「養子縁組」を3分で理解できる内容にしてみた
相続税対策の「養子縁組」のメリットとデメリットを3分で理解できる内容にしてみた
今回は、相続税の節税手法でよく取り上げられる「養子縁組」について、押さえるべきメリットとデメリットを分かりやすく3つのポイントにまとめました。
約3分で読める内容にしております。是非、最後までお読みください。
養子縁組とは「本来の血縁関係とは別に人為的に親子関係を発生させること」です。すなわち、自分の戸籍=ルーツに影響を及ぼすほどの重要なことになります。
したがって、この養子縁組は節税上のメリットだけで判断してはいけません。そのほかのデメリットも含め総合的に考慮し、慎重に決断することが必要です。
ポイント1 相続税のメリット
1.養子縁組をすれば、相続税の計算で養子を法定相続人に加えることができる
2.最高裁の判決により、相続税の節税目的で養子縁組をすることは有効
養子は法定相続人の数に加えることができる
相続税の計算上、養子縁組をすれば①基礎控除額の計算式 ②生命保険金や死亡退職金の非課税限度額 ③相続税の総額の計算などで、法定相続人の数に加えることができます。具体的には、もともと実子がいるケースでは1人まで、そして実子がいないケースでは2人まで法定相続人に加えることができます。したがって、それ以上養子縁組をしても相続税のメリットは特にないということです。
このように、養子縁組により養子を増やせば、基礎控除の額(1人につき600万円)、生命保険金の非課税限度額(1人につき500万円)、相続税の総額の計算時(税額控除が増える)などのメリットを得ることができます。
以下が法定相続人の数に加えることができる養子の事例です。
最高裁でも相続税の節税目的の養子縁組は有効と判断
また、最近では平成29年1月に相続税の節税目的の孫との養子縁組が有効かどうか注目すべき判断が下されています。(以下参考)
平成28年(受)第1255号 養子縁組無効確認請求事件 平成29年1月31日 第三小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/480/086480_hanrei.pdf
節税目的の養子縁組「ただちに無効ではない」 最高裁:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASK104H5KK10UTIL01N.html
要するに『相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1項にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」にあたるとすることはできない』との判決が下し、養子縁組は有効と判断されています。
ポイント2 相続税でのデメリット
1.不当な相続税減少を目的とする養子縁組は、税務署に否認される可能性がある
2.養子縁組すると相続税が20%加算される
3.しかし!20%加算されてもメリットの方が大きいときもある
「不当な相続税減少」と判断されれば無効になる可能性あり
上記の判決については補足があり、『相続税の不当減少が認められるケースでは、養子の数を相続人の数に算入しないこともあり得る』とされています。したがって、その行為が明らかに不当な相続税回避を目的としているという場合は法定相続人に加えることが出来ないケースも考えられるため、やはり注意が必要です。
養子縁組すると相続税は2割加算される
またもう一点デメリットとしては、相続税の計算で「2割加算」という制度もあります。これはすなわち、被相続人の一親等の血族と配偶者以外の者の相続税額は100分の20に相当する金額を加算するという制度です。表現が難しいですが養子がちょうどこれに該当します。
ただ、それでも孫を養子にした場合は相続財産を一気に孫の代に移すことができるので、相続税が2割加算されてもメリットがある場合もあります。
しかし!2割加算でもメリットの方が大きい場合がある
さらに孫を養子にしたとしても、もとの親との関係は消滅しないため実際の親が亡くなった場合にも、相続税の計算では法定相続人として加えられます。養子になった祖父母の相続時、そして実子である父母の相続時と2度に渡って法定相続人となることができます。
ポイント3 相続税以外でのデメリット
1.相続人が増えれば遺産の分割時でトラブルになることもある
2.財産を受ける権利と同時に扶養する義務も民法上で生じる
3.養子縁組の取り消しは双方の合意がないとできない
逆に相続税以外の部分でも、養子縁組のデメリットがあります。
第1に養子縁組で相続人が増えたことで、遺産分割協議(相続財産を相続人で分割すること)がスムーズにいかなくなる恐れがあります。
第2に普通養子縁組では、実の親からと養親の双方から相続財産を受ける権利が生ずるのと裏腹に、双方への扶養義務も果たさなければなりません。
※ 扶養義務とは「配偶者が収入に乏しい場合に養わなければならないという民法上の扶養義務」です。
第3に養子縁組の取り消しの問題です。養子縁組後に養親と養子の関係悪化により縁組を解消しようとしても原則お互いの合意がないと簡単にはできません。
まとめ
税理士、司法書士、弁護士などの専門家と連携した総合的な検討が必要
いかがでしたか?
養子縁組は、相続税対策だけでなく、遺産分割の協議や民法上発生する義務なども考慮し総合的に判断することが必要です。あとで後悔することにならないように、当事者だけで判断せず税理士、司法書士、弁護士などの専門家からの情報も得ながら一緒に検討していくことが重要です。
相続税対策ではこのほか現預金の生前贈与の活用もありますので以下も参考にしてください。
『3分で分かる!相続税対策の贈与で「名義預金」と指摘されない3つのポイント』はコチラ↓↓↓