中小企業向け!最新業種別・規模別の賞与相場と計算のポイント

2024.11.26

はじめに

中小企業における同業他社の賞与水準を知りたい

他の同業他社では賞与はどれくらい出しているのだろう?」「同じ中小規模の会社ではどうなんだろう?」といった疑問は、経営者や人事担当者、そしてそこで働く従業員にとって非常に関心の高いテーマです。特に中小企業においては、賞与の支給額や割合が他社と大きく異なれば、従業員の満足度や会社の評価に影響を及ぼしかねません。こうした情報を知りたい理由は、他社との比較を通じて自社の立ち位置を把握し、適切な賞与支給をしたいためです。業界や規模ごとのデータを参考に、バランスの取れた判断をすることが重要です。
 本記事では、こうした悩みを抱える方々に向けて、厚生労働省のデータ「毎月勤労統計調査」を活用し、最新の中小企業における賞与支給の実態を解説します。他社の賞与支給水準を知ることで、来年以降の賞与計画に役立つ具体的な情報を提供いたします。

2023年の年末賞与支給状況:産業別・規模別の詳細分析

以下の表では、最新(2023年)の賞与支給額、支給割合、支給事業所割合を産業ごとに示しています。他社との比較や業界の傾向を把握するための参考にしてください。表の下にはエクセルデータでもダウンロードできるようにしています。

中小企業の年末賞与支給相場データ(2023年)

    

産業 支給労働者1人平均支給額
(千円、%)
きまって支給する給与
に対する支給割合
(ヶ月)
支給事業所数割合
5~29人 前年比 30~99人 前年比 5~29人 30~99人 5~29人 30~99人
調査産業計 275 0.3 351 -1.1 1.02 1.15 65.7 90.5
建設業 358 3.4 517 -8.1 1.06 1.38 72.7 92.0
総合工事業 348 -4.6 533 -2.9 1.01 1.35 73.6 91.4
職別工事業 293 -2.9 426 -6.5 0.98 1.20 70.2 100.0
設備工事業 433 23.6 517 -17.5 1.23 1.45 74.0 90.4
製造業 286 2.1 391 6.9 0.99 1.23 71.7 93.9
消費関連製造業 193 -4.5 285 10.4 0.80 0.97 60.7 91.1
素材関連製造業 301 4.3 435 6.1 1.00 1.38 77.6 95.7
機械関連製造業 361 3.7 438 7.6 1.17 1.31 76.7 94.8
食料品・たばこ 177 -9.3 279 17.8 0.83 0.96 61.1 93.3
繊維工業 199 5.8 248 -5.0 0.75 0.96 61.7 87.6
木材・木製品 256 -10.7 342 3.1 1.02 1.19 79.9 89.9
家具・装備品 231 11.9 280 -6.7 0.75 0.93 70.3 88.1
パルプ・紙 226 22.9 385 3.3 0.83 1.22 81.0 96.4
印刷・同関連業 218 13.6 335 9.1 0.78 1.05 60.5 87.3
化学、石油・石炭 523 56.7 602 5.0 1.45 1.80 80.4 93.8
プラスチック製品 237 -6.2 331 6.7 0.84 1.06 66.8 96.5
ゴム製品 327 58.2 390 13.4 0.94 1.29 83.1 95.1
窯業・土石製品 342 41.1 428 10.5 1.18 1.34 72.8 100.0
鉄鋼業 324 -9.9 560 1.3 1.05 1.75 76.8 98.1
非鉄金属製造業 334 31.8 499 -0.4 1.22 1.59 67.0 95.8
金属製品製造業 272 -19.7 419 8.4 0.89 1.36 83.1 94.9
はん用機械器具 481 17.5 399 -5.5 1.46 1.27 89.2 95.3
生産用機械器具 316 -4.5 547 3.9 1.05 1.44 85.9 99.4
業務用機械器具 384 34.6 424 -4.3 1.24 1.34 71.7 90.0
電子・デバイス 277 -12.8 369 20.1 0.92 1.20 57.9 82.7
電気機械器具 348 -15.9 397 36.5 1.10 1.35 65.5 96.9
情報通信機械器具 547 17.2 325 -4.6 1.42 1.08 69.3 81.1
輸送用機械器具 370 22.6 404 0.2 1.30 1.17 76.2 98.1
その他の製造業 205 -18.7 303 6.1 0.81 1.03 54.8 90.7
電気・ガス・熱供給等 581 -15.5 767 1.6 1.63 1.83 92.7 92.0
情報通信業 481 25.9 509 -0.7 1.33 1.45 62.5 87.0
情報サービス業 555 13.5 530 -0.5 1.55 1.45 61.7 87.3
映像音声文字情報 450 20.2 715 11.4 1.20 1.65 54.5 87.2
運輸業,郵便業 294 -10.7 349 7.3 0.93 1.02 57.0 90.7
道路貨物運送業 221 4.5 306 1.9 0.70 0.92 51.5 90.3
卸売業,小売業 298 4.0 327 -5.2 1.04 1.02 69.1 88.7
卸売業 490 4.4 589 -4.8 1.47 1.58 83.4 91.3
繊維・衣服等卸売業 315 -21.4 443 38.7 0.97 1.29 91.3 70.0
飲食料品卸売業 419 27.0 454 32.2 1.33 1.29 83.4 90.2
機械器具卸売業 556 -6.6 680 -15.2 1.60 1.87 84.7 90.2
小売業 200 -1.7 147 -2.5 0.82 0.66 63.3 87.1
各種商品小売業 40 -51.8 105 -13.6 0.29 0.58 39.4 100.0
織物等小売業 176 41.6 59 -71.7 0.74 0.46 77.4 37.9
飲食料品小売業 78 6.5 81 -7.6 0.49 0.49 35.5 87.4
機械器具小売業 462 7.6 527 11.5 1.35 1.50 76.2 100.0
金融業,保険業 542 6.0 607 10.7 1.70 1.59 91.3 90.8
不動産業,物品賃貸業 451 -7.3 416 -20.9 1.39 1.21 68.4 89.9
不動産業 453 -17.9 415 -15.6 1.44 1.22 68.2 91.1
物品賃貸業 447 37.9 420 -28.9 1.23 1.17 69.1 87.7
学術研究等 456 -1.6 599 2.4 1.35 1.58 74.8 89.1
専門サービス業 424 1.3 488 2.9 1.30 1.36 68.6 86.2
広告業 249 -8.3 424 13.6 0.88 1.18 54.6 71.0
技術サービス業 451 3.3 608 2.6 1.33 1.60 79.3 91.2
飲食サービス業等 46 -9.6 67 7.2 0.38 0.39 41.9 83.6
宿泊業 98 -43.6 113 7.4 0.68 0.60 50.2 81.0
飲食店 32 -14.5 52 16.8 0.30 0.31 38.3 84.1
持ち帰り・配達飲食 88 19.7 121 -14.3 0.53 0.61 54.8 84.3
生活関連サービス業等 124 -7.7 178 2.4 0.61 0.77 45.6 81.6
娯楽業 103 -12.6 162 -9.0 0.56 0.76 55.6 86.2
教育,学習支援業 333 -11.7 620 1.2 1.30 1.86 70.1 98.8
学校教育 483 0.1 633 0.8 1.71 1.89 82.4 99.3
他教育,学習支援 170 -30.8 476 6.4 0.99 1.49 63.1 92.4
その他のサービス業 348 6.5 297 25.7 1.15 1.02 69.6 83.9
廃棄物処理業 235 -22.1 386 3.7 0.91 1.20 79.0 97.8
自動車整備等 408 -3.0 564 16.2 1.19 1.48 71.2 90.9
職業紹介・派遣業 227 0.0 137 23.1 1.10 0.73 71.1 56.1
他の事業サービス 371 30.9 284 41.8 1.10 0.93 64.0 87.5

参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査」とは?

日本標準産業分類に基づく16大産業に属する、常用労働者5人以上の約200万事業所から抽出された約3.3万事業所を対象とした調査です。支給労働者1人平均支給額は、賞与を支給した事業所における全常用労働者の1人あたりの平均賞与支給額を指します。

きまって支給する給与に対する支給割合は、賞与を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与に対する賞与の割合(支給月数)」の1事業所あたりの平均です。支給事業所数割合は、事業所総数に対する賞与を支給した事業所の割合を示しています。

その他の規模別データや詳細については、以下のURLにある全国調査(年末賞与の結果)ページからご確認いただけます。
厚生労働省『毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)

以下のリンクから、データをExcelでダウンロードして、自社の計画に役立ててください。
≪【Excel版】中小企業の年末賞与支給相場データ≫

賞与水準の背景と要因

1. 業種別の収益構造と賞与水準の関係

製造業の強さと課題

機械関連製造業は、前年より3~7%増加と好調でしたが、素材関連製造業など一部で支給割合が低下しました。これには、原材料価格の高騰や為替変動が影響していると考えられます。

情報通信業の支給額の上昇

デジタル化の波により、情報通信業の支給割合は1.33ヶ月と高水準を維持しています。これらは、特にデジタルトランスフォーメーション関連の需要拡大が要因とされています。

2. 企業規模の違いとその影響

従業員30~99人の事業所は、支給事業所割合が5~29人規模に比べて一貫して高い傾向が見られます。これは、規模が大きいほど収益安定性が高まる傾向があるためです。

賞与の支給額以外に注目したいポイント

1. 従業員エンゲージメント向上の視点

年末賞与は、単に金銭的報酬としての役割を超えて、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める手段となります。特に、賞与支給の背景や会社の収益状況をオープンにすることで、従業員の納得感が高まりやすくなります。

2. 非金銭的報酬の併用

賞与以外に福利厚生の充実やスキルアップの機会を提供することで、総合的な満足度を向上させる企業も増えています。これらの取り組みが、長期的な離職率低下につながります。

2024年に向けた賞与戦略のヒント

1. 業種別のトレンド把握

自社と同じ業種の賞与支給水準を参考に、競争力を保つための戦略を立てましょう。例えば、製造業であれば、原材料コスト削減や生産効率向上の取り組みが賞与原資確保につながります。

2. 業績連動型賞与の活用

業績に応じて賞与を変動させる制度は、経営の柔軟性を高める一方、従業員に経営参加意識を持たせる効果も期待できます。

おわりに

会社にも従業員にも納得度の高い賞与を

 2023年のデータは、2024年の賞与計画を立てる際にとても役立ちます。この情報をもとに、会社も従業員も納得できる賞与制度を見直してみてはいかがでしょうか。従業員にとって魅力的な報酬を実現することで、会社全体の満足度や評価も向上します。また、データを経営会議や人事の提案に活用すれば、より具体的で説得力のある話し合いができるでしょう。

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