決定: 役員報酬は定款または株主総会の決議に基づいて定められます。中小企業では、定款に記載がない場合が多く、株主総会で決議されるのが一般的です。
2. 議事録の作成: 決定内容を議事録として残し、税務調査の際には確認資料として提出を求められます。
  ※ 議事録のサンプルは、この記事の最後で確認&ダウンロードできます
3. 報酬額の決定時期: 事業年度開始(期首)から3か月以内に役員報酬を変更しないと、損金処理ができなくなります。会社設立の場合も、設立日から3か月以内に限られます。

税務上認められる役員報酬の支払い方法

1. 定期同額給与: 毎月同で支払う月額の役員報酬。経営状況が著しく悪化した場合に限り、減額が認められます。
2. 事前確定届出給与: あらかじめ税務署に届け出た金額と時期に支払う役員賞与です。支給時期や金額が届け出内容と一致しないと損金として認められません。
3. 業績連動給与: 会社の業績に応じて役員報酬。主に上場企業で適用され、非上場企業には適用が難しいです。

例外的に3か月経過後でも役員報酬を変更できるケース

1. 役員の地位や職務内容の変更: 職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更、その他これらに類するやむを得ない事情が認められる
2. 経営状況の悪化: 業績や財務状況の悪化に伴い、経営責任から役員給与の減額が必要な場合や、借入金返済のリスケジュールで役員給与の減額が求められる場合があります。また、信用維持や経営改善計画に基づく減額も可能です。

役員報酬の決定における注意点

1. 年間の粗利や固定費を予測: 1年間の売上や経費を予測し、適切な報酬額を設定します。無理な設定は資金繰りを悪化させる可能性があります。
2. 法人税と個人所得税のバランス: 法人税を減らすために役員報酬を高く設定しすぎると、個人所得税が増えます。バランスを考慮することが重要です。
3. 同業他社との比較: 同業他社と比較して極端に高額な報酬は、税務署に認められない場合があります。

役員報酬と会社利益のバランス表

役員報酬の額と会社利益の額とのバランスについて

  1. 会社の利益(年間):0円 ~ 500万円
     ⇒ 推奨役員報酬(年間):0円 ~ 400万円
    利益が低いため、役員報酬も抑える必要がありますが、個人の生活もあるため取らざるを得ないこともあります。
  2. 会社の利益(年間):500万円 ~ 1,000万円
     推奨役員報酬(年間):400万円 ~ 700万円
    利益が少し上がった場合、役員報酬も若干増やせます。生活費に必要な報酬を取る以外は会社に利益を残し、財務体質を強化する必要があります。
  3. 会社の利益(年間):1,000万円 ~ 5,000万円
     ⇒ 推奨役員報酬(年間):700万円 ~ 3,500万円
    会社が安定して利益を上げているため、役員報酬も増やせます。
  4. 会社の利益(年間):5,000万円 ~ 1億円
     ⇒ 推奨役員報酬(年間):3,500万円 ~ 7,000万円
    さらに高い利益を上げている場合、役員報酬も適度に高く設定できます。ただし、会社の規模も大きくなり将来の事業投資の内容によっては会社にもっと利益を残す必要性もあります。
  5. 会社の利益(年間):1億円以上
     ⇒ 推奨役員報酬(年間):7,000万円以上
    高い利益を上げている企業では、役員報酬も相応に高く設定されます。

専門家への相談

 役員報酬は、会社の利益に大きな影響を与えるため、専門家への相談が推奨されます。税理士などの専門家は、適切な報酬額の設定や税務上のルールに従った手続きをサポートします。

役員報酬改定の議事録ひな形

 役員報酬改定の議事録は、役員報酬の変更手続きにおいて重要な書類です。以下に、役員報酬改定議事録のひな形を提供しますので、ダウンロードしてご利用ください。

役員報酬改定議事録のひな形

役員報酬(定期同額給与)変更の「議事録」の記載例

役員報酬改定議事録ダウンロードリンク

役員報酬改定議事録のひな形は以下からダウンロードできます。

[議事録のひな形をダウンロード](株主総会議事録(事前確定届出給与)2024.5.3)

まとめ

さあ、役員報酬を見直そう!

 役員報酬の設定や見直しは、会社の成長に直結します。適切な報酬設定により、会社の健全な財務状況を維持しつつ、役員のやる気もアップします。役員報酬について悩んでいる方は、ぜひこのガイドを参考にしてください。税務や報酬の設定に不安がある場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。税理士のサポートを受けながら、最適な役員報酬を設定し、会社の成長を目指しましょう。

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