【経営者向け】子どもの教育費と役員報酬・贈与・事業承継のリアル

“多子世帯なら所得制限なし”で使える大学無償化制度と、経営者ができる教育費対策とは

はじめに

大学進学にかかる費用は、私立大学であれば4年間で400万円以上かかることも珍しくありません。
その一方で、2025年度からは「大学授業料の無償化制度」が大きく拡充され、子どもが3人以上いる多子世帯であれば所得制限なしで授業料・入学金が全額支援されるようになります。

つまり、年収や資産の規模に関係なく、多子世帯という条件を満たせば、私立大学の費用すらゼロにできるチャンスがあるのです。

この制度を最大限に活用できるのが、収入設計の自由度が高い「経営者」です。
会社のお金・家族のお金・教育資金という3つの資源をどう活かすか——

本記事では、
・役員報酬の設計
・贈与や相続の考え方
・事業承継のタイミング
など、教育費の負担を抑えながら、会社と家族を守る視点で考える実践的なヒントをお伝えします。

1. 「無償化制度」は多子世帯なら所得制限なし

大学の無償化制度には複数の支援レベルがありますが、特に注目すべきは「多子世帯(3人以上)」の扱いです。

世帯構成・年収 支援内容(授業料・入学金)
年収 約270万円未満 全額支援
年収 約270〜300万円 約2/3支援
年収 約300〜380万円 約1/3支援
多子世帯(600万円未満) 約1/4支援
多子世帯(3人以上) 2025年から所得制限なしで全額支援

この支援対象になるには、「多子世帯」であること、そしてお子さんが対象の学校(大学・高専・専門学校など)に在学していることがポイントです。
収入が高くても、対象になれば数百万円単位の支援が得られるため、制度を知らずに申請しないのは非常にもったいないと言えます。

2. 教育費を見据えた「報酬設計」という視点

経営者であれば、役員報酬や配当、退職金のタイミングをある程度コントロールできます。
お子さんの大学進学や在学時期に合わせて「個人の所得を抑える年」と「法人に利益を残す年」を意識的に設計することで、支援制度の恩恵を最大化できます。

また、法人に利益を残しておけば、退職金や福利厚生を通じて将来家族に戻す形も可能です。
ただし、ローン審査や社会保険料の影響など副作用もあるため、税理士・社労士の専門的なアドバイスを受けながら判断することが重要です。

3. 教育資金と贈与・相続のリアルな関係

教育費支援のもう一つの手段が「贈与」です。
例えば、祖父母が孫の教育費を出す場合、「教育資金一括贈与の非課税制度」(2026年3月まで)を使えば、最大1,500万円まで非課税で渡すことが可能です。

しかし、次のような注意点もあります。

  • 贈与の実態が不明瞭だと「名義預金」とされ、相続時に課税対象になる
  • 「教育費名目」でも実際に教育に使われなければ認められない
  • 制度の期限・改正により非課税枠が縮小されることも

教育資金と贈与・相続は密接に関わっているため、一時的なテクニックではなく中長期的な設計が必要です。

国税庁:祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし

4. 教育費と事業承継のタイミングは“重なる”

お子さんの大学進学と、事業承継の準備は、実は“同時期”になることが多いです。
多くの企業では20代のお子さんを後継者として意識し始める時期と、教育費がかかる時期が一致するからです。

たとえば、教育費を出しながら、
・自社株評価を下げて贈与する
・退職金を活用して資産移転を行う
といった“ダブル戦略”も可能です。

教育費=支出の設計、事業承継=資産移転の設計——
この2つを同時に考えることで、より効率的な資産設計が実現できます。

5. 税理士×社労士だからこそできるトータル設計

教育費、報酬、贈与、社会保険、退職金、相続、承継…。
これらはすべてがつながっています。バラバラに設計すると“もれ”や“逆効果”が生まれることも。

弊所では、税理士と社労士のダブルライセンス体制で、教育費設計と資産防衛を支援しています。

  • 年商1億~100億の企業における報酬設計・承継支援実績多数
  • IT業、建設業、医療法人、介護事業、動物病院など業種特化の支援実績
  • ファミリー経営・親子承継に伴う繊細な相談にも対応

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教育費と報酬・贈与・承継に関する 経営者向けチェックリスト

Ⅰ. 教育費と所得のバランス

Ⅰ. 教育費と所得のバランス

チェック項目 チェック
子どもが大学・専門学校への進学を予定している
扶養している子どもが3人以上いる(=多子世帯)
世帯の年収が600万円未満である(給与+配当など合算)
年収のうち「役員報酬」の割合が高く、調整可能である
所得を一時的に抑えることで、無償化の対象になりそう

Ⅱ. 役員報酬と法人活用

チェック項目 チェック
役員報酬額を年度ごとに調整している(または可能)
報酬よりも法人に利益を残す方針を考えている
教育費支出の時期に合わせて、報酬・賞与の設計を見直したい
将来的に退職金での取り崩しを計画している
福利厚生制度や役員手当で教育支援を検討したい

Ⅲ. 贈与・相続と教育資金

チェック項目 チェック
教育費としての贈与を過去に行っている(または検討中)
教育資金一括贈与の非課税制度(2026年終了)を知っている
贈与の記録や使途を明確にしている(または管理したい)
子どもに預けた資金が“名義預金”と見なされないよう対策中
教育費と事業承継を並行して進める必要がある

Ⅳ. 事業承継と将来設計

チェック項目 チェック
お子さんを後継者候補として考えている
自社株評価を下げたい/贈与のタイミングを検討している
退職金の準備を進めている
教育費の負担が重なる時期に資産移転も必要と感じている
事業承継や教育資金について、専門家に相談したことがある

合計チェック数:
10個以上:制度活用のチャンスあり。すぐに資産設計を見直すべきです。
6〜9個:一部制度を活かせる可能性あり。報酬や贈与の見直しで改善できます。
5個以下:無意識のうちに損している可能性があります。一度専門家に相談を。



教育費の制度活用・報酬設計・贈与・承継は「会社全体の設計」次第で大きく変わります。

これは経営者だけでなく、経理・人事・財務ご担当者様にも気づきのあるテーマです。
経営層と現場担当者が一緒に取り組むことで、会社の資金計画や人材戦略にも良い効果が生まれます。 ぜひ一度ご相談ください。税理士×社労士の両視点で、初回無料ヒアリングもご活用いただけます。

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