【 目 次 】
1.相続で子供同士がもめるケースとは?パターン別に原因と解決法を解説!
2.相続で兄弟がもめる原因は?よくあるトラブルのケースを紹介!
ケース① 遺言書でそれぞれ異なる分割割合が決められている
ケース② 遺産のほとんど土地や建物などの不動産
ケース③ 嫡出子・非嫡出子の問題
ケース④ 寄与分や介護への参加有無の問題
・寄与分とは?
・寄与分が認められるケース
・寄与分の請求ができるのは法律上の親族のみ
ケース⑤ 親と同居していた親族による財産の使い込み
・特別受益を加味して遺産分割を行うケース
・特別受益とみなされる可能性が高いもの
3.遺産分割で兄弟がもめてしまった場合の解決策
4.まとめ
相続で子供同士がもめるケースとは?パターン別に原因と解決法を解説!
「これまで仲が良かった兄弟どうしが、相続をきっかけにいがみ合うようになった」
「遺産をめぐって兄と弟が骨肉の争い…」など、兄弟が遺産をめぐってもめる話をよく聞きます。
親が亡くなり、兄弟が相続人となるときに、こうしたトラブルが発生しないように気をつけておくべきことがあれば教えてください。
また、法律のルールによれば、それぞれの兄弟がどのような割合で遺産を分け合うことになるのかも教えてください。
亡くなった人が遺言書を作成していない場合には、法律のルールで決められた割合に従って、相続人が遺産を相続することになります。
この「法律のルールで決められた割合」のことを法定相続分といいます。
兄弟の法定相続分はすべて平等となっています。しかしいざ「兄弟で半分ずつ分け合う」となっても、実際にはそううまくはいかないケースがよくあります。
例えば、亡くなった親が住んでいた家(居住用の不動産)が遺産となる場合、その家を引き継ぐ人と、それ以外の人とが平等に遺産分割を受けることは難しい場合が少なくないでしょう。
また、法律上は兄弟の相続割合は平等になっているのですが、「長男が家業や実家を継ぐべき」という意識を持っている人もいるかもしれませんから、話し合いがなかなかスムーズにいかないケースもあります。兄弟が相続人となる場合には、不公平感を持つ人が出ないように、遺産分割協議を慎重に進めていく必要があります。
以下では、遺産相続で兄弟がもめてしまう原因でよくあるケースを解説しますので、参考にしてみてください。
相続で兄弟がもめる原因は?よくあるトラブルのケースを紹介!
上でも見たように、遺言書で特別な取り決めがされていない限り、兄弟の遺産相続の割合は平等です。法律のルールに従い「兄は2分の1・弟も2分の1」というように平等に遺産を分け合うことができれば問題はないように思いますが、実際にはそううまくいかないケースがほとんどです。
では、実際に遺産の分割がうまくいかないケースにはどんなものがあるのでしょうか。
兄弟や姉妹が相続人となる場合で、遺産の分割でもめてしまいがちなケースには以下のようなものが考えられます。
以下、それぞれのケースについて、具体的にどのようなことが問題となるのかを見ていきましょう。
ケース① 遺言書でそれぞれ異なる分割割合が決められている
法律では「兄弟の遺産相続の割合は同じ」となっていますが、これとは異なる内容を「遺言書」に定めた場合には、遺言書の内容が優先されることになります。
よって法律に内容によらず、亡くなった人が遺言書を作成している場合には、その内容を最優先に遺産分割を行うことになるのです。
例えば、財産を所有していた母が亡くなり、長男と二男の2名が相続人となるケースを考えます。
遺産として、母名義の居住用不動産6,000万円、現預金2,000万円の合計8,000万円があります。そして、この居住用不動産には長男が母と同居しており遺言で「長男が相続する」とされていたとします。
法律上の相続分は長男と二男で平等ですから、合計8,000万円の遺産について4,000万円ずつ分け合うとするのが原則です。
しかし、居住用不動産は半分ずつ分け合うということが物理的にできませんから、この場合は長男が不動産を相続し、差額を次男に対して現金で払うというような形で解決が図られるのが一般的です(6,000万円の居住用不動産を取得した長男が、二男に対して2,000万円を渡せばお互いに4,000万円の相続をしたことになり平等です)。
一方、上のケースで遺言で「居住用不動産6000万円は長男の相続分」と決められていたような場合には、法律のルールにかかわらず、遺言の内容が優先されることになるのです。
この場合、長男は居住用不動産6000万円を取得して、差額を支払う義務も生じません。当然ながら、このように不平等な内容の遺言が残されている場合には、兄弟で遺産をめぐる感情的な対立が生じてしまう可能性が高くなるでしょう。
遺言の内容は、遺産相続のあり方に決定的な影響を与えることとなりますから、これから遺言書を作成する人は慎重に内容を吟味する必要があります。
ケース② 遺産のほとんどが土地や建物などの不動産
遺産のほとんどが土地や建物といった不動産である場合には、遺産分割の割合をめぐって相続人の間でトラブルが生じる可能性が高くなります。
というのも、土地などの不動産は道路と面しているか、利用用途が多いかといった事情によって経済的な価値が異なりますから、単純に「同じ広さの面積で分割すれば平等」ということにはなりにくいからです。
不動産の分割方法としては、単純に現物で分割する方法の他に、売却しお金に換えて分割する方法(換価分割)や、現物を相続する人が、相続しない人に対してお金を払う方法(代償分割)といった方法も認められますから、状況に応じてこれらの方法を使い分けることが重要となります。
ケース③ 嫡出子・非嫡出子の問題
法律上の婚姻関係から生まれた子供のことを嫡出子、それ以外の子供のことを非嫡出子と呼びますが、嫡出子(ちゃくしゅつし)と非嫡出子(ひちゃくしゅつし)が遺産をめぐって争うというケースもよくある事例です。
従来は「非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1」というルールを定めた法律があったのですが、現在はこの法律は削除されており、嫡出子と非嫡出子の法定相続分はまったく平等ということになっています。そのため、亡くなった人が遺言によって異なる相続割合を定めていない限りは、嫡出子と非嫡出子はまったく同じ割合で遺産を相続するということになるのです(嫡出子と非嫡出子は、遺留分についてもまったく同じ扱いとなります)。
多くのケースで、こうした相続人どうしは交流がないことが多いでしょうし、相続の発生をきっかけとしてこうした関係の人の存在を知るということも少なくありません。嫡出の家族は「財産が形成には自分たちの貢献もあったはず」と考えるのが自然ですし、非嫡出の家族としては「法律上認められている権利なのだからもらって当然」と考えるでしょう。
こうした状況では感情的な対立もからみ、遺産分割協議がまとまらなくなる可能性が高くなることを理解しておく必要があります。
ケース④ 寄与分や介護への参加有無の問題
親が亡くなり、兄弟姉妹が相続人となるケースでは、「親の介護へ参加有無」が遺産分割割合をめぐるトラブルの原因となることも少なくありません。感情的には「実家に同居して親の介護をしていた親族と、そうでない親族との遺産相続割合が全く同じ」ということには納得がいかないと感じる人がいても不思議ではないでしょう。
こうしたケースでは「寄与分(きよぶん)」という法律上の扱いが問題となります。
寄与分とは
寄与分とは、ごく簡単にいえば「亡くなった人の生前に貢献した人は、その貢献具合に応じて多くの遺産分割が認められる」というルールのことです。
このようにみると、介護をした分だけ多くの遺産を受け取れるように思えますが、残念ながら実際にはそううまくはいきません。というのも、寄与分としてどれだけの遺産分割が認められるかは、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)によって定めるのがルールだからです。
1人の親族に寄与分として多くの遺産相続を認めることは、その他の親族にとっては自分の取り分が減ることを意味しますから、必然的に介護による貢献を小さく評価することが予想されます。生前の介護に参加した人が多くの遺産相続を認めてもらうためには、生前に遺言の形で相続割合を定めておいてもらう必要があるのが実際のところです。
寄与分が認められるケース
実際に寄与分の請求が認められるのは、亡くなった人が営んでいたビジネスに貢献した相続人がいるとか、資産運用を担当していた親族がいるとかいったケースが中心であることを理解しておきましょう。
こうしたケースでは「自分の貢献によって財産がこれだけ増えた」ということをある程度合理的に計算することが可能ですから、他の相続人が認めない場合には、遺産分割調停や審判によって、強制的に寄与分として多くの遺産分割を受けることが認められる可能性があります。
寄与分の請求ができるのは法律上の親族のみ
なお補足ですが、寄与分のルールが適用されるのは、法律上の親族(法定相続人)だけです。
亡くなった人の長男の妻や、亡くなった人の内縁の妻が生前の貢献を主張するというケースでは、寄与分によってこうした人々に相続割合が認められることは基本的にはありません(前者については、長男に対して寄与分が認められる可能性はあります)
- 主に寄与分が認められるケース
・親の事業を無給で手伝っていた
・親の事業を発展させるために、大きな貢献をした
・親の商売に資金の援助をした - 主に寄与分が認められないケース
・親の介護をした
・親の生活費の援助をした
ケース⑤ 親と同居していた親族による財産の使い込み
親と同居していた親族と、別居していた親族がいる場合、別居していた親族から「同居しているうちに財産の一部をもらったり、自分のために費消した財産があったりするのでは」という不満が出ることがあります。
法律上、こうしたケースでは特別受益の有無が問題となります。
特別受益とは、ごく簡単にいえば「生前に財産をもらった人がいる場合、その分は遺産の前払いと同じだから、先にもらった分を加味して遺産分割割合を定めるべき」というルールのことです。
特別受益を加味して遺産分割を行うケース
例えば、1億円の財産が残されていて、長男と次男が相続人となる場合に、亡くなった親と同居していた長男が生前に3000万円を贈与されていたとします(贈与ではなく、勝手に使いこんでしまったような場合も同様です)。
この場合、生前贈与された3000万円は特別受益として、相続財産の金額にプラスして遺産分割割合を定めることになります。
具体的には、残されている財産1億円+特別受益3,000万円=1億3,000万円の遺産があったものと考え、これらを平等に分けて6500万円ずつの遺産分割とするのです。
もちろん、相続発生後に実際に残されている財産は1億円だけですから、上のケースでは次男がまず6,500万円の遺産を相続し、特別受益を受けた長男は残りの3,500万円を相続するという方となります。長男は生前にすでに3,000万円の財産を受け取っていますから、トータルで見ると両者の相続財産はいずれも6,500万円で平等な遺産分割とみなされるというわけです。
特別受益とみなされる可能性が高いもの
親族から親族に対して財産が渡されることはごく自然なことですが、そうした財産の受け渡しが特別受益とみなされるかどうかについては個別に判断を行う必要があります。
特別受益とみなされる可能性が高いものとしては、以下のようなものが考えられます。
- 結婚資金としてお金を受け取った場合
- 生活費やマイホームの購入資金
- 大学の授業料や海外留学のための費用
- 事業資金として出資を受けた場合
結婚資金については、いわゆる持参金や嫁入り道具の購入費用については特別受益となる可能性が高いですが、挙式の費用などは特別受益とならない可能性が高いでしょう。
というのも、特別受益とは「遺産の前渡し」の意味合いが強い財産の受け渡しをいいますから、実質的には生活費として費消される可能性が高い持参金や嫁入り道具と、挙式費用とは性質が異なるからです。遺産の前渡しとみなすためには、財産を受け取った人がその財産の使用方法を自由に決めることができることが必要というわけです。
遺産分割で兄弟がもめてしまった場合の解決策
兄弟で遺産についての話し合いがもつれてしまい、どうしても遺産分割協議がまとまらない場合には、遺産相続に関する実務知識が豊富な専門家(税理士や弁護士・司法書士が該当します)に間に入ってもらうのも1つの解決策です。
親しい親族であるほど、感情が先に立ってしまって言いたいことがなかなか言えない、あるいは言い過ぎてしまう…ということは少なからずあります。
中立的な立場でそれぞれの意見をまとめてくれる人がいると話し合いがスムーズに進みやすくなるでしょう。しかしそれでもまとまらない場合には、最終的に遺産分割調停や信販といった形で法的な解決を図ることも考えらえます。
これらは裁判所に間に入ってもらって遺産分割の話し合いを行う方法です(遺産分割審判では裁判所が強制的に遺産分割を行います)。
こうした手続きについても専門家は適切なタイミングでアドバイスをしてくれますから、相談を検討してみてください。
まとめ
今回は、お互いに兄弟どうしである人が共同で相続人となる場合に、生じがちなトラブルの事例について解説いたしました。
遺産相続をきっかけに仲の良かった兄弟がいがみ合うようになる…という状況は絶対に避けたいことですが、実際にはもめごととなってしまうケースは少なくありません。相続をめぐっては経済的な利害関係が直接的に対立することも少なくありませんから、相続人どうしの話し合いだけでは解決できない状況も考えられます。
本文でも見たように、遺産相続に関する実務知識を持った専門家に間に入ってもらうことで、遺産分割協議がスムーズにいくこともありますので、ぜひ相談を検討してみてください。
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