社会保険調査の対策ガイド:パートも加入対象?適用加入漏れが招く落とし穴

公開日: 2025.05.23

最近、年金事務所から「健康保険及び厚生年金保険の資格および報酬等の調査について」という書類が届いたという相談が増えています。これは、いわゆる社会保険調査と呼ばれるもので、法人であればすべての企業が対象となりうるものです。

とくにパートタイマーや短時間労働者の“適用漏れ”は、調査で最もよく指摘される点。最近では「週20時間以上」などの条件が拡大されており、「うちは対象外と思っていた」という声も少なくありません。

この記事では、社会保険の調査の目的や流れ、加入の判断基準、パートの適用ルール、よくある勘違いと罰則リスクまでを網羅的に解説します。

社会保険調査とは?なぜ調査されるのか

社会保険調査は、社会保険の適用事業所が制度に従って正しく届出を行っているかを確認するために、年金事務所(日本年金機構)が定期的に実施する調査です。

税務署の調査のように“脱税を見つける”ためではなく、法律に基づいて保険料が正しく徴収・管理されているかを確認することが目的です。

どのタイミングで調査が行われるのか?

調査の種類 概要
① 新規適用後の確認 加入から6か月〜1年後に初回調査が行われることが多い
② 定期調査 すでに適用されている企業も3〜5年ごとに調査対象
③ 未適用事業所への調査 制度上加入すべき企業に対し、加入を促すために実施

パートも社会保険の加入対象になるの?

はい、パートも社会保険の加入対象になります
とくに2022年と2024年の制度改正により、以下の5つの全ての条件を満たすパートタイマー・短時間労働者も社会保険に加入義務が生じるようになりました。

【図解】短時間労働者の社会保険「適用5要件」

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
    残業は含みません
  2. 月の所定内賃金が88,000円以上
    ボーナス、残業代などは含みません
  3. 雇用期間が2か月を超える見込み
    2か月の契約でも更新の可能性がある場合は対象です
  4. 学生でない
    高等学校、大学等の生徒を対象とし、休学中や定時通信制の学生は含みません
  5. 従業員数が常時51人以上の事業所(2024年10月〜適用)で働いている

「パートだから関係ない」と誤解していると、調査で遡及加入と保険料徴収を求められるケースがあります。

調査でチェックされる書類とその理由

社会保険調査では、届出が正しく行われているかどうかを多角的に確認するため、さまざまな種類の書類が求められます。特に勤務の実態契約書類の整合性が重視され、申告された情報と実際の労働状況とのギャップがないかがチェックされます。以下に、代表的な提出書類とその確認ポイントを示します。

  • 賃金台帳・出勤簿・タイムカード
    勤務時間と支払額が適用条件に該当するか確認
  • 労働者名簿・契約書
    契約内容と実態のズレを確認
  • 源泉所得税の納付書控え
    給与を払っている人数と社保加入人数が一致しているか
  • 就業規則・賃金規程
    手当や昇給ルールの確認
  • 社会保険関係届出書類(算定・月変・賞与)
    提出漏れ・誤りの確認

よくある指摘内容とその背景

  1. 加入漏れ:週30時間働いていたパートが加入していなかった
  2. 賞与支払届の提出漏れ:年末に全員に支給する特別手当を“賞与”と見なされた
  3. 月額変更届の未提出:固定給が上がっても保険料を変えていなかった

【事例】実際にあった“加入ミス”と追徴保険料

社会保険の加入義務があるにもかかわらず、制度への理解不足や手続きの見落としによって大きな金銭的負担を招くケースが実際に発生しています。以下に、調査で指摘された典型的な事例を紹介します。

  • パート2名(週32時間勤務)が未加入→約96万円の追徴保険料
  • 紹介手当の賞与未届→2年間で400万円の保険料を追加納付
  • 契約上は業務委託、実態は社員→3年間で約800万円の是正指導

社会保険加入に関する“ありがちな誤解”

  • 本人が「入りたくない」と言ったから加入させなかった
  • 雇用契約書に「週20時間未満」と書いたので加入不要と思った
  • 入社当初は対象外だったが、いつの間にか対象の要件を超えてしまっていた
  • 労働者が増え、いつの間にか51人以上になってしまっていた
  • 外注や業務委託だから関係ないと思っていた

いずれも実態と制度要件の食い違いが原因です。書類と実態の整合性が最も重要です。



パートの社会保険加入は“選べない”制度です

加入の必要があるのに未加入であれば、遡及して2年分の保険料を徴収される可能性があります。寺田税理士・社会保険労務士事務所(社労士法人フォーグッド)では、調査対応・書類整備・是正支援まで一貫してごサポートが可能です。
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調査通知が来たときの対応フロー

調査の通知を受け取ったあと、どのようなステップで対応すべきかを整理しておきましょう。以下は、一般的な対応の流れです。

  1. 年金事務所からの通知文書を確認
  2. 用意すべき書類を確認
  3. 書類持参で、指定された年金事務所へ
  4. 指摘・指導があれば対応
  5. 問題がなければ調査は終了

よくある質問(Q&A)

Q. 書類が一部足りない場合は?
→ 代替書類や実態説明書で補足可能です。放置せず、早めに相談を。
Q. 提出期限に間に合わない場合は?
→ 年金事務所に連絡すれば延長に応じてくれることが多いです。
Q. 罰金や罰則はありますか?
→ 調査対応に誠実であれば基本ありません。放置や虚偽があると処分対象になることも。
Q. 保険料が高額で払えないときは?
→ 分割納付や支払計画の相談が可能です。まずは連絡を。

まとめ:パートの適用も“うっかり”が許されない時代

  • 社会保険調査は突然届くが、事前準備で差が出ます
  • パートでも条件を満たせば加入は義務
  • 書類の整合性・制度理解・実態の一致が重要

「パートだから」「少人数だから」と油断せず、制度のポイントを押さえて社内体制を整えておきましょう。ご不安があればお気軽にご相談ください。

日本年金機構:厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取組 

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