法人を設立して所得税と消費税の節税を実現しましょう
【令和2年3月2日更新】
法人設立による節税メリットと8つにわかりやすくまとめてみた
今回も個人事業の方の節税の方法をご紹介します。
個人事業の方の税金は、その方の事業の所得に税率を乗じて計算されます。
所得はいうまでもなく『収入の額-経費の額』で計算されます。
個人で商売をしている場合で、所得の額が300万円を超えると、株式会社などいわゆる法人にした方が節税となる可能性が高くなります。
税制改正により法人税率はますます低くなっている
最近では平成30年4月1日以降開始事業年度から19%(平成31年3月31日までの間に開始する事業年度については15%)となっています。
したがって今後は更に法人にした方が税率が低く節税につながる傾向が強くなるといっていいでしょう。
更に、その効果は所得の金額が大きくなればなるほど大きくなっていきます。
そこで法人にした場合、どのような節税メリットがあるのでしょうか。
以下が主に法人を活用することができる具体的な節税方法です。
その1 役員報酬が経費として計上できる
これまでの個人の所得を、⑴会社の所得と⑵個人の所得に分散することができる
税金の対象となる”所得”は、経費の額を多く計上できればできるほど、その金額を抑えることができ、結果的に税金を少なくすることができます。
個人事業主が自分を役員とする法人(=会社)に切り替えた場合、会社から受け取る役員報酬は法人側では経費となり法人の税金(=法人税)を減らす効果があります。
一方、役員本人側では、給与として個人所得税が課税されます。
しかし給与として個人所得税が課税される場合でも、給与から更に「給与所得控除」が差し引かれるので、その分だけ個人事業主として節税効果があります。要するにこれまで全て個人の所得として税金の対象となっていたものが法人の所得と個人の所得に分散することができ、その結果低い税率の適用と給与所得控除分が課税の対象から除外できるということです。
その2 家族や親族にも役員報酬が支給できる
例えば、家族に103万までの給料を支給しても税金は全くかからない
家族や親族も役員として業務を行い役員報酬を支給すれば、その分を損金として計上することができます。
もちろん役員報酬を受け取る家族にも所得税がかかりますが、例えば年間103万未満にしておけばまったく税金は発生しません。
その3 保険で節税できる
個人の場合は最大で12万までの経費(所得控除)だったのが法人の場合は経費に出来る額に上限なし
個人事業の場合には、いくら生命保険に加入しても、最大でも年間12万までしか所得から控除できません(=生命保険料控除)。
しかし、法人の場合には、保険商品の内容によっては、大きな節税効果を発揮します。
支払時に保険料の50%~100%を経費計上でき、更に解約した場合も支払った保険料の大半が戻ってくるという商品があります。
更にその間にもし何か事故があって場合は会社に保険金が入ってきます。
したがって、節税効果も大きくかつその期間保険という保障もついてくるというわけです。
利益が出ている法人が決算前に生命保険に加入するのはこの効果が大きいからです。
その4 役員へ退職金が支給できる
自分自身への退職金が経費になり、しかもほとんど税金がかからないか、または少額で済む
法人の場合には、5年以上勤続した役員に対する退職金も経費として節税効果があります。
退職金を受けた側の所得税の計算方法は、退職金額から退職所得控除を控除し更に2分の1にした金額だけが税金の対象となるため、給与で受ける場合以上に税金は少なくてすみます。
その5 減価償却の計算上メリットがある
減価償却を計上するタイミングを操作できる
減価償却とは 長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって経費配分する処理のことである。
個人事業の場合でも減価償却がありますが、少し法人と違うところは毎年強制的に当期にかかる分を経費計上しなければならないというところです。
しかし法人の場合、減価償却は任意償却です。
したがって法人の利益があまり出ていない年度には、減価償却をせず、翌年以降に経費を繰延べることも可能です。
その6 税率に違いがある
そもそも法人税率の方が低い
個人事業主の場合、所得税と住民税を加えると所得税率は55%以上になることもあります。
しかし法人の場合の最高税率は、事業税を加えた場合でも所得400万以下の場合で実効税率21%、400万超〜800万円以下で24%、800万円超で33%ほどにしかなりません。
したがって、利益が多い場合は税率の観点からも法人の方が有利です。
その7 欠損金の繰越控除制度が違う
法人で発生した赤字は、長期間繰越すことができ将来発生した黒字と相殺できる
収入の額より、経費の額が大きいと当然赤字です。
税法上、この赤字を”欠損金”といいます。
青色申告を選択している場合、この欠損金は、翌期以降に繰越すことができます。
そして翌年以降に発生する所得(=利益)から差し引いて税金を計算することができます。
しかしここでも個人事業と法人では違いがあります。
この欠損金を繰り越せる期間が、個人事業は3年間であるのに対して、法人の場合は9年間繰り越すことができるのです。
したがって個人事業の場合、4年連続で赤字となった場合、初年度に発生した欠損金は消滅してしまいます。
しかし、法人の場合は9年間の繰り越しのため長い期間この制度を活用することができます。
その8 消費税の節税効果も見込める
法人設立してから2年間は、原則消費税を納めなくていい
最後に、節税といっても必ずしもその対象は所得税や法人税だけではありません。
法人の場合、消費税の観点からも節税効果があります。
消費税は平成31年10月から現在の8%から10%に引き上げられる予定です。
ここで注意すべき点は、所得税や法人税は事業が赤字の場合発生しませんが、消費税はよっぽどの赤字でない限り納税が発生するということです。
消費税は、事業が黒字・赤字に関係なく預かった消費税分はしっかり納めることになります。
したがって消費税の節税方法も考えるべきなのです。
そこで、まず消費税のおさらいをしましょう。
消費税が課税されるのは、次のいずれかに当てはまるときです。
- 資本金が1,000万円以上であること(個人事業の場合、資本金の概念がありません)
- 2期前(これを基準期間という)の課税売上高が1,000万円超であること
したがって、資本金1,000万円未満の法人を設立した場合は、設立後2期目までは、消費税は課税されません。
※ 注意事項
1期前の最初の6ヶ月の課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円を超えたとき(=事業規模が急速に大きくなったとき)は、免税期間が短縮される制度があるため注意も必要です。
原則、消費税は課税売上高が1,000万円を超えた事業年度の2年後の事業年度にはじめて消費税がかかるようになっています。
したがって個人事業者でその年の課税売上が1,000万円を超えてしまった場合、2年後の年から消費税か課税されますが、それまでに資本金1,000円未満の法人を設立すれば、さらに法人設立後の2年間も消費税は課税されません。
まとめ
社会保険料も考慮することは重要、税理士と社会保険労務士のダブルライセンス事務所に相談すべき
以上のように、個人事業と法人では法人の方が節税効果が大きいのです。
しかし、事業の規模・業種、今後の展望などあらゆる要素によってその節税効果は大きくも小さくもなります。
また法人は社会保険が強制加入となるため、そのような点も考慮する必要があります。
したがって、実際に法人設立を検討する場合は、事前に税金や社会保険料の専門家である税理士、社会保険労務士に相談することをお勧めします。