固定残業代(定額・みなし残業代)とは?メリット・デメリットを徹底解説

公開日: 2025.03.15

最終更新日: 2025.03.15

固定残業代がどういうものかよく分からない人へ

固定残業代」という言葉を聞いたことはありますか?固定残業代は、会社によっては「定額残業代」や「みなし残業代」と呼ばれることもあり、労務管理において重要なテーマの一つです。しかし、誤った運用をすると労務トラブルに発展する可能性もあるため、正しい知識が必要です。
 この記事では、固定残業代について、制度の内容、メリット・デメリット、運用上のポイントを詳しく解説します。

参考:厚生労働省:しっかりマスター 割増賃金編
参考:厚生労働省:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。

1. 固定残業代とは?

  • 固定残業代とは、一定時間の残業代を毎月の給与に含めて支払う制度です。
  • 実際の残業時間に関わらず、事前に定めた金額が支払われます。
  • 法律で定められた制度ではなく、会社が独自に運用するものです。
  • 大きく分けて、「手当型」と「基本給組み込み型」の2種類があります。

手当型

基本給とは別に、固定残業手当として支給する方法です。
手当の名称は会社によって異なります(例:固定残業手当、固定時間外手当など)。

基本給組み込み型

基本給の中に、固定残業代を含める方法です。
基本給の内訳を細かく設定し、一部を固定残業代とします。

固定残業代の2つのタイプ

固定残業代

  • 手当型 → 例: 基本給25万円 + 固定残業手当5万円
  • 基本給組み込み型 → 例: 基本給30万円(うち固定残業代5万円

2. 固定残業代のメリット・デメリット

固定残業代の導入には、メリットとデメリットがあります。

メリット

  • 効率的な働き方の促進
    • 従業員の残業代ありきの働き方を改善し、効率的な働き方を促す
    • 一定時間までは残業しても同じ金額が支給されるため、効率的に働いた方が得という意識を持たせることができる
  • 人件費の調整・削減
    • 基本給を抑え、固定残業代として支給することで、人件費を調整できる
    • 残業代の単価を定額にできる。

デメリット

  • 組織風土の悪化
    • 固定残業代支給時間まで残業しなければならないという風潮が生まれる可能性がある
    • 残業時間の過少申告につながる可能性もある
  • 従業員の不満・モチベーション低下
    • 基本給が下がることで、従業員の不満やモチベーション低下につながる可能性がある
  • 採用への影響
    • 求職者に敬遠される可能性がある。

3. 計算例

月給30万円、1ヶ月の平均所定労働時間150時間の従業員の場合

  • 1時間あたりの基礎賃金:30万円 ÷ 150時間 = 2,000円
  • 1時間あたりの残業代:2,000円 × 1.25 = 2,500円

この従業員が20時間残業した場合の残業代は、2,500円 × 20時間 = 5万円となります。

ここで、基本給を22万5,000円に減らし、固定残業代を7万5,000円とした場合を考えてみましょう。

  • 1時間あたりの基礎賃金:22万5,000円 ÷ 150時間 = 1,500円
  • 1時間あたりの残業代:1,500円 × 1.25 = 1,875円

20時間残業した場合の残業代は、1,875円 × 20時間 = 3万7,500円となり、固定残業代の範囲内で収まります

残業代の計算例

残業代計算

  • 基本給30万円の場合:2,500円/時間 × 20時間 = 5万円
  • 基本給22.5万円 + 固定残業代7.5万円の場合:1,875円/時間 × 20時間 = 3万7,500円 (固定残業代でカバー)

4. 固定残業代の運用上のポイント

固定残業代を適切に運用するためには、以下の5つのポイントが重要です。

  1. 就業規則と雇用契約書での明確な定めと従業員の同意
    固定残業代制度を導入するには、就業規則と雇用契約書に内容を明確に記載し、従業員ごとに具体的な内容を示して同意を得る必要があります。
  2. 対価性の確保
    固定残業代が時間外労働に対する対価であることを明確にする必要があります。他の手当と混同せず、一目で固定残業代だとわかる名称を使用することが推奨されます。
  3. 基本給と固定残業代の明確な区分
    基本給と固定残業代が明確に区別されている必要があります。基本給と分けて表示し、何時間分であるかも明確にします。
  4. 超過残業分の別途支払い
    設定した時間数を超えた分の残業代は、必ず別途支払う義務があります。毎月の労働時間を集計し、正確に残業時間を把握することが重要です。
  5. 残業代の正確な計算
    支払う固定残業代が適正な金額であることを確認するため、計算方法が正しいかチェックしましょう。

これらのポイントは、固定残業代を有効にするための重要な要件です。さらに詳しい内容については、こちらの記事をご覧ください。

関連記事『定額残業代(みなし残業代)は大丈夫?有効にするための5つの要件』

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5. まとめ

固定残業代の運用には専門家のアドバイスを受けましょう

 固定残業代を正しく運用しないと、裁判で無効と判断される可能性があります。もし無効と判断された場合には、過去3年分の未払い残業代を支払う義務が生じます。
 固定残業代は、正しく運用すれば、会社と従業員双方にメリットがある制度です。しかし、誤った運用は労務トラブルにつながる可能性があるため、注意が必要です。固定残業代の導入・運用には、専門家(弁護士、社会保険労務士など)に相談することをおすすめします。

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