ついに役員報酬と賞与での社会保険料圧縮スキームが見直し終了へ?今後何が変わる?

2024.10.19

前提として社会保険料圧縮スキームの手法はお勧めできません

 役員報酬やボーナスの支給方法を工夫して、社会保険料の負担を圧縮する「社会保険料圧縮スキーム」が広く知られていますが、社会保険料の適正な負担の観点から、この手法はお勧めできません。また、長年にわたり合法的に利用されてきたこの方法も、ついに終焉を迎えるかもしれないという動きが出てきています。特に経営者や税理士、社会保険労務士にとって見逃せない内容です。この記事では、社会保険料を圧縮する手法の終了が近づいている現状と、今後の展望について解説します。ぜひ今後の経営戦略に役立ててください。

問題視される社会保険料圧縮スキームの仕組みとは?

社会保険料圧縮スキームでは、毎月の給与(役員報酬)を抑え、年に一度の高額ボーナス(役員賞与)で報酬を支払うことで、毎月の社会保険料負担を圧縮する方法が用いられてきました。ボーナスには社会保険料の上限が設定されているため、全体としての社会保険料負担を効率的に抑えることができます。

例えば、以下のような具体的な計算例があります。


この図のように、年収1200万円の場合、通常の役員報酬(月100万円)では、社会保険料として会社負担も含めると約278万円がかかりますが、月5万円の低額な役員報酬と高額な役員賞与1140万円を設定した場合には、社会保険料が約122万円にまで減少します。結果として、156万円の社会保険料の負担圧縮が可能となります。

一方で、これにより所得税と住民税は増加しますが、すべてを考慮しても約130万円の負担圧縮が実現できます。

なぜ見直しの動きが出ているのか?

このスキームが長年にわたり合法的に活用されてきましたが、最近になって厚生労働省が見直しに着手しています。背景には、「年収1200万円の人が、通常ならばかなり高額の社会保険料を支払うべきところ、毎月の給与を低く抑えているためにほとんど社会保険料を払っていない」という不公平な状況が指摘されています。

 特に注目されたのが、令和6年9月30日に行われた厚生労働省の第183回社会保障審議会医療保険部会です。この会議で「標準報酬月額5.8万円から7.8万円の被保険者」について議論され、低額報酬の一部が不正利用されているケースが明らかになりました。特に、代表取締役や役員のケースとして「報酬を極端に低く設定し、高額な賞与を支給しているケースが存在する」と問題視されています。
厚生労働省:働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方について

厚生労働省:社会保障審議会(医療保険部会)
全国健康保険協会:令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)

社会保険料圧縮スキームの終了が予想される影響

この見直しにより、経営者や役員が活用していた社会保険料圧縮スキームが終わる可能性が高まっています。具体的には、ボーナスにかかる社会保険料の上限額(現行は年間573万円)が引き上げられたり、月給を極端に低く設定しているケースが是正される方向で議論が進んでいます。

この改正が行われると、経営者が今まで税制上の工夫として利用してきた方法が使えなくなり、年間の負担額が大きく増加する可能性があります。また、マイクロ法人を活用して、複数の収入源を持ちながら社会保険料を圧縮しているケースにも影響が及ぶと予想されます。

いつから見直しが実施されるのか?

今回の見直しがいつ実施されるかについては、まだ確定していません。しかし、審議会での議論が進んでいることから、早ければ来年以降に改正が行われる可能性があります。特に社会保険料や厚生年金の財源不足が指摘されていることもあり、政府は迅速な対応を求められています。

経営者や税理士、社会保険労務士にとって、今後の動きに注目し、早めに対策を講じることが重要です。

経営者も税理士や社会保険労務士も早めに対策を講じましょう

 今回、社会保険料圧縮スキームの終了が近づいていることを受けて、特に高額報酬を得ている経営者にとっては大きな影響が予想されます。改正の時期や詳細な内容が発表されるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、今後の社会保険料の負担増を避けるためには早めの準備が必要です。

 税理士や社会保険労務士は、顧客に対して適切なアドバイスを提供し、必要な変更をサポートすることが求められます。改正に備えて、最新の情報をチェックし、健全な経営を構築していきましょう。

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