【2020年5月5日更新】
【 目 次 】
はじめに:社会保険に加入すべき会社や労働者とは
その1.社会保険に加入すべき『会社』とは
・法人は強制加入・個人経営の事業所は規模によって違う
法人ならば社会保険は強制加入
個人経営は労働者5人以上で社会保険は強制加入。但し例外あり
・まとめ(社会保険に加入すべき会社について)
その2.社会保険に加入すべき『労働者』とは
・労働者の社会保険加入は「役職」「働き方」「報酬の有無」によって扱いが違う
・法人の役員
法人の代表者(代表取締役、代表理事など)または常勤の役員
非常勤の役員
・個人経営の事業主
・社員
常時雇用している社員
臨時に雇い入れている社員
・パート・アルバイトの労働者
・事業所の所在地が一定しない事業所で使用されるもの
・まとめ(社会保険に加入すべき労働者について)
最後のまとめ「備えあれば憂いなし」
はじめに:社会保険に加入すべき会社や労働者とは
このページを読んで
「社会保険の加入要件が理解できた。加入義務があるのかないのか整理できた。今後対応すべきことが分かった。」と感じて頂きたい
「自分の会社が社会保険に入る義務があるのか知りたい」
「自分が働くものとして社会保険に加入すべきなのか知りたい」
「どんな場合が加入すべきでどんな場合が加入しなくていいのか知りたい」
という想いでここにたどり着いたあなたへ。
あなたに
『このページを読んで、社会保険の加入要件が理解できた。加入義務があるのかないのか整理できた。今後対応すべきことが分かった』
と感じてもらえれば幸いである。
そこでこのページではまず
社会保険に加入すべき『会社』とはどんな会社か?
を知ってもらい、そしてそのうえで
社会保険に加入しなければならない『労働者』とはどんな労働者か?
を理解してもらいたい。
そしてこのページを読んだあと、もしあなたの会社が社会保険に加入すべきタイミングが来たり、加入後に年金事務所の調査があっても堂々と安心した気持ちで適切な対応ができるようになってもらいたい。
そういうページを作りたいと考えている。
その1.社会保険に加入すべき『会社』とは
「社会保険」とは健康保険と厚生年金保険をまとめたもの
一般的に「社会保険」とは健康保険と厚生年金保険のことをいう。
そこでまずは社会保険に加入すべき『会社』とはどんな会社か、知っていただきたい。
法人は強制加入・個人経営の事業所は規模によって違う
国が管轄する社会保険について、加入が義務付けされている会社や個人経営の事業所は下記の図のとおりである。
法人ならば社会保険は強制加入
法人は強制加入。未加入の場合、2年間過去に遡られることもあり。
会社が法人である場合、株式会社、有限会社、一般社団法人、NPO法人などの種類に関係なく、社会保険は強制加入となる。
ちなみに加入義務がある場合は、加入手続きをしていないと法律違反となる。そのまま放置し年金事務所が行う調査等が入ると、最大で2年過去に遡って加入手続きを決定される場合があるので注意してもらいたい。
個人経営は労働者5人以上で社会保険は強制加入。但し例外あり
会社が個人経営の事業所の場合、常時使用する労働者が5人以上となると社会保険は強制加入となる。逆に常時使用する労働者が5人未満の場合は、社会保険に加入する義務はない。
ただしここで注意してもらいたいことが2点ある。
- 個人事業主本人は社会保険に加入できない
たとえ労働者が5人以上で社会保険に加入義務が生じてもそれは労働者についてであり、経営者である事業主自身は社会保険に加入できない。要するに経営者は健康保険は「国民健康保険」や「各種健康保険組合」、そして年金は「国民年金」のままとなる
- 労働者が5人以上でも社会保険に加入する義務が生じない業種がある
個人経営で労働者が5人以上の事業所でも、以下の業種の場合は例外的に社会保険に加入する義務は生じない。
①農林水産業 ②飲食業 ③旅館・その他の宿泊業 ④クリーニング・理美容・銭湯等のサービス業 ⑤映画・娯楽業 ⑥法律・税理士事務所等その他サービス業
なお強制加入とならない個人経営の事業所でも、労働者の希望があれば任意で社会保険に加入できる。このような「労働者の希望があれば任意に加入できる事業所」を「任意適用事業所」(※1)という。
個人経営の事業所のうち強制加入とならない事業所で、以下に該当すれば社会保険に任意で加入できる。
- 労働者のうち半数以上が適用事業所(=社会保険に加入)することに同意している
- 事業主が年金事務所に申請し年金事務所長等の認可を受ける
補足1:適用事業所になると、保険給付や保険料などは、強制適用事業所と同じ扱いとなります。
補足2:任意加入した場合でも個人経営の事業主自身は社会保険に加入することはできない。
補足3:いったん任意加入した事業所が脱退したい場合は、被保険者の4分の3以上の労働者が同意すると脱退することができる。
まとめ(社会保険に加入すべき会社について)
・法人の場合は強制加入
・個人事業の場合は5人以上で強制加入、5人未満で任意で加入。
※ただし例外の業種では人数に関わらず任意で加入
以上のように、社会保険の加入義務についてはまとめると
- 法人の場合は強制加入
- 個人事業の場合は5人以上で強制加入、5人未満で任意で加入。ただし例外の業種では人数に関わらず任意で加入
ということになる。
もし、社会保険に加入する場合には、事業所を管轄する年金事務所に申請するかたちとなる。
必要な手続きや添付書類については以下を参考にしていただきたい。
強制加入の場合 ⇒ 日本年金機構HP:新規適用の手続きについて
任意加入の場合 ⇒ 日本年金機構HP:任意適用申請の手続きについて
如何だったろうか。
社会保険に加入しなければならない会社(法人、個人経営事業所)の整理がついたであろうか。
なお社会保険加入の手続きをする場合、事前に専門家である社会保険労務士に相談をすることをお勧めする。社会保険に入るべき労働者の把握、そして加入する際の役員報酬や給与の金額設定などは十分に事前確認と対策をしておかないと誤って社会保険に加入すべきでない労働者を加入させたり、必要以上に社会保険料の負担額が大きくなったりするからである。
次に、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務や要件のうち『労働者』についてまとめたいと思う。
その2.社会保険に加入すべき『労働者』とは
『労働者』が社会保険に加入すべきかどうかは ①役職 ②働き方 ③報酬の有無 で判断される
『労働者』が社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入すべきかどうかは主に
- 役職
- 働き方
- 報酬の有無
を基準に決められている。
労働者の社会保険加入は「役職」「働き方」「報酬の有無」によって扱いが違う
ここでは前述の「その1.社会保険に加入すべき『会社』とは」に基づき、実際に会社が社会保険の加入している(またはこれからで加入する)場合においてそこで使用されるさまざまは労働者が社会保険に加入すべきかどうかについて以下の表にまとめてみた。
法人の役員
法人の役員(代表取締役、取締役、代表理事、理事、監査役など)については、役職の種類や報酬の有無及び業務執行権の有無などによって扱いが異なる。
法人の代表者(代表取締役、代表理事など)または常勤の役員
法人の代表や常勤の役員は、役員報酬が支給があれば強制加入
法人の代表者や常勤の役員は役員報酬が支給されている以上、強制的に社会保険に加入する義務がある。したがって経営や資金繰り上の理由などで役員報酬を取っていない場合は、社会保険に加入する義務はない。
義務がないというよりも、社会保険料の算定するうえで対象となる役員報酬がない以上、社会保険に加入することができないと表現した方が適切かもしれない。
非常勤の役員
非常勤役員の場合は ①勤務実態 ②業務遂行権 ③役員報酬額の多寡 などを総合的に勘案する
非常勤の役員の場合、役員報酬と取っている場合でも、常勤の役員とは違い「勤務実態」「業務執行権」「役員報酬額の多寡」などを総合的に勘案し社会保険の加入義務があるかないかを判断される。
- 経営に携わる重要性をどれだけ有しているか
- 役員としての業務執行権を有しているか(代表権があるか、通常の取締役か)
- 役員会議へ出席しているか
- 報酬額は他の常勤取締役と比較して妥当か
などを勘案し、役員としてどれほど経営に参画しているかで社会保険の加入義務が判断される。
基本的には「登記上の名前だけでまったく役員としての業務執行はしていない」という状態の場合は、報酬を取っていても社会保険に加入する義務はなくなる(報酬の金額も一つの判断材料にもなるが)。
ちなみに役員報酬と取っていない場合は、同じく社会保険に加入する義務はない。
個人経営の事業主
個人経営の事業主は「その1.社会保険に加入すべき『会社』とは」で説明したとおり、本人自身は社会保険に加入できない。
社員
常時雇用している社員
社員のうち常時雇用されいる労働者は、すべて社会保険の加入義務がある。したがって「試用期間の者」「契約社員」などの違いに関係なく加入する必要がある。
なお派遣労働者を受け入れている場合、社会保険に加入すべきは派遣元の会社であるため、派遣労働者を受け入れている会社(派遣先会社)での社会保険加入は必要ない。
臨時に雇い入れている社員
社員のうち臨時的に雇い入れている社員については以下の要件に当てはまった場合は社会保険に加入する義務はない。
- 日々雇い入れられる者
- 2月以内の期間を定めて使用される雇用
- 季節的業務に使用されるもの
- 臨時的事業の事業所に使用されるもの
逆に臨時的に雇い入れている社員でも上記のいずれにも該当しない場合は、社会保険に加入する義務がある。
パート・アルバイトの労働者
パート・アルバイトの労働者は平成28年から改正があったため注意が必要
パート・アルバイトの労働者は一般社員と比較して労働時間が短いケースが多いため社会保険に加入する義務がない場合が多い。
しかし一定の基準を超えて労働する場合は常用的な使用関係があるとして社会保険に加入しなければならない。
その判断基準は
- 1週間の所定労働時間が勤務する事業所で同じような業務をしている一般従業員の概ね4分の3以上
- 1週間の所定労働日数が勤務する事業所で同じような業務をしている一般従業員の概ね4分の3以上
の2つである。
上記の2つの基準に該当すればパート・アルバイト労働者であっても社会保険に加入する義務が生じる。
ちなみに注意していただきたいのは「両方の基準に該当する」ということである。すなわち上記2つの基準のうち1つの基準だけ該当していても、もう一方の基準に該当しないのであれば社会保険に加入する義務は生じない。たとえば、1日8時間で1週5日を所定の労働時間・日数にしている会社で、そこで働くパート・アルバイト労働者が1日5時間で1週5日の勤務の場合には労働時間では労働時間では4分の3以上に該当しないため社会保険に加入する義務はない。
平成28年10月~は被保険者501人以上の企業を対象に、労働時間と労働日数が4分の3未満であっても、次の4要件すべてに該当する場合は、被保険者となりますので注意が必要である。
当面は平成28年10月時点で、従前の加入基準による被保険者数501人以上の企業の従業員が対象とされる。
なお、500人以下の企業についても、今後は検討されることになっている。
したがって自社で雇い入れているパート・アルバイト労働者の労働条件を以下の要件とチェックしておく必要がある。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
- 賃金月額が88,000円以上であること
- 勤務期間が1年以上見込まれること
- 学生でないこと
事業所の所在地が一定しない事業所で使用されるもの
サーカス、劇団など事業所の所在地が一定しない場合は、頻繁に所在地が変わるため社会保険に加入することができない。
まとめ(社会保険に加入すべき労働者について)
以上のように、社会保険の加入義務について『労働者』についてまとめると
- 法人の役員で役員報酬を受けているものは、原則社会保険に強制加入。役員報酬を受けていない場合は加入なし。
- 非常勤役員で役員報酬を受けているものは、業務執行権や報酬額などで総合的に判断。
- 個人経営の事業主については、本人自身は社会保険に加入できない。
- 社員のうち、常用雇用される労働者は強制加入。
- 社員のうち、臨時の社員については4つの要件に該当すれば強制加入。
- パートアルバイト労働者については、一般社員の4分の3以上の勤務時間と勤務日数ならは強制加入。ただし28年10月より被保険者数501人以上の企業は別の要件あり。
- サーカス団や劇団など事業所の所在地が一定しない事業所で使用されるものは加入なし。
ということになる。
如何だろうか?
『労働者』の社会保険加入について整理がついただろうか?文章で理解しにくい場合、改めて上記の表を見てもらうことをおすすめする。
最後のまとめ「備えあれば憂いなし」
この記事では
- 社会保険に入るべき『会社(法人・個人)』とは?
- 社会保険に入るべき『労働者』とは?
と2つに分けて説明してきた。
政府側も平成29年以降は社会保険未加入問題についてさらに対策を強める姿勢を見せている。
- これから事業を立ち合げる予定の経営者の方
- 今だ社会保険に加入していない経営者やそこで働く労働者の方
- 既に社会保険に加入している経営者やそこで働く労働者の方
- 個人事業から法人成りを予定している経営者の方やそこで働く労働者の方
などは、あらためてこの記事で社会保険の加入義務や要件を確認して欲しい。
間違って社会保険に加入している方もいるかもしれない。
備えあれば憂いなし。
今後の社会保険加入において役立てて頂きたい。
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