授業料無償化で贈与税トラブル急増!教育資金一括贈与の落とし穴

公開日: 2025.06.05

2025年度から「大学・高校教育無償化」が拡大されました。所得制限も撤廃され、多子世帯(子ども3人以上)では、世帯年収にかかわらず大学や高校等(大学、短大、高専、専門学校、高校)の授業料が“実質無料”になるケースが急増しています。

それにともない増えているのが、教育資金の一括贈与による“思わぬ課税”トラブルです。

「学費がかからないなら、残った教育資金は自由に使っていいよね?」——このような考えが、贈与税の課税対象となるリスクを生むことがあります。

教育資金の一括贈与とは?

教育資金の一括贈与の非課税制度とは、30歳未満の子や孫に対し、最大1,500万円(塾などは500万円まで)までの教育資金を非課税で贈与できる仕組みです。

国税庁【祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし

金融機関に専用口座(教育資金口座)を開設し、そこから学費や塾代などの支払いを行う形式で、支出時には領収書等の提出が求められます。

この制度の大前提は、「実際に教育目的で使った分のみが非課税」ということです。

残った教育資金には贈与税がかかる

授業料の無償化により学費が不要になった場合、教育資金の使い残しが発生することもあります。その際、余った資金は贈与税の課税対象になります。

さらに、「余ったから祖父母に返せばいい」という発想もNGです。一度贈与されたお金は、すでに子や孫の財産と見なされており、返金は“新たな贈与”とみなされる恐れもあります。

制度が終了する際(卒業・中退、または30歳に到達など)には、金融機関に「終了届出書」を提出し、残高がある場合は贈与税の申告が必要です。

主な非課税贈与制度の比較

使い道 非課税枠 受贈者 適用期限
教育資金 最大1,500万円(塾等は500万円まで) 30歳未満の子や孫 令和8年3月31日まで
結婚・子育て資金 最大1,000万円(結婚費用は300万円まで) 18歳以上50歳未満の子や孫 令和9年3月31日まで
住宅取得資金 最大1,000万円(省エネ住宅)/500万円(それ以外) 18歳以上の子や孫 令和8年12月31日まで

授業料無償化の時代、どう見直す?

教育資金の援助は、もともと必要な都度の支援であれば非課税です。無理に制度を使うより、進学状況や家計の変化を見ながら援助する方が、柔軟かつリスクの少ない選択になることもあります。

教育資金の援助は“その都度”なら非課税

教育資金の一括贈与を使わずとも、親や祖父母が必要な都度支援する場合は、もともと贈与税の対象外です。国税庁も次のように明示しています。

【贈与税がかからない財産】
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの

ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費、養育費その他子育てに関する費用などを含みます。また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
なお、贈与税がかからないのは、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。

▶ 詳細:国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」

このように、“名目が教育費でも、実際に使っていない・預金している”と判断されれば課税対象となりますので注意が必要です。

なお教育資金の一括贈与制度そのものは令和8年3月末までとなっていますが、それまでに契約しておけば継続利用可能です。ただし、「使い切れないリスク」がある場合は慎重に検討すべきです。

なお、残金が基礎控除額(110万円)以内であれば非課税ですが、それを超えた部分には贈与税が発生します。

まとめ:使い切ってこそ非課税

高等教育の無償化が進んだ今、教育資金の一括贈与を行う際には、「すべて教育に使い切る前提」で計画を立てる必要があります。

使わなかった分も非課税だろうという油断は危険であり、うっかり贈与税トラブルにつながる可能性も。

制度のメリットと制限を正しく理解したうえで、必要な人に、必要な額を、必要なタイミングで届ける。これが一番安全な方法かもしれません。


「うちも対象かも…?」制度の全体像、理解していますか?

2025年度から大学や高校の授業料が“実質無料”になる世帯が一気に拡大。
3人以上の扶養で所得制限なしなど、条件を満たせば最大96万円の負担ゼロも。
ご自身がやご家族が制度対象かどうか、まずは確認を。

▶ 【2025年最新】大学・高校無償化のポイントを見る ▶


“贈与済み”でも油断は禁物——相続や承継に影響する落とし穴とは

教育資金の贈与はあくまで“入口”。制度を活用したつもりでも、思わぬ課税リスクが残るケースは少なくありません。
相続や資産承継を見据えた全体設計まで考えることで、真に安心できる対策につながります。
教育資金贈与をきっかけに、いま一度ご自身の資産設計を見直してみませんか?

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