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知っておくべき役員報酬(定期同額給与)の減額の時期・理由・手続に関する5つのポイント

【2020年5月23日更新】

役員報酬の減額

『新型コロナで業績悪化した場合の役員報酬の減額について』はコチラ↓↓↓
新型コロナ業績悪化の役員報酬減額

はじめに:役員報酬(定期同額給与)の減額は注意が必要

役員報酬の減額

法人税法上、一定要件を満たさない役員報酬の減額は認められていない

もし自分が会社の役員で業績が悪いなら、役員報酬の減額も考えます。
しかし、法人税法では一定の要件を満たさない役員報酬の減額を認めないとしています。
「一定要件を満たさない役員報酬(=定期同額給与)の減額を認めない」とは、要するに
「下げた役員報酬と下げる前の役員報酬との差額は期首からさかのぼって全て経費として認めない」ということを意味します。
そもそも法人税法では、役員報酬を増額することも含めた「定期同額給与の変更」について厳しく取り締まっています。

変更を認めない理由は「意図的な税負担の操作」を防止するため
1.利益が出ている会社が、役員報酬を増額して意図的に法人税の負担を免れる(軽減させる)
2.業績が下がった会社が、役員報酬を減額して意図的に役員報酬にかかかる個人所得税の負担を法人税の負担にシフトする
国税庁は、このような意図的な税負担の操作を規制を設けて未然に防止しているのです。

したがって、このような規制の存在を知らずに役員報酬を変更してしまうと、その部分が損金(=会社の経費)として認められなくなり、多額に余分な税金が発生する可能性があるので注意しましょう。

そこで今回はそのような誤りが生じないように

「知っておくべき役員報酬(定期同額給与)の減額の時期・理由・手続に関する5つのポイント」
をテーマとし、皆さんに分かりやすく解説します。

ポイント1.役員報酬(定期同額給与)の減額は原則「期首から3カ月以内」

原則:役員報酬(定期同額給与)の減額は「期首から3カ月以内」

本来ならば役員報酬(定期同額給与)を減額する場合、事業年度の開始が4月1日ならば、6月30日までに①株主総会を開催し、②議事録を作成し、③役員報酬(定期同額給与)を変更する必要があります。

ポイント2.役員報酬(定期同額給与)減額の手続きで必要なことは?

株主総会などで正式に決定し「議事録」を作成しておくこと

役員報酬(定期同額給与)の減額は、株主総会などで正式に決定しなければなりません。そしてその際に「議事録」を作成する必要があるので注意ましょう。税務調査では議事録の提示を求めらえることがあります。
※議事録=会議や打ち合わせの内容、経過や結論などを記録しそれを伝えるための文書

以下がイメージ

役員報酬減額

『役員報酬(定期同額給与)の変更で必要な議事録の雛形(ひな形・雛型とは?(無料ダウンロードあり)』はコチラ↓↓↓
役員報酬(定期同額給与)の変更で必要な議事録

ポイント3.もし10月に役員報酬(定期同額給与)の減額をした場合どうなるか?

変更後の役員報酬(定期同額給与)と変更前の役員報酬(定期同額給与)の差額は会社の経費として認められず、法人税と個人所得税の2重課税となる

事業開始が4月1日の会社の場合、7月以降に役員報酬(定期同額給与)を変更しても会社の経費(損金)として認められません。したがってもし10月に役員報酬(定期同額給与)を減額すると、減額後の金額と減額前の金額との差額部分は損金として認められずそこに法人税が課せられます。
そしてもう一点注意すべき点は、役員個人の収入はあくまで実際に受け取った役員報酬の額で計算されるため個人所得税はすべてに課されます。要するに会社経費として認められなかった差額部分には法人税も個人所得税もかかるということです。

以下がイメージ

役員報酬減額

ポイント4.役員報酬(定期同額給与)を減額できる時期に例外はあるか?

減額の理由が「一定の要件を満たす場合」は期首から3か月経過後でも減額が認められます

3か月経過後でも減額が認められるケース
「経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じた場合

ここで注意すべきは,「経営状況の悪化」したことの定義です。法人税法上はこの「経営状況の悪化」をかなり限定的にとらえています。一時的な資金繰りの都合や目標業績に達しなかったことでの理由は,ここでいう「経営状況の悪化」には該当しません。
国税庁は、例外的に役員報酬(定期同額給与)を減額できる理由を「業績悪化改定事由」と呼び、以下のような例を挙げています。

  1. 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  2. 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  3. 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

1については、同族会社のような「株主と役員が親族関係」の場合は、役員報酬を減額する理由としては客観性に欠けると指摘される可能性があります。逆に株主が親族以外で多く占めている場合は減額も認められるでしょう。
2については,リスケの条件として銀行から役員報酬の減額を求められたことを証明さえできれば問題ありません。
3については,経営状況の悪化を取引先に開示すること自体少ないケースですが、これも実際に改善計画があれば何も問題ありません。

以下がイメージ

役員報酬減額

役員報酬(定期同額給与)の「減額」が認められるポイントは ①経営状況の悪化 と ②第三者への影響 の両方を満たしていること。片方だけ満たしても認められない。

一時的な資金繰りの都合や単に予算を達成できなかったといった理由では、役員報酬(定期同額給与)を減額できる理由には該当しません。経営状況が著しく悪化していても、株主や取引先との関係に問題が生じないのであればこの例外は認められないので注意が必要です。

以下がイメージ

役員報酬減額

ポイント5.役員報酬(定期同額給与)の減額額が大きいときは社会保険の月額変更届の提出も忘れないこと

社会保険の「標準報酬月額」の等級が2等級以上減少する場合は日本年金機構に「被保険者報酬月額変更届」が必要です。

参考:標準報酬月額の表はコチラ↓↓↓

【全国健康保険協会:東京都保険料額表(平成29年)】

名称未設定-1.fw

参考:被保険者報酬月額変更届はコチラ↓↓↓
日本年金機構(被保険者報酬月額変更届)

月額変更届

まとめ

役員報酬(定期同額給与)の減額は、原則として事業年度開始日から3か月以内に株主総会を開催して金額を決定し、議事録を作成し、最終的に変更後の役員報酬(定期同額給与)を支払うことが必要です。また経営状況が悪化した場合でも安易に役員報酬を減額することなく、事前に国税庁が定めている「業績悪化改定事由」に該当するか否かを確認してからにしましょう。

予備知識もないままに
1.一時的な資金繰りの都合で役員報酬(定期同額給与)を減額した
2.目標業績に達しなかったから役員報酬(定期同額給与)を減額した
2.赤字だから役員報酬(定期同額給与)を減額した
ということは危険です。この記事の解説とポイントをよく理解して進めましょう。

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