中小事業主の労災特別加入とは

全国で約61万人の事業主が加入している制度です

中小事業主の労災特別加入制度は、全国で約61万人の中小企業・小規模事業主が加入している制度です。
(H24年度末現在)

本来、事業主(経営者,役員,経営者の家族)は労災保険に加入できません

法律上、経営者や役員、そのほか経営者のご家族などは国の制度である労災保険に加入することはできません。
なぜならば、労災保険はその対象を労働者としているためです。したがって労働者でない経営者等は業務上または通勤途上で事故に遭遇した場合でも労災保険から補償されません。

中小事業主特別加入制度とは

労災保険は政府が運営する強制加入の保険制度です。この保険制度によりもし労働者が業務で被災した場合でも、労働者本人とその家族は生涯にわたって経済的に補償されます。しかし、経営者は労働者には該当しないため、政府の補償は一切ありません。したがって経営者は別で民間の高額な保険に加入しておかなければならないのが現状です。

そこでこのような問題を回避するため、一定の要件を満たした中小企業の事業主については、特別に任意で労災保険に加入することが可能となっています。これにより業務で被災した場合でも事業主は労働者と同様に事業主本人とその家族を経済的に保護されることになります。
このような制度を中小事業主の労災特別加入制度といいます。
本来であれば加入できない経営者、役員、経営者のご家族などが国の制度である労災保険に加入できる制度です。

労災特別加入制度に加入した場合の保険給付(メリット)

中小事業主が労災特別加入制度に加入した場合には保険給付で以下の保険給付が受けることができます。

  • 国(政府)の保険だから業務上の傷病の場合でも治療費は全額補償される安心です。(療養補償給付)
  • 通勤災害による傷病でも治療費は全額補償されます。(療養給付)
  • 上記による休業が4日以上にわたるときには、休業4日目から1日につき給付基礎日額の80%が支給されます。(休業補償給付、休業給付)
    ※労働者と違い、報酬が支払われていても労働できない状況であれば支給を受けることができます
  • 上記のほか、労働者災害補償保険法に定められる以下の補償も受けることができます
    1. 障害補償給付(障害給付)…負傷、疾病の治癒後に障害が残った場合に支給される年金または一時金
    2. 遺族補償給付(遺族給付)…労働者が死亡した場合にその遺族に支給される葬祭の費用としての給付
    3. 傷病補償年金(傷病年金)…療養のため長期にわたり休業する期間の所得保障としての給付
    4. 葬祭料(葬祭給付)…死亡した者の葬祭を行う者に支給される葬祭の費用としての給付
    5. 介護補償給付(介護給付)…障害補償年金(障害年金)または傷病補償年金(傷病年金)を受ける一定の者に支給される介護の費用としての給付
保険給付の種類 支給事由 給付内容 給付内容
療養補償給付・療養給付 業務災害または通勤災害による傷病について、病院等で治療す場合合 労災病院または指定病院において必要な治療が無料で受けられます。また、労災病院または指定病院以外の病院において治療を受けた場合には、治療に要した費用が支給されます。 特別支給金はありません
休業補償給付
休業給付
業務災害または通勤災害による傷病による療養のため労働することができない日が4日以上となった場合 休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。 休業特別支給金は、休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額が支給されます。
障害補償給付
障害給付
  1. ・障害(補償)年金
     業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までのいずれかの障害が残った場合
  2. ・障害(補償)一時金
     業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8級から第14級までのいずれかの障害が残った場合
  1. ・障害(補償)年金の場合
     第1級は給付基礎日額の313日分~第7級は給付基礎日額の131日分が支給されます。
  2. ・障害(補償)一時金
     第8級は給付基礎日額の503日分~第14級は給付基礎日額の56日分が支給されます。
障害特別支給金は、第1級342万円~第14級8万円が一時金として支給されます。
傷病補償年金
傷病年金
業務災害または通勤災害による傷病が療養開始後1年6カ月を経過した日又は同日後において

  • ・傷病が治っていないこと
  • ・傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること

のいずれにも該当する場合

  • 第1級は給付基礎日額の313日分
  • 第2級は給付基礎日額の277日分
  • 第3級は給付基礎日額の245日分

が支給されます。

傷病特別支給金は

  • 第1級が114万円
  • 第2級は107万円
  • 第3級は100万円

が一時金として支給されます。

遺族補償給付
遺族給付
  • ・遺族(補償)年金
     業務災害または通勤災害により死亡した場合(年金額は遺族の人数に応じて変わります。)
  • ・遺族(補償)一時金
    1.  遺族(補償)年金を受けることができる遺族がいない場合
    2.  遺族(補償)年金を受けている方が失権し、かつ他に遺族(補償)年金を受けうる方がいない場合において、既に支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たない場合
  • 遺族(補償)年金
    遺族の人数によって支給される額が異なります。

    1. 遺族が1人の場合 給付基礎日額の153日分または175日分
    2.  〃 2人の場合 給付基礎日額の201日分
    3.  〃 3人の場合 給付基礎日額の223日分
    4.  〃 4人以上の場合 給付基礎日額の245日分
  • 遺族(補償)一時金
    左欄の1の場合には給付基礎日額の1000日分が支給されます。ただし、2の場合は給付基礎日額の1000日分から既に支給した年金の合計額を差し引いた額が支給されます。
遺族特別支給金は300万円が一時金として支給されます。
葬祭料
葬祭給付
業務災害または通勤災害により死亡した方の葬祭を行う場合 給付基礎日額の60日分か31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額のいずれか高い方が支給されます。 特別支給金はありません。
介護補償給付
介護給付
業務災害または通勤災害により、障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受給しているある一定の障害を有する方で現に介護を受けている場合
  • ・常時介護の場合
     介護の費用として支出した額(104,970円を上限)が支給されますが、親族等の介護を受けていた方で、介護の費用を支出していない場合または支出した額が56,950円を下回る場合は一律定額として56,950円が支給されます。
  • ・随時介護の場合
     介護の費用として支出した額(52,490円を上限)が支給されますが、親族等の介護を受けていた方で、介護の費用を支出していない場合または支出した額が28,480円を下回る場合は一律定額として28,480円が支給されます。
特別支給金はありません。
  1. 注1 「保険給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に対して支給される保険給付です。
  2. 注2 遺族(補償)年金の受給資格者である遺族が1人であり、55歳以上または一定障害の妻である場合には、給付基礎日額の175日分が支給されます。
  3. 注3 休業(補償)給付については、所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業について全部労働不能であることが必要となっています(全部労働不能とは、入院中または自宅就床加療中若しくは通院加療中であって、補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業ができない状態をいいます。)。

保険料も政府運営の制度のため格安

特別加入制度は、国が運営している制度です。したがって保険料も民間の生命保険等を比べ格安です。更に給付については前述のとおり病気やケガで動けなくなった場合、死亡した場合には一生涯支給される年金がありその意味でも費用対効果が高い制度です。
要するに民間の生命保険に加入する以前にまずは特別加入制度に加入すべきといえます。自動車保険でいう”自賠責保険”という位置づけです。任意の自動車保険が民間の生命保険ということになります。

労災特別加入制度に加入するための要件は

労災特別加入制度に加入するためには以下の要件を満たすことが必要です。

要件1 中小事業主であること

中小事業主とは

中小事業主等とは、以下の1、2に当たる場合をいいます。

  1. 1. 表1に定める数の労働者を常時使用する事業主
    (事業主が法人その他の団体であるときは、その代表者)
  2. 2. 労働者以外で上記1の事業主の事業に従事する人
    (事業主の家族従事者や中小事業主が法人その他の団体である場合の代表者以外の取締役・監査役など)

表1 中小事業主等と認められる企業規模

業種 労働者数

金融業

保険業

不動産業

小売業

50人以下

卸売業

サービス業

100人以下
上記以外の業種 300人以下

※労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している
場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。

※1つの企業に工場や支店などがいくつかあるときは、それぞれに使用される労働者の数を合計したものになります。

法人の代表者のみならず、そのご家族、役員、個人事業主なども加入できます。

中小事業主に加え以下のものも含めて加入することができます。

  • 法人の代表者(従業員を使用している法人に限る。②も同じ。I
  • 法人の代表者以外の役員(雇用保険に加入しているなど、労働者扱いの方を除く。)
  • 個人事業主(従業員を使用している場合に限る。④も同じ。)
  • 個人事業主のご家族で、当該事業に従事している方

要件2 労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託する者であること

労災保険特別加入制度に加入するためには労働保険事務組合に事務委託する必要があります

労災特別加入制度に加入するためには、本制度の普及と保険料の確実な徴収を図るため、法律により労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託することが必要になっています。

労働保険事務組合とは労働保険の徴収等に関する法律の規定により事業主から委託を受けて本来の事業活動に加え労働保険の保険料の申告・納付等の労働保険事務を行うことについて厚生労働大臣の認可を受けた事業主団体等をいいます。

当会、労働保険センターNIPRE大阪は上記の認可を受けた団体です

労働保険事務組合に加入した際のメリットは

労働保険の事務処理は事業主自らが行うことが原則ですが、中小事業主については労働保険事務組合に事務処理を委託することができることになっています。一般的に、労働保険事務組合に事務処理の委託をすると主に以下のメリットがあります。

  1. 上記の事業活動サービスを受けることができる
  2. 事務負担を軽減することができる
  3. 保険料を3回に分割納付することができる
  4. 中小事業主や家族労働者が労災保険に特別加入することができる

などのメリットがあります(ただし手数料や会費等が必要となります)。

当会、労働保険センターNIPRE大阪では上記の他にもメリットがあります。詳しくはこちら※※※

TEL:06-6484-7881

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