小規模企業共済で節税と老後資金確保を実現しましょう
今回は助成金ではなく小規模企業共済による「節税」と「老後資金の確保」の方法をご紹介します。
個人事業主や法人の役員等にとって、老後の生活資金は気になるところだと思います。
公的年金制度が破たんすると言われている中で、個人事業主や法人の役員にとって自身の老後の生活資金をねん出する場合、多くの方は個人年金の加入、貯蓄、投資などが必要と考えています。
その理由は、企業に勤めているサラリーマンには「退職金」がある一方、個人事業主や法人の役員は自分の退職金は存在しないからです。
また自身で将来の退職金相当額を積み立てていたとしても、経費にはならないため法人税や所得税の対象となってしまいます。
もし1年で100万の積み立てをしたとしても、原則的には商売で生み出した利益からの支出である以上、そこに20%~40%程度の税金が発生する仕組みです。
したがって、個人事業主や法人の役員の中には「自分は退職金はもらえない、退職金とは無縁だ」と考えている方が多いでしょう。
しかし本当にそうなのでしょうか?
実はそんな個人事業主や法人の役員に対しても退職金制度は存在します。
しかも掛金の全額が経費(損金)となり、かつ将来それを受取った時もサラリーマンと同様に退職所得控除が受けれるため税金がかかることは少なく節税効果もバツグンです。
この制度を小規模企業共済といいます。
国が提供する「個人事業主や法人の役員のための退職金」制度です。
この制度の活用で「節税」と「老後の資金確保」を同時に実現しましょう。
目次 |
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小規模企業共済とは? |
小規模企業共済のメリットは? |
受取り時の税金計算の方法は? |
小規模企業共済のデメリットは? |
小規模企業共済に加入するには? |
どれだけ効果があるかシミュレーションしてみた |
小規模企業共済の加入は専門家と一緒に検討すべき |
小規模企業共済とは?
小規模企業共済制度は、事業をやめたとき、法人の役員等を退職したときなどに、退職後の生活資金等をあらかじめ積み立てておくための制度です。
小規模企業共済法に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。
個人事業主や法人の役員等が事業を廃止・会社を退職する際に解約し、小規模企業共済により積み立てたお金(掛金)に応じた共済金を「退職金」として受取ることができる制度です。
国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しており、昭和40年の発足以降、加入数は約160万件となっています。
しかしまだまだ個人事業主や中小企業の役員の中にはこの小規模企業共済制度を利用できていない方が多いのが実態です。
特に、創業間もないベンチャー経営者、税理士の関与がない事業主などには未加入の方がまだたくさん存在します。
小規模企業共済のメリットは?
最大で掛金の120%が戻ってくる
小規模企業共済の最大のメリットは、掛金を納付した期間に応じ最大120%もの給付金(掛金の解約金)が受取れることである。例えば、掛金月10,000円でこ加入した場合
掛金納付月数 | 掛金残高 | 共済金A | 共済金B | 準共済金 |
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5年 | 600,000円 | 621,400円 | 614,600円 | 600,000円 |
10年 | 1,200,000円 | 1,290,600円 | 1,260,800円 | 1,200,000円 |
15年 | 1,800,000円 | 2,011,000円 | 1,940,400円 | 1,800,000円 |
20年 | 2,400,000円 | 2,786,400円 | 2,658,800円 | 2,419,500円 |
30年 | 3,600,000円 | 4,348,000円 | 4,211,800円 | 3,832,740円 |
この表のとおり、小規模企業共済を解約した場合、掛金納付月数に応じて掛金総額の最大120%相当額が受取れることになります。
※ただし掛金納付月数が、240ヶ月(20年)未満の場合は、掛金総額を下回ります。
支払った掛金の全額が節税になる
小規模企業共済の掛金は、全額が経費(個人事業主の場合は所得控除)となるため、掛けた分だけ節税が可能となる。一言で言ってしまえば「貯金のつもりで積立てると、税金が安くなる」というメリットがある。
受取り時も節税になる
将来、小規模企業共済を解約した場合には
- 一括で受取る場合
⇒「退職所得」の扱い - 分割で受取る場合
⇒「雑所得(公的年金)」の扱い
になります。
したがってどちらの受取り方法においても所得税の計算上、控除が受けれます。
前述の掛金を支払った時の節税と併せると、”受取り時”と”支払い時”で合計2回の節税が可能となります。
掛金の額は資金の状況に応じて変更できる
小規模企業共済の掛金は月1,000円~70,000円の範囲で自由に設定(500円単位)することが可能です。
従って、その時々の状況に合わせて掛金を変更できるため、無理なく積み立てることができる。
資金繰りに困ったときには資金が調達できる
小規模企業共済には資金の貸付制度があります。
もし急に事業で資金が必要になった場合には、共済契約者が納付した掛金の範囲内で、事業資金等の貸付けが受けられます。
具体的には、毎月掛金70,000円を3年間積み立てていた場合には
70,000円×12月×3年=2,520,000円までの範囲で融資を受けることが出来る。
※ただし、積み立ての期間が1年以上であること、融資額が10万円以上であることが条件です
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小規模企業共済を受け取った時の税金は?
一括受取=退職所得の場合
掛金を一括で受取った場合、収入は税金の計算上、退職所得として扱われます。
退職所得として計算する場合、収入額から一定の控除額を差し引き、更に2分の1をかけた額に対して税金がかかります。
控除額は、勤続年数20年までは1年につき40万円、勤続年数21年からは1年につき70万円までが控除されます。
退職所得控除額の計算方法は、以下のとおりです。
※障害者になったことで退職する場合は、控除額に100万円の加算があります。
- 勤続年数1年の場合
退職所得控除額=80万円 - 勤続年数2~20年の場合
退職所得控除額=勤続年数×40万(※2) - 勤続年数21年以上の場合
退職所得控除額=800万円+(勤続年数-20年)×70万円
一括で受取る場合、税金は上記の計算により自動的に差し引かれます。
したがって原則、確定申告をする必要はありません。
分割受取=公的年金等の雑所得の場合
分割により共済金を受取った場合、所得税は差し引かれますが、ほかの所得とあわせて翌年3月31日までに確定申告をする必要があります。
小規模企業共済のデメリットは?
元本割れの可能性がある
小規模企業共済のデメリットは1つのみ。
元本割れする可能性があるということです。
掛金納付月数が240月(20年)未満の場合は元本割れとなる。
もし共済に加入し、数年で解約してしまった場合は元本割れとなるため注意が必要だ。
どうしても解約しないといけない場合でも
- 貸付制度を利用して一時的に借入れする
- 掛金の額を最少額の1,000円に引き下げる
などの方法で納付期間20年に達するまで解約は控える方が得策と言えます。
小規模企業共済に加入するには?
小規模企業共済に加入できる方は、次の条件に該当する個人事業主や法人の役員等です。
- 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員や常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
- 上記1、2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
※注意事項1
- 共同経営者とは、個人事業主とともに経営に携わっている方で次の要件をともに満たす方となります。
- 事業の経営において重要な意思決定をしている、または事業に必要な資金を負担している。
- 事業の執行に対する報酬を受けている。
※注意事項2
常時使用する従業員には、家族従業員や臨時の従業員、共同経営者(2人まで)は含みません。
※注意事項3
共同経営者として加入した場合、3年ごとに加入時から引き続き事業主の方とともに事業の経営に携わっていることを確認するため、中小機構から状況確認のための文書をお送りします。
小規模企業共済を利用する場合、ポイントは「事業規模が小さいうちに加入する」ことです。
加入要件に、従業員数があるため事業規模が大きくなり従業員数が増えるとそのあとは小規模企業共済に加入できません。
逆にとらえると、従業員数が少なく要件を満たしているうちに加入さえすればその後は加入を続けることは可能です。
したがって、小規模企業共済に加入したい場合は、創業したとき(または事業の規模が大きくなる前)に加入をしておくべきと言えるでしょう。
実際に小規模企業共済の節税効果をシミュレーションしてみた
では実際に、小規模企業共済に加入した場合、どれほどの節税効果があるのかシミュレーションしてみます。
前提条件は
- 年 齢 : 30歳
- 性 別 : 男性
- 身 分 : IT関連会社経営
- 役員報酬 : 600,000円/月
- 加 入 : 2015年7月から2045年6月まで
- 期 間 : 30年間
- 掛 金 : 50,000円/月
- 課税所得金額: 4,500,000円
※課税所得金額とは
給与収入から給与所得控除を差し引き、算出された所得金額から基礎控除、扶養控除、社会保険料控除などを控除したあとの額。税金の対象となる額のこと。
まず、中小企業基盤整備機構のHPにて加入シミュレーション画面より、前述の試算条件を入力しました。
続いて、必要な項目を記入したら、計算実行を押します。
これでシミュレーションによる計算は完了です。
30年の加入期間での掛金総額は18,000,000円。
これに対して、受取れる金額も一目でわかります。
節税分も考慮した実質返礼率は、事業廃業等での解約(共済金A)の場合、21,740,000円となり174%になりました。
※実質返礼率=共済金額÷(掛金合計額-節税総額)
なお注意すべき点は、現行法に基づいたシミュレーションであることです。要するに限定された条件下でのシミュレーションとなります。したがって実際には自分の状況を入力しシミュレーションすることをお勧めします。
しかしいずれにせよ、計算の結果からするとかなり魅力のある制度と言えるでしょう。
小規模企業共済の加入は専門家と一緒に検討すべき
小規模企業共済は、創業期の起業家や中小企業の経営者には大きなメリットがある制度だが、デメリットも含め総合的に検討する必要がある。
掛金の額や融資を受ける際には、税理士へ相談すると良いでしょう。
将来の受取りについては、一括受取か分割受取かを同時に受取る公的年金(国民年金や厚生年金など)などを併せて検討する必要があるため社会保険労務士へ相談すると良いでしょう。
寺田税理士・社会保険労務士事務所では、小規模企業共済の加入について税理士・社会保険労務士という立場からフォローアップ致します。従って「税・社会保険それぞれの専門家」という立場からその他の分野まで総合的にフォロー致します。
この小規模企業共済を活用するうえで、どのような事前準備が必要か、どのような課題や問題があるのか、などを総合的に検証しお客様に提案致します。
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