新型コロナで緩和!消費税の簡易課税選択届出や課税事業者選択届出を解説
令和2年4月20日、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置を講ずることが閣議決定されました。
そのなかで消費税についても『消費税の課税事業者選択届出書等の提出に係る特例』が創設されました。
今回はこの消費税に関する特例について分かりやすく解説したいと思います。
まず内容を簡潔に言いますと
新型コロナウイルスの影響により、任意の1ケ月以上の期間の収入が前年同期間比のおおむね50%以上減少すれば
以下の届出書について申告期限まに届出することが可能になったということになります。
・「消費税課税事業者選択届出手続」
→ 免税事業者が課税事業者になることを選択する場合の手続
・「課税事業者選択不適用届出書」
→ 課税事業者を選択していた事業者が免税事業者に戻ろうとする場合の手続
・「消費税簡易課税制度選択届出書」
→ 簡易課税制度を選択しようとする場合の手続
・「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」
→ 簡易課税制度の選択をやめようとする場合の手続
これまで予測に基づく判断しかできなかったこの届出書が、事後の提出が可能となったことは事業者にとってはとても有難い特例だと思います。
ただしあくまで新型コロナウイルスの影響により収入が50%以上減少していることが条件となりますのでご注意ください。
消費税の特例を受けるための要件は?
改めて要件を整理しますと
② 新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの期間の内、一定期間(1ヶ月以上の任意の期間)の収入が、著しく減少(前年同期比概ね50%以上)した場合で
かつ
③ 当該課税期間の申告期限までに申請書を提出した場合
いうことになります。
消費税の特例の提出期限は?
この特例の提出期限は以下となっています。
個人:課税期間の翌年の3月末まで
また国税通則法 11 条の規定(災害等による期限の延長)による期限延長を受けている場合には、その延長された期限が承認申請期限となります。
特例でも提出した届出は2年間継続する必要があるの?
また今回の特例では、一度課税事業者を選択しても、その翌年度は課税事業者の選択をやめることも可能です。ただし翌年度に対する基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることが条件です。※通常は原則2年間継続する必要があります
この特例を具体的な事例で確認したい
今回の特例の利用について、具体的な事例で確認しましょう。
この事例は、3月末(平成31年4月1日~令和2年3月31日)が決算の法人です。
まとめると
2 決算期間中にコロナの影響で収入が著しく減少している
3 2を受けて申告期限(令和2年5月31日)までに特例の「申請書」にて”課税事業者を選択すること”について税務署長の承認を得る
4 原則の前期末(平成31年3月31日)までに提出したものとみなされる
5 課税事業者として消費税の申告を行うことができる
6 翌期については別途申請により免税事業者に戻ることも可能
ということなります。
この事例は、9月末(平成31年10月1日~令和2年9月30日)が決算の法人です。
まとめると
2 決算期間中にコロナの影響で収入が著しく減少している
3 2を受けて期中に特例の「申請書」を提出し”課税事業者を選択すること”について税務署長の承認を得る
4 原則の前期末(令和1年9月30日)までに提出したものとみなされる
5 免税事業者として消費税の申告と納税を行う必要がなくなる
ということなります。
消費税の簡易課税制度も特例の適用を受けるの?
今回の特例では、消費税の簡易課税制度についても適用されます。
新型コロナウイルスの影響による被害が生じた場合、同じく税務署長の承認を受けることで、その被害を受けた課税期間から、消費税の簡易課税制度の適用を受ける(又はやめる)ことができます。
なお、簡易課税制度については現行法においても「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた場合」の特例が設けられています。(消費税法37条の2)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の新型コロナウイルスの影響により、税制面ではこのほかに
・「納税の猶予制度の特例」
・「欠損金の繰戻しによる還付の特例」
・「テレワーク等のための中小企業の設備投資税制」
・「住宅ローン控除の適用要件の弾力化」
・「特別貸付に係る契約書の印紙税の非課税」
などの措置も講じられています。
厚生労働省からは
・「雇用調整助成金」
・「緊急雇用安定助成金」
・「厚生年金保険料等の納付猶予の特例」
・「国民年金保険料の納付猶予の特例」
また緊急融資として
・「セーフティネット保証制度」
などが創設されていますので是非ご活用ください。