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遺言で「兄に全財産を相続させる」は有効?無効?遺留分減殺請求とは?

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遺留分

【 目 次 】

1.遺言で「兄に全財産を相続させる」は有効?無効?遺留分減殺請求とは?
2.「全財産をこの人に相続させる」という遺言書は有効?
3.遺言でも侵せない相続人の権利(遺留分)とは?
 ① 遺留分が認められる親族の範囲
 ② 遺留分によってどれだけの割合の遺産が得られるのか
   ケース1:相続人が「配偶者+子供3人」である場合
   ケース2:相続人が「配偶者+母」である場合
   ケース3:相続人が「配偶者+兄」である場合
 ③ 遺留分を請求するための手続き方法(遺留分減殺請求)
4.全財産を特定の1人に相続させる場合の遺言書の書き方
 全財産を配偶者に相続させるときの遺言書文例
5.遺言書の作成手続き
 ① 自筆証書遺言
 ② 公正証書遺言
 ③ 秘密証書遺言
6.まとめ

1.遺言で「兄に全財産を相続させる」は有効?無効?遺留分減殺請求とは?

遺留分減殺請求

 父が亡くなり、遺言書が出てきました。
この遺言書には「遺産となる財産はすべて兄に継がせる」と記載されていました。しかし法律では「兄弟間の相続はそれぞれ平等」だと聞いてるのですが、このような内容の遺言は有効ですか?
 もしこの遺言書が有効となれば、私は遺産をまったく受け取ることができないのでしょうか?

 結論から言うと「全財産を相続人の1人にだけ相続させる」という内容の遺言書も有効です。
ただし、亡くなった人と近い親族(配偶者や子供など)には『遺留分』という権利が認められていますから、あなたは一定割合の財産を自分が相続することを主張することができるでしょう。
 『遺留分』とは、ごく簡単に言うと「最低限これだけの財産は相続させてほしい」と主張できる権利のことで、この権利は遺言書があっても侵害されることはありません。しかしこの『遺留分』の主張をするには、いったん”遺言の内容が有効であること”を認めたうえで「遺留分減殺請求」という手続きを行なう必要があります。
 また「遺留分減殺請求」を行う権利には時効がありますから、期限までにこの手続きを行わなくてはならないことに注意してください。

2.「全財産をこの人に相続させる」という遺言書は有効?

全財産を相続

法律上、遺言の内容は自由に定めることができる。ただし配偶者・子供・父母などには遺留分という権利がある。

 財産を所有している人は、遺言によって”死んだあと財産を誰に相続させるか”を自由に決めることができるというのが法律上の原則です。
 そのため、例えば「自分の死後は、子供ではなく妻に全財産を継がせる」とか「全財産を慈善団体に遺贈する」という内容の遺言も、適切な手続きに基づいて作成されたものであれば、有効になります。
 ただし、冒頭で説明したとおり、亡くなった人と近い関係にる親族(配偶者・子供・父母)には遺留分という権利があるので、このような内容の遺言に対して、一部否定することが可能です。

 このように、法律上は「遺言そのものは有効。ただし遺留分を持つ人から請求があった場合には、その請求した範囲内で遺言の効力が否定される」という2段階の仕組みになっていることを理解しておくことが重要です。

3.遺言でも侵せない相続人の権利(遺留分)とは?

遺留分

遺留分は ① 認められる親族の範囲 ② 各人の割合 ③ 請求のための手続 の3つを理解することが大切。

 前述の通り、遺言書がある場合でも、その内容が親族の遺留分を侵害するものでれば、遺言書の効力を一部否定することができます。この遺留分については、以下の3点を理解しておくことが大切です。

  • ① 遺留分が認められる親族の範囲
  • ② 遺留分によってどれだけの割合の遺産が得られるのか
  • ③ 遺留分を請求するための手続き方法

以下、それぞれの内容について順番に見ていきましょう。

① 遺留分が認められる親族の範囲

遺留分がある親族

遺留分が認められるのは 1.配偶者 2.直系卑属 3.直系尊属 である

 遺留分が認められる親族は、亡くなった人の

  1. 配偶者
  2. 直系卑属
  3. 直系尊属

の3者です。
2の直系卑属とは子供や孫、3の直系尊属とは父母や祖父母を指します。

 なお、相続発生時に子供と孫の両方がいる場合、子供が相続人となって遺留分を取得しますが、孫は相続人とはなりません(父母と祖父母の関係も同じです)。亡くなった人の兄弟姉妹は遺留分を持ちませんので、法律上は兄弟姉妹が相続人となる場合であっても、遺言によって「兄弟姉妹には財産を相続させない」となっている場合は、その兄弟姉妹は財産を相続することはできません。

② 遺留分によってどれだけの割合の遺産が得られるのか

遺留分割合

各人の遺留分の計算は「総体的遺留分」と「法定相続分」の2つを使って計算する

 遺留分が認められる親族がいる場合は、次のステップでそれぞれの人が主張できる遺留分割合を計算します。

  1. まず「総体的遺留分=遺産全体に対して主張できる相続分」を計算します
  2. その総体的遺留分に、法定相続分をかけ算してそれぞれの人の遺留分を計算します

 総体的遺留分の割合は以下の通りです。

遺留分請求者 総体的遺留分
配偶者のみ 2分の1
直系卑属のみ 3分の1
配偶者と直系卑属 2分の1
配偶者と直系尊属 2分の1

 また、法定相続分は以下の通りです。

相続人 法定相続分
配偶者と直系卑属 配偶者2分の1・直系卑属2分の1
配偶者と直系尊属 配偶者3分の2・直系尊属3分の1

注意点

  • 直系卑属と直系尊属の両方がいる場合は、直系卑属のみが相続人となりますから、直系尊属には遺留分は生じません。
  • 同じ順位の相続人がいる場合は、相続財産全体に対しての遺留分割合を、頭数で平等に分け合うことになります(子供4人がいるという場合、遺留分は2分の1なので、それぞれの子供は2分の1÷4人=8分の1ずつの遺留分を取得します)
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合は、配偶者は遺留分が認められますが、兄弟姉妹は遺留分がありません。

 以下、具体的なケースを想定して遺留分の金額を計算してみましょう。

ケース1:相続人が「配偶者+子供3人」である場合

遺留分計算

 例えば、1億2000万円の遺産があり、法定相続人として配偶者と子供3人(長男、次男、三男)がいるという場合の遺留分は以下のように計算します。

総体的遺留分=2分の1なので、1億2000万円×2分の1=6000万円
 ・配偶者の遺留分=総体的遺留分6000万円×法定相続分2分の1=3000万円
 ・長男の遺留分=総体的遺留分6000万円×法定相続分2分の1÷3人=1000万円
 ・次男の遺留分=総体的遺留分6000万円×法定相続分2分の1÷3人=1000万円
 ・三男の遺留分=総体的遺留分6000万円×法定相続分2分の1÷3人=1000万円

遺留分計算

ケース2:相続人が「配偶者+母」である場合

遺留分計算

 また、上のケースで法定相続人が配偶者と母親の2人である場合には、以下のように遺留分を計算します。

「総体的遺留分」=2分の1なので、1億2000万円×2分の1=6000万円
 ・配偶者の遺留分=総体的遺留分6000万円×法定相続分3分の2=4000万円
 ・母の遺留分=総体的遺留分6000万円×法定相続分3分の1=2000万円

遺留分の計算

ケース3:相続人が「配偶者+兄」である場合

遺留分計算

 兄弟姉妹が法定相続人となる場合、兄弟姉妹には法定相続分はあっても、遺留分がありません。
 そのため、実際の遺留分計算は以下のようになります(配偶者と亡くなった人の兄の合計2名が相続人となる場合)

「総体的遺留分」=2分の1なので、1億2000万円×2分の1=6000万円
 ・配偶者の遺留分=6000万円
 ・兄の遺留分=0円

遺留分計算

③ 遺留分を請求するための手続き方法(遺留分減殺請求)

遺留分減殺請求

遺留分が侵害されている場合は「遺留分減殺請求」を通知する。一般的には通知の証拠が残るように、内容証明郵便を利用するのが通例。期限は1年。

 すでに見たように、遺留分を侵害する内容の遺言であっても、その遺言はいったんは有効となります。そこでこのような場合、遺言によって自分の遺留分が侵害されている人は、自分の遺留分に相当する財産を手に入れるために、遺留分減殺請求という手続きによって、遺言によって相続人となる人に対して自己の相続分を主張しなくてはなりません。

 例えば、遺言が「愛人に全財産を相続させる」という内容になっている場合は、遺留分のある配偶者や子供は、愛人に対して「自分たちには遺留分があるので、遺産を一部分けてほしい」というように請求することになります。
 また遺留分減殺請求は期限があることに注意が必要です。具体的には「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」とされています。さらに、これらの事実を知らなかった場合でも、相続開始から10年が経過したら遺留分減殺請求はできなくなってしまいます(これを除斥期間といいます)。このように遺留分減殺請求には期限があるので、なるべく早めに手続きしましょう。
 遺言によって相続人となる人が、親族からの遺留分減殺請求に応じない場合には、最終的には裁判所に訴訟を提起して行う必要があります。
 ただし、遺留分請求者と遺言によって相続人となる人との話し合いによって解決できることもあります。

4.全財産を特定の1人に相続させる場合の遺言書の書き方

遺言書の書き方

遺言書は① 財産を相続させたい人 と ② 相続させる財産内容を明確にすること。

 遺言書を作成する際には、① 財産を相続させたい人と ② 相続させる財産内容の両方を明確に指定しておくことが大切です。また、確実に遺言で示した内容どおりに実行するには、「遺言執行者」を指定しておくのが良いでしょう。
 「遺言執行者」は誰にでもなってもらうことができますが、親族などは実際に財産を取得する相続人と利害関係を持つ可能性が高いため、適切ではありません。そのため、通常は資格を持った弁護士や税理士、司法書士や行政書士といった法律の専門家や金融機関に依頼するケースが多いです。

全財産を配偶者に相続させるときの遺言書文例

遺言書の文例

 全財産を特定の1人(例えば配偶者)に相続させる場合の遺言書の文例としては、以下のようなものが考えられます。

  遺言者 山田 太郎 は、次の通り遺言する。
 1. 遺言者が所有する財産は、すべて遺言者の配偶者である山田花子に相続させる
 2. 遺言執行者として、次の者を指定する。
  住 所 地  大阪府東成区~1丁目1番1号
  氏  名  鈴木 一郎
  生年月日  昭和50年1月1日生

遺言書

 なお、この場合「全財産」の範囲がどこまでか明確ではありませんから、その財産の内容が具体的にわかるように財産の目録などを作成しておくのが適切です。また遺留分に関して相続人から異論が出そうな場合は、あらかじめそれを考慮した遺言書にした方がよいでしょう。
 土地や建物といった不動産がある場合には、登記簿上の情報と対応する形で記録しておく必要があります。
 銀行口座や証券会社の口座がどこにあるのかは、相続人となる親族の立場で調査するのがとても困難なこともありますから、遺言書を見るだけですべての財産内容が分かるようにしておきましょう。

5.遺言書の作成手続き

遺言書作成手続

遺言書の形式には ① 自筆証書遺言 ② 公正証書遺言 ③ 秘密証書遺言 の3つがある。

 遺言書を作成するときには、法律のルールで決まっている手続きや書式に従わなくてはいけません。
もし、こうしたルールに従って作成されなかった場合には、その遺言は無効となってしまう可能性がありますから、注意が必要です。
 法律上、認められる遺言書の形式としては、以下の3つがあります。

① 自筆証書遺言
② 公正証書遺言
③ 秘密証書遺言

以下では、それぞれの遺言書形式のメリットやデメリットについて理解しておきましょう。

① 自筆証書遺言

自筆証書遺言

自分で遺言書を作成する方法が「自筆証書遺言」。開封には家庭裁判所での「検認」手続きが必要。また保管責任や内容に不備があっても自己責任。

 『自筆証書遺言』は、その名の通り自分で遺言書を作成し、遺言書の保管も自分で保管する方法です(2019年の法改正により、法務局に保管してもらうことも可能になりました)。
 内容の更新や書き直しが非常に簡単であるのが自筆証書遺言の良いところですが、法律上の要件を満たさない場合には遺言そのものが無効となってしまう場合があるので注意が必要です。

 具体的には、以下のような要件を満たしていない自筆証書遺言は有効な遺言として認められない可能性があります。

 ・遺言内容は自筆で行う
  (財産目録はパソコンで作成したり、通帳コピーなどでもかまいません:2019年改正)
 ・遺言を作成した日付を自書する
 ・押印をする(実印でも認印でもかまいません)

 自筆証書遺言は相続の発生後(つまりあなたが亡くなった後)に、親族が発見して家庭裁判所に「検認」の手続きを申して立てる必要があります。

 最悪のケースでは自筆証書遺言がどこに保管されているかわからず、発見されないまま放置されてしまうということも考えられますから注意しなくてはなりません。

② 公正証書遺言

公正証書遺言

公証役場で公証人に作成手続きを依頼する方法が「公正証書遺言」。作成費用がかかるが紛失や内容書き換えのリスクは避けられる。

 『公正証書遺言』は、公証役場という役所に所属する公証人に手続きを依頼することにより作成する遺言書です。
 公正証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所に遺言検認の手続きをしなくても有効なものとして扱われますから、遺言書が発見されなかったり、内容が書き換えられたりといったリスクを避けることが可能になります。
 一方で、公正証書遺言を作成するためには公証人に手数料を支払う必要がある他、証人2名が必要であるなど、手続きに手間と費用がかかるというデメリットがあります。遺言の内容を変更したい場合にも、公正証書遺言を作り直す必要がありますから、一から手続きをしないといけません。

③ 秘密証書遺言

秘密証書遺言

遺言の内容を秘密にしたまま公証役場で公証人に手続きを依頼する方法が「秘密証書遺言」。遺言の存在だけを証明してもらうため内容の不備がある場合も自己責任となる。

 『秘密証書遺言』は、公正証書遺言と同じく公証役場で手続きすることによって作成しますが、遺言の内容は証人や公証人に知らせなくても作成することができる点で異なります(遺言の存在だけを証人や公証人に証明してもらいます)。そのため、遺言の内容を誰にも知られたくない場合には秘密証書遺言を選択するメリットがあります。
 また、自筆証書遺言とは違って遺言内容はパソコン文書などで作成することができますので、遺言内容のボリュームが非常に大きいようなときにも選択するメリットがあるでしょう。

 一方で、秘密証書遺言では遺言内容を誰にもチェックしてもらうことができませんから、万が一不備があった場合にはそのまま遺言が残されてしまう危険があります。このような理由から、秘密証書遺言は現在ほとんど利用されていないのが実際のところです。

 ※公証役場で作成される遺言は年間で10万件以上ありますが、秘密証書遺言で作成された遺言は100件程度です。

6.まとめ

遺言まとめ

 今回は、遺産相続にあたって亡くなった人が「全財産をこの人1人で渡す」という内容の遺言を作成している場合に、遺言の効力がどうなるのかについて解説いたしました。
 本文でも見たように、財産を残す人は自分の財産を自由に処分できるのが原則ですから、こうした内容の遺言も法律上は有効です。
 一方で、遺留分の権利を持つ人が遺留分減殺請求という手続きによってその遺言内容について争う場合には、その範囲内で遺言の効力が否定される可能性があります。
 遺言には大きな効力が認められている分、相続人となる親族の生活に与える影響も大きくなりますから、これから遺言を作成するという方は内容を慎重に吟味するようにしましょう。

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