給与計算がつらいのは締め日が原因?見直し変更の事例と対策ガイド
公開日: 2025.07.02
最終更新日: 2025.07.05
人事担当者の皆さん、毎月の給与計算、本当に本当にお疲れ様です。
「また今月…給与計算の時期が来た…」
「今月はどこかでミスってないだろうか…」
「私が倒れたらどうなるのだろう…」
社員が増え、働き方が多様になる現代で、給与計算はもはや単なる事務作業ではありません。それは、企業の信頼を左右し、社員の生活を支える最重要業務。しかし、タイトなスケジュール、アナログな作業、頻繁な法改正…気が付けば、その重圧があなたの肩にのしかかり、心身ともに疲弊していませんか?
期日に間に合わせるため、つい「本来はやってはいけない手直し」に手を染めてしまったり、給与計算時期は休日返上で作業に没頭したり。「自分が倒れたらどうなるんだろう…」「このミスが会社を揺るがすことになったら…」そんな不安と戦う日々は、もう終わりにしましょう。
この記事では、そんな「給与計算の悩み」を抱き続けているあなたへ、その実態と具体的な克服策を、人事担当者ならではの視点でお伝えします。
人事担当者を追い詰める給与計算の「罠」
給与計算は、単に数字を並べるだけではありません。従業員の生活を支える重要な業務であり、少しのミスも許されないプレッシャーがあります。特に、以下のような課題に直面していませんか?
1. 「締め日〜支払い日」の驚くほどタイトなスケジュールと多様なパターン
従業員数が増えるほど、勤怠集計、残業代計算、各種控除、社会保険料や税金の処理、そして振込データ作成と、膨大な作業を短期間でこなす必要があり、人事担当者の負荷は増大します。特に、締め日から支払い日までの期間が短いほど、その負担は跳ね上がります。
日本の給与締め支払いパターン:メリット・デメリット早わかり表
【締め支払いパターン別の特徴】
給与の締め支払いパターンは、人事担当者の負担や会社のリスクに大きく影響します。
特に注意すべきは、「月末締め・当月25日払い」のように締め日から支払いが極端に短いパターンです。これは人事の計算時間がなく、ミスや未払い残業代のリスクが高まる上、賃金全額払いの原則に抵触する法的リスクも潜みます。
一方、「月末締め・翌月25日払い」のように余裕のあるパターンが一般的で、正確性を保ちやすいでしょう。
【業種別の傾向】
小売業、飲食業、サービス業など、シフト制や複雑な勤務形態が多い業種では、勤怠集計が特に煩雑になり、締め日と支払い日のタイトさがより顕著になる傾向があります。建設業など、日雇い・週払いが発生する業種ではさらにパターンが多様化します。
【最近のトレンド】
近年では、従業員の経済的ニーズに応えるため、「給与前払いサービス」を導入し、給与計算のフローとは別に、希望に応じて稼働済みの給与を日次で支払う企業も増えています。これは、従来の締め日・支払日を変更することなく、従業員の急な出費に対応できるメリットがあります。
参考:厚生労働省【労働条件・職場環境に関するルール】
参考:厚生労働省【労働条件・職場環境に関するルール:賃金に関する基本的ルール】
2. アナログな集計と「やってはいけない手直し」の横行
いまだにExcelでの手入力や、紙の勤怠表から転記している企業も少なくありません。
- ヒューマンエラーのリスク
手作業は入力ミスや計算ミスを誘発しやすく、後からの修正に膨大な時間がかかります。 - 違法性のリスク
「残業代を少なく見せるために勤怠を手直しする」「うちは営業手当を残業代として払っていると伝えているから大丈夫だ」といった誤認や、営業手当・賞与に残業代を含めて清算しているつもりでも、適切な計算方法や明示がなければ、別途残業代の支払いが必要になります。これは未払い残業代問題に直結し、将来的に多額の賠償金や企業の信用失墜につながります。
特に「月末締めなのに当月25日払い」の会社では、集計期間が極端に短いため、正確な残業代や変動手当を当月に反映することが物理的に難しく、翌月25日の給与で清算するといった運用が見られます。しかし、これは原則として労働基準法に抵触する可能性があり、「賃金は全額を支払う」という原則に反するリスクをはらんでいます。あなたの会社は、この「罠」にはまっていませんか?
3. 度重なる法改正と税制変更への対応
社会保険料率の変更、所得税法の改正、働き方改革関連法の施行など、給与計算に影響を与える法改正は頻繁に起こります。これらを正確に反映させるための情報収集とシステム更新は、人事担当者の大きな負担です。あなたの会社は、常に最新の法改正に対応できていますか?
4. 経理部門への早期情報伝達のプレッシャー
給与情報は、単に従業員へ支払うだけでなく、経営陣が業績を把握するための重要な経費情報でもあります。そのため、経理部門から「早く給与情報(概算の人件費)を教えてほしい」という強いプレッシャーがかかることもあります。しかし、締め日から支払日までのタイトな期間では、正確な情報を迅速に伝えることは困難を伴い、その板挟みに苦しんでいませんか?
5. 問い合わせ対応と精神的ストレス
従業員からの給与明細に関する問い合わせ対応、間違いがあった場合の謝罪と修正作業。これらもまた、人事担当者の貴重な時間を奪い、精神的な疲弊に繋がります。「給与支払日は休めない」「自分が倒れたらどうなるんだろう」といった不安は、誰にも言えない重荷になっているはずです。
給与計算の「罠」を乗り越える!具体的な克服策
毎月の給与計算のストレスから解放され、より戦略的な人事業務に集中するために、具体的な解決策を検討しましょう。
1. 給与締日・支払日の見直し:従業員の理解を得て勇気ある一歩を踏み出す
締め日を早めることで、給与計算に充てられる時間を物理的に確保できます。あなたの会社は、締め日・支払い日が長くも短くもなく、最適な状態にありますか?
給与締め支払い日変更の主な3つの方法
給与計算期間の短さが人事の負担や法的リスクにつながる場合、締め日・支払い日の変更は有効な解決策です。ここでは、給与月額30万円の社員を例に、具体的な変更手法を3つご紹介します。
1. 給与の支払日を後に延ばす
- 変更前: 11月30日締め、翌月12月5日払い 。
- 変更後: 11月30日締め、翌月12月10日払い。
- メリット: 支払日を5日間延ばすことで、給与計算期間を10日間確保でき、人事担当者の計算負担を軽減できます 。給与額30万円は変動しませ。
- 注意点: 従業員の給与支払いが遅れるため、丁寧な説明と理解を得るための合意形成が重要です。
2. 給与の締め日を前に繰り上げる
- 変更前: 11月20日締め、11月25日払い。
- 変更後: 11月15日締め、11月25日払い 。
- メリット: 締め日を5日間繰り上げることで、給与計算期間を10日間確保できます 。
- 注意点: 初月(この例では11月25日払い)の給与は、対象期間が11月1日~11月15日のため、通常30万円のところ25万円に一時的に減額されます 。この減額に対する従業員への説明と配慮が不可欠です。
3. 締め日を繰り上げ & 賞与を充当
- 変更前: 11月30日締め、当月11月25日払い (※元々5日分の給与を前払いしている特殊なケース)。
- 変更後: 11月15日締めに繰り上げ、11月25日払。
- メリット: この方法では、初月(11月25日払い)の給与減額を回避できます。具体的には、11月1日~11月15日分の給与(15万円)に加え、12月支給予定の賞与予算から15万円を充当すること、社員へは満額の30万円を支給しま。これにより、社員は締め日変更による給与減額の影響を受けることなく、会社は給与計算期間を長くし、負担を軽減できます。
締め日・支払い日期間が短いパターンと長いパターンのメリット・デメリット
あなたの会社は、どちらに課題を抱えていますか?もし、締め日が短く、上記デメリットに当てはまるなら、締め日変更を検討する価値は大いにあります。
締め日変更の方法と流れ
締め日・支払日の変更は、従業員の生活に直結する重要な変更です。
1.変更の検討と計画
なぜ変更が必要なのか(人事負担軽減、正確性向上、コンプライアンス強化など)、いつから変更するのか、新しい締め日・支払日はいつにするのかを具体的に検討します。
2.従業員への丁寧な説明と同意
変更の必要性を丁寧に説明し、従業員の理解を得るための話し合いの場を設けることが不可欠です。説明会や社内報などを活用し、複数回にわたって情報提供を行いましょう。
特に、締日変更により一時的に給与が減る月が発生する場合(例:20日締め当月25日払いから月末締め翌月25日払いに変更すると、最初の支払いが短縮される期間が生じる)、その影響を緩和する措置を検討しましょう。この場合は前述の賞与予算を充当する方法がおすすめです。
3.就業規則の変更
締日・支払日の変更は、就業規則の絶対的記載事項であるため、変更手続きが必要です。労働者代表からの意見聴取を行い、労働基準監督署への届け出も忘れずに行いましょう。
4.雇用契約書の変更
必要に応じて、雇用契約書の内容も変更します。
5.社会保険・税金の考慮
特に、4月から6月の算定基礎届の時期に実施は避けたほうが良いでしょう。この時期は社会保険料の計算基準となる標準報酬月額を決定する重要な期間であり、締め日変更が重なると事務処理が非常に複雑になります。できれば、この期間を避けたタイミングで実施を検討しましょう。
2. ITツールの積極的活用:効率化と正確性の両立
アナログな管理から脱却し、システムを導入することで、劇的に業務を改善できます。
- 勤怠管理システムの導入
従業員が直接打刻・入力することで、手作業での集計・転記ミスをなくし、リアルタイムでの勤怠状況把握を可能にします。残業時間の自動計算機能も活用でき、「やってはいけない手直し」の必要性を根本から排除します。 - クラウド型給与計算システムの導入
法改正に自動で対応し、複雑な計算も正確に行います。勤怠データとの連携により、集計から給与明細発行、振込データ作成までをスムーズに行え、大幅な業務効率化が期待できます。 - RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用
定型的なデータ入力や、複数のシステム間のデータ連携など、手作業で行っていた単純作業を自動化し、ヒューマンエラーを削減します。
3. 経費計上の早期化と精度向上:概算計上によるボトルネック解消
経理部門への情報伝達のプレッシャーを軽減するためには、以下の方法が考えられます。
- 概算での経費計上
最終的な給与額が確定する前に、過去のデータ(前月同額、前年同月と同額)を参考に、概算で人件費を計上することを検討します。 - シビア目な仮計上
「実際と多少ずれても問題ない」という前提のもと、安全側に倒して「前月比5%増」などシビア目な仮計上を行うことで、経営陣の業績把握に大きな影響を与えずに対応できます。 - 情報共有の仕組み化
経理部門と連携し、月末までの概算、または締め日時点での速報値として人件費を共有する仕組みを構築しましょう。
4. 社労士へのアウトソーシング:プロに任せて負担軽減と安心感
最も確実で、人事担当者の負担を劇的に軽減できる方法です。
社労士事務所への委託
- 労務と税務のワンストップ対応
複数の社労士に加え税理士も在籍している事務所であれば、給与計算だけでなく、社会保険手続き、年末調整、福利厚生やリモートワーク手当の所得税に関する相談まで一貫して任せられます。これにより、貴社の業務効率化と労務・税務リスクの同時管理が可能です。 - 法改正への確実な対応
最新の法改正を自動的に反映し、常に適法な給与計算を保証します。「違法な手直し」の心配は一切なくなります。 - 属人化の解消
人事担当者の退職や異動による知識・ノウハウの喪失リスクをなくし、安定した運用が可能になります。 - コア業務への集中
給与計算にかかっていた時間と労力を、採用活動や人材育成など、より戦略的な人事業務に振り向けられます。
給与計算の「罠」を乗り越えたその先に
給与計算の課題を解決することは、単なる業務効率化に留まりません。それは、あなたのストレスを劇的に軽減し、会社全体の生産性を向上させ、ひいては社員のエンゲージメントを高めることに繋がります。
- コンプライアンスの強化
法令遵守を徹底し、企業の信用を向上させます。 - 人事・給与担当者のストレス軽減
精神的負担から解放され、より生き生きと業務に取り組めるようになります。 - 社員満足度の向上
正確でスムーズな給与支払いは、従業員の会社への信頼感を高めます。 - 戦略人事への転換
煩雑な業務から解放され、企業成長のための戦略的な人事施策に時間を割けるようになります。
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