日本政府の重要な政策の1つである「働き方改革」は、労働環境の改善や多様な働き方により、生産性の向上が期待されています。働き方改革は、大企業だけの課題ではなく、中小企業も取り組む必要があります。この中小企業の働き方改革の取り組みを支援するための制度を「働き方改革推進支援助成金」と言います。
【助成額最大490万円】労働時間短縮・年休促進支援コースとは?
働き方改革推進支援助成金は、取り組みに応じて4つのコースが用意されています。その中でも、最も申請しやすいコースが「労働時間短縮・年休促進支援コース」です。
労働時間短縮・年休促進支援コースは、会社の取り組みにより生産性を向上させ、従業員の残業削減、有給休暇や特別休暇の取得率向上などを目指す中小企業に支給される助成金です。助成金の額は、労務管理に関する費用や生産性を向上させるために購入した設備などに要した費用が基準になります。成果目標別で上限額が設定されており、最大で490万円の助成金を申請することが可能です。
※キャリアアップ助成金も働き方改革に有効な助成金です。詳しくはこちらをご覧ください。
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中小企業が助成金の対象者
労働時間短縮・年休促進支援コースの対象は中小企業事業主に限られています。中小企業事業主とは、次の「資本金または出資金」と「常時雇用する労働者の人数」のいずれかの要件を満たす中小企業です。
助成金を申請するための要件
助成金を申請するためには、中小企業事業主に該当したうえで、次の要件を満たさなければなりません。
① 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
② 交付申請時点で、「成果目標」1から4の設定に向けた条件を満たしていること。
③ 全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。
「成果目標」の達成が申請要件
労働時間短縮・年休促進支援コースは、他の助成金とは異なり、上限加算型の助成金です。成果目標が①~④まで設定されており、それぞれ達成すると上限額が加算されていき、最大で490万円になります。
成果目標①
月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数を縮減させること。
⇒助成金上限額は最大で150万円
成果目標①は3段階に分かれており、助成金の上限額は50万円~150万円になります。
・上限150万円⇒現在36協定において時間外労働と休日労働の合計が80時間を超えて設定している事業所が60時間以下に設定した場合
・上限100万円⇒現在36協定において時間外労働と休日労働の合計が60時間を超えて設定している事業所が60時間以下に設定した場合
・上限50万円⇒現在36協定において時間外労働と休日労働の合計が80時間を超えて設定している事業所が60時間超、80時間以下に設定した場合
成果目標②
年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入すること。
⇒助成金上限額50万円
成果目標③
時間単位の年次有給休暇制度を新たに導入すること。
⇒助成金上限額25万円
成果目標④
交付要綱で規定する特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)のいずれか1つ以上を新たに導入すること。
⇒助成金上限額25万円
成果目標①~④を達成することで最大250万円の助成金を申請することが可能です。労働時間短縮・年休促進支援コースでは、成果目標に加えて賃金引上げを達成することで上限額を加算することができます。
成果目標を全て達成し、30人以上の賃金を5%以上引き上げた場合に助成金の最大上限額が490万円になります。
【助成対象はかなり広い】助成金の対象になる取り組み
労働時間短縮・年休促進支援コースの助成金対象になる取り組みは幅広く設定されています。
<助成対象となる取り組み>
① 労務管理担当者に対する研修
② 労働者に対する研修、周知・啓発
③ 外部専門家によるコンサルティング
④ 就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取り組み
⑥ 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
⑦ 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新
特に⑦労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新については、生産効率を上げる(時短になる)ための設備・機器などが対象になっており、会計ソフトやデジタル複合機、各種測定器、3Dプリンタ、販売システム、オンラインショップの制作費用など「労働時間を削減することができる旨」を説明することができれば助成対象になります。
※原則的にパソコンやスマートフォン、タブレットは対象外です。
助成額の算定
助成額は、助成対象の取り組みに要した経費の3/4と、成果目標の達成による助成金上限額のいずれか低い方になります。
(常時雇用する労働者の人数が30人未満で、助成対象となる取り組み⑥⑦を実施し、その対象経費が30万円を超える場合は、助成率は4/5になります。)
令和4年度の申請期限
労働時間短縮・年休促進支援コースの申請は次の3ステップで行います。
① 交付申請書の提出
労働局雇用環境・均等部に交付申請書の提出を行います。交付申請書(様式第 1 号)、事業実施計画を作成し、36協定届や就業規則の写し、賃金台帳、経費の見積書などの添付が必要です。令和4年度の交付申請書の提出期限は令和4年11月30日です。国の予算額に達してしまうと、11月30日前であっても締切られる場合がありますので、早めに準備を行うといいでしょう。
② 取り組みの実施
申請後、交付決定が下りた後に実際に取り組みを実施します。対象機器の購入や36協定の作成、研修など、事業実施計画に沿って取り組みを実施することになります。もし、取り組みの内容を変更する場合は事業実施計画変更申請書を提出しなければなりません。
取り組みの実施は令和5年1月31日までになります。
③ 支給申請
取り組みの実施後30日以内、または令和5年2月10日のいずれか早い日までに支給申請書を提出しなければなりません。
Q&A
労働時間短縮・年休促進支援コースを申請する際のQ&Aをいくつか紹介します。
Q1.働き方改革推進支援助成金と両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)は併給可能?
A1.働き方改革推進支援助成金と両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)は併給可能です。
Q2.働き方改革推進支援助成金の中で労働時間短縮・年休促進支援コースと他のコースとの併給は可能?
A2.同年度内での併給はできません。例えば、今年度に労働時間短縮・年休促進支援コースを受給し、来年度に勤務間インターバル導入コースを受給することは可能ですが、同年度内に2つのコースを受給することはできません。
Q3.生産性の向上に該当する機器が中小企業投資促進税制にも該当する場合は、働き方改革推進支援助成金と中小企業投資促進税制のどちらも適用することが可能?
A3.可能です。原則的に国や地方公共団体からの助成金を受けている場合、原則的に働き方改革推進支援助成金を受けることはできませんが、税制措置についての規制は設けられていません。
Q4.常時雇用する労働者の数とは何?
A4.労働保険の常時使用労働者数で使用している数に準拠した人数です。
Q5.テレワーク用通信機器の導入は助成金の対象?
A5.テレワーク機器が「労働能率の増進に資する設備」に該当すれば助成金の対象です。テレワーク機器を利用することで通勤時間を回避できるだけではなく、労働効率をアップさせる客観的な説明が必要です。
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